古代エジプトの宮廷で飼われていたグレーハウンドがルーツといわれているイタリアン・グレーハウンド。スレンダーな体と長い首、長い脚が特徴的で、なんとも優雅な雰囲気を放つ犬種ですが、家族に迎えるうえではどのようなポイントがあるのでしょうか。
01イタリアン・グレーハウンドの性格と相性の良い家族
基本的に穏やかな性格で、人やワンコに対しても友好的な飼いやすい犬種です。ただ、やや怖がりなところがあるため、苦手なものに対しては唸る、吠える、噛みつくなど、攻撃的な行動に出てしまうことがあります。そうならないように、子犬のうちから人やワンコ、住んでいる地域に慣れさせる社会化トレーニングをしていけるといいでしょう。
寂しがり屋な傾向も強く、飼い主さんや家族に甘える子が多い印象です。大好きな家族であれば攻撃的になることはほとんどないので、小さな子どもがいる家庭でも一緒に暮らしやすいワンコといえます。たとえ子どもがワンコをびっくりさせたとしても、根がやさしい犬種なので、逃げるだけで攻撃することはないでしょう。また、ほかのワンコと一緒に暮らしていると、寂しがり屋な部分が満たされて落ち着きやすいので、多頭飼いにも向いています。
大元のルーツは狩猟犬なので、足が速く、走るのが好きという特徴もあります。外に出て一緒に遊びたい飼い主さんにとっては、いいパートナーになるでしょう。ただ、骨が細く、ほかのワンコと衝突しただけでも骨折してしまうことがあるので、遊ぶ場所や広さなどは注意して選んであげたいところ。
脂肪が少なく、皮ふが薄いので、寒さに弱いという特徴もあります。そのため、冬場は服やスヌードが欠かせません。服を嫌がる子はほとんどいない印象なので、ワンコと一緒にファッションを楽しみたい飼い主さんとの相性もいいといえます。独特な骨格に合わせた服を出しているイタリアン・グレーハウンド専用ブランドもあるほどです。
02イタリアン・グレーハウンドの上手な飼い方。
しつけ方で気をつけるべきこと
基本的には甘えん坊なので、家にいる間は手がかからない子が多い印象です。家族の足にくっついてきたり、寄り添ってきたり、甘え上手なワンコといえます。中にはチャイムが鳴ると吠えてしまう子がいますが、しっかりトレーニングをすればおさまるでしょう。
穏やかで、フレンドリーな子が多いので、社会化トレーニングはそこまで苦労しないでしょう。子犬のうちからさまざまな場所に連れていき、いろいろな人やワンコに触れ、車や電車の音などを聞かせていけば、安心して一緒におでかけできる子に成長します。
苦手なものに対しては吠えたり、噛みついたりしてしまうこともあります。その場合は、「待て」「お座り」といったコマンドトレーニングをしっかり教え、攻撃的な行動を我慢できた時に「えらかったね」と褒めてあげましょう。我慢すること=いいことという認識につながると、吠える、噛みつくといった行動は減っていきます。家族以外の人から「かわいいね」とかわいがってもらうことも、喜びに感じる子が多いです。
散歩では、引っ張りグセが出やすいという傾向があります。歩くより走るほうが好きな犬種だからです。このケースでも、落ち着いて歩くこと=いいことだと教えていけば、飼い主さんを引っ張って困らせることはなくなっていくでしょう。
03イタリアン・グレーハウンドが好きな遊び方・おすすめのコミュニケーション
もともとのルーツが狩猟犬なので、走りたい欲求が強く、それなりの運動量が必要になってきます。ほかの犬種にも通じるところですが、散歩や運動、遊びが足りていないと、ストレスを溜めてしまい、吠える、噛みつく、イタズラするといった、いわゆる問題行動が出やすくなってしまいます。
イタリアン・グレーハウンドはとにかく走りたい子が多いので、広い場所で思いっきり走らせてあげるのが理想的な遊び方です。ただし、骨が細く、骨折しやすいので、遊ぶ場所には注意しましょう。ほかのワンコがたくさんいる場所や高低差がある場所は、衝突したり段差から落ちたりした衝撃で骨折してしまうことがあります。
最近は、直線距離が長く設けられているイタリアン・グレーハウンド専用のドッグランなどもあるようです。そのような場所であれば、体格のいいワンコとぶつかってしまうこともないので、安心して遊べるでしょう。もしくは、障害物の少ない広場や草原などを走らせてあげるのもオススメです。
04イタリアン・グレーハウンド Q&A
Q.イタリアン・グレーハウンドとウィペットってどう違うの?
スタイルが似ている犬種ですが、もっとも大きな違いはサイズです。イタリアン・グレーハウンドは抱っこできるサイズの小型犬ですが、ウィペットは一回り大きい中型犬で骨格もしっかりしています。
運動能力や足の速さ、運動量もウィペットのほうが高いので、全体的にイタリアン・グレーハウンドをグレードアップさせた犬種がウィペットと考えていいでしょう。骨折しやすいイタリアン・グレーハウンドに比べると、ウィペットはそこまで注意しなくても大丈夫です。
フレンドリーで甘えん坊、かつ寂しがり屋な気質は、2つの犬種に共通する特徴です。留守番中は寂しがり屋な部分が出やすく、体格のいいウィペットは暴れてケージを壊してしまうこともあります。一方のイタリアン・グレーハウンドは体がちっちゃいので、そこまで暴れ回ることはないでしょう。このような傾向から、イタリアン・グレーハウンドのほうが都市部や集合住宅で飼うのに向いているといえます。
Q.イタリアン・グレーハウンドはオスとメスで性格が違うの?
イタリアン・グレーハウンドに限らず、どの犬種でも同様ですが、オスは陽気でやんちゃ、メスは神経質で繊細な気質が出やすい傾向があります。すべてのワンコが必ずそうなるとはいえませんが、性格的にはオスのほうが大らかなので、飼いやすいかもしれません。
ただし、オスは片脚を上げておしっこをするマーキングが起こりやすく、行動もアグレッシブになりやすいので、しっかりトレーニングをする必要があるでしょう。その点では、メスのほうが穏やかに過ごせるといえます。
Q.イタリアン・グレーハウンドは骨折が多い?
骨折はとても多い犬種です。その理由は、骨が細く、脂肪が少ないから。イスくらいの高さでも、降りる際に着地を失敗すると折れてしまうことがあります。
ほかの犬種であれば、ドッグランなどでワンコ同士が接触しても骨折までは至らないことがほとんどですが、イタリアン・グレーハウンドは骨折しかねません。そのため、おでかけする際には細心の注意を払うことになります。ほかのワンコがいるドッグランよりも、障害物の少ない広場や草原などのほうが、安心して遊べるでしょう。
ワンコの骨折はクセになりやすいので、要注意です。人間であれば、骨折を直している間や治った直後は行動を制限して安静に過ごすことができますが、ワンコはそうはいきません。ギプスを取ろうと暴れたり、ギプスを外した瞬間に走り回ったりして、再び折れてしまうことがあるので、そもそも骨折しないように過ごすことが重要です。
Q.イタリアン・グレーハウンドは落ち着きがない?
好奇心の強い犬種で、さまざまなものに興味を示します。特に、枯葉やボールなど、動きのある小さなものへの反応が強く、走って追いかけることがあるため、落ち着きがないように見えるのかもしれません。
本来は穏やかでやさしい気質の持ち主なので、しっかりトレーニングをすれば落ち着きのなさを抑えることはできますし、とても飼いやすいワンコだといえます。
Q.イタリアン・グレーハウンドは必ず服を着せないといけない?
脂肪が少ないために寒さに弱いので、冬場におでかけする際は、服を着せてあげたほうが安心です。なぜかというと、イタリアン・グレーハウンドは皮ふが薄いので、耳などの末端部分が凍傷になりやすいから。寒い場所に長くいると、凍傷を起こした部分が壊死してしまう可能性もあります。都市部でも、0度近い環境だと凍傷は起こります。
健康上のトラブルが出てしまうため、冬場は服を着せて、できれば耳を覆うスヌードもつけてあげるといいでしょう。
Q.イタリアン・グレーハウンドは太りやすい?
スレンダーな犬種なので、太りにくいと思われがちですが、実は太りやすい傾向があります。特に冬場は外に出たがらないため、運動不足になりがちで、結果的に太ってしまうことがあります。肥満になると体に負担がかかってしまうので、運動したり食事を調整したり、太らない工夫をしてあげましょう。
Advisor
DOG WORKS ZERO代表
西岡 裕記さん
ドッグトレーナー。高校卒業後、地元の三重県から上京し、青山ケンネルカレッジで動物について学ぶ。警察犬訓練所やトリマー、ショップの店舗管理などを経験し、フリーのドッグトレーナーとして独立。“ゆる~く楽しくHAPPYに!”をモットーに、ワンコのトレーニング法を伝えている。