家族としてワンコを迎えようとするときには、ペット・ショップからではなく、動物保護施設や保健所から保護犬を譲り受けるという選択肢があります。
近年、保護犬・保護猫という言葉が周知されるようになりました。環境省では2019年に「譲渡が当たり前の世界に」と、犬猫との共生社会を推進するプロジェクト「つなぐ絆、つなぐ命」が創設されています。
そのプロジェクトでは、保護犬・保護猫が一般の家庭に迎えられるよう、多様な関係者と連携し、協力して保護施設に物資を届けたり、保護犬・保護猫が家庭以外でも活躍できたりするよう支援しています。
保護犬についての認知が向上する中で、「保護犬ってどのようにお迎えできるの?」と疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は、保護犬に会うための譲渡会や里親の条件、費用について解説します。
保護犬譲渡会ガイド里親になる4つの方法
保護犬をお迎えすることになった場合、引き取る人を一般的に「里親」と言います。里親になるには、保護犬と出会える場所を知る必要があります。ここでは、保護犬と出会うための3つの方法を紹介します。
保護犬と出会う方法インターネットで「保護犬募集情報」を探してみる
GoogleやSNSなどで「保護犬 里親」などで検索すると、全国の保護施設や団体が公式サイトやSNSなどで里親を募集しており、可愛い保護犬たちが写真付きで紹介されています。また、全国の保護施設の保護犬を紹介するマッチング・サイトなどもあります。
インターネットから近隣の保護施設のサイトを見つけると、その後の保護犬との面会や譲渡がスムーズですが、全国に保護犬を移送してくれる譲渡サイトもあるので、自宅近くにない場合はそのようなサイトを利用すると良いでしょう。保護犬たちの写真やプロフィール、健康状態などが掲載されているため、ピンときた子がいればお問い合わせすることができます。
保護犬と出会う方法保護犬譲渡会に行ってみる
譲渡会とは、里親募集を保護施設や貸し会場でのイベントのような形で開催するものです。譲渡会のスケジュールは、保護団体の公式サイトやSNSで確認できます。譲渡会の場合は、会場で気に入った子が見つかっても当日連れて帰ることはできません。後日改めて面談後に譲渡されるのが基本的なフローになります。
保護犬と出会う方法保健所や動物愛護センターに足を運んでみる
各自治体にある保健所や動物愛護センターに足を運んでみるのも保護犬に出会う一つの方法です。来所前に譲渡希望者の調査があるので、まずは面接を予約しましょう。来所またはオンラインで、ワンコの飼育に関する基本的なことや、法律の譲渡前講習会を受けた後に、希望の子やマッチングされた保護犬に会うことができます。また、譲渡会を開催している施設もあります。環境省の「収容動物検索情報サイト」には、日本全国の自治体で開催されている譲渡会に関する情報が掲載されているので、お住まいの地域の施設を検索してみましょう。
保護犬と出会う方法保護犬カフェに行ってみる
保護犬がいるカフェに足を運んでみる方法もあります。譲渡会とカフェが合わさったような施設で、さまざまな状況から保護されたワンコたちが過ごしています。そのようなワンコたちと、ドリンクを飲みながら、食べ物を食べながら触れ合える場所です。
また、ドリンクやフードなどの売上は、多くのお店で保護犬のために使われるので、行くだけでも保護犬の力になることができます。もちろん、実際にお迎えしたいと思った場合には、里親になる申し込みが可能です。
保護犬譲渡会ガイド保護犬を引き取る時の条件
ペットショップではすぐにワンコを連れて帰ることができますが、保護犬を家族として迎えるには、里親になる条件をクリアしなければなりません。さまざまな理由で保護された子たちなので、次は必ず幸せになってもらいたいという思いから、よりマッチする里親さんを保護団体さんなどもしっかりと探されているためです。
条件は各施設・各団体によってさまざまですが、下記が代表的な例です。
保護犬を引き取る際の条件の一例
- 18歳以上65歳未満で経済能力がある
- 家族全員の同意が得られている
- 飼育できる環境に住んでいる
- 定期健診や獣医療を受けさせる
- 飼育困難になった時の預け先が確保できる
- 譲渡後の調査、指導を受けることができる
- 犬の飼育スペースの確保
- 自治体への登録
- 狂犬病予防接種、混合ワクチン接種
- 家族に動物アレルギーの者がいない
- 確実な繁殖制限措置
- 外飼いはしない
- 終生飼育の約束
- ペット保険への加入
この他、施設側から面接した保護犬と相性が悪いと判断されれば、その場合は引き取りができないこともあります。また、保健所の場合は譲渡する保健所がある地域に居住していることも条件の一つとなります。
加えて、保護施設、団体等では、トライアルが必要な場合もあります。トライアル後に、お互いの相性に問題がなければ正式譲渡となります。
保護犬を迎える準備保護犬を迎え入れる環境を整えよう
気に入った子が見つかって里親になることが決まれば、お迎えをする準備が必要です。保護犬を迎えるための環境を整えてあげましょう。
里親さんの心構え
まず、一番大切なのは里親さん自身の心構えです。ワンコは、大切な一つの命です。里親となればその子を一生守り、健康に生活させてあげなければなりません。人の思い通りになる生き物ではありませんし、排泄物の処理もしなければなりません。子犬やヤンチャな性格の子は、いろいろなものを噛んだり壊したりすることもあります。また、保護犬のなかには心身ともに傷を負った子もいます。
そのようなことを家族として全て受け入れる覚悟をしなければなりませんが、一緒に生活していくうちにそれも可愛い、一緒にいれて嬉しいと思えるかけがえのない存在になっていくでしょう。
飼育環境面(犬と暮らせる空間と時間)
近年、ワンコは室内で飼うことが推奨されています。酷暑や極寒のなか、外で飼うことは命の危険もあります。そのため、室内で飼うのに十分な広さがなければなりません。また、十分な時間も必要です。
ワンコは本来群れで生活していた生き物で孤独に弱いため、一人ぼっちにされることが苦手です。特に元保護犬の子は一緒にいてあげる時間、かまってあげる時間はなるべく多めにとり、ケージに入れっぱなし、繋ぎっぱなしにするようなことは避けましょう。毎日の散歩も欠かさず必要です。小型犬でも、部屋の中で運動させれば大丈夫というわけではありません。
部屋の中だけでの生活はワンコにとっても非常にストレスとなりますので、必ずお散歩してあげる時間をつくりましょう。
ワンコ用備品(フード、ゲージ、トイレなど)
ワンコのためのベッドやフード・ボウル、ウォーターボウル、室内用トイレとシーツ、ケージ、ハーネスやリードなどを用意しましょう。フードに関しては、それまで食べてきたフードからいきなり新しいものに変えると、お腹を壊してしまうことがあります。保護団体などに指導をしてもらってから購入するようにしましょう。
この他、生活していくうちに必要な玩具やおやつ、洋服など必要だと思うものを揃えていきましょう。また、急病や怪我の際にすぐに連れて行けるように、獣医師や動物病院のチェックをしておくと良いですね。
保護犬譲渡会ガイドかかる費用はどのくらい?
保護犬をお迎えするには、一体どのくらいのお金がかかるのかも気になるところですね。飼育にかかるお金も用意しなければなりません。ここでは、保護犬1頭にかかる譲渡費用と飼育費用がどれほどかかるかを紹介します。
譲渡費用
保護犬を譲渡会や施設から迎える際には、譲渡料が必要となります。保護施設や保護団体では2万円〜6万円くらいまでの譲渡費用が必要とされています。詳細は、各施設のサイトでご確認ください。
保護犬は1頭につき、去勢・避妊手術やその他の医療費、飼育費など多くのお金がかかっています。譲渡費用は、残った保護犬たちに里親が見つかるまでに使用されます。また、保護犬を飼育するのに金銭的な余裕を判断するためにも必要だと考えられます。
保健所の場合の引き取り費用は畜犬登録費がかかり、契約の条件に去勢・避妊手術があれば手術費用の負担も必要となりますが、自治体によっては補助金が出ることもあるので、各自治体のサイトで調べてみましょう。
飼育費
近年のある調査では、ワンコの飼育に必要な平均的月間支出額は13,000円、生涯必要経費はおよそ1,600,000円とされています。リードやハーネス、フード、ベッドやトイレシート、ドッグカート、玩具、洋服、トリミング代、ワクチン代、医療費、ペット保険など、月々の生活費に加えてさまざまなお金が必要となります。
ワンコを家族として迎えて、費用が高すぎて無理ということにならないように、これらのお金を生涯支払えるかどうか、今一度じっくりと考えてみましょう。
まとめ
今回は、保健所や保護団体から保護犬を迎え入れるための方法や条件、費用を紹介しました。里親になりたいと考えている方に、保護犬とのステキな出会いが訪れることを願っています。