entertainer
やついいちろう×こぶしくん
お笑いコンビ「エレキコミック」としての活動はもちろん、音楽、俳優、執筆など、その活躍は多岐にわたるやついいちろうさん。愛犬のパグ・こぶしくんとのおでかけのために免許を取ったり、YATSUI FESTIVAL! 2020では犬用のフェスTシャツも作ったりと、ファンの間では愛犬家としても知られています。一緒に暮らし始めて10年。こぶしくんとの出会いのきっかけや、日々の生活。こぶしくんに対する想いなどについて伺いました。
NHKで放送していた『電脳コイル』というアニメに電脳犬の“デンスケ”というキャラクターがいるんです。本当はいないけど、VRみたいなメガネをつけているときだけ見えるという。それがかわいくて、自分もエア(架空)で犬と暮らしてみようと。まあフリですよね。
そのエア犬に”こぶし”って名前をつけていました。
『電脳コイル』のデンスケがパグっぽくて、飼うならパグがいいなと。
パグという名称の由来が、ラテン語でにぎりこぶしを意味する“パグナス”からきているという説がありまして。にぎりこぶしみたいな顔をしているからと。だから”こぶし”になりました。
3か月くらいそんな生活を続けていると、そのうち実際にいるような感じがしてくるんです。元気なフリをしていると元気が出てくるみたいなもので。
ある年の瀬に、奥さんと一緒に街をぶらぶらしていると、ペットショップがあって、なんとなく入ってみたら、そこにこぶしがいたんです。エア犬の「こぶし」とイメージがすごくぴったりで。ケージに書いてある誕生日を見ると11月12日。奥さんの誕生日が11月13日で、僕が15日。結婚記念日が14日。12日から15日まで日が並ぶ。これは!と思ってその場で連れて帰りました。
犬というか哺乳類を飼うのはこぶしが初めてだったので、最初は何も知りませんでした。ペットショップに言われたとおりの餌やグッズを買って、その他いろいろ全部言われたとおりにしましたが、知識があれば必要ないものも多かったなと。
でも一番大変だったのは、家に来てからすぐに下痢をしたこと。下痢をしたのが大晦日で、やっと見つけた病院に連れて行ったら、緊急扱いということで5万円ぐらいになってしまって。もうこれは無理だ…と思いました。でもそこからは病気らしい病気はほとんどしませんでした。
人懐っこくていい子ですね。初めてあった人にもお尻をくっつけてくる。人間が自分のことを好きだとわかっているというか。そのかわり犬はあまり好きじゃないようです。犬と仲良くしているところはあまり見たことがないですね。基本、犬のことは無視しています。散歩していて吠えてくる犬がいても一切無視。ちょっと知り合いになった犬には、隙を見てお尻をかごうとはしています。
必要なワクチンを打ち終わってからは、いろいろなところにでかけました。犬って生後4か月くらいまでの環境はそのまま受け入れられるようで、なるべくその期間に刺激の多いところに連れていこうと思ったからです。子供のいるところとか、犬がたくさんいるところとか。だから、今でもほとんど吠えないし動じないですね。うるさいところも、地震があっても大丈夫。留守番も得意です。
小さい頃はコントライブのステージ上に連れて行って、500人のお客さんの前に出したこともありました。そのときもおとなしかったですね。
どういう存在なんだろう…。わからない。側から見たら息子とか家族とかかもしれないですけど、息子だなとか家族だなと思ったことはないです。自分に子供がいないから、わかっていないだけかもしれないですね。たまたまみんなで一緒に住んでいるみたいな。こぶしを人間扱いしたことはないですね。やっぱり犬だなって思っています。一緒にベッドで寝ているし、生活的にはほぼ人間と一緒ですけど…。かわいいはかわいいんだよな。癒し…なのかな、でも癒されたいなら寝ているほうがよほど癒されますけどね。あったかいのがいいのかな。初めて抱いたときにあったか〜と思ったのは覚えています。
こぶしが僕に与えてくれているのは肯定感ですよね。すぐ近寄ってくるし、僕といるとうれしそう。見ているだけでかわいいし。犬といると、暇だなとか、やることがない、ということがないんです。散歩してあげようとか、ごはんをあげようとか。ただ撫でるだけでも、こぶしにいいことしてあげたなって思えるんです。犬は裏がないから、やりたいことが明確。それをしてあげれば喜んでくれる。当たり前のことをしているだけだけど、自分以外の存在を喜ばせることが確実にできる。毎日何かいいことをしてから眠れる。そこがいいんじゃないですかね。
こぶしがいなかった頃の方が生活はシンプルでしたね。部屋も汚れないし壊れないし、いろいろ綺麗なまま。あちこち毛だらけになるしね。犬と暮らしていない人にとってはマイナスに思えることばかり。でも、全部なんとも思わないんですよね。だからいいんだよ、というものになる。不思議ですよね。
こぶしを飼い始めたときに、参考になりそうなものを読んでいたら、誰かが「老犬が一番かわいい」と書いていたんですよ。「子犬や若い犬はもちろんかわいいけど、老犬のかわいさにはかなわない」と。その「老犬がかわいい」という気持ちを経験してみたいなと。
こぶしは生まれて1か月ちょっとで家にきて、ずっと見ていて、老犬になったときにどれくらいのかわいさになるだろうって。それが結構楽しみです。10年一緒にいて、今が一番かわいいですよ。年々かわいくなる。老犬がかわいいっていうのは、あながち嘘じゃないですね。
実は今、犬の老後をテーマにしたエッセイを書いているんです、こぶしの本を。絶賛執筆中です。
10年一緒に暮らして、年々愛情は増すというやついさん。
「家族」や「息子」では括れない、
「やついさんとこぶしくん」の特別な関係性を感じることができました。
1974年11月15日、三重県出身。1997年、相方の今立進とお笑いコンビエレキコミックを結成。コンビでバラエティ、ラジオ等に出演する他、俳優として、ドラマや映画にも出演。自身が主催する音楽フェス「やついフェス」も2021年10年を迎えるなど、多方面で精力的に活動。2022年、愛犬、こぶしくんとの暮らしを綴ったエッセイを上梓する予定。
公演情報
2022年2月9日(水)〜13日(日)エレ片コントライブ「燃えろコントの人」を東京・博品館劇場にて開催。