【犬アレルギー】犬アレルギーの症状や検査方法など飼う前に知っておきたいこと

【犬アレルギー】犬アレルギーの症状や検査方法など飼う前に知っておきたいこと

犬を家族に迎える前に知っておきたい、犬アレルギーのこと

リモートワークの定着や外出の自粛などライフスタイルの変化に伴い、このコロナ禍でワンコを家族に迎える方が増えています。しかしその一方で、安易な気持ちで飼い始め、飼育が困難になる事例も多く、問題にもなっています。「可愛いから」「時間ができたから」と一度は迎えたものの、飼いきれなくなってしまう原因の多くは、飼い主さん側の「犬と暮らす」ということへの知識不足にあります。まずは飼う前に「犬と暮らす」ということを理解していくことが大切です。
そこで今回は、愛犬を手放さなくてはならなくなる理由の一つ「犬アレルギー」について、医療法人徳洲会 湘南鎌倉総合病院 免疫・アレルギーセンター センター長の谷口正実先生にお話をお伺いしました。「犬アレルギー」は家族の健康に関わる問題、そしてワンコを家族に迎える前に「知ること」ができる問題です。これから家族にワンコを迎えたいと考えている方は、是非参考にしてみてください。

今回お話をお伺いした先生

医療法人徳洲会 湘南鎌倉総合病院
免疫・アレルギーセンター センター長

谷口 正実 先生

1981年に浜松医科大学医学部卒業、同第2内科、藤枝市立総合病院、藤田医科大学呼吸器内科講師、米国バンダービルト大学を経て2014年に国のアレルギー中心拠点病院である相模原病院臨床研究センター長。2020年から湘南鎌倉総合病院 免疫・アレルギーセンター長。順天堂大学連携大学院客員教授、藤田医科大学客員教授を兼任。

専門
成人臨床アレルギー学全般、特に重症喘息、アスピリン喘息、EGPA、カビ喘息、アレルゲン免疫療法など
専門役職
国際喘息学会北アジア部会 副幹事長
日本職業環境アレルギー学会 理事
NSAIDs不耐症 国際タスクフォースメンバー

犬アレルギーの原因について

まず初めに、知っておきたいのが犬アレルギーの原因についてです。犬アレルギーの原因となる物質は、どのようなものになるのでしょうか?

犬アレルギーは、犬の表皮、フケ、唾液中に含まれるタンパク(リポカリン、アルブミンなど)がアレルゲンとなって引き起こされます。少し専門的なお話になりますが、犬のアレルゲンは現在まで発見された順にCanf1(キャンエフ1)からCanf7(キャンエフ7)まで7つが登録されています。ただしこの7つのアレルゲンコンポーネントそれぞれに対してアレルギーがあるかどうかは、研究レベルでは可能ですが、通常の臨床行為では測定できません。

アレルゲンについて、私たち飼い主が知っておいた方が良いことはありますか?

例えばCanf1は「リポカリン」というアレルゲンですが、ここで大事なのは、そのアレルゲンが何に含まれているかということになります。リポカリンは犬の「フケ・表皮・唾液」に含まれているアレルゲンになります。また、犬の尿に含まれるアレルゲンもあるんです。
みなさん、犬アレルギーというと「犬の毛」を気にされる方が多いですが、実際にはアレルゲンは毛ではなく、毛に付着したフケや表皮、そして唾液や尿に含まれているんです。そして犬のアレルゲンはダニなどのアレルゲンよりも軽いため、空気中を浮遊し衣服やカーテンなどに付着します。
ですので、毛のお手入れも大切ですが、やはり気にされるのであれば2週間に一度は犬の体を洗ってあげることが大切になります。

犬アレルギーの症状について

犬アレルギーの症状にはどのようなものがあるのでしょうか?

犬のアレルゲンは軽く、空気中を浮遊するため、典型的なアレルギー症状としては、アレルギー性鼻炎、喘息、結膜炎があげられます。また、犬の唾液が付着するとその部位にかゆみが生じることもあります。

お子さんでも症状は同じでしょうか?犬アレルギーでアトピーのように皮膚症状が出ることもあるのでしょうか?

基本的にはお子さんでも症状は大人と一緒です。
湿疹など何も起きていない健康な皮膚であれば皮膚症状は起きません。ただし、子供でも大人でもアトピーや湿疹などで既にバリア機能が低下した皮膚では、犬のアレルゲンが皮膚に直接入っていくので、その場合は皮膚からもアレルギーになったり、アトピー性皮膚炎が悪化したりする可能性があります。実際には、中等症以上のアトピー性皮膚炎のお子さんは、犬アレルギーも陽性であることが多いです。
また、実はおうちで動物を飼っていなくても、動物アレルギーを起こす場合もあるんです。動物のアレルゲンは軽く浮遊しやすいため、動物を飼っている子の衣服などに付着しています。保育園や学校で、そういう犬を飼っている子と接触し、犬アレルギーになってしまうこともあるんです。あまり知られていませんが、学校や図書館、電車などは、動物アレルゲンで汚染された場所の代表格なんです。

犬アレルギーの検査は、何科を受診すればいい?

犬を飼う前に、自分の子供が犬アレルギーかを調べたい場合、何科で検査をしてもらえますか?

アレルギー検査自体は小児科、内科、耳鼻科、皮膚科などで検査が可能ですが、アレルギー検査はその結果のデータ解釈がとても重要になりますので、大人であればアレルギー科の看板がある病院で行ったほうがベターだと思います。
子供さんについてはアレルギーやアトピーが多く、小児科の先生はアレルギーの検査にも慣れていて比較的造詣が深いので、かかりつけの小児科で検査をしてもらうので良いと思います。

犬アレルギーの検査はどんな検査?

犬アレルギーの検査はどのような検査をするのでしょうか?

犬アレルギーは血液検査で調べることが可能で、保険適用もされています。ただし、10%程度の方は、アレルギーがあっても陽性と出ない場合(=偽陰性)もあることを知っておいてください。
また、血液検査をする際はマルチ検査(保険適用)と言って、採血した血液から犬アレルギーだけでなく同時にダニやカビ、各種花粉などのアレルギーを調べてもらう検査があるので、そちらをおすすめします。
アレルギーについては、検査データの解釈や対策が重要と言われています。猫を飼っていなくても猫などに対するアレルギーも調べてもらい、ご自身の体質を知ることと、避けるべきアレルゲンを知ることはとても大切です。アレルギーについては検査を受けるだけでなく、その対策についてなど、患者さん自身も勉強をして知識をつけていただくのも一つの良いアプローチなのです。
血液検査以外に、プリックテストという皮膚に穴をあけて動物アレルゲンを打って赤く腫れてくるかどうかを見る検査もあります。ただし、こちらの検査は感度こそ高いのですが、体にアレルゲンが入ることでアレルギーになってしまう可能性が否定できないため、ここ10年〜15年で国際的にも一般的にすすめられているのは、前述の血液検査です。

検査以外の方法で犬アレルギーを判断する方法はありますか?

犬を飼う前に自分の子が動物アレルギーか調べたい場合、飼う前に別の犬と触れ合わせてみるなど、検査以外でアレルギーか知る方法はありますか?

飼う前の“症状での確認”は感度が低く、本当にアレルギーかそうでないかを判断するのは難しいため、おすすめできません。やはり病院の血液検査で調べてもらうのが簡単ですし、正確性も高いので良いと思います。
ただし、血液検査で犬アレルギーが陰性であった場合でも、お子さんと数年一緒の室内で犬を飼育することによって、陽性化する可能性が高いことも知っておいてください。子供ですと、犬アレルギー体質やアトピー体質になりやすいですし、室内飼育するとダニやカビが増えることが国際的にも多くの研究で証明されており、犬飼育でカビアレルギーにもなりやすいです。
ですので、アレルギー医としてはお子さんがいる家庭には、可能なら屋外飼育が望ましいとお伝えしています。
先ほどお話したように、犬のアレルゲンはとても軽く浮遊するので、同じ家の中でお子さんと犬の部屋を分けたとしても、完全に防ぐことはできないからです。ただ、もちろんハムスターやうさぎ、猫など強力なアレルゲンと比較すると、犬の方がずっと安全ではあるんです。意外に知らない方が多いんですが、「犬は飼えないけど、ハムスターならお世話も楽だし飼おう。」という代替案は、お子さんのいる家庭では本当に危険なので、おすすめできません。

犬アレルギーはお薬などで治療すれば治るのでしょうか?

子供が犬アレルギーと判明した場合、お薬などで治療すれば治るのでしょうか?

アレルギーとわかっている場合は、そのアレルゲンを避けることが一番有効な方法です。アレルゲンの量を減らさないことには良くはならないです。アレルギーでも飼い続けている場合、アレルゲンが常にそばにあるので、どれだけしっかり投薬をしたとしても、症状を十分改善することが難しいです。(例:花粉大量飛散時期の花粉症、HDアレルギーの患者さんが大掃除で悪化すること、など)アレルギーの治療には投薬とアレルゲン量を減らすという両輪で取り組むことがとても大切です。

また、特異的な根治治療としては、スギやダニアレルギーの患者さんでは、アレルゲン免疫療法(AIT)があるのですが、犬アレルギーの場合は国際的にもAITはあまり効果がないことが知られ、かつアレルゲン治療エキスが国内で入手できないため、導入は難しいのが現状です。
通常のアレルギー治療薬が基本にはなりますが、特別な治療薬として以下2つをご紹介します。

吸入薬のクロモグリク酸ナトリウム製剤(喘息治療剤)

アレルゲンが粘膜に付着すると、マスト細胞がまず活性化して、アレルギー症状が起きるので、そのマスト細胞の活性化を予防する、吸入薬のクロモグリク酸ナトリウム製剤(喘息治療剤)がより有効になります。

オマリズマブ(抗IgE抗体)注射

現在、アレルギーによって重症喘息など重い症状が出ていて、ペットアレルゲンが避けれない方については、オマリズマブ(抗IgE抗体)注射というものを4週間に1回の頻度で皮下注射する方法があり、これがとても有効ですので病院で相談をしてみてください。

犬アレルギーとうまく付き合っていく方法はありますか?

犬を飼った後に犬アレルギーを発症した場合、犬アレルギーとうまく付き合っていく方法はあるのでしょうか?

犬を迎えた後に犬アレルギーを発症した場合は、下記のような対策が考えられます。

  • 室外で飼う
  • 寝室に入れない
  • 気清浄機を寝室に設置し、なるべく枕元に置く
  • 犬を1〜2週間ごとに洗う

たしかに、継続的に飼っていると、アレルギーを起こす体質(IgE)と防御する体質(IgG4)の両方が高まります。手放しても特にIgEはすぐに低下しないので、手放すとよくはなりますが、感受性(アレルギー体質)は残るため、実家や友人宅で犬を飼っていると、より強い症状が出る可能性があります。
また手放してもペットアレルゲンは軽く、室内クロスやカーテンにも付着し、掃除してもアレルゲン量は十部に減らないため、手放したこと=アレルゲン消失にならないことを理解していただく必要があります。ですので、言いにくい回答にはなりますが、究極の対策はやはり、手放して、かつペット飼育歴がない家(前の住人がペットを飼っていない)に引っ越すことになってしまいます。

他にもアレルギーについて、私たちが知っておいたことがよいことはありますでしょうか?

現在、健康な人でも血液検査でダニ、スギ花粉アレルギーがある方は80〜90%にもなります。実は日本人全体がここ20年くらいで急速にアレルギー体質に変化しており、犬についてもアレルギーになりやすくなっているのが今の日本人とお考え下さい。
また、あまり知られていませんが、ご家族にタバコを吸う方がいらっしゃる場合、受動喫煙によりお子さんのアレルギー症状や感作率も飛躍的に高まります。犬アレルギーだけでなく、身の回りにもお子さんのアレルギーに影響するものは多くあります。
最初にも少しお話しましたが、アレルギーについては病院で検査などをするのはもちろん大切ですが、ご自身やお子さんの体質を把握したり、アレルギーのことを自ら勉強していただくということもとても有効ですので、是非そのことを意識していただけると良いかと思います。

最後に

今回の取材では、知っているようで知らなかったアレルギーのことを、アレルギー専門医の観点から谷口先生がとてもわかりやすく解説してくださいました。そしてこのアレルギーについては自分達で学ぶことがとても大事なこともわかりました。
お子さんや家族の健康を考えるのであれば、犬を家族に迎える前にしっかりと犬アレルギーのことを知っていただいた上で、ご家族でご検討いただくことをおすすめします。先生のお話にあったように、犬アレルギーの方が「犬と暮らすこと」は、現状ではやはりなかなか難しく、犬アレルギーの事実を知らずに犬を飼われた場合、ご家族も迎えられたワンコもお互いに悲しい結末になってしまいかねません。「犬と暮らしたい」と思う愛犬家の方にこそ、家族とワンコが幸せになれることを一番に考えて答えを出していただけたらと思います。

Special Thanks ー今回取材にご協力いただいた病院ー医療法人徳洲会 湘南鎌倉総合病院

湘南鎌倉総合病院は、1988年11月、神奈川県鎌倉市に開設されました。以来、「生命だけは平等だ」という理念を実践し、地域の医療に貢献するため、24時間365日「断らない救急」を、たゆまず実行し続けています。
多様化する患者さんの医療ニーズに対応すべく、2021年に竣工した先端医療センターでは、陽子線治療、PET/CT、再生医療といった最先端の医療を提供しています。
開設当初368床であった病床数は、現在、669床(稼働658床)になるなど、同院の担う役割は、病院機能の強化とともに益々大きくなっています。

医療法人徳洲会  湘南鎌倉総合病院 本館
医療法人徳洲会 湘南鎌倉総合病院 先端医療センター
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