黒川 栄子さん
ペット栄養管理士、ペット薬膳管理士、APNAペット食育士1級の資格を持つワンコの手作りごはんの専門家。2017年に「わんこのための手作りごはん教室Nerine’s Kitchen」をスタートし、ワンコのごはんに関する情報や手作りごはんのレシピを発信。“頑張らない、気張らない、無理しない”をモットーに、愛犬の健康を考えつつ、飼い主さんが楽しみながら続けられるごはん作りを伝えている。
そのほかの黒川さんのレシピはこちらから!
愛犬薬膳ご飯を作る前に『うれしい!』『おいしい!』でテンションアップが大切
みなさんのおうちのワンコたちは、ごはんを楽しみにしてくれていますか?
毎日手作りごはんは大変!という方でも、週末や時間がある日などに手作りしてあげると、ワンコも喜んでくれるのではないかな?と思います。
ごはんは、その内容ももちろん大切ですが、『嬉しい』『わくわく』『楽しい』気持ち、そしてもちろん『おいしい』と感じることが大切。なんと、『ごはん♪ごはん♪』とテンションが上がるだけで、免疫力UPにもつながるとも言われています。
大切なワンコたちとのコミュニケーションの時間のひとつでもある ごはんタイム、飼い主さんもわんちゃんもHAPPYな時間にしてくださいね。
愛犬薬膳を学ぼう梅雨の養生ごはん
今年もジメジメな梅雨の時季に突入しました。
梅雨の時季は、日によって気温差が激しかったり、湿度たっぷりの日が続いたり、雨でおさんぽできなくてストレスがたまったり…。ワンコたちにとっては、ちょっぴりつまらない季節ですよね。
前回、『いわしの春パスタ』の記事で、土用の時季の特徴をお伝えしました。日本の梅雨は、この土用の時季と同じように考えられています。つまり、胃腸などの消化器系に不調が出やすい時季。胃腸炎や下痢嘔吐、膵炎など、消化器系の調子に気をつけながら、冷えたり、食べすぎたりしないよう、おなかに負担をかけないごはんを心掛けます。
また、体内に余計な水分を溜め込まないことも梅雨の時季の大切なポイント。食べ物のチカラで、いらない水分をしっかり出し、湿気に負けない体を作りましょう。
今回ご紹介するのは、梅雨の時季の養生ごはんです。
ひとくくりに『薬膳』と言われますが、本来、『薬膳』とは、調子が悪い時などに食べ物で改善しようとする食事のこと。そして『養生』とは、まだ病気や不調が出る前の状態で、食べ物で体を養い、整えることを指します。今回ご紹介するのは『養生』のためのごはんです。
嘔吐や下痢、胃腸炎などの症状が出た場合には絶食もしくは卵粥のような消化によいものがおすすめです。獣医さんの指示に従ってくださいね。
愛犬薬膳ご飯の材料とレシピ『豚肉のみぞれ味噌スープ』の材料
豚肉のみぞれ味噌スープ ※成犬(体重5kg前後)の1食分 |
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豚肉(赤身) | 30g |
豚レバー | 20g |
大根 | 30g |
なす | 15g |
にんじん | 10g |
キャベツ | 30g |
しいたけ | 1/2個(10g) |
炊いたごはん | 30g |
味噌 | 0.3~0.5g |
大葉(あれば) | 1/2枚 |
- 体重5キロの成犬(避妊去勢済)の1食分を想定した量です。
- レバーが無い場合は、赤身肉50gでも構いません。
- お味噌は入れなくても作れます。
- ごはんはお好みの穀類をお使いください。(撮影では、はとむぎ入り白米を使用)
愛犬薬膳ご飯の材料とレシピとっても簡単!『豚肉のみぞれ味噌スープ』の作り方
STEP 1
材料をカットします。
豚肉と豚レバーはひとくちサイズ、キャベツは1センチ四方、なすは5ミリ~1センチ角、にんじんとしいたけ、大葉は細かいみじん切りにします。大根はおろしておきます。
STEP 2
なすはカットした後、しばらく水にさらします。あまり長時間さらすと、大事な栄養素が抜けてしまいますので、5分ほどでザルにあげておきます。
STEP 3
鍋に水を200~300cc(お好みでOK)入れて火にかけ、軽く沸騰したら豚肉を入れます。
STEP 4
続いて、野菜としいたけを入れて煮立たせ、ごはんとレバーも入れて全体に火が通るまで煮込みます。(全体に火が通ればよいので、入れる順番はあまりに気にしなくてもOK!)
STEP 5
味噌を溶き入れて、なじませます。
STEP 6
火を止め、大根おろしを入れてさっと混ぜます。
STEP 7
器によそい、大葉をちらして完成です。
愛犬薬膳・PICKUP食材豚肉のチカラ
豚肉はワンコにも1年中与えやすいお肉のひとつです。牛や鶏に比べるとアレルギーが出るワンコも少なく、最近では豚肉を使ったドライフードも増えてきましたね。ワンコには、脂質が低いヒレやモモなどの赤身肉、内臓ではレバーなどがよく食べられています。
豚肉の特徴と言えば、なんと言っても、ビタミンB群が豊富なことがあげられます。全ての食材の中でもトップクラスの含有率ともいわれます。ビタミンB群は疲労回復ビタミンとも呼ばれ、たくさん運動した後やストレスがかかった後、元気がない時、夏バテ、病後などにもおすすめのお肉です。また、レバーだけでなく、ヒレなどの赤身肉にも鉄分も多く含まれますので、貧血時にもおすすめです。豚レバーには、亜鉛などのミネラル類も多く含まれます。
薬膳的にも、皮膚や体を潤し、気力体力を回復させるはたらきが代表的です。そのはたらきは消化器系と腎に届き、腎の機能を補い、乾燥による便秘の改善や貧血予防なども期待できます。また、豚レバーは体を温める力があり、そのはたらきは消化器系と肝に届きます。血を補って目や肝臓の働きをよくし、消化器系を健やかにすることが期待できます。
このように栄養たっぷりな豚肉ですが、寄生虫の心配がありますので、生食は避け、必ず加熱して食べさせましょう。豊富なビタミンB群は水溶性の為、加熱すると溶けだしてしまいます。スープにしてスープごと飲ませるか、茹でて与える場合は薄切りにして、しっかり火を通しつつも、加熱しすぎないうちにお湯からあげましょう。
また、体を潤すはたらきが強いので、むくみやすいワンコには、利尿作用のあるお野菜と一緒に摂るとよいでしょう。
愛犬薬膳代用食材梅雨におすすめの代用食材
水分をきちんと摂りながら、不要な水分はしっかり排出することが大切な時季です。余計な水分が溜まると、体の冷え、消化器系の不調など、様々な不調に繋がります。
今回のレシピでは、この時季におすすめで、スーパーなどで入手しやすい食材を使いました。この時季のおすすめの代用食材(体の水捌けをよくする食材、消化器系を健やかに保つ食材など)は以下の通りです。
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豚肉・豚レバー
→ 牛肉、馬肉、鴨肉、牛タン、砂肝、鯛、あじ、すずき、ぶり など -
野菜
→ おくら、カリフラワー、小松菜、さやいんげん、ちんげんさい、セロリ、モロヘイヤ、もやし、枝豆、きゅうり、冬瓜、とうもろこし、水菜、ブロッコリー、マッシュルーム、白菜、アスパラガス など -
ごはん
→ はとむぎ、雑穀、さつまいも、じゃがいも、かぼちゃ など
どんなに栄養価が優れた食材も、毎日同じものばかり食べ続けると栄養は偏ります。『色んな食材を食べる』ことを意識して、食材をかえながら楽しんでくださいね。
黒川さんのメッセージジメジメの季節を元気に乗り越えましょう♪
今回はほんのちょっぴりですがお味噌を使いました。塩分が気になる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は塩分=ナトリウムは、手作りごはんで不足しがちな栄養素のひとつです。もちろん摂りすぎは厳禁ですが、お味噌にはおなかの調子を整え、解毒のはたらきもあります。ただし、持病等でナトリウムの摂取制限がある場合や、与えるのが心配な場合は入れないでお作り下さいね。
暑かったり寒かったり気温差が激しく、湿度も高い梅雨の時季は、高齢のワンコたちやおなかが弱いワンコたちには心配な季節ですよね。しかも、梅雨の後には暑い夏も控えています。食べすぎないこと、おなかを冷やさないこと、ストレスをためないことに注意しながら、消化器系に働きかける食材のチカラを活用して、元気に乗り越えましょう!
今回の養生ごはんは梅雨のはじめに特におすすめです。ぜひお作り頂けると嬉しいです。