ブリーダーさんに聞く、出産から子犬をご家族に引き渡すまでの難しさ。子犬が家族になる前の物語

ブリーダーさんに聞く、出産から子犬をご家族に引き渡すまでの難しさ。子犬が家族になる前の物語

ワンコと暮らす前に

Chihuahua breeder

「す〜し〜ず」宮城ブリーダー

埼玉でチワワ専門ブリーダーとして、チワワを家族のように愛情を込めてブリーディングしているブリーダーさん。是非、ブリーダーストーリーもご覧ください。

今回の取材の背景

ワンコnowaでは、2022年4月から『犬の十戒』を多くの方に知っていただくため、「いつも心に犬の十戒をプロジェクト」をスタートしました。このプロジェクトが、ワンコを家族に迎えようと考えている方が“ワンコと暮らすこと”への理解を深める一助になったらと考えています。
チワワブリーダーのす~し~ずさんもこのプロジェクトに賛同し、子犬を迎えるご家族に「犬の十戒」の冊子を手渡してくれています。
今回、そんなす~し~ずさんに「ワンコの出産」のお話を伺ったのは、ワンコとのこれからの生活に思いを馳せるだけでなく、家族に迎える前のストーリーも知っていてほしいから。
ワンコは、突然この世に現れるわけではありません。その子が生まれてくる背景には、ブリーダーさんの並々ならぬ努力と愛情、親犬の頑張りがあります。さまざまな不安を乗り越え、いくつもの安堵を積み重ねてきた先に、その子の命があるのです。ワンコを育て、ご家族に託しているブリーダーさんの思いを、ぜひ受け取ってください。

ブリーダーの仕事とその役割

す~し~ずさんでは、健康な子を繁殖するため、どのような部分に気を付けていますか?

JKC(一般社団法人ジャパンケネルクラブ)が定めるスタンダードを目指すことです。スタンダードとは、各犬種の標準的な体格やサイズを明文化したもので、チワワは「十分に丸みを帯びたアップル・ヘッドである」「体長は体高よりもわずかに長い」といったように、定められています。
スタンダードから外れて腰が曲がると腰痛につながりますし、ヒザが曲がると歩き方がおかしくなり、パテラなどの不具合が出てきます。スタンダードに近い子の方が健康である可能性が高くなるため、JKCでも定めているのだと思うので、私もなるべく近づけられるように努力しています。

「膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)」を英語で「パテラ」と呼ばれています。膝蓋骨が正常な位置から外れてしまう疾患です。

スタンダードを目指し、どのような工夫をされているのでしょう?

腰が曲がって生まれてきた子やアレルギーなどの疾患を抱えている子は、繁殖から外すようにしています。必ずしも子どもに遺伝するわけではないと思いますが、リスクはなるべく避けたいですし、その子にとっても妊娠や出産は負担になりかねないんですよね。
ただ、健康な親同士でも、骨格が曲がっている子や病気の発症の可能性がある子が産まれることもあります。その場合は両親の組み合わせを変えて、健康な子が産まれる確率を上げられるように工夫しています。

ブリーディングについて

す~し~ずさんはチワワ専門の犬舎ですが、そもそもチワワは何歳くらいから出産できるのでしょうか?

JKCでは、犬種に関係なく、生後9カ月1日以上から6歳までを交配が可能な年齢としています。また、生涯出産回数は6回と定められていて、6歳までに6回産んでいない場合は、7歳まで交配可能です。
ただ、チワワはかなり小さな犬種で、妊娠・出産の負担も大きいので、す~し~ずでは交配は1歳を過ぎてから、出産は最大で3~4回を目安に繁殖を行っています。この判断は、ブリーダーさんによっても変わってくるところです。

犬種ごとに定まっているわけではないんですね。「基本的にチワワは帝王切開で生む」と聞いたことがあるのですが、実際のところは?

自然分娩でも産めます。ただ、チワワは頭が大きい犬種なので、出産時に1匹目の子犬が詰まってしまうことがあるんです。場合によっては、そこで1匹目が命を落としてしまうことも。そのリスクを避けるため、私たちは100%帝王切開で産ませています。もちろん自然分娩で問題なく産める子もいますし、帝王切開には麻酔のリスクもあるので、何が正解ということはないんですよね。

ブリーダーさんの考え方やワンコの状態によっても、変わってくるんでしょうね。病院にかかる費用も、決して安くはないですよね?

妊娠を確認するためのエコー検査から、帝王切開までで、一般的には10万円前後でしょうか。私はまだ経験がないのですが、夜中の出産となると対応できる動物病院が少なく、費用も20万~30万円かかることがあるそうです。ただ、産まれるタイミングは調整できないので、費用はかかっても無事に産まれる方法を選ぶしかないんですけどね。

妊娠から出産までのハードル

チワワの場合、妊娠している期間はどのくらいなのでしょうか?

約2カ月ですね。交配から30日くらいでエコー検査を受けて妊娠を確認し、55日くらいでレントゲン写真を撮影して子犬の頭数を把握します。そして、60日過ぎくらいでの出産が一般的です。
つわりの時期がある子は、食欲が落ちてしまうんですよ。だから、少しでも食べられるように、おいしいごはんやその子が好きなものを用意します。妊娠中に私たちにできることって、そのくらいなんですよね。

居心地のいい環境を整えて見守ることが、ブリーダーさんのお仕事なんですね。出産予定日に向けての準備などはありますか?

私たちの場合は、予定日の数日前から、昼は3時間おき、夜は5時間おきに親犬の体温を測ります。体温が一定まで下がって、再び上がってきた時が出産の頃合いといわれていて、そのタイミングを見極めるためです。
出産が早いと子犬が未熟な状態で産まれてしまいますし、遅いと親犬の体の負担がかかってしまうので、見極めは重要です。親犬によって体温の下がり方や上がるタイミングは違うので、ブリーダーを始めて10年弱の今でも安心できるお産はありません。
体温が下がりきらずに出産が始まったり、ごはんを食べた直後に産気づく子がいたり、親犬によってパターンが違うので、毎回勉強です。予定日の直前は親犬も体の変化で大変だろうし、私たちも不安な日々が続きますね。

いつ産まれてもいいように、待っているんですもんね。

そうなんです。産後は体力が低下して、自分でごはんを食べられない親犬もいるので、食べやすいごはんを探したり、手であげてみたり、食べられたら思いっきり褒めたりして、なんとか食べてもらいます。産後は毛が抜けたり痩せたりしますし、赤ちゃんにミルクもあげているので、お腹が空くだろうな、栄養を摂ってほしいなって。

ワンコの出産において、ブリーダーさんの存在は欠かせないんですね。

人間の手ではどうにもできないことも多いんですよ。一度、帝王切開の手術中に心臓が止まってしまった子がいました。その赤ちゃんも、初乳を飲めなかったからダメなのか、もともと疾患を抱えていたのかわからないけど、生きられなくて。
当時は帝王切開では死なないと思っていたから、すごくショックで、ブリーダーをやめようと思ったんです。その時に、同じチワワの先輩ブリーダーさんから「死を悲しめる人にこそ頑張ってほしい」という言葉をいただいたんです。家族も「1年続けて、それでもやめたい気持ちが変わらないならやめよう」って言ってくれて、続けてみようって。今は続けてよかったって思ってます。
中には、産まれて間もない赤ちゃんが、亡くなってしまうこともあります。その時の親犬の悲しみは、ツラいですね。赤ちゃんを探してキュンキュン鳴く姿は見ていられないので、少しでも気が紛れたらいいなって思いながら、甘やかします。3日くらい経つと落ち着く子が多いですね。

出産は、お母さんも子どもたちも命がけの尊い行為なんですよね。

そうですね。ワンコは安産の象徴とされているので、問題なくポンポン産むと思われていますが、チワワなどの改良されてできた犬種はそう簡単には産めません。この世に存在している1匹1匹が奇跡なんですよね。

飼い主さんに伝えたいこと

お話を聞いているだけでも、とても大変なお仕事だと感じます。一時はやめようと思ったとのことですが、ブリーダーを続けてよかったと思う瞬間は?

新しいご家族に迎えてもらった子たちの成長していく姿を、SNSなどを通じて見られた時ですね。多分、SNSがない時代だったら、とっくにやめてると思います(笑)。近くに住んでいるご家族がワンコを連れて遊びに来てくれることもあるんですが、その子の幸せそうな姿を見ると、新しい家族に迎えてもらって本当によかったって思うんです。

ワンコを介したつながりが続いていくって、家族が増えたようで素敵ですね。ワンコを迎えたご家族やこれからワンコを迎えたいと考えている方に、伝えたいことはありますか?

何よりもまず、家族に迎えたその子を幸せにしてあげてください。その子と出会えたことが、きっと奇跡ですから。
そして、その子がいるということは、お父さんやお母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、その子たちを育ててきた人がいることも、頭の片隅に置いておいてほしいです。ブリーダーさんから迎えても、ペットショップから迎えても、その子には家族がいると考えると、より一層大切に感じられるんじゃないかなって思います。

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