アメリカの漫画『ピーナッツ』の主人公チャーリー・ブラウンの飼い犬「スヌーピー」のモデルがビーグル犬ということはご存じでしょうか。これは、1950年に作者が漫画を描き始めた当時のビーグルの人気を反映しています。当時のジョンソン大統領はホワイトハウスに滞在中、数匹のビーグルを飼っていたそうです。
イギリス原産のビーグルは、アメリカンケネルクラブの「人気犬種ランキング」でも常にベスト10入りが続く犬種です。現在は家庭犬としてだけではなく、臭覚に優れているため空港の検疫探知犬としても活躍しています。今回は、そんなビーグルにはどのような歴史があるのか、性格や飼い方、気をつける病気、寿命などを紹介します。
ビーグルの基本データ
原産国 | イギリス |
---|---|
サイズ | 中型犬 |
犬種グループ | 嗅覚ハウンド(大きな吠声と優れた嗅覚で獲物を追う獣猟犬) |
飼いやすさ・しつけのしやすさ | 初級~中級 |
運動量 | 中程度 |
トリミング | 不要 |
ブラッシング | 2〜3日に1回程度 |
お散歩 | 1日2回×30分〜1時間程度 |
飼育費用 | 月1.5〜2万(医療費別途) |
かかりやすい病気・怪我 | 椎間板ヘルニア、股関節形成不全、誤飲・誤食、外耳炎、クッシング症候群 |
ビーグルの歴史
ビーグルの歴史は、古代ギリシャに起源を持つワンコの祖先から始まります。現代のビーグルと同じような大きさ、目的(狩猟)の犬は、古代ギリシャの5世紀まで遡ることができます。
8世紀には、セント・ユベール・ハウンドと呼ばれる、センス・ハウンド(狩猟に使われる猟犬)種がいました。このセント・ユベール・ハウンドから、新しい犬種としてタルボ・ハウンドが誕生したそうです。タルボはほとんどが白い被毛で、非常に深い吠え声を持っていました。狩猟には不向きな犬種で、走るのが遅いのが特徴です。
11世紀に、イングランド王ウィリアム1世がタルボをイングランドに持ち込みます。その後、タルボはグレイ・ハウンドと交配されたといわれています。これは、タルボをより速く走らせることを目的としていました。この新しい犬種はサザン・ハウンドと呼ばれ、現在のビーグルの祖先と考えられています。
ビーグルは1300〜1400年代に英国王室で非常に人気がありました。エドワード 2世とヘンリー7世は、どちらもビーグルの群れを飼っていたそうです。
1700年代にはウサギなどの小動物を狩るために、長く柔らかい耳を持つ犬種とマズルが尖った小さい犬種が交配され、キツネ狩りが盛んになると、この2つの犬種をフォックス・ハウンドと交配させ、「完璧な」狩猟犬を作りました。
1830年、イギリスのフィリップ・ハニーウッド牧師がこの犬種の繁殖を始め、これが現代のビーグル種の基礎となったとされています。最初に作られた新しいビーグルは現在のビーグルとは異なり、純白の被毛を持っていました。
さらに、トーマス・ジョンソンという人物が、より優れた犬種を作ろうと優れた外見と狩猟能力を持つビーグルの作出に取り組みます。そして1840年代には、ビーグルの標準的なタイプができることとなります。
そして1890年にビーグルクラブが結成され、ビーグルの最初のスタンダードが確定されました。
アメリカのリチャード・ロウェット将軍がイギリスから数頭のビーグルを輸入し、繁殖した子たちが最初のアメリカンスタンダードのモデルとなったといわれています。ビーグルは1884年にアメリカンケネルクラブに犬種として認められ、20世紀には、大人気の犬種として世界中に広まりました。
ビーグルの性格と特徴・飼いやすさ
ビーグルは人懐っこくてフレンドリーで愛情深く、非常に忠実です。どんな年齢の子どもにもよくなつき、パピー時代は何時間でも遊び回ったり、転げまわったりできます。高学年の子どもにとっては、ビーグルは親友となることもできるでしょう。
性格は、小柄な体格の割にとても勇敢で、危険を察知すると躊躇なく大きな声で吠えて飼い主に警告を発します。また、常に警戒心が強く鼻で変化を察知するため、優れた番犬として活躍し、家の近くや敷地内に人がいるときは必ず知らせてくれます。
そのほか、狩猟犬としての歴史から追跡本能が強いため、ウサギ、ハムスター、モルモット、フェレットなどの小動物を飼うことはおすすめしません。もしすでに小動物を飼っている場合は、ビーグルの手の届かないところに置いておくと良いでしょう。
ビーグルの被毛と種類
ビーグルの被毛は、光沢のある密集した短毛のダブルコートです。
毛色は尻尾の先と、胸と腹部、四肢が白色で「ハウンドカラー(猟犬によく見られる白色、褐色、黒色の組み合わせ)」と「レッド&ホワイト」「レモンカラー」があります。
白とさまざまな色合いの茶色で構成される3色の短い被毛を持っています。タン、ブラック、ホワイト、レッドブラウン、ペールレモンなど、トリコロールカラーの組み合わせもあります。白い尻尾が人気です。
ハウンドカラー
トライカラーとも呼ばれ、白色をベースに、茶色や黒色のはっきりとした斑模様が見られ、頭部や耳に茶色、背中からしっぽにかけて黒が出るパターンがよく見られます。
レッド&ホワイト
白色と赤みがかった茶色の2色です。レッドの濃さには個体差があり、レッドであってもレバー色は含まれないので注意が必要です。
レモン&ホワイト
レモンカラーとも呼ばれ、レッド&ホワイトよりもブラウンが薄く明るい毛色です。やはり班の色には個体差があります。鼻の色がレバーからピンクと明るくなるという特徴があります。
ビーグルの大きさと体高・体重
ビーグルは中型犬で、成犬の平均的な体高は33~38cm、平均体重は7~12kgです。
ハウンドの中では最も小さいとされています。全体的に四角い体形で筋肉や骨格はしっかりたくましく胸は厚く体力とスタミナもあります。アメリカでは40cm以下を15インチ、33cm以下を13インチとし2サイズに分けられています。
ビーグルの体重 | ビーグルの体高 |
---|---|
約7~12kg | 33~38cm |
ビーグルの平均寿命と人間年齢
ビーグルの平均的な寿命は12〜15歳ですが、最高齢はなんと28歳です。人間の年齢に換算すると148歳となります。
必ず室内で飼育し、ビーグルにとってストレスの少ない生活環境と栄養、健康管理の徹底、定期的な健康診断を心がけることにより、長生きできる可能性もあります。
ビーグル人間に換算した場合の年齢は下記の表をご参照ください。
犬の年齢 | 人間に換算した年齢 | 成長ステージ |
---|---|---|
3か月 | 4歳 | 子犬 |
6か月 | 7歳半 | |
9か月 | 11歳 | |
1歳 | 15歳 | |
1歳半 | 19歳半 | |
2歳 | 24歳 | 成犬 |
3歳 | 29歳 | |
4歳 | 34歳 | |
5歳 | 38歳 | |
6歳 | 43歳 | シニア犬 |
7歳 | 48歳 | |
8歳 | 52歳 | |
9歳 | 56歳 | |
10歳 | 60歳 | |
11歳 | 64歳 | |
12歳 | 68歳 | |
13歳 | 72歳 | |
14歳 | 76歳 | 高齢犬 |
15歳 | 80歳 | |
16歳 | 84歳 | |
17歳 | 88歳 | |
18歳 | 92歳 | |
19歳 | 96歳 | |
20歳 | 100歳 | 超高齢犬 |
ビーグルのかかりやすい病気
ビーグルのかかりやすい病気 1 外耳炎
垂れ耳のため中が蒸れやすく、細菌やカビが原因で外耳道に炎症ができやすい傾向にあります。
ビーグルのかかりやすい病気 2 眼疾患
ビーグルは多くの目の病気になりやすいです。白内障、緑内障、および進行性網膜萎縮症と呼ばれる網膜の病気やチェリーアイにも注意が必要です。
このほか、椎間板ヘルニアや副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)、皮膚疾患などにも気をつけましょう。
ビーグルの飼い方のコツ・注意点
ビーグルの飼い方のコツ 1 しつけは根気強く。吠えグセやかみグセに注意
ビーグルは非常に優れた嗅覚を持ち周囲の匂いに気を取られやすいので、トレーニングが困難になる可能性があります。頑固な面もあり、物事を自分のやり方でやりたいと思うので、ある程度抵抗するかもしれません。そのため、ビーグルの訓練には忍耐と時間が必要です。トレーニングは、できたら褒めて褒美を与える「ポジティブ・トレーニング」を根気強く行いましょう。
また、ビーグルにはかなりの声量がありよく吠えると思われていますが、それは優れた嗅覚によって何かを察知しているからという場合もあります。むやみに叱らずに、原因を探って対処しましょう。
パピーの頃は歯のむずがゆさを解消するための噛み癖があることも多いため、気にいる玩具をたくさん用意してあげましょう。また、成犬になってからもストレスから噛み癖が現れることもあります。体力的、精神的ストレスを溜めさせないよう、ボール遊びなどでしっかり気分転換させてあげてください。
ビーグルの飼い方のコツ 2 物の破損や誤食に注意
食いしん坊なので誤飲のリスクがとても高い犬種です。飲み込めそうな物は届くところに置かないようにしましょう。また、ストレスが溜まると物を破壊することもあります。
ビーグルの飼い方のコツ 3 体の大きさの割に運動量が必要
ビーグルはアクティブな状態を維持することを目的として改良された犬種なので、多くの運動量を必要とします。毎日の散歩に加えて、ドッグランやボール遊び、フリスビーなどでも遊ばせてあげましょう。また、狩猟本能を刺激する、宝探しなども良いでしょう。
ビーグルの飼い方のコツ 4 お留守番は苦手。時間に余裕のある家庭に向いている
甘えん坊で、いつも人と一緒にいたがります。しょっちゅう留守番させると分離不安になることもあるので、一緒に過ごせる時間の余裕があるライフスタイルの家庭に向いている犬種です。
ビーグルの飼い方のコツ 5 こまめに耳の手入れをする
垂れ耳で通気性が悪いため、常に清潔に保ちましょう。耳の入り口付近を、ペット用のケア用品で優しく拭いてあげてください。
ビーグルをお迎えする方法
ビーグルを家族としてお迎えする際の2つの方法と、料金の相場を紹介します。
ブリーダーさんからお迎えする
ビーグル専門の優良ブリーダーをネットなどで検索してみましょう。ブリーダーさんから子犬をお迎えする場合は両親が明らかなので、毛色や体格、性格などがわかるメリットがあります。
また、お迎え後もブリーダーさんに困ったときに相談ができたり、兄弟犬の輪が広がったり、サポートしてもらえるつながりが持てるのも心強いポイントです。
保護犬のビーグルを探して里親になる
動物保護施設や動物愛護ボランティア団体などでは、繁殖犬を卒業して保護された子や、飼い主の事情で手放されて保護されているビーグルを見つけられるかもしれません。サイトやSNSなどで探してみるのがおすすめです。
ビーグルの値段・価格の相場
ビーグルの子犬の価格相場は約25万円〜(2023年)です。保護施設などから里親として引き取る場合は、各施設によって定められた譲渡費用がかかります。事前に調べたり問い合わせてみたりすると良いですよ。
まとめ
表情豊かな大きな目、長く垂れた耳、直立した尻尾も愛らしいビーグルですが、鋭い嗅覚を持ち、地面を嗅ぎ分けて獲物を追う猟犬として古代ギリシャから人間に支えていた犬種の末裔といわれています。
飼い主には従順でフレンドリー、争いを好まないため子どものいる家庭にも向いているでしょう。ただ、狩猟犬としての本能から、基本的に吠えやすい犬種であることを理解しておきましょう。ストレスを溜めないように、一緒に遊んであげるなどの工夫も必要です。