純白の被毛が美しいフランス生まれの小型犬「ビション・フリーゼ」は、その愛らしさから歴代の王や貴族たちにも愛されてきた犬種です。モコモコふんわりとしたゆるい巻き毛のアフロヘアと、大きめのつぶらな瞳、まるでぬいぐるみのような容姿が魅力ですよね。
一見、白いトイ・プードルに間違われることもあるビション・フリーゼですが、全く別の犬種です(遠い祖先は同じという説もあります)。そこで今回は、ビション・フリーゼはどんな犬種なのか、歴史や性格、飼い方や寿命などを詳しく解説します。
ビションフリーゼの基本データ
原産国 | フランス / ベルギー |
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サイズ | 小型犬 |
犬種グループ | 愛玩犬グループ(家庭犬、伴侶や愛玩目的の犬G) |
飼いやすさ・しつけのしやすさ | 初級~中級 |
運動量 | 中程度 |
トリミング | 必要(月1回) |
ブラッシング | 2〜3日に1回程度 |
お散歩 | 1日2回×15〜30分程度 |
飼育費用 | 月2〜4万(医療費別途) |
かかりやすい病気・怪我 | 急性湿潤性湿疹、外耳炎、膝蓋骨脱臼、尿路結石、皮膚疾患、流涙症 |
ビションフリーゼの歴史
ビション・フリーゼはフランス原産ですが、祖先はイタリアのルネサンス期に、フランス原産のウォーター・ドッグ(漁用犬)「バルビー」と、マルタの「ビション」(マルチーズ)を交配させて作られたのが起源とされています。
この犬種は、初めはフランス語で「Barbichon/バービション(小さなバルビー犬)」と名付けられました。この系統は「テネリフェ」「ビション・マルチーズ」「ボロニーズ」「ハバニーズ」と4種類に分けられましたが、このうちの「テネリフェ」がビション・フリーゼとなります。その由来は、カナリア諸島のテネリフェ島に船員が持ち込んだワンコがほぼ同じ犬種だったためだそうです。
14世紀にイタリアへ渡ると、愛玩犬として上流階級の人々に愛されるようになり、16世紀にフランスがイタリアを侵攻した後にフランスへ持ち込まれ、ヴァロワ朝第9代王のフランソワ1世や、アンリ3世の愛玩犬となり寵愛されました。上流階級のサロンにも、貴婦人や領主たちがビション・フリーゼを連れてきていました。スペインの巨匠画家、ゴヤの作品にもビション・フリーゼが登場しています。その後、一般家庭でも飼われるようになり、大道芸人たちにも愛され、芸を披露していたなどの記録もあるようです。
第一次世界大戦によって一時は絶滅の危機に瀕しましたが、兵士に助けられた子もおり、しばらくしてベルギーやフランスのブリーダーたちが血統の復活に向けて繁殖を進め、1933年にフランスのケネルクラブに「ビション・フリーゼ」として登録されました(現在は原産はフランスとされていますが、国際獣医師連盟は1960年にベルギーとフランス原産としています)。名前の意味は「Bichon/ビション(飾り又はマルチーズ)」、そして「Frisé/フリーゼ(巻き毛)」です。正式なフランス名は「Bichon á poil frisé/ビション・ア・プワル・フリーゼ」です。
1970年代にアメリカのケネルクラブに公認され、「パウダー・パフ」という綿菓子のような丸いカットスタイルができると、世界中で大人気になりました。日本へ輸入されたのもこの頃ではないかと推測されています。
ビションフリーゼの性格と特徴・飼いやすさ
ビション・フリーゼは陽気で人懐っこく、知らない人やワンコに対してもフレンドリーに接することができ、とくに飼い主にはよく懐きます。賢いので、トレーニングも比較的楽でしょう。その反面、繊細で神経質な部分も見られ、周囲に気を遣い過ぎてストレスが溜まり、無駄吠えをするようになることもあります。
ビション・フリーゼには「ビション・フリッツ」という、突然スイッチが入ったかのように興奮して走り回る特性があります。しばらく走り回ると次第に落ち着いてきますが、原因は解明されていません。ストレスが原因ではないかとの推測もされています。
寂しがりやで留守番も苦手なので、ひとりの時間が長いとストレスを感じやすいです。毎日、家族と一緒に過ごす時間をもつと良いでしょう。そのため、一人暮らしや共働きの家庭には不向きといえます。
運動や遊びが好きなので、ときどきドッグランで遊ばせたり、コミュニケーションをとりながらおもちゃを使って一緒に遊んだりして、ストレスを発散させてあげましょう。また、コミュニケーション上手なので、ドッグダンスなどのドッグスポーツにも向いています。
ビションフリーゼの被毛と種類
被毛はダブルコートで、細く、絹のようにやわらかく、コークスクリュー状にカールしています。
巻き毛のトップコートと、柔らかいアンダーコート毛色は、純白のホワイトで、子犬の頃はホワイトにクリーム(シャンパン)色が混じっていたり、足の先に別の色の被毛が入ったりしていることもありますが、成長するにつれ1歳頃にはホワイト一色になっていきます。
ダブルコートなので気温が高い時期には蒸れやすいため、皮膚病に注意が必要です。
ビションフリーゼの大きさ・体高・体重
「ドワーフ」と呼ばれる胴と足が短くがっしりと安定した体格をしており、筋肉も発達しています。体重は約3~6kg、体高は24~29cmほどです。
ビションフリーゼの体重 | ビションフリーゼの体高 |
---|---|
約3~6kg | 24~29cm |
ビションフリーゼの平均寿命と人間年齢
ビション・フリーゼの平均寿命は12〜15歳といわれています。公式記録ではありませんが、21歳まで長生きした子もいます。ワンコにとってストレスの少ない生活環境や被毛・口腔内のケア、適度な運動、定期的な健康診断を受けさせることなどが、長生きの秘訣です。
人間に換算した場合の年齢は下記の表をご参照ください。
犬の年齢 | 人間に換算した年齢 | 成長ステージ |
---|---|---|
3か月 | 4歳 | 子犬 |
6か月 | 7歳半 | |
9か月 | 11歳 | |
1歳 | 15歳 | |
1歳半 | 19歳半 | |
2歳 | 23歳 | 成犬 |
3歳 | 28歳 | |
4歳 | 32歳 | |
5歳 | 36歳 | |
6歳 | 40歳 | シニア犬 |
7歳 | 44歳 | |
8歳 | 48歳 | |
9歳 | 52歳 | |
10歳 | 56歳 | |
11歳 | 60歳 | |
12歳 | 64歳 | |
13歳 | 68歳 | |
14歳 | 72歳 | 高齢犬 |
15歳 | 76歳 | |
16歳 | 80歳 | |
17歳 | 84歳 | |
18歳 | 88歳 | |
19歳 | 92歳 | |
20歳 | 96歳 |
ビションフリーゼのかかりやすい病気
ビション・フリーゼには特殊な遺伝的疾患もなく、非常に健康的な体質をもつ稀な犬種とされています。
しかし、腎臓や尿路に結晶や結石ができる病気「尿石症」や、涙やけを起こす「流涙症」などの眼疾患に加え、「歯周病」や「膝蓋骨脱臼」などの小型犬がかかりやすい病気もチェックしておき、毎日の健康チェックや定期健診を怠らないようにしましょう。
ビションフリーゼの飼い方・飼う際の注意点
ビションフリーゼの飼い方・飼う際の注意点 1散歩は1日朝夕2回、15〜30分程度でOK
ビション・フリーゼの散歩は15〜30分程度を朝夕2回でも大丈夫ですが、運動神経に優れ、体力もあり活発で、動くことが大好きです。運動は毎日しっかり行い、運動不足にならないようにしましょう。
ビションフリーゼの飼い方・飼う際の注意点 2丁寧に被毛をケアする
ビション・フリーゼのトレードマークでもある純白のふわふわとした被毛は、日々のお手入れが欠かせません。毎日やさしくブラッシングをし、定期的なカットとシャンプーで美しい状態を維持しましょう。
数種類あるカットスタイルから、一部を紹介します。
- パウダーパフカット
- 化粧に使用するパフのようなアフロカット
- テディベアカット
- 耳などのシルエットを丸くした子熊のようなシルエット
- ロングブーツカット
- 足の根本から足先にかけて徐々に太くしていくカット
- パンツカット
- お尻の部分を多めに丸く残したオムツを履いているようなスタイル
- マッシュルームカット
- 顔全体をキノコのようになめらかな三角形型にするスタイル
ビションフリーゼの飼い方・飼う際の注意点 3滑りにくい床材でトラブルを防ぐ
フローリングなどの滑りやすい床の場合、高いところから飛び降りたり走ったりすると滑ってしまい、骨折や脱臼の原因になることもあります。滑りにくい材質の床やカーペットにするなど、工夫しましょう。
ビションフリーゼの飼い方・飼う際の注意点 4粒の小さいフードを与える
ビション・フリーゼは小型犬なので、フードを選ぶ際は小粒のものを選びましょう。また、長毛のため、食後にフードのかすや唾液で口周りが汚れがちです。口周りを嫌がらずに拭かせてくれるよう、パピーの頃からトレーニングをしておきましょう。
ビションフリーゼのお迎えする方法
ビション・フリーゼを家族としてお迎えする際の、2つの方法と料金の相場を紹介します。
ブリーダーさんからお迎えする
ブリーダーさんからお迎えする場合、血統が確かなため、健康面や性格、体格などが予想しやすいメリットがあります。また、お迎え後もブリーダーさんに困った時に相談ができたり、兄弟犬の輪が広がったりとサポートしてもらえる繋がりがもてるのも心強いポイントです。
保護犬のビション・フリーゼを探して里親になる
動物保護施設や動物愛護ボランティア団体などには、繁殖犬を卒業して保護された子や、飼い主の事情で手放されて保護されているビション・フリーゼもいます。気に入った子の里親になり、家族にお迎えすることが可能です。
ビションフリーゼの値段・価格の相場
ビション・フリーゼの子犬の平均価格は約40〜55万円(2023年)ほどです。保護施設などから里親として引き取る場合は、各施設によって定められた譲渡費用がかかります。事前にネットサイトで調べ、問い合わせしてみましょう。
まとめ
ここまで、フランスの王侯貴族にも愛された、綿毛のようなボリューム感のある被毛が印象的なビション・フリーゼについて紹介しました。カットスタイルも多いので、愛犬の個性によっても選べるのが楽しそうですね。
頭も良く、フレンドリーで明るく懐きやすい性格で、飼いやすい家庭犬です。ただ、「ビション・フリッツ」を起こさないように毎日のコミュニケーションが大切です。住まいや食生活などの生活環境が愛犬のストレスにならないよう気を配り、比較的病気にはなりにくい体質ですが、定期的な健康診断は必要です。
お迎えしたときには、たっぷりの愛情を注いであげましょう。お返しに、きっと多くの癒しを与えてくれますよ。