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黒川 栄子さん
ペット栄養管理士、ペット薬膳管理士、APNAペット食育士1級の資格を持つワンコの手作りごはんの専門家。2017年に「わんこのための手作りごはん教室Nerine’s Kitchen」をスタートし、ワンコのごはんに関する情報や手作りごはんのレシピを発信。“頑張らない、気張らない、無理しない”をモットーに、愛犬の健康を考えつつ、飼い主さんが楽しみながら続けられるごはん作りを伝えている。
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揺らぎやすい季節、春春は肝臓と胃腸の調子に注意しましょう
春というと、寒さが落ち着き、穏やかなぽかぽかの陽気をイメージしますね。
しかし、肝臓の検査数値上昇、てんかんや痙攣発作、イライラして吠えが増える、嘔吐下痢、胃炎・腸炎、そこまではいかないけれど、なんとなくおなかの調子が悪い、などの症状が出ているわんちゃんはいませんか?
中医学では春と関係が深い臓器は『肝』とされています。そして中医学でいう『肝』とは、西洋医学での肝臓の働きとは別に、『肝の気の流れを通じて、感情の調節、消化器や自律神経の調整をして、体全体の機能をスムーズにする』という働きもあります。
春の強風は心や体の調子を狂わせる原因ともなります。強風に当たることや気圧の乱高下によって、初めに記載したような不調が出ることが多いのです。HAPPYなイメージのある春ですが、実は人にもワンコにも、かなり体に堪える気候でもあるのです。
特にシニアさんや持病がある子たちは、強風の日や気圧の変化が激しい日にはお散歩は必要最低限にしておうちでゆったりと過ごし、ごはんやおやつは消化のよいものにし、量も控えめにしましょう。
春の手作りごはんは肝や消化器系に効能が届く食材を選びましょう。
春の薬膳は、肝の気の流れをスムーズにし、肝に効能が届く食材や消化器系の働きをよくする食材を選びます。季節薬膳の方針は、人のごはんでもワンコごはんでも基本的に同じですので、飼い主さんのお食事の材料としても参考にもなさってくださいね。
- 肝に効能が届く食材例
- いわし、さば、ぶり、まぐろ、ほたて、牡蠣、うなぎ、ひじき、レバー類、たまご類、黒豆、明日葉、春菊、にんじん、セロリ、トマト、ピーマン、パセリ、ほうれん草、マッシュルーム、しいたけ、黒ごま、クコの実 など
- 肝の気の流れをよくする食材例
- かじきまぐろ、鮭、キャベツ、ピーマン、枝豆、オレンジ、金柑、ターメリック(うこん)、陳皮 など
- 消化器系におすすめの食材例
- 穀類・芋類・豆類全般、あじ、いわし、鮭、鯛、ぶり、牛肉、鶏砂肝、かぼちゃ、オクラ、カリフラワー、ブロッコリー、小松菜、モロヘイヤ、にんじん、えのきだけ、マッシュルーム、りんご など
今回ご紹介するのは、これらの食材を使って作る『牛肉とトマトのチャーハン』です。もしアレルギー等で食べられない食材がある場合も、上記の食材の中から別のもので代用して頂くとよいと思います。
また、4月16日~5月4日は春の終わりの18日間で『春土用』といいます。それまでの春の日々よりも更に消化器系に気を付けたい時期です。春にも春土用にもおすすめのレシピとなっています。
愛犬薬膳ご飯の材料とレシピ春を健やかに!!
牛肉とトマトのチャーハン
牛肉とトマトのチャーハン | |
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牛赤身肉 | 40g |
うずらの卵(茹で卵) | 1個 |
ミニトマト | 中2個 |
ピーマン | 20g |
にんじん | 20g |
マッシュルーム | 1個 |
白ごはん | 40g~50g |
黒すりごま | ひとつまみ |
大葉 | 1/2枚 |
- 体重5キロの成犬(避妊去勢済)の約1食分を想定した量です。
- 牛肉は赤身であれば部位はどこでも構いません。
- (今回はオージービーフのもも肉を使いました。)
- うずらの卵の代わりに鶏卵を使う場合は牛肉を減らしてください。
- うずらの卵は溶き卵にしてチャーハンに混ぜて頂いてもOKです。
愛犬薬膳ご飯の材料とレシピ「牛肉とトマトのチャーハン」の作り方
STEP 1
材料のカットと下拵えをします。
にんじんとマッシュルームはみじん切り、大葉はせん切り、その他の食材はすべて1センチ程度の大きさにカットします。
STEP 2
フライパンに牛肉を入れて色が変わるまで炒め、その後にんじんとマッシュルームも入れて混ぜます。くっついてしまうフライパンの場合は油をごく薄くひいてください。
食材がカピカピになってしまいそうな場合は、少量の水(分量外)を入れて炒め煮にします。
STEP 3
ピーマンとトマトも追加して、火が通るまで炒めます。
STEP 4
食材に火が通ったら、炊いたごはんを加えて混ぜます。この場合もほんの少しだけ水を足すと混ぜやすくなります。
STEP 5
全体がなじむように、よく混ぜます。
STEP 6
お皿に盛り付けて、大葉のせん切りをのせ、黒ごまをひとつまみ散らし、うずらの卵をのせて完成です。
愛犬薬膳・PICKUP食材トマトのチカラ
今回のメイン食材は牛肉とトマトでした。
『牛肉のチカラ』については、『食欲マシマシ!ハンバーグ』のページでご紹介しましたので、今回は『トマトのチカラ』について説明させていただきます。
トマトは緑黄色野菜のひとつ。夏野菜として知られ、実際収穫量が多いのは夏なのですが、実は最もおいしい時期は春と秋とも言われています。
非常に栄養が豊かで、抗酸化ビタミンであるビタミンC、βカロテン、ビタミンEをそれぞれ豊富に含み、これらによる強い抗酸化力は老化防止や免疫力UPにも期待できます。また、トマトの色は赤い色素のリコピンの色で、リコピンはトマトやスイカなどの限られた野菜にしか含まれていません。このリコピンも非常に強い抗酸化力を持ち、がんや心疾患、血管疾患など生活習慣病の予防効果や、脂肪肝や高脂血症を改善する効果もあると考えられています。
薬膳的には、体の余計な熱をとりほてりを改善し、夏バテ防止にも役立ちます。また、水分を補って口や体を潤す作用や、肝気の流れを正常にする作用、機能低下した胃の働きを改善して消化を促し、食欲を高める作用などもあります。これらの作用から、暑い夏はもちろんですが、実は春の薬膳としても非常におすすめの食材です。
このように栄養豊富で人もワンコも積極的に食べたいトマトですが、酸味が強いトマトは苦手なワンコも多いです。特に初めて与える際には甘みが強いものをあげましょう。また体を冷やす力が強いので、冷えが強く、おなかが弱い子には生ではなくお料理に入れて加熱して与えるのがおすすめです。皮や種が消化できずに便とともに出てくることもあります。特に大きな問題はありませんが、気になる場合は皮をむいて与えましょう。ただし皮をむくと栄養価は下がってしまいます。
同じ量で比較すると普通のトマトよりもミニトマトの方が栄養は豊富な為、ワンコたちには少量しか与えないので、できればミニトマトを選んであげるとよいですね。
黒川さんのメッセージシニアワンコさんにはあんかけにしてもGood!
今回は簡単に作れる、春薬膳の『牛肉とトマトのチャーハン』をご紹介しました。実はチャーハンはワンコたちがとっても喜ぶメニューのひとつでもあります。炒めた香ばしいかおりに食欲が刺激されるのですね。ごはんの時に水分をたっぷり与えたい、という場合はお湯を注いでスープごはんにしてあげてください。シニアなどの嚥下が弱っている子には本葛粉や片栗粉でとろみをつけたお湯をかけてトロッとあんかけ風にしてもOK。ぜひ、春の薬膳を意識しながら、おうちの子に合わせてアレンジしたチャーハンをお楽しみください。