nowa days. 04

写真館の看板犬の彼らは
いいものを届けるために
頑張ってる同志

photographer

平間 至×しろちゃん×くろちゃん

タワーレコードのキャンペーン「NO MUSIC, NO LIFE.」の写真をはじめ、さまざまなアーティストを撮影してきた写真家・平間至さん。2015年に東京都世田谷区でオープンした「平間写真館TOKYO」では、しろちゃん・くろちゃんという看板犬がお出迎えしてくれます。「至ちゃん・しろくろちゃんと撮ろう!撮影会」を開催するなど、平間さんの家族であり写真館のスタッフでもあるしろちゃん・くろちゃん。「俺としろくろちゃんの関係ってなんなんだろう?」と話す平間さんに、ワンコとの暮らしについて伺いました。

仲良しの兄弟犬が
選んでくれた我が家

しろちゃん、くろちゃんとの出会いのお話から、伺っていきましょうか。

僕と元Dragon AshのATSUSHIがやっている音楽とアートと食のイベント「GAMA ROCK」がきっかけです。 ATSUSHIがもともと保護犬活動をしていたんですよ。そのつながりで、「GAMA ROCK」では2012年の初回から、大阪の動物保護施設・ハッピーハウスのブースも設けていたんです。そこの看板犬が兄弟のしろちゃん、くろちゃんでした。

しろちゃんとくろちゃんは保護犬だったのですね。

そうなんです。その頃に僕の娘が「犬を飼いたい」と言っていたので、ATSUSHIの紹介で千葉の保護施設に行ったんですけど、運命的な出会いはなくて。そのタイミングで、ハッピーハウスから「平間さんの家ならしろくろちゃんしかいないでしょう」って提案していただいて、2013年末に我が家に迎え入れたんです。

かわいい子たちだなと思ってはいたけど、ハッピーハウスの看板犬だったから、選択肢に入ってなかったんですよね。僕たちが選んだわけではなく、しろちゃんとくろちゃんが僕らを選んでくれたんだと思います。

平間家に来る運命だったのかもしれませんね。おとなしい子たちですが、最初から手がかからなかったですか?

迎えた頃は3歳くらいでしたけど、すごく静かないい子たちですね。看板犬として人と触れ合っていたこともあって、ほとんど吠えたり噛んだりしないので、保護犬ですけど大変だと感じたことはありません。

彼らは基本的にケンカもしないけど、一度だけしろちゃんのご飯をくろちゃんが食べちゃって、しろちゃんが怒って、立ち上がってケンカした時があったんです。僕が割と本気で叱ったら、2匹とも「すいません!二度としません!」ってしょんぼりしたことは印象的です(笑)。

本当に兄弟で仲良しなんですよ。人間2人と2匹で散歩して、たった50メートルくらい離れて歩いただけで、再会した時のはしゃぎっぷりがすごいですからね。3年ぶりに再会したくらいの喜び方をしますから。

想像しただけで愛おしいですね。ワンちゃんを迎えての生活で、困難なことはなかったですか?

全然ないですね。僕自身、小さい頃から実家にワンちゃんがいたんですよ。僕が生まれた頃に父がボクサーを飼い始めて、その後もケアーンテリアがいたり、歴代の子が何匹もいます。だから、ワンちゃんと暮らすことは自然でしたね。

性格は正反対だけど
仲がいいしろくろ兄弟

しろちゃん、くろちゃんとの生活は、どんな日々ですか?

朝と晩にお散歩するんですけど、休みの日は散歩のついでにしろちゃん、くろちゃんも一緒にお茶したりご飯食べたりできるようなお店に行くことが多いです。それだけで、1日終わっちゃいますね。のんびりする時間が増えました。

身近にかわいらしい存在がいると、日常がだいぶ変わる気がします。写真館の中を行き来する時に2匹がいると必ず撫でるんですよね。それだけで気持ちが落ち着くというか。

日常を変えてくれる存在ですよね。今は写真館の看板犬を務めているそうで。

写真館に写真を撮りに来る人って、どこか緊張してるんですよね。しろちゃん、くろちゃんがいると、その緊張をほぐしてくれる。絶妙なタイミングで2匹が勝手に撮影に入り込んで、場を盛り上げてくれることで、いい写真が撮れることも多いんです。

2匹はおとなしいので、ワンちゃんが苦手な人でも「しろくろちゃんは大好き」と言ってくれますね。1歳くらいのお子さん連れのお客さんも多くて、その子が初めて触れ合うワンコがしろちゃん、くろちゃんってこともあります。

しろちゃんはちょっと繊細なので、子どもに追いかけられるとバックヤードに逃げちゃうこともあるんだけど、そういう時にくろちゃんが「俺がいれば子どもも落ち着くでしょ」って感じで子どもの相手を一手に引き受けて、頼もしいんですよ。

兄弟でも、性格や気質は全然違うんですね。

2匹いるからこそ、ワンちゃんも性格がそれぞれ違うことを実感するし、相乗効果でかわいく感じますね。写真館の隣のテラス席のあるカフェで、しろちゃんは1人でいる女子に近づいて、「俺のこと撫でていいんだよ」ってナンパするんですよ(笑)。一方、食べ物に貪欲なくろちゃんは、くんくん嗅ぎ回って食べ物を探してますね(笑)。

そんなところでも違いが(笑)。

2匹を見てると、自分と似てるなって思うんです。見た目はくろちゃんで、中身はしろちゃんかな。くろちゃんは人間でいうヒゲともみあげの部分が白いので、僕と色が反転してるし、顔も似てきたんです。ドライブの休憩中にくろちゃんが運転席にいると、「俺かな!?」って思ったりします。

寂しがり屋で甘えん坊、ちょっと神経質なしろちゃんの性格は、僕と近い気がするんですよね。だから、しろくろちゃんを足すと僕になる。2人が僕の分身って感覚です。

唯一の夢は
しろくろちゃんと一緒に寝ること

平間さんにとって、しろちゃん、くろちゃんはどんな存在ですか?

写真館の中では、対等な感じがするんですよね。人間のスタッフも同様ですけど、いいものを届けるために同じ場所で頑張ってる同士みたいな感覚かな。

最近、くろちゃんは写真館の隅っこで寝てることが多いんですけど、その姿を見ると祖父を思い出すんですよね。宮城で父が写真館をしてた頃、祖父が写真館のイスに座ってうとうとしてることがよくあったんです。その時の景色に似てるなって。

インタビュー中の今も、くろちゃんは心地良さそうに寝ていますが、まさにこの姿ですね。2匹との生活で、今後したいことや抱いている夢はありますか?

僕は夢みたいなものを持つタイプではないんですけど、唯一ある夢は、しろちゃんとくろちゃんと一緒に生活できる家に住むことですね。

今、自宅は写真館の上にあるんですが、2匹は写真館に住んでる状態なので、寝る時は別々なんです。一度だけ写真館で一緒に寝てみようと思ったんですけど、仕事場だと僕が寝るモードになれなくて、夜中の3時くらいに家に戻ったことがあって。

都市部だと、ワンコ2匹と一緒に住める物件を探すのも大変なんですが、いつか一緒に寝られる日が来るといいなと思っています。

出会うべくして出会ったのであろう平間さんとしろちゃん、くろちゃん。 2匹の同士がそばにいるからこそ、楽しく穏やかに仕事ができる。
そんなことを感じさせてくれるやさしい時間でした。

Profile

平間 至

1963年、宮城県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、写真家イジマカオル氏に師事。躍動感のある人物撮影で、今までにないスタイルを打ち出し、写真から音楽が聞こえてくるような作品を追求。多くのミュージシャン撮影を手掛ける。生まれ故郷の塩竃市にて「塩竈フォトフェスティバル」や「GAMA ROCK」を開催。2009年にレンタル暗室&ギャラリー「PIPPO」をオープンし、フィルム写真の普及活動を行う一方、2015年には祖父の代から続く写真館を「平間写真館TOKYO」として再開した。

イベント情報
「平間至写真展 すべては、音楽のおかげ」
“写真と音楽”をテーマに、平間氏の初期作品から平間写真館TOKYOで撮影された作品まで、約180点を展示。2022年4月2日(土)〜5月8日(日)京都・美術館「えき」KYOTOにて開催。

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