この記事はワンコnowa編集部が監修・執筆を行っています。
健全な狩猟のあり方を伝えていきたいという志を持ち、千葉県で猟師としてを活動するかたわら、猟師の育成や「猟犬をすてないで」という活動をされている原田祐介さん(株式会社りすペクト代表取締役)に、
- ️猟犬と人間の関係性
- 猟犬がおかれている現状
について、お話をうかがってきました。日ごろ、狩猟に関わりがない方にも、犬と人間の関係について考える機会にしていただけたら幸いです。
狩猟と猟犬・猟師と猟犬の関係性とは?

「狩猟」と聞くと、どのようなイメージが思い浮かぶでしょうか?
「銃を担いで犬と一緒に山に行って、鳥獣を狩る」というイメージの方も多いかもしれませんが、猟=銃+犬ということではありません。
猟犬を伴わない猟もありますし、猟犬にもさまざまな種類の犬種がおり、得意とする獲物も猟場(狩猟をする場所・自然環境)も異なります。そのため、狩猟に行く=猟犬を帯同するということでもありません。
とはいえ、どの地域にも少なくとも1、2グループは猟犬を連れて行く「巻狩(まきがり)」をするグループはあるのだそうです。(環境によってはもっと多いエリアもあるとのこと。)
猟犬は「唯一無二のかけがえのパートナー」であり頼れる相棒
当然ながら、犬を連れて狩猟に出かけたことがない人のほうが多く、
- 猟犬と猟師の信頼関係
- 猟師にとっての猟犬の存在
など、リアルな関係性や思いはわからないものですよね。
ですので、実際に巻狩をしていた原田さんに、猟犬との関係についてうかがいました。
まず感じたことは、猟犬を飼い、共に狩猟に出る猟師たちは、犬が大好きであるということ。ほとんどの猟師が、わが子のように猟犬を大事にしているということです。

子犬の頃から一緒に山を歩いて来たパートナーなので、万一、猟中にはぐれたとしても、見捨てるようなことはしません。まずは犬の命が優先です。
この感情は狩猟経験の有無に関係なく、みなさんが愛犬を愛おしく思う感情とまったく同じだと思います。
しかし、詳しく聞いていくと、言葉では表せないような強い絆があることも感じました。
猟犬は大事な「メンバー」として扱われている

本当に犬を大事に思っていることが伝わる、愛にあふれたエピソードをおうかがいすることができたので、ここでご紹介させていただきます。
猟犬は決して狩猟のための道具として軽視されることはなく、人間が持ち合わせない本能をいかして、狩猟を助けてくれる存在・パートナー・共存していく相棒として、大事にされてきたことがおわかりいただけるかと思います。
01.万一、猟犬がケガをしてしまった場合は、猟師同士で治療費を出し合う
万が一、狩猟中に猟犬がケガをしてしまったら、猟に参加していた猟師みんなで、猟犬を救うためにサポートし合います。飼っている人だけが治療費を負担するのではなく、狩猟の「メンバー」として助けることを優先しているそうです。
正直、このような猟犬のためのサポート体制があることには良い意味で驚きました。

状況は違うかもしれませんが、一般の家庭の場合、他の人の家のワンコになにかあったとしても、本気で救いたいと費用負担をしてまで、助けようとしてくれる犬友・仲間はいるでしょうか?
そんなことを考えると、これは本当に猟師の皆さんが猟犬を大事に思っているからこそで、もし彼らが猟犬を狩猟のアイテムとしてしか見ていなければ、サポート体制は生まれないと感じました。
02.犬も人間としてカウント!「マタギ勘定」は犬にも取り分がある
たとえば、人間15人・犬3頭で狩猟に出る際は、トータル18人というカウントをするそうです。つまり犬も一人としてカウントされているのです。
猟犬も立派なメンバーであり、相棒でもあり、かけがえのないパートナーという言葉のとおり、一緒に猟に出る仲間として認識されているのだと実感することができました。
また、猟で仕留めた獲物は、「マタギ勘定」といって、誰が仕留めたなどではなく、みんなで平等に肉を分け合う習慣があるのですが、もちろんその取り分は犬にもあるんです。犬だから0.5人分などでもなく、ひとり分として分け前が与えられます。
出典:マタギ勘定
03.縄文時代の「縄文犬」は人間のように埋葬し弔われていた
人間と犬の狩猟にまつわる歴史は、少なくとも縄文時代からあったとされています。
特に、縄文時代に人と一緒に暮らしていた「縄文犬」は、亡くなった後も、人間と同じように大事に埋葬されていた遺跡が、多数見つかっているのです。
当時は、動物を大事に埋葬するようなことはほとんどなく、このように丁寧に犬が埋葬されていることはとても珍しいことでした。
なぜ犬だけそのような扱いを受けていたのか?

それは、やはり、生死がかかった猟や生活を共にしていたパートナーとして、犬を慈しみ、今以上に人間と犬には密な絆があったのであろうと考えられています。もちろん、この時代には犬食されていたようなこともありませんでした。
その後、時代によって猟犬の扱い・認識は変化はあるものの、はるか昔の縄文時代から、人間と犬は生きていく上で深く関わり合い、共に生きてきた存在だったのです。
誤った猟犬の考え方・扱い方をする人がいるって本当?
本題に入る前に
はじめに断っておきたいのですが、猟犬を扱う猟師のほとんどは、犬と自然が大好きで、生態系や自然保護のために狩猟をおこなっています。
そのため、猟犬はもちろん、ハントする鳥獣の命を軽視していることはありませんし、猟師や狩猟界が、これからご紹介するようなことになっているわけではありません。
ここからのお話は、あくまで一部の猟師のお話ですので、誤解なきようお願いします。
犬好きな人たちからすると信じられないことでしょうが、古くからの猟師や猟友会のかたの中には、「犬=道具」という認識が、事実、あったそうです。
たとえば...
- 繁殖犬として、適齢期を過ぎた
- 猟に出て思うように働けない
- 高齢犬や怪我、病気などをしまった
- 猟期を過ぎて、飼育が困難になってしまった
などは、「猟犬として使えない」と判断されたケースも…。
今後猟に共にでることはないため、ごくつぶし扱いで猟犬を山に捨ててしまう、もしくは山で処分してしまう猟師が、残念ながら一部にはいました。

そして、そういった考えを持つ猟師から狩猟を教わった後輩猟師たちは、その悪しき考えを引き継いで、そのまま同じ流れを汲んでしまいます。
繰り返しになりますが、古くからの猟師であっても、犬を愛してやまない猟師もたくさんいたはずですし、ここでご紹介しているのは一部の猟師の話ではあるものの、今もその悪しき習慣を引き継いでしまっている猟師がいるのが現状です。
各都道府県の狩猟管轄部署も猟犬の健全な飼育を啓発

猟に「使えない」猟犬を捨てるという考えは、あくまで古い考えであり、愛護法もある今は、狩猟よりもまずは犬を守ることが優先です。
今では各猟友会や都道府県の狩猟の管轄課なども、万一、猟で犬がはぐれてしまったら必ず探して連れ戻すこと、終生飼育していくようにということを強く啓発しています。
猟犬を使用される方へ
◾️出猟・有害捕獲などを行った当日中に、猟犬を回収してください。
※ 万が一、行方がわからなくなったら、神奈川県動物愛護センター等の行政機関に速やかに連絡してください。 山林等に放置した場合は、遺棄にあたり、動物の愛護及び管理に関する法律に違反(100万円以下の罰金)します。
◾️猟犬が狩猟などに使用できなくなっても、終生飼養するようにしてください。
しかし、それでも、猟犬を捨ててしまう人がゼロにはなっていません。
猟犬・猟師だけでなく、世の中には、
- 動物愛護法を守れない人
- なんらかの理由から犬を手放す人
- ブリーダー崩壊で飼い切れなくなった
- 無理な繁殖をさせる
など、犬を手放す・捨てる人もいますので、山にいる犬がすべて、猟師が置き去りにした猟犬とも限らないのですが…。(※ 見る人が見れば、「あの動き(あの犬種)は猟犬だったんだろうな」という推測はつくようです。)
わざわざ他県に行って猟犬を捨てるケースも

はぐれてしまった猟犬を探さないまま、山を徘徊してしまっているというケースもあるのでしょうが、中には、
- 土地勘のあるエリアの山だと捨てても帰ってきてしまう
- 近くの山に捨ててしまうと、どこの猟師の犬かがすぐにわれてしまう
などの理由から、わざわざ他県に連れて行き、土地勘のない山に猟犬を捨ててくる悪質なケースもあるようです。このようなことがあると、健全に猟犬を連れている猟師までひっくるめて、悪者に見られてしまいかねません。
このような状況は、心ある猟師にとっては本望ではありません。また、山に遺棄されてしまった猟犬を保護している団体もあるのですが、保護活動をする方がたにとっても、犬も猟師も、全員がアンハッピーな状況になっていると言わざるを得ないのです。
「猟犬をすてないで」というチャリティー活動について

原田さんがライフワークとしておこなっている「猟犬をすてないで」という、チャリティー活動があります。
捨てられてしまっている猟犬がいるのは事実で、悪しき習慣を引き継いで犬を捨てる猟師がいる限り、この負の連鎖は断ち切れません。
そこで、原田さんはこのプロジェクトを立ち上げました。
このチャリティーで集まった募金は、猟犬を無碍に扱ってしまう猟師をひとりでも減らしていくための啓蒙活動に充てられます。

地道な作業ですが、猟犬を捨てるような発想を断ち切るためには、声を上げて続けていくことが必要不可欠なのです。
実際に原田さんは自身のSNSなどでも、「猟犬は道具だから役に立たない犬は捨てるんだ」などと教える先輩がいるグループに入ってしまったら、「犬を大事にしない人とは一緒にやれない」と伝えて抜けるように発信しています。
また、取材に訪れた日も、猟師になりたいというインターンの高校生を受け入れていた原田さん。

「狩猟をするということは、命を扱うということ」
それをしっかり伝えていく活動をしていらっしゃるのですが、そういった考えを持つ猟師であれば、絶対に犬を山において行く・捨ててしまうようなことはできませんし、しません。
ひとりでも多く、間違えた考えの猟師を減らし、猟師への誤解をなくすための活動を、信念をもって根気よく続けていくことで、犬も猟師も幸せに暮らしていく。そのための活動なのです。
チャリティーステッカーの購入について
チャリティーステッカーは、原田さんが活動拠点としている、「猟師工房ランド」と、ジビエビュッフェを提供している「猟師工房ドライブイン」にて購入が可能です。

- 電話番号
- 0439-32-1351
- SNS
- Facebook:https://www.facebook.com/Hunter.workshop/
- Instagram:https://www.instagram.com/hunters_works_land/
- 定休日
- 火曜日・水曜日
※イレギュラーあり。詳細は公式SNSをご確認ください - 営業時間
- 10:00~17:00
- 備考
- ショップ、ソロキャンプ場、ドッグランあり

自然の中のドッグランは、大型犬でも充分な広さがあります。1頭500円、入園から2時間の利用が可能です。日影もあり、風も抜ける環境で、思いっきりわんこを走らせてあげましょう!また、周辺には「濃溝の滝」など、観光スポットもたくさんありますので、セットで立ち寄るのもおすすめです。


- 電話番号
- 0439-27-1337
- SNS
- Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100087274105871
- Instagram:https://www.instagram.com/hunter_works_drivein/
- 定休日
- 水曜日 ※イレギュラーあり。詳細は公式SNSをご確認ください
- 営業時間
- ジビエビュッフェ:10:00~15:00(ラストオーダー14:00)
- ショップ:10:00~17:00
- 備考
- ジビエビュッフェ・犬用おやつ、ジビエ加工品の販売 ほか
ジビエに抵抗がある方もいるかもしれませんが、ここで食べられるお肉は本当にまったくもって臭みゼロ!ジビエビギナーさんにもおすすめです。さらに、ショップでは人間用のジビエ肉・加工品をはじめ、犬用のジビエおやつやお肉も販売されています。店内はわんちゃんを抱っこしていれば、一緒に入店も可能ですので(レストランエリアは除く)愛犬のおやつもゲットしちゃいましょう!
原田祐介さんの活動について

ご自身も千葉県君津市で猟師として活動しながら、
- 次世代の猟師育成
- 自然界全体からの視点での野生動物との共生
- 命をいただくということ
などを、子供から大人まで伝えていく活動もされています。
取材の依頼をしに行った日も、都内の小学生たちに、「命の授業」をなさっていました。

特に、猟師という命を扱うことを生業としている手前、今回ご紹介した「猟犬をすてないで」のチャリティー活動と、「命の授業」においてはライフワークとして、人生をかけて伝えていきたいと尽力していらっしゃいます。
◇著書:週末猟師 ジビエ・地域貢献・起業 充実のハンターライフの始め方
◇監修:これからはじめる狩猟入門
【まとめ】取材を通じて感じたこと
猟犬を連れて山に入っている時の、リアルな現場での犬とのやり取りもうかがいましたが、それはまさに、犬との強い信頼関係がないとできないことだと思いました。一般家庭のわんこと飼い主の関係と変わらない(むしろそれ以上の)絆を感じます。
ご自身の猟犬たちのお話をしてくれた時の原田さんは、みなさんとなにも変わらない、ただただわが愛犬がかわいくて仕方ない、わんこ好きさんでした。

猟犬も野生動物も大好きで、その命を大事に考えている猟師はたくさんいます。
間違えた考えで犬を捨ててしまう猟師を減らしていく活動を、人生をかけて本気でおこなっている人がいることを、みなさんにも知っていただけたら幸いです。
Advisor
Yuka Torikai
愛犬に涙やけと皮膚のフケが出たことをきっかけに、犬の食べ物や栄養学を学び始めました。
- 犬の管理栄養士
- 犬の管理栄養士アドバンス
- 犬の行動生活アドバイザー
の資格を取得しており、生活と食事、運動の関係を大事にしています。今後は東洋医学・薬膳についても学んでいこうもくろみ中です!
現在、各ご家庭やわんちゃんに合わせたドッグフード選びのアドバイスもしており(https://dog-food-advisor-295.com/)、少しでもドッグフード選びにお困りの飼い主さんのお力になれたらと思っています。
