一般的にイタリアングレーハウンドやダルメシアンなど毛の長さが3cm前後の犬を「短毛種」といい、一方、長い毛に被われた犬を「長毛種」あるいは「ロングヘアード」といいます。
長毛種には、シーズーやマルチーズのように毛が伸び続ける犬種と、ポメラニアンやボーダーコリーのように被毛がある一定の長さまでしか伸びない犬種がいます。
また、同じ長毛種でも、オーバーコート(上毛)とアンダーコート(下毛)の両方が生えている「ダブルコート」の犬種と、上毛だけが生えている「シングルコート」の犬種と、被毛の構造が異なる2つのタイプがあるのです。
ダブルコート種には、春には夏用に、秋には冬用の下毛に生え変わる「換毛期」と呼ばれる、集中的に抜け毛が多くなる時期が年に2回あり、シングルコート種にはこの換毛期がないため、ごっそり毛が抜けることはありません。
長毛種は、短毛種に比べ日々の抜け毛の量が少なく、一番毛が抜けにくいのはシングルコートの長毛種と言われています。この記事では、長毛種とその抜け毛ケアについて解説します。
シングルコートとダブルコートの違いとは?
シングルコートとは
白や茶、黒など犬種ごとに特徴を表す色がある被毛がオーバーコートです。このオーバーコートのみが生えている一重構造のタイプをシングルコートと呼びます。シングルコートのわんこは、春と秋に毛が生え変わる換毛期がないため、比較的抜け毛が少ないことが大きな特徴です。
ダブルコートとは
オーバーコートとアンダーコートの2重構造のわんこがダブルコートです。ダブルコートのわんこは、春と秋の2回換毛期があります。換毛期とは、冬毛と夏毛が入れ替わる時期で、この時期になると大量のアンダーコートが抜け落ちます。
長毛種とは?
長毛種とは長い被毛を持つ犬のことでロングヘアードと呼ばれることもあります。長毛の中にも直毛の犬種や、巻毛の犬種、シルクのような毛質の犬種など様々あります。また長毛種の中には、被毛が伸び続けるトイプードルやマルチーズのようなタイプと、ある一定の長さまでしか伸びないタイプがいます。
長毛種とは逆に毛の長さが短い犬を短毛種といいます。長毛種の方が毛が抜けるイメージがありますが、実は日々の抜け毛の量は短毛種の方が多いといわれています。これは毛が短いかわりに、周毛期も短いためです。
毛が長い大型犬5種
ゴールデンレトリーバー
ゴールデンレトリバーは平滑毛またはウェーブがかった上毛に、耐水性のある下毛が密生したダブルコートの被毛が特徴的な犬種です。
また、胸や足の長めの飾り毛も印象的です。毛色はゴールドまたはクリームがあります。
ゴールデンレトリバーは被毛が一定以上伸びないため、基本的にカットは不要ですが、抜け毛が多い換毛期には丁寧なブラッシングが日々必要です。
アフガンハウンド
アフガンハウンドは長く細くシルキーなシングルコートが特徴的な犬種です。
また、被毛が前頭部から後部に向かって長く、印象的な冠毛をもっており、「貴公子」と表現されることもあります。
毛色は豊富で、さまざまなカラーが認められています。
被毛は放っておくと床にあたるほど伸びるため、清潔に過ごせるくらいにはカットを行いましょう。
なお、換毛期はありませんが、美しく健康的な被毛を保つために日々の丁寧なブラッシングが必要です。
バーニーズ・マウンテン・ドッグ
バーニーズ・マウンテン・ドッグは長く光沢のある直毛またはわずかにウェーブがかっているシングルコートが特徴的な犬種です。
毛色はジェット・ブラックのトライカラーです。
バーニーズ・マウンテン・ドッグの被毛は一定の長さ以上は伸びないため、定期的なカットの必要はありませんが、被毛の光沢を保つために丁寧なブラッシングを日々行いましょう。
サモエド
サモエドは硬く真っ直ぐで長い上毛と、やわらかく密な下毛をもつダブルコートの被毛が特徴的な犬種です。
これにより、サモエドは弾力と厚みがあるモフモフ感を作り出し、まるで動くぬいぐるみのようです。
毛色は純白とクリームとビスケット(うす茶)入りが認められています。
サモエドは定期的なカットは不要ですが、換毛期があるため丁寧なブラッシングを日々行いましょう。
ラフコリー
ラフコリーは粗めで直毛の上毛と、やわらかい下毛が密生したダブルコートの被毛が特徴的な犬種です。
また、顔は短毛で、首周りのゴージャスな飾り毛も印象的です。
毛色はセーブル、トライ、ブルーマールが認められており、いずれも首周りや尻尾の先に白い色が入ります。
ラフコリーの被毛は伸び続けることはありませんが、特に換毛期には日々の丁寧なブラッシングが必要です。
毛が長い中型犬5種
ボーダーコリー
ボーダーコリーは手触りのなめらかな長い上毛と、やわらかな下毛のダブルコートの被毛が特徴的な犬種です。
毛色はさまざまな色が認められていますが、白い部分が多すぎると認定されません。
ボーダーコリーの被毛はある一定の長さ以上は伸びないため、カットは不要です。
ただ、換毛期がありますので、丁寧なブラッシングを日々行いましょう。
コッカー・スパニエル
コッカー・スパニエルには、アメリカンコッカーやイングリッシュコッカーが含まれます。
体格や毛の多さなど違いは見られますが、どちらも、絹糸状の直毛、またはウェーブがかかった上毛に、豊富な下毛が密生したダブルコートの被毛が特徴的です。
毛色はブラック・バラエティー、パーティ・カラー・バラエティーなどがあり、濃淡も含めると沢山の種類があります。
コッカー・スパニエルの被毛は伸びますが、耳や足の飾り毛を長めにするスタイルが主流なため、カットの頻度はそれほど多くなくても問題ありません。
しかし、被毛が長くウェーブがかった毛質をしており、毛量が多く、毛も絡まりやすいため、日々の丁寧なブラッシングと定期的なトリミングが必要です。
スタンダード・シュナウザー
スタンダード・シュナウザーは針金のようなやや硬い上毛と、やわらかな下毛が密生したダブルコートの被毛が特徴的な犬種です。
また、豊かな口ひげ・頬ひげと長い眉毛が印象的です。
毛色はピュアブラック、ソルト&ペッパーが認められています。
スタンダード・シュナウザーはカットの必要はありませんが、丁寧なブラッシングを日々行うことはもちろん、月に1回を目安にトリミング・ナイフで被毛を抜くプラッキングというプロのトリマーによるトリミングが必要です。
シェットランド・シープドッグ
シェットランド・シープドッグは、直毛の長い上毛が粗めに、やらわかく短い下毛が密集して生えているダブルコートの被毛が特徴的な犬種です。また、首周りの長く豊かな毛も印象的です。
毛色は、セーブル、トライ、ブルーマールなどが認められています。
シェットランド・シープドッグは被毛が一定以上伸びないため、基本的にカットは不要ですが、抜け毛が多い換毛期には日々の丁寧なブラッシングが必要です。
日本スピッツ
日本スピッツは、直毛の上毛と、短くやわらかな下毛が密集して生えているダブルコートの被毛が特徴的な犬種です。
また、被毛が外へ向かって開くように生えているため、ポメラニアンに似た丸みをおびたフォルムをしています。
毛色は純白のみです。日本スピッツの被毛は伸びないためカットは不要ですが、換毛期中の抜け毛が多いため、丁寧なブラッシングを日々行う必要があります。
毛が長い小型犬5種
シーズー
シーズーは長く美しいダブルコートの被毛が特徴的な犬種です。
シーズーの被毛は基本的にはストレートですが、わずかにウェーブしていることもあり、放っておくと床に着くほど伸び続けます。
毛色については、あらゆるカラーが認められており、主なものとして、ゴールド&ホワイト、ブリンドル&ホワイト、ブラック&ホワイト、ブルー&ホワイトなどがあります。
シーズーの毛は絡みやすいため、月に1回のカットか、伸ばす場合には毎日の丁寧なお手入れを行う必要があります。
マルチーズ
マルチーズは「シルキーコート」という異名を持つ純白の美しいなめらかなシングルコートの被毛が特徴的な犬種です。
マルチーズの毛は伸びる速度がはやいと言われており、被毛をカットせずに放っておくと床に着くほど伸び続けます。
毛色は純白のほかに淡いタン(茶)やレモン色が認められています。
マルチーズの毛は細くて絡まりやすく、伸びるスピードもはやいため、月に1回のカットか、伸ばす場合には毎日の丁寧なお手入れが必要です。
ヨークシャテリア
ヨークシャテリアも「シルキーコート」というわれるなめらかなシングルコートの被毛が特徴的な犬種です。
その真っ直ぐな長毛は、絹糸状で光沢があるため、ヨークシャテリアは「動く宝石」とも呼ばれています。
また、毛が伸びる速度がはやく、口周りの毛が特に伸びるスピードがはやいです。
毛質的にお手入れを怠ると絡まってしまうため、月に1回程度のカットか、伸ばす場合は丁寧なお手入れを行う必要があります。
ポメラニアン
ポメラニアンは長くまっすぐな上毛と、綿毛のような下毛をもつダブルコートの被毛が特徴的な犬種です。
また、日本スピッツのように被毛が外へ向かって開くように生えているため、ポメラニアンは丸みをおびたフォルムをしています。
毛色はブラック、ブラウン、ホワイト、ブラック・タンなど10種類以上のカラーが認められています。
ポメラニアンは被毛が一定以上伸びないため、基本的にカットは不要ですが、抜け毛が多い換毛期には丁寧なブラッシングが日々必要です。
トイプードル
トイプードルは比較的硬めの毛質で、カーリー(巻き毛)とコーテッド(縄状毛)が密生しているシングルコートの被毛が特徴的な犬種です。
毛色は、ブラック、ホワイト、アプリコットなど種類が豊富です。
トイプードルは毛が伸び続ける長毛種のなかでも、特に伸びる速度がはやく、直毛でないため毛玉もできやすいので、月に1回以上のカットが必要です。
長毛種の抜け毛対策・ケア
01栄養バランスのよい食事をとる
綺麗な毛を維持するために必要なのは、皮膚や毛のお手入れだけでありません。十分な栄養がいきわたっていないと、健康な毛が生えてこず、抜け毛の原因にもなります。
そのため、愛犬の健康のためにも、綺麗な被毛を保つためにも、栄養バランスのよい食事をとるように心がけましょう。
02定期的にカットをする
被毛が一定以上伸びない犬種は、基本的にカットは不要です。
一方、毛が伸びる犬種では、犬によって毛の伸びるスピードは違いますが、抜け毛対策や衛生的にも、月に1回以上の カットを行いましょう。
03お手入れの道具を正しく選ぶ
綺麗な毛を維持したり、抜け毛対策のためには、毎日のお手入れが欠かせません。
しかし、お手入れの道具選びを間違えてしまうと効果が半減するだけでなく、毛がきれてしまいパサパサした毛になってしてしまうこともあるのです。
そのため、お手入れの道具は正しく選ぶようにしましょう。
抜け毛対策・お手入れにおすすめのアイテム
01スリッカー
スリッカーとは、くの字に曲がった針金のような金属製のピンがたくさんついているブラシです。このブラシは、毛と毛、毛と皮膚の間のホコリを取り除いたり、下毛の死毛(抜け毛)を取り除いたり、毛のもつれを解消するために使用します。
使用する時のポイントは、犬の皮膚を傷つけしまわないよう、力加減に気を付けるをことです。
おすすめのスリッカーブラシは、洗ってもさびないステンレス製で、犬の大きさに合ったサイズのものです。
02コーム
コームは、人用の櫛のようなもので、毛並みをよりきれいに整えることができます。コームで毛をとくときのポイントは、力を入れず、ピンを立てないようにすることです。力を入れてしまうと、毛が細い犬では途中で毛が切れてしまうことがあります。
おすすめのコームは、洗ってもさびず、ピンが折れないステンレス製です。
03ブラッシングスプレー
毛が絡まってうまくブラッシングできないという場合は、ブラッシングスプレーは、ブラッシングの前に吹きかけることで毛の絡まりがほどけやすくなったり、毛をサラサラにしたり、毛にツヤを出すことができます。
また、ブラッシングスプレーには静電気防止効果もあるのです。
おすすめのブラッシングスプレーは、愛犬が嫌がらない香りや、舐めても大丈夫な成分のもの、肌が敏感な場合には低刺激タイプのものです。
04毛質に合ったシャンプー
長毛の犬は、シャンプー次第でサラサラにもパサパサにもなります。
毛をサラサラにするためには、愛犬の毛質に合ったシャンプーと適切なシャンプー頻度、正しいブラッシングが大切です。
愛犬に毛質に合ったシャンプーを探すために、さまざまなシャンプーを試してみることをおすすめします。
また、シャンプーが見つかったら、愛犬の被毛の汚れやベタつきなど状態をよく観察し、適切な頻度でシャンプーをしてあげましょう。
05トリートメント
長毛種はどうしても毛が絡みやすく、ひどいと毛が切れしてしまうこともあるのです。
そのような場合には、トリートメント効果が高いシャンプーや、シャンプーの後にトリートメントを使用することで、被毛の絡まりを軽減することができます。
Supervisor
西岡 優子 にしおか ゆうこ
獣医師。北里大学獣医学科卒業後、香川県の動物病院に就職。結婚を機に、都内の獣医師専門書籍出版社にて勤務。現在は、パート獣医として働く傍ら、犬・猫・小動物系のライターとして活動。