ブルドッグは、くしゃっと潰れた顔に深いひだ、たるんと垂れ下がった上唇、突き出した大きな下顎は上を向いていて、強面でいかついイメージですね。体型もマッチョで短足ガニ股、しっぽもちょこんと短く、どこをとっても個性的です。しかし、ブルドッグをよく見るとユニークで愛嬌がある「ブサかわ」、性格も実はとても愛情深く優しいワンコなのです。
近年、フランス原産のフレンチ・ブルドッグが人気ですが、唯一無二の個性的なルックスと、見た目とは真逆の穏やかな性格が魅力のブルドッグにも、依然として多くの愛好家がいます。今回はそんなブルドッグについて、誕生の歴史や性格、飼い方などを詳しく解説します。
ブルドッグの基本データ
原産国 | イギリス |
---|---|
サイズ | 中型犬 |
犬種グループ | 使役犬(2G) |
飼いやすさ・しつけのしやすさ | 中級 |
運動量 | 中程度 |
トリミング | 不要 |
ブラッシング | 週1回 |
お散歩 | 1日2回×30分程度 |
飼育費用 | 月2〜4万(医療費別途) |
かかりやすい病気・怪我 | 呼吸器系疾患、股関節形成不全、熱中症、皮膚炎、鼻腔狭窄 |
ブルドッグの歴史
13世紀から18世紀にかけてのイギリスには「牛いじめ(英: bullbaiting/ブルベイティング)」という見世物がありました。鎖でつないだ雄牛(bull/ブル)にワンコをけしかけて、戦わせるというものです。このワンコには、古くから「Bull(雄牛)dog(犬)」という名称がつけられていたという記録が残っています。
この闘犬の原種はマスティフタイプと考えられていますが、16世紀頃から王室等でも「牛いじめ」が催されるようになるなかで、犬種の改良が行われるようになります。そして、この闘犬として作られたのが「Old English Bulldog/オールド・イングリッシュ・ブルドッグ」(絶滅種)であり、現在のブルドッグの基礎となった犬種です。当時は牛に噛み付きやすいようにマズルは短かったものの、現在ほど鼻ペチャではなく、体型も短足ではなく俊敏でした。
1835年には、動物愛護の観点から「牛いじめ」が廃止され、ブルドッグは愛玩犬や番犬として飼われるようになります。1860年頃からヨーロッパでドッグ・ショーが盛んになると、ブルドッグもショー・ドッグとして、現在の外見のように極端に特徴を誇張して改良されていきました。しかし内面的には闘犬としての攻撃的な気質は薄れ、優しさ優先へと変化し、やがて世界中へ渡ります。「イングリッシュブルドッグ」「ブリティッシュブルドッグ」とも呼ばれ、イギリスでは現在も人気が高く、国犬として愛されています。
日本では、大正末期にペットとしてブルドッグの人気が高くなりました。このことから、ブルドッグのように愛される商品となるようにと、1902年創業のソース会社の商品名とロゴにもブルドッグが使用されました。
ブルドッグの性格と特徴・飼いやすさ
ブルドッグは力強い体格なので、アグレッシブなワンコと感じる人もいるかもしれませんが、その見た目とは裏腹に、性格はとても優しくフレンドリーです。子どもやほかのワンコとも仲良くできます。辛抱強く、飼い主には従順なのでトレーニングも比較的楽にでき、飼いやすい犬種といえるでしょう。
しかし、非常に食欲が旺盛で食べ物の独占欲が強く、食べ物を目の前にして近づいてくる相手を見つけると、豹変したかのように攻撃的になってしまう「フードアグレッシブ」という状態になりやすい傾向にあります。ほかのワンコや飼い主以外の人がいるところで食べ物を与えないようにしましょう。
また、ブルドッグを飼う際に一番重要なポイントは、短頭犬種特有の健康面の問題に対して、しっかりとケアやサポートができるかどうかです。医療費が多くかかるかもしれないことを想定しつつ、時間と愛情をたっぷりかけられる家庭に向いています。
ブルドッグの被毛と種類について
ブルドッグの被毛は、短毛でダブルコートです。換毛期には抜け毛が多くなります。
毛色は豊富で、単色のホワイト、レッド、フォーン(子鹿のような明るい茶色)、ファロー(淡黄色)のほか、ベースとなるカラーに別の色が混ざる虎毛模様のブリンドル、白地に斑があるパイドなどがあります。
ブルドッグの大きさと体高・体重
ブルドッグの体つきは、筋肉質でがっしりとした体型です。体高は約31~36cm、平均体重は男の子が25kg、女の子が23kgほどです。
性別 | ブルドッグの体重 | ブルドッグの体高 |
---|---|---|
オス | 約25kg | 約31~36cm |
メス | 約23kg | 約31~36cm |
ブルドッグの平均寿命と人間年齢
平均寿命は10歳ほどで、中型犬としては少し短めの寿命です。しかし、非公式ではありますが、17歳という長寿の子もいます。
ブルドッグを少しでも長生きさせるには、必ず室内で飼育し、精神的にも肉体的にもストレスのない環境を整え、健康管理をしっかりと行いましょう。
人間に換算した場合の年齢は下記の表をご参照ください。
犬の年齢 | 人間に換算した年齢 | 成長ステージ |
---|---|---|
1歳 | 10歳 | 子犬 |
1歳半 | 15歳半 | |
2歳 | 19歳 | |
3歳 | 29歳 | 成犬 |
4歳 | 39歳 | |
5歳 | 49歳 | シニア犬 |
6歳 | 59歳 | |
7歳 | 69歳 | |
8歳 | 79歳 | 高齢犬 |
9歳 | 89歳 | |
10歳 | 99歳 | |
11歳 | 109歳 | 超高齢犬 |
12歳 | 119歳 |
ブルドッグがかかりやすい病気や怪我
ブルドッグには、遺伝や生まれつき気道が狭いという身体的な特徴から、とくに気をつけなければならない病気があります。毎日の健康チェックや定期健診は必ず受けるようにして、早期発見治療を心がけましょう。
ブルドッグがかかりやすい病気や怪我 1呼吸器系疾患
マズルが短すぎるため、呼吸が正常に行えないような症状が現れる病気「短頭種気道症候群」などを発症しやすいです。
ブルドッグがかかりやすい病気や怪我 2皮膚炎
顔に「デューラップ」と呼ばれるひだがあるため、ひだの中に皮脂が溜まり、細菌や真菌、ダニなどが繁殖して皮膚炎を起こしやすいです。また、もともとアレルギー体質の子も多く、アレルギー性皮膚炎を発症することがあります。
ブルドッグがかかりやすい病気や怪我 3股関節形成不全
成長期の骨の発育過程で股関節が変形してしまい、後ろ足が安定せず、痛みを伴ったり、走れなくなったりします。
ブルドッグがかかりやすい病気や怪我 4熱中症
とくにマズルの短いブルドッグは体温調整が難しく、熱中症になりやすい犬種です。命に関わることもあるので、温度調節に十分注意しましょう。
ブルドッグがかかりやすい病気や怪我 5飛行機は不可
短頭種であるブルドッグは呼吸器系が弱いため、飛行機への搭乗は世界的に禁止されています。低酸素症を発症する可能性や、温度変化に非常に弱く、死亡する危険性があるためです。
ブルドッグの飼い方のコツ・注意点
ブルドッグの飼い方のコツ 1 散歩は15分程度の短時間でOK
体重が重く足や関節を痛めやすいので、短時間の散歩にとどめましょう。しかし、運動量が少ないと肥満になりがちなので、毎日の散歩は必須です。
ブルドッグの飼い方のコツ 2 興奮のコントロールができるように
呼吸器系が弱いため、興奮すると健康に害を及ぼすリスクが高まります。ジュニア期から、興奮をコントロールするトレーニングが必要です。トレーニングは、厳しく制したり叱ったりするのではなく、褒めて教える「ポジティブ・トレーニング」を行いましょう。
ブルドッグの飼い方のコツ 3 室温調整に気をつける
ブルドッグはその体格から、番犬として外飼いするワンコと思われがちですが、短頭種のため体温の調節が非常に苦手で、夏は熱中症にかかりやすく命の危険もあります。必ず室内飼育をして、快適な室温を保つようにしてください。
≈の飼い方のコツ 4 滑りにくい床材でトラブルを防ぐ
フローリングなどの滑りやすい床の場合、高いところから飛び降りたり走ったりすると滑ってしまい、骨折や脱臼、前十字靭帯断裂(膝の曲げ伸ばしを調節する靭帯が切れる)の原因になることもあります。滑りにくい材質の床やカーペットにするなど、工夫しましょう。
ブルドッグの飼い方のコツ 5 体を拭く・定期的なシャンプーでしっかりケアする
ブルドッグの被毛は短いので、毎日のお手入れは布で拭く程度と、定期的なシャンプーでOKです。顔や体にある深いひだのお手入れは重要なので、汚れが溜まらないようこまめに拭き取り、入念にケアしてあげましょう。
パグとの違い
ブルドッグとパグは、どちらも鼻ぺちゃで顔にひだがあるため間違われることもあるようですが、パグは小型犬で、ブルドッグは中型犬です。性格的にも、ブルドッグはおっとりしていますが、パグは遊び好きで活発です。
ブルドッグの値段・価格の相場
ブルドッグの子犬の平均価格は幅が広く、約30〜75万円(2023年)ほどです。保護施設などから里親として引き取る場合は、各施設によって定められた譲渡費用がかかります。事前にネットサイトで調べ、問い合わせしてみましょう。
ブルドッグをお迎えする方法
ブルドッグを家族としてお迎えする際の2つの方法を紹介します。
ブリーダーさんからお迎えする
ブルドッグ専門の優良ブリーダーをネットなどで検索してみましょう。ブリーダーから子犬をお迎えする場合は両親が明らかなので、毛色や体格、性格などがわかるメリットがあります。
また、お迎え後もブリーダーさんに困った時に相談ができたり、兄弟犬の輪が広がったりとサポートしてもらえる繋がりがもてるのも心強いポイントです。
保護犬のブルドッグを探して里親になる
動物保護施設や動物愛護ボランティア団体などでは、繁殖犬を卒業して保護された子や、飼い主の事情で手放されて保護されているブルドッグを見つけることができるかもしれません。事前にサイトやSNSなどで探してみるのがおすすめです。
まとめ
祖先は闘犬としての歴史もあったブルドッグ。現在は個性的ななかにも愛らしさのある風貌と、優しくおっとりとした雰囲気で、家族を癒やしてくれる存在です。寿命は一般的な中型犬に比べて短いですが、短頭種ならではの健康トラブルに気をつけながら愛情いっぱいにふれあい、心身ともに健康な生活を送れるようにしてあげてください。
日々のケアは、食べカスやホコリなどが溜まりやすいひだの間を、濡らした布やノンアルコールのウェットティッシュでこまめに拭いて、清潔に保つことが重要です。顔にも体にも複数のひだがあるので大変ですが、コミュニケーションを兼ねて、しっかりとお手入れしてあげましょう。この「ひだ」さえも愛おしくなりそうなブルドッグを、家族として迎えてみてはいかがでしょうか。