ドイツ原産で短足胴長が特徴のダックスフンドは、最小の狩猟犬としてドイツの国民的シンボルであり、またヨーロッパでは現役で活躍している犬種です。ウサギやアナグマの巣穴に入ることができる特徴的な体型で、運動能力に優れ、勇敢ながら従順な性格から、家庭犬としても世界中の人に愛されています。日本では、ミニチュアダックスフンドが常に人気犬種の上位にランクインしていますが、このほかにカニンヘン、スタンダードとサイズ違いの3タイプのダックスフンドがいます。また、一犬種ながら、3種類の毛質とバリエーション豊富な毛色が人気の秘密です。この記事では、そんなダックスフンドのサイズや被毛の特徴、性格の違いなどにについて詳しくご紹介します。
ダックスフンドの基本データ
原産国 | ドイツ |
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サイズ | 小型犬~中型犬 |
犬種グループ | ダックスフンド(地面の穴に住むアナグマや兎用の猟犬4G) |
飼いやすさ・しつけのしやすさ | 初級~中級 |
運動量 | 中程度 |
トリミング | 不要 |
ブラッシング | 2〜3日に1回程度 |
お散歩 | 1日2回×30分〜1時間程度 |
飼育費用 | 月1.5〜2万(医療費別途) |
かかりやすい病気・怪我 | 椎間板ヘルニア、外耳炎、クッシング症候群、進行性網膜萎縮 |
ダックスフンドの歴史
一つの犬種としては種類が多いことから、JKCでは第4グループ「ダックスフンド」と独立したグループに分類されていますが、AKCはじめ海外のケンネルクラブではハウンドドッググループに分類されている犬種です。アナグマ猟を得意とすることから、ドイツ語でダックス=アナグマ、フント=犬と名付けられたダックスフンドは、原産国ドイツでは、中世の時代からドイツ語で猟犬の意味を持つテッケルと呼ばれています。なお、日本ではダックスフンドと呼ばれていますが、ドイツ語読みではダックスフントとなります。
ダックスフンドは、中世から活躍してきたドイツオリジナルの猟犬です。嗅覚の鋭い犬や足の短いドイツの猟犬を基礎犬として、ウサギやキツネの狩猟に適した小さな犬を作出するためにさまざまな犬が掛け合わされて作出され誕生したのが、スムースコートのスタンダードタイプです。また、19世紀の半ばには、棘のある草が生い茂る草原での作業に向くようにポインター種とテリア種であるピンシャーを掛け合わせたワイヤードタイプや追跡の上手なスパニエル種とセッター種を掛け合わせ寒い地域にも適したロングヘアードタイプが作出されました。さらに、この時期にはキツネやウサギの狩猟に向くより小さい個体も作出されています。
ダックスフンドの種類は3種類
ダックスフンドにはスタンダード、ミニチュア、カニンヘンと3種類のサイズがあります。前述のように狩猟の目的別に改良され作出されたものです。ダックスフンドのサイズ分けは、国によって異なります。原産国ドイツでは、胸囲と体重によって3サイズに分けられ、AKCでは体重別にスタンダードとミニチュアに分けられています。
ここでは、JKCが規定する生後15ヶ月で測定した胸囲のサイズ別にスタンダード、ミニチュア、カニンヘンの3タイプをご紹介します。
01ダックスフンド(スタンダード)
オス | メス | |
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サイズ | 37cm超〜47cm以下 | 35cm超〜45cm以下 |
原種でもあるスタンダードのダックスフンドは、もともとスムースコートの犬種として作出されました。その後、スタンダードダックスフンドを基礎犬として、狩猟の用途別にロングコート、ワイヤードの被毛タイプが作出されています。
スタンダードのダックスフンドは、3タイプの中で最も胴が長く体高が高いことが特徴です。また、まっすぐで長く丈夫なしっぽは、獲物を追って穴の奥深くまで潜ったダックスフントをハンターが穴から引き出すために機能していたのです。
アナグマやイノシシの猟で活躍していたスタンダードタイプは、大きな手でアナグマの巣穴を掘り、必要とあればアナグマと命を懸けて戦うことができる勇敢な性質が特徴です。
02ミニチュア・ダックスフンド
オス | メス | |
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サイズ | 32cm超〜37cm以下 | 30cm超〜35cm以下 |
日本では胴長短足の姿とキュートな顔立ちから家庭犬として抜群の人気を誇るミニチュアダックスフンドですが、本来はキツネや鹿狩りの犬として、スタンダードのダックスフンドを改良し作出された犬です。
狩猟犬として野山を駆け回っていたエネルギッシュで運動能力の高い犬種で小さいカラダながら大胆で怖いもの知らず、粘り強い性質がミニチュアダックスフンドの持ち味です。
03カニーンヘン・ダックスフンド
オス | メス | |
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サイズ | 27cm超〜32cm以下 | 25cm超〜30cm以下 |
英語ではラビットダックスフンドとも呼ばれるカニンヘン・ダックスフンド。カニンヘンとはドイツ語でウサギを意味し、野うさぎやイタチ狩りの犬としてミニチュアダックスフンドをもとに、より小さく作出されました。日本やドイツでは異なるサイズとして登録されていますが、アメリカやイギリスではミニチュアダックスフンドと同じ分類がされています。
小さなカニンヘンダックスフンドは、狩猟犬としてよりもペットとしてヨーロッパ各地の王室で愛され飼育されたことが特徴です。ダックスフンドの中では最小サイズながら、獲物を狩るだけではなく仕留めることを目的として作出され、大胆不敵な性質はスタンダードサイズと変わらず、ピーピーと音が出るおもちゃはすぐに壊してしまう一面もあります。
ダックスフンドの種類によって性格は異なる?
スタンダード、ミニチュア、カニンヘンと3サイズあるダックスフンドですが、どのダックスフンドも狩猟犬として作出された犬種で、賢く活発で遊び好き、飼い主に忠実なことが特徴です。また、忍耐力を重視して作出されていることから、頑固な一面も持ち合わせています。
サイズによる大きな違いはありませんが、スタンダードのダックスフンドに比べ、ミニチュアダックスフンドやカニンヘンダックスフンドはよく吠えることも特徴です。また、スタンダードのダックスフンドが比較的おとなしくしつけが入りやすい性質であるのに対し、ミニチュアダックスフンドやカニンヘンダックスフンドは、元気に遊びまわることが大好きでわがままな一面もあるため、しつけに苦労することがあります。
ダックスフンドの毛質の種類は3種類
有能な狩猟犬として作出されたドイツの人々に愛されてきたダックスフンド。オリジナルのダックスフンドは短毛のスムースヘアードで、主にイノシシ狩りやアナグマ猟で活躍していました。
中世のドイツでは、アナグマ猟以外に野うさぎやキツネ狩りも盛んであったため、獲物に合わせた性質や体質の狩猟犬を必要としていました。そこで作出されたのが、ロングヘアーどのダックスフンドやワイヤーヘアードのダックスフンドです。
ダックスフンドの珍しいところは、3タイプの毛質ごとに性格が異なる点です。これは、作出の際に掛け合わされた犬種が異なることに起因しているのです。どのタイプもアンダーコートとオーバーコートのダブルコートのため、こまめなお手入れが必要です。
ここでは、毛質ごとの特徴についてご紹介します。
01スムースヘアード
ビロードのような毛質のスムースヘアーは、ダックスフンドオリジナルの毛質です。硬く、短い毛質ですが、光沢のあるビロードのような美しさが特徴です。スムースヘアードのタイプは、好奇心旺盛で活動的、遊ぶことが大好きで飼い主に忠実な猟犬らしさが特徴です。
02ロングヘアード
エレガントな被毛が人気のロングヘアードですが、狩猟犬としての高い資質を備えている犬種です。
柔らかく光沢のあるウエイブがかった被毛が特徴のロングヘアードは、スムースヘアードのダックスフンドにスパニエルとセッターなどを掛け合わせて作出されています。そのため、スパニエルのフレンドリーな性質やセッターの陽気で明るくエネルギッシュで、狩猟欲の高い性質を受け継いでいます。
日本では、犬種別人気ランキングの上位に常にランクインしているのがこのロングヘアードのミニチュアダックスフンドです。
03ワイヤーヘアード
短く粗い剛毛のワイヤーヘヤードは、スムースヘアーのダックスフンドにテリア系のピンシャーやシュナウザーなどの血統を入れて誕生しました。密なアンダーコートと独特のヒゲやふさふさした眉毛にはシュナウザーの特徴が表れています。
海外では人気のあるワイヤーヘアードですが、狩猟犬としての資質が非常に高くまたテリア気質と言われる気の強い面や神経質な一面があります。家庭犬としては、しつけが難しいと言われることもあります。
ダックスフンドの毛色の種類
ダックスフンドは、サイズ、毛質の違いだけではなく、毛色の種類も豊富です。毛色には、単色、2色の他にダップル、ブリンドルなどがあり、バリエーション豊富なことが人気の秘密です。
犬の毛色は2種類のメラニン色素細胞によって生成されます。ダックスフンドには、毛色を決定する毛色遺伝子が約11〜13種類あると考えられ、それらが色素細胞に働きかけることによってさまざまな毛色が生成されています。また、短毛のスムースヘアード、長毛のロングヘアード、短毛で剛毛のワイヤーヘアードの毛質ごとに許容される毛色が異なります。
ここでは、JKCで規定されている毛色を毛質別にご紹介します。
単色
ソリッドカラーとも呼ばれる単色とは、濃淡も含め全身が一色である毛色を指します。
スムースヘアード | 混じり気のない濃いレッドが望ましいとされます。黒い毛が散在している場合や胸に小さなホワイトの班がある場合はこれが許容されています。 |
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ロングヘアード | レッドの地色にブラックのオーバーコートで、混じり気のない濃い色が望ましいとされます。胸の小さな白の班は供されています。 |
ワイヤーヘアード | 混じり気のない濃いレッドが望ましいとされます。黒い毛が散在している場合や胸に小さなホワイトの班がある場合はこれが許容されています。 |
2色
バイカラーとも呼ばれ、全身が2色で覆われている毛色を指します。なお、ワイヤーヘアードのみマルチ・カラーと呼ばれます。
スムースヘアード | ブラックアンドタン、ブラウンアンドタン。 濃いブラックまたはブラウンのベースに、目の上、マズル、下唇の側面、耳の内縁、前胸、足の内側及び後ろ側、足、肛門周り、尻尾の下側により濃く混じり気のないタンマーキングがあることが望ましいとされています。また、タンのマーキングが広範囲にあったり、不十分なものは非常に望ましくないとされます。 |
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ロングヘアード | ブラックアンドタン、ブラウンアンドタン。 濃いブラックまたはブラウンのベースに、目の上、マズル、下唇の側面、耳の内縁、前胸、足の内側及び後ろ側、足、肛門周り、尻尾の下側により濃く混じり気のないタンマーキングがあることが望ましいとされています。また、タンのマーキングが広範囲にあったり、不十分なものは非常に望ましくないとされます。 |
ワイヤーヘアード | マルチ・カラー:ワイルド・ボア(イノシシ色)、ブラウン・ワイルドボア、ブラックアンドタン、ブラウンアンドタン。 目の上、マズル、下唇の側面、耳の内縁、前胸、足の内側及び後ろ側、足、肛門周り、尻尾の下側により濃く混じり気のないタンマーキングがあることが望ましいとされています。 |
ダップル
マールとも呼ばれ、大理石のように不規則な縞模様があるパターンの毛色で、ダックスフンドの場合は、マダラやブチと呼ばれています。なお、ダップルは優性遺伝ですが、ダップル同士の交配は、遺伝疾患が発生する可能性が高いため禁止されています。
スムースヘアード | 地色は常に濃いブラックまたはブラウンに、不規則なグレーまたはベージュの小班が望ましいとされ、大きい班は望ましくないと規定されています。なお、レッドの地色にダークな小班があるレッド・ダップルは例外とされます。 |
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ロングヘアード | 地色は常に濃いブラックまたはブラウンに、不規則なグレーまたはベージュの小班が望ましいとされ、大きい班は望ましくないと規定されています。なお、レッドの地色にダークな小班があるレッド・ダップルは例外とされます。 |
ワイヤーヘアード | 地色は常に濃いワイルドボア、ブラックまたはブラウンで、不規則なグレーまたはベージュの小班が望ましいとされ、濃い色も明るい色も優勢であってはならないと規定されています。レッドの地色にダークな小班があるレッド・ダップルは例外とされます。 |
ダックスフンドの飼育のポイント!ダックスフンドの上手なしつけの方法。
毛質によって、基本的な性質が違うダックスフンドですが、どのタイプもよく吠える犬種であることに間違いはありません。前述のように、狩猟犬として育種されたダックスフンドは、吠えて教えることを仕事として活躍していた犬種です。よく吠えるのは、狩猟犬としての本能が残っているための行動と言えます。またダックスフンドは、警戒心が強くテリトリー意識が強い犬種のため、飼い主外の人に対して吠える傾向にあります。毎日散歩している場所が自分のテリトリーと認識し、すれ違う人や犬に吠えかかってしまったり、何かを伝えたくて吠えることも多々あります。この行動は、結果として要求吠えにつながる可能性があるため、仔犬期からのしっかりとしたしつけが必要です。仔犬のうちは、どんなに吠えていても可愛いからといってついつい容認してしまいがちですが、なぜ吠えているのか、その原因を仔犬期からしっかりと探ることが大切です。
吠えの他に、ダックスフンドには獲物をしとめる役割があったため、噛むという行動が本能としてあります。そのためダックスフンドは、噛みつくといった問題行動を起こす場合があります。仔犬期の甘噛みから本気噛みに発展することもあるため、甘噛みの段階でしっかりと噛んではいけないことを教える必要があります。見た目の可愛さから抜群の人気を誇るダックスフンドですが、そのルーツは狩猟犬です。狩猟犬は、飼い主との信頼関係を第一に考えるので、家に迎えたその日からしっかりと主従関係を構築することが大切です。どんなに可愛くても、吠えっぱなしになってしまったり、噛み付きぐせのある子に育ってしまっては、飼い主として失格です。しつけは、仔犬期に社会性を身につけることから始めてください。
ダックスフンドはこんな家族と相性が良いです!
ダックスフンドは、毛質のタイプによって相性の良い飼い主が異なります。ロングヘアードのダックスフンドは3種類のダックスフンドの中でもおとなしく、飼い主と一緒に遊ぶことが大好きです。優しい性格から子供と仲良く遊べることもロングヘアードのダックスフンドの特徴です。
また、ダックスフンドと一緒にアウトドアで活動的に楽しみたい飼い主には、好奇心旺盛で活動的なスムースコートのダックスフンドがおすすめです。
ワイルドな外観のワイヤヘアードのダックスフンドですが、飼い主以外に神経質であったり、気が強く頑固な性格からしつけが難しいとされているため、初めてダックスフンドを飼育する家族には向いていません。