TikTokで動画が1日に25万回以上も再生され、話題になった大型犬がいます。アイルランドのヒギンズ大統領の愛犬で、ミシュナクという子です。大統領がテレビ局のカメラの前でスピーチをしていた際に、大統領の手を甘がみして「遊ぼうよ〜」と前足で注意を引こうとする様子が映され、そのあまりの可愛さに一躍世界中で有名となりました。この子犬の犬種が「バーニーズマウンテンドッグ」です。
もふもふの被毛に甘えっ子のような笑顔、その人懐こさで、現在多くの国で忠実な伴侶、家庭犬、セラピー犬として評価されており、ドッグショーでも頻繁に見られる人気の犬種です。今回は、そんなバーニーズマウンテンドッグの歴史や魅力、性格や飼い方、寿命などを紹介します。
バーニーズマウンテンドッグの基本データ
原産国 | スイス |
---|---|
サイズ | 大型犬 |
犬種グループ | 使役犬(番犬、警護、作業をする犬) |
飼いやすさ・しつけのしやすさ | 初級~中級 |
運動量 | 中程度 |
トリミング | 不要 |
ブラッシング | 2〜3日に1回程度 |
お散歩 | 1日2回×30分~1時間程度 |
飼育費用 | 月1.5〜2万(医療費別途) |
かかりやすい病気・怪我 | 胃捻転、熱中症、進行性網膜萎縮、肘関節形成不全、肘関節形成不全 |
バーニーズマウンテンドッグの歴史
バーニーズマウンテンドッグは山岳地帯が広がるスイス原産です。紀元前3000年頃のスイスの化石からワンコが発見されており、そのなかにはバーニーズマウンテンドッグと思われる化石も含まれていたほど、その歴史は古い犬種です。古くからの記録によると、ローマ帝国がスイス侵攻時に持ち込んだマスティフ犬と先住犬と交配した結果、バーニーズマウンテンドッグの祖先犬が生まれたとされています。
バーニーズマウンテンドッグの名前は、スイスのベルン州に由来していて「山岳地での活動に耐えられる犬」という意味です。 スイスでは「ベルナー・ゼネンフント/Berner Sennenhund(ベルンの山犬)」と呼ばれていますが、Bernerの英語読みから「バーニーズ」と呼ばれるようになりました。
温和な性格と服従性、頑丈な足腰でよく働くバーニーズマウンテンドッグは、何世紀にもわたって荷車を引いたり、家畜の警護をしたりと、農耕犬としての役割を担っていました。また、貧しく馬を飼うことができなかった小農家は、新鮮な牛乳やチーズなどの農産物を運ぶために彼らを利用しました。
1800年代半ばまで農場で働き続けましたが、当時スイスにはほかの労働犬も輸入され、また自動車の発達により、バーニーズマウンテンドッグは一時絶滅の危機に瀕します。しかし、1892年にスイスの愛好家が山岳地帯にわずかに生き残っていた純粋なバーニーズマウンテンドッグを探し出し、犬種の保存のため繁殖させました。その結果、1907年にはスイスにバーニーズマウンテンドッグ専門クラブが設立されます。それ以来、バーニーズマウンテンドッグはショードッグとコンパニオンの2つの顔を持つ犬種として扱われ、世界中で人気を博し始めます。
1926年にアメリカに持ち込まれ、1937年にアメリカン・ケネル・クラブが公認し、1968年にはバーニーズマウンテンドッグ・クラブ・オブ・アメリカが結成されました。現在でも、バーニーズマウンテンドッグは家庭犬としてだけではなく、山岳犬としての特性を生かして、行方不明のスキーヤーを探すなど多方面で活躍しています。
バーニーズマウンテンドッグの性格と特徴・飼いやすさ
バーニーズマウンテンドッグは飼い主に愛情深く献身的で、気立ての良い犬種です。大きく丈夫でたくましい体格ながら、いつも家族と一緒にいたがり、膝の上に乗ってくることもあるほどの甘えん坊で、人間との交わりを大切にします。
ほかのワンコや子どもと一緒でも大丈夫ですが、幼年期から青年期は大変活発でヤンチャな子が多いので、怪我をさせたりしないように幼少期からポジティブ・トレーニングを行っておきましょう。また、忍耐力があるため、トレーニングは容易に行えるでしょう。しかし、温和な性格なので厳しいしつけは適しません。
短命であるため常に健康に注意し、医療費も多くかかる場合があること、日本の気候に弱いため室内飼いが必須で広い部屋が必要、活発なので相当な散歩時間の確保が必要などの理由から、金銭的、体力的、そして時間に余裕のある家庭に向いている犬種です。
バーニーズマウンテンドッグの被毛と種類について
バーニーズマウンテンドッグの被毛は、ダブルコートの光沢のあるなめらかな長毛で、ストレートかウェーブです。厳しい寒さに耐えられるよう、豊かな被毛に覆われています。
毛色は、艶のある黒の地色に、白と赤褐色の3色を併せ持ったトライカラーです。頬・目の上・胸・足の左右対称に「リッチ・タン」と呼ばれる赤褐色のマーキングがあります。
「トライカラー」黒、白、茶色に「リッチ・タン」という褐色のマーキングが、頬・目の上・胸・足にあります。このマーキングが左右対称なのも大きな特徴です。
バーニーズマウンテンドッグの大きさと体高・体重
バーニーズマウンテンドッグは筋肉質で頑丈な体格をしています。
体高は男の子が66〜68cm、女の子が60〜63cmが理想的です。体重は男の子が41〜54kg、女の子が32〜45kgほどです。
性別 | バーニーズマウンテン ドッグの体重 |
バーニーズマウンテン ドッグの体高 |
---|---|---|
オス | 41〜54kg | 66〜68cm |
メス | 32〜45kg | 60〜63cm |
バーニーズマウンテンドッグの平均寿命と人間年齢
原産国のスイスでは「3年若犬、3年良犬、3年老犬、それ以外は神様からの贈り物」という諺があるほど、バーニーズマウンテンドッグの寿命は短いです。
大型犬の平均的な寿命が10歳~12歳なのに対し、バーニーズマウンテンドッグの平均寿命は6~8歳ですが、25歳まで長生きしたという例もあります。
人間に換算した場合の年齢は下記の表をご参照ください。
犬の年齢 | 人間に換算した年齢 | 成長ステージ |
---|---|---|
1歳 | 10歳 | 子犬 |
1歳半 | 15歳半 | |
2歳 | 19歳 | |
3歳 | 29歳 | 成犬 |
4歳 | 39歳 | |
5歳 | 49歳 | シニア犬 |
6歳 | 59歳 | |
7歳 | 69歳 | |
8歳 | 79歳 | 高齢犬 |
9歳 | 89歳 | |
10歳 | 99歳 | |
11歳 | 109歳 | 超高齢犬 |
12歳 | 119歳 |
バーニーズマウンテンドッグがかかりやすい病気や怪我
バーニーズマウンテンドッグがかかりやすい病気について見ていきましょう。短命なので、とくに病気の兆候に注意し、予防に努める必要があります。
バーニーズマウンテンドッグがかかりやすい病気や怪我 1悪性腫瘍
組織球肉腫、骨肉腫、血管肉腫、肥満細胞腫、リンパ腫など、さまざまな腫瘍にかかる可能性があります。長毛で腫瘍に気づきにくいため、スキンシップの際に皮膚の状態をチェックすることが重要です。
バーニーズマウンテンドッグがかかりやすい病気や怪我 2胃拡張・胃捻転症候群
胸が深い大型犬は、胃拡張や胃捻転を起こしやすいので注意が必要です。無処置でいると急死する危険性もあるため、よだれを垂らしてウロウロするなどの症状があれば、すぐに獣医師の診察を受け、最低でも食後1時間は運動を避けましょう。
バーニーズマウンテンドッグがかかりやすい病気や怪我 3関節疾患
重い体重による関節への負荷が原因で、関節疾患にかかりやすいです。生まれつき股関節形成不全を抱えている場合もあります。
バーニーズマウンテンドッグがかかりやすい病気や怪我 4無菌性髄膜炎
遺伝性の病気で治療せずにいると麻痺や失明を起こす危険性もある病気です。
バーニーズマウンテンドッグの飼い方のコツ・注意点
バーニーズマウンテンドッグの飼い方のコツ 1 しっかり信頼関係を築いていきましょう
バーニーズマウンテンドッグは、穏やかで小さい犬や子供にも優しく接することができますが、シャイな一面もあり、また、体が大きく、その力は非常に強いため、子犬の頃から信頼関係をしっかり築いていくことが大切です。子犬の時は、少しやんちゃな面もありますが、大人になると徐々に落ち着いてきます。賢く聡明で、スキンシップやコミュニ―ケーションがなにより大好きですので、遊びを取り入れながら褒めてのばすトレーニングで、しっかりと信頼関係を築いていきましょう。また、攻撃性は少ないと言われていますが、吠えや甘噛みも子犬の頃からしっかりトレーニングしていくことが大切です。人と一緒にいるのが大好きで、さみしがり屋でお留守番は苦手な傾向にあります。短い時間から徐々にトレーニングして、長時間のお留守番は避けるようにしましょう。
バーニーズマウンテンドッグの飼い方のコツ 2 被毛のお手入れは定期的に行いましょう
バーニーズマウンテンドッグの魅力のひとつである豊かな被毛ですが、抜け毛は多い傾向にあります。ブラッシングを定期的に行い、換毛期には特に念入りに行いましょう。また、垂れ耳は蒸れやすいので、耳のケアや、目の周り、口の周りのお手入れもこまめに行いましょう。
バーニーズマウンテンドッグの飼い方のコツ 3 暑さ対策はしっかりと行いましょう
バーニーズマウンテンドッグは、寒さにはとても強いのですが、暑さが苦手です。特に高温多湿の時期は、室内の温度と湿度の管理を徹底して、熱中症にならないように注意し、快適に過ごせるように工夫しましょう。被毛は、こまめにブラッシングして、皮膚の通気性をよくしてあげるとよいでしょう。夏場はお散歩の時間帯にも気を配るようにしましょう。
バーニーズマウンテンドッグの飼い方のコツ 4 運動にはバリエーションをもたせて
バーニーズマウンテンドッグは、厳しい山岳地帯で活動していたので体力があり、敏捷で、かなりの運動量を必要とします。散歩も時々バリエーションをもたせて、工夫するとよいでしょう。平坦な道より、坂道や階段があるコースを歩いたり、起伏の多い場所でアップダウンを繰り返すなどの運動もできるとよいでしょう。また、家の中でもコミュニケーションを取りながら遊べるようなスペースが必要となります。
バーニーズマウンテンドッグの飼い方のコツ 5 日頃のケアで、健康管理
原産国であるスイスには、バーニーズマウンテンドッグの生涯をあらわす「生後3年で若犬、3年経過で成犬、その後3年で老犬、その先は神様の贈り物」ということわざがあり、平均寿命は他の大型犬より少しだけ短い傾向にあります。使役犬として活躍したバーニーズマウンテンドッグは自動車などの普及により、第一次世界大戦の頃には、絶滅に瀕していた時期があり、その後愛好家により、少ない個体から再び数を増やしたという影響もあり、「胃捻転」「股関節形成不全」などになりやすい傾向があると言われています。「胃捻転」は、食後の激しい運動や早食い、大食いが影響しているともいわれます。食事を数回に分けたり、1回の食事の量をコントロールしたりなどの工夫で防ぐことができます。また、大型犬は関節に負担がかかりやすいので、運動と食事のバランスをとって、肥満にならないように充分に気を付けましょう。室内では滑りにくい床にするなど工夫し、高いところからの飛び降りなどに注意するなど、生活環境を整えるとよいでしょう。
バーニーズマウンテンドッグの値段・価格の相場
バーニーズマウンテンドッグの子犬の平均価格は約42万円(2023年)です。ドッグショーで優秀な成績を収めた親犬の子は、価格が高くなる傾向にあります。
保護施設などから里親として引き取る場合は、各施設によって定められた譲渡費用がかかります。事前に調べたり問い合わせたりするのがおすすめです。
バーニーズマウンテンドッグをお迎えする方法
バーニーズマウンテンドッグを家族としてお迎えする際の2つの方法を紹介します。
ブリーダーさんからお迎えする
バーニーズマウンテンドッグ専門の優良ブリーダーをネットなどで検索してみましょう。ブリーダーから子犬をお迎えする場合は両親が明らかなので、毛色や体格、性格などがわかるメリットがあります。
また、お迎え後もブリーダーさんに困った時に相談ができたり、兄弟犬の輪が広がったりとサポートしてもらえる繋がりがもてるのも心強いポイントです。
保護犬のバーニーズマウンテンドッグを探して里親になる
動物保護施設や動物愛護ボランティア団体などでは、繁殖犬を卒業して保護された子や、飼い主の事情で手放されて保護されているバーニーズマウンテンドッグを見つけることができるかもしれません。事前にサイトやSNSなどで探してみるのがおすすめです。
まとめ
バーニーズマウンテンドッグの顔はとても愛嬌があり、その微笑みを見ていると疲れも一掃されるほど癒やされますよね。
古くから農耕犬として人に仕えてきた歴史があるため従順で献身的、性格も温和なのですが、反面、部屋の中ではしゃぎ回ることもあるほど元気で活発なところもあります。制御のために、褒めて教えるトレーニングをジュニア期から始めることが必要です。
寒い地方原産の犬種で日本の夏が苦手なので、室内の温度調整ができる環境で飼育してくださいね。また、山犬なのでトレッキングが得意な犬種です。アウトドア好きな方にとって、最高のパートナーになるでしょう。