東京農業大学教授の増田先生と一緒にお届けする、ワンコともっと良い関係を築くためのヒント。ワンコから見えるモノゴト、ワンコの考え方、感じ方など、ワンコたちに見えている世界を私たちにも見せてくれる増田先生シリーズ「ワンコno世界」。
今回は小型犬で一番人気の「トイプードル」についてです。人気犬種の性格や特徴などを増田先生に伺ってみました。トイプードルが好きな方も、今からお迎えしたいと考えている方も、ぜひチェックしてみてくださいね。
Advisor
増田 宏司教授
東京農業大学 農学部 動物科学科 教授。東京大学大学院を修了後、同大学院で学術研究支援員を務め、2006年から東京農業大学で研究と学生への指導を行う。研究だけでなく、飼い主向けのカウンセリングやワンコのしつけに使えるグッズの開発など、ワンコと飼い主が幸せに暮らせる社会を築くため、幅広く取り組んでいる。

トイプードルやサイズ違いのミニチュアプードル、ミディアムプードルもスタンダードプードルでは、どのように性格が違いますか?


世界にはさまざまな犬種がいます。大きさのバリエーションがある犬種と言えば、ダックスフンド、シュナウザーなども有名です。
犬種やサイズで性格が異なるのか、盛んに研究が行われていたのは少し前までですが、日本で行われた最も大規模なものとしては、私が知る限り、およそ20年前(2005年前後)のものです。
当時、プードルはそれほど盛んに飼育されていなかったためか、その調査ではスタンダードやミディアムなどのプードルは調査されておらず、トイプードルのみが調査され、おおむね付き合いやすい犬種として評価されています。
ダックスでは小さいサイズになるほど、破壊性や興奮性など、一般的に飼育をするには注意を要する行動特性のポイントが高くなってしまう傾向がありますが、これらがそのままプードルに当てはまるわけではありませんので、参考にはならないかもしれません。
性格は、そもそも大きさの違いよりも、育ち方の方が大きく影響します。
ブラック、ホワイト、ブラウン、グレー、フォーンなど、毛色が豊富なトイプードルですが、毛色による性格の違いを教えてください。


毛色と性格の関係については、さまざまなことが言われていますが、実は「(科学的には)よくわかっていない」というのが本当のところです。
なぜかというと、毛色との関係をはっきりと結び付けるには、性格形成に関わる要素が多すぎて複雑だからです。例えば、それぞれに異なる生い立ちを持つ私たち日本人を「同じ髪の色だから」という理由で「日本人はみな、同じ性格である」と結論付けることはできません。
毛の色を決める体内のメカニズムがあって、行動を形作るメカニズムがあって、それらを結び付けるしくみがあったとして、それらを研究で見つけないことには、毛色と性格の関係は理解できないでしょう。
2022年に、犬種で説明できるのは行動特性のわずか9%であり、犬種よりも性別や年齢の方が、行動の特徴を説明できる理由であることが判明していますが、おそらく毛色についても、あなたと積み重ねた経験のほうが、性格形成に強く影響しているでしょう。

トイプードルは、明るく甘えん坊で自己主張の強いイメージがあります。先生が考えるトイプードルの特徴はどんなものがありますか?


順に挙げます。両前肢をあげて抱っこをねだり、しがみついてくるイメージ。心地いい寝床を見つけるのが上手なイメージ。
心地いい寝床の範囲に「人間のヒザの上」も必ず入っているイメージ、プードル同士、皆で群れて遊んでいても、必ず飼い主さんには自分のことを見失なわずに気づいていてほしい気持ちが常に強いイメージ、寝ている時に飼い主さんの視線に気づくと、即座にうれしいスイッチが入るイメージ、「見上げて見つめること」の効果が高いことを心得ているイメージ、お気に入りが多いイメージ、などでしょうか。
まとめると「飼い主さんが見守っていてくれさえすれば、私はいつも、多くのものに大喜びします」といった気持ちを常に持っている、という印象を、私はおそらく、トイプードルに対して抱いているのでしょうね。
トイプードルをお迎えするにあたって、必要な躾や、避けるべき行動を教えてください。


基本的には他の犬種と同じですが、敢えて言うなら「骨折には最大限の注意を」でしょうか。
骨が細いので(小型犬ですから)骨折しやすいという特徴もさることながら、いろんなものに喜んで、はしゃぎすぎてしまうことが多いのも、大きな理由の一つであるように思います。
だからといって飼い主さんが、ケガをしないようにと、かいがいしくお世話をし過ぎると、それがうれしすぎて、いつまでたっても大はしゃぎ(トイプードルに限り、私はこれを「わちゃわちゃ」と呼んでいます)をしてしまう可能性も拭い切れません。
そこで、「必ずこのコマンドで、一度は動きが止まる」といった命令を覚えさせておくことをおススメします。
私ならそのコマンドを「その場で」動きを止めやすいという理由から「オスワリ」にしますが、動きが止まりさえすれば「フセ」でも「マテ」でも構いません。