ワンコを家族に迎えたら、まず行うべきはワクチン接種。
犬の感染症の中には、感染力が高く重症化しやすいものや、後遺症が残るものなどがあります。
あらかじめワクチンを接種しておくことで、感染症の発症予防、症状軽減が期待できるのです。
定期的なワクチン接種は、ワンコと長く生活をともにするためにも必要なもの。
一緒におでかけする前に、まずはワクチンの基礎知識を身につけ、動物病院で予防接種を受けましょう。
バンブーペットクリニック
藤間 友樹 院長
バンブーペットクリニック院長。大学卒業後、都内の動物病院などで経験を積み、2014年にバンブーペットクリニックを開院。飼い主に病状や治療計画、投薬などを丁寧に説明することをモットーとしている。飼い主の間では「手術の痕がきれい」と評判。
犬のワクチンにはどんな種類があるの?
犬のワクチンは大きく2種類に分類されます!
- 狂犬病ワクチン
- 狂犬病を予防するためのワクチンで、年1回の接種が法律で義務づけられています。
- 混合ワクチン
- 接種が推奨されているコアワクチンと飼育環境に合わせて摂取するノンコアワクチンを組み合わせたワクチンで、さまざまな感染症を予防するためもの。接種は任意です。
ワクチンの種類
子犬を家族に迎えたら、まずはワクチン接種の計画について、かかりつけの動物病院に相談しましょう。
ドッグランやペットホテルの中には、ワクチン接種が利用の条件となっているところもあるので、愛犬のためにもお忘れなく。
狂犬病ってどんな病気?狂犬病の症状は?
すべての哺乳類が感染する病気で、致死率はほぼ100%。恐ろしい感染症です。
狂犬病は、犬に限らず、すべての哺乳類が感染する人獣共通感染症。狂犬病ウイルスを保有している動物に咬まれたり、傷口を舐められたりすると感染します。発症すると興奮しやすくなる、錯乱状態になるなどの症状が現れ、ほぼ100%死に至る恐ろしい病気です。
万が一、人や他の動物に咬みつく可能性もあるので、年1回の狂犬病ワクチンの接種が義務づけられています。
飼い主の義務である「畜犬登録」を行うことで、年に一度、狂犬病ワクチン接種のお知らせが届くため、うっかり忘れてしまうことがなくなります。
子犬を迎えたら、必ず住んでいる自治体で登録を行いましょう。
狂犬病ワクチンはどこで接種できるの?値段は?ワクチン接種の間隔は?
自治体の集団接種、または動物病院で受けられます!
生後90日以上の犬は、年1回の狂犬病ワクチンの接種が義務づけられています。
接種の方法は以下の2つ。
- 自治体による集団接種(時期:4〜6月)
- 畜犬登録を行うことで毎年1回届く「狂犬病予防注射のお知らせ」には、自治体ごとに定められた
ワクチン接種の日程(狂犬病予防週間)と会場が記載されています。
狂犬病予防週間は4月から6月の間の1週間程度で、地元の公園などで実施されることがほとんど。
費用は3000円程度です。 - 動物病院での接種
- 動物病院であれば、年間通じていつでも接種が可能です。
飼い始めたら動物病院で接種してもらいましょう!
費用など動物病院によって異なるので、事前に確認しましょう。
いずれの方法でも、接種後に「注射済票」が交付されます。
ドッグランやペットホテルで必要になる場合があるので、畜犬登録で交付される「鑑札」と一緒に、首輪につけておくようにしましょう。
狂犬病ワクチン接種スケジュール
生後90日を過ぎたら、狂犬病ワクチンの接種は義務です。
1年間隔で必ず接種しましょう!
犬の混合ワクチンってどんな感染症が防げるの?
致死率の高い複数の感染症を防ぐことができます。
混合ワクチンとは、複数のワクチンが組み合わせられたもので、いくつかの感染症に対する免疫力をつけられるものです。
構成されているワクチンは、致死率の高さからすべての犬が接種するよう推奨されている「コアワクチン」、飼育環境に応じて接種が必要になる「ノンコアワクチン」があり、組み合わせによって2種から11種まで用意されています。
製薬会社によって含まれるワクチンが異なる場合もあるので、下の表はあくまで一例です。
ワクチンを打つことで、犬を感染症のリスクから守れます!
人間のインフルエンザの予防接種と同じものと考えましょう。ワクチンを接種したからといって、100%感染を防げるわけではありませんが、感染した時には症状を軽減させられます。
また、狂犬病ワクチンと同様に、ドッグランやペットホテルで予防接種証明書を求められることもあります。感染症から守るだけでなく、犬と暮らす上でのマナーとして、毎年の予防接種を欠かさないようにしましょう。
犬の混合ワクチンはどの種類を接種したらいいの?混合ワクチンの値段は?
一般的には5種以上。かかりつけの動物病院への相談も忘れずに!
混合ワクチンは、コアワクチンを網羅した5〜6種もしくは7種以上から選ぶのが一般的です。
犬の健康状態や飼育環境によってどれを選択すべきか変わってくるので、必ずかかりつけの動物病院で相談して決めましょう。
ワクチンの種類が増えると、ワクチンアレルギーを起こす可能性が高くなります。
ただし、重篤なアレルギー症状は、接種から数分で現れることがほとんどなので、病院にいる間に適切な処置を施してもらえることでしょう。
帰宅後に元気がなくなる、顔が腫れる、嘔吐や下痢をするといった症状が現れた場合は、接種した動物病院に連絡してください。
午前中に接種を受けると、万が一の時にもその日のうちに処置してもらえるので、安心ですよ。
コアワクチンを網羅した5〜6種、7種以上から選ぶのが一般的!
犬の混合ワクチンの値段・費用について
犬の混合ワクチンの費用は動物病院によって異なりますが、大体下記が平均的な価格になります。
2種、3種の混合ワクチンであれば3,000円〜5,000円程度。5種以上ですと、6,000円〜10,000円程度。またワクチン接種は病気の治療ではなく「予防」になるため、ペット保険の対象外となります。
子犬にもワクチンが必要なの?
生後2~3カ月で免疫がなくなるため、ワクチンの接種は必要です!
通常、子犬は生後8~12週で、母親から譲り受けた免疫力がなくなります。そのため、生後8週頃からワクチン接種を始めると、体内に抗体が作られ、免疫力を獲得できるのです。
生まれて間もない子犬は、2~3回接種する必要があります。1回だけだと、しっかりと抗体が作られない場合があるからです。
また、抗体は時間が経つと減少してしまうため、年1回の予防接種を忘れずに行いましょう。
犬の狂犬病ワクチンと混合ワクチンの接種間隔
(子犬の場合・成犬の場合)
0歳の子犬の
ワクチンスケジュール
成犬の
ワクチンスケジュール
1〜3年の理由については07の章をご覧ください。
狂犬病の証明書が早く必要な方は、先に狂犬病ワクチンを打ち、1週間空け混合ワクチンを打つというスケジュールも可能です。詳しくはかかりつけの動物病院にご相談ください。
負担が大きくなるため、混合ワクチンと狂犬病ワクチンの同日の接種はできません。
1カ月以上空けて、それぞれ接種しましょう。
犬のワクチン接種は毎年必要なの?
ワクチンの接種間隔について
毎年か3年に1回か、かかりつけの獣医さんと相談して決めましょう!
世界で猛威を奮っている新型コロナウイルスの影響を受けて皆様のワクチンに対する意識も高まっており、接種の必要性を問われる機会が増えてきました。
世界的に適用できる犬と猫のワクチンに対するガイドラインの作成を目的とされた【世界小動物獣医師会(WSAVA)ワクチネーションガイドライングループ(VGG)】の指標を要約すると、子犬の時期にコアワクチンを複数回、最後の回が16週齢以降になるように接種し、次いで6ヶ月齢または12ヶ月齢で追加接種することが望ましいとされています。
それ以降はコアワクチンについては3年毎に打つこと推奨しています。この「3年に1度で良い」というワードだけが一人歩きをし、毎年接種するべきなのか?と問い合わせを受けることがよくあります。
確かにコアワクチンについては経験的に判断して毎年接種する必要はないように思います。
しかし5種以上に含まれるノンコアワクチンの免疫持続期間は一般的には1年であり、抗体検査をすることもできないため、毎年の接種が必要な環境にある場合はVGGも1年に1度の接種を推奨しています。
またトリミングやドッグラン、宿泊施設などを利用する場合も1年以内のワクチン接種証明書を提示するよう求められます。
5種以上の混合ワクチン
なるべく体の負担にならないようコアワクチンに対しては抗体検査を行うことでワクチン接種をするべきか否かの判断をすることができます。しかし、先ほども述べたようにノンコアワクチンについては抗体検査を行うことができず、1年で効果が切れると言われています。また、その抗体検査を結果をもってワクチン接種証明書の提出を求められる施設の利用ができるかどうかもまだまだ不明瞭です。
以上のことから、毎年接種するという選択に落ち着くことが多いです。ですが、最近では5種に含まれるノンコアワクチンであるパラインフルエンザ単体のワクチンも発売されましたので、今後は3年に1度のコアワクチン接種と毎年のノンコアワクチン接種という方針も一般的になってくるかもしれません。
まとめ
まとめると、短絡的にワクチンは3年に1度で良いは言えませんし、環境や体調によって変わってきますので、ネットの情報に踊らされずかかりつけの獣医さんとよく相談し、ワクチンを上手に使って大切な愛犬はもちろんのこと、みんなで正しく予防をし、地域のワンちゃん達を守ってあげてください。
ワクチンを接種する前の注意点は?
接種しない方がよい場合は?
体調が悪そうな日は、動物病院で相談を。
下記のチェックリストに当てはまる場合は、ワクチンの接種を避けた方がいい場合があります。
動物病院で伝え、予防接種ができるか判断してもらいましょう。
下記に当てはまる場合は、ワクチン接種を控えましょう。
- 下痢や嘔吐、くしゃみなど、体調が悪い
- 元気がない、疲れている
- 旅行から帰ってきたばかりである
- 妊娠中である
※心臓病などの持病がある子や高齢の子の場合は、かかりつけ動物病院で相談しながらワクチンスケジュールを決めましょう。
体調が悪い時は、獣医から「今日は接種をおすすめできない」と診断される場合がありますが、「今年は打たなくていい」ということではありません。
体調が回復したら、予防接種をしてもらいましょう。
ワクチンの副作用はあるの?
ワクチン接種の当日に気をつけるべきことは?
安静第一。
激しい運動や旅行は控えましょう。
ワクチン当日は、犬が元気な状態かを確認してから動物病院へ。
接種後に体調が悪くなる場合もあるので、接種してから午後様子をみれるよう、なるべく午前中に動物病院へ行くようにしましょう。
接種後は、体がダルくなってしまうことがあるため、激しい運動やシャンプー、トリミング、旅行など、興奮してしまうことは避けましょう。普段通りのお散歩であれば、問題ありません。
基本的には、かかりつけの動物病院の指示に従いましょう。