本記事は獣医師やペット栄養管理士が執筆・監修を行っております。
人間にはライフステージに合わせた食事の食べ方がありますが、ワンコだって子犬、老犬、不調がある時など、それぞれの状況に応じたふさわしい食生活があります。
成長過程で摂取しておきたい栄養も違いますし、病気などの不調時は、特に摂取を避けた方がいい栄養成分もありますし、食事は健康管理には欠かせないものなんですよね。
今回はワンコのライフステージや病気などに関する、食べ物の考え方についてクイズ形式で学んでいきましょう!
クイズ1 犬の歯周病や口臭は、犬の食べ物・食べ方と関連性がある?
答えはイエス!ワンコが口にするものと、歯周病や口臭は関係しています。
日々のオーラルケアは当然ながら重要なのですが、歯磨きさえしていれば、大丈夫ということではありません。
- 腸内フローラの乱れ
- 食べているものの形状
- 愛犬のマズルの骨格(短頭種の場合は、歯周病リスクが高いです)
- 腫瘍などの病気
といった、食べ物・食べ方・体内環境などが、歯周病や口臭を悪化させることもあります。
歯みがきを嫌がるワンコは多く、口腔内のトラブルを抱えている子も多いのですが、日々の食べ物・歯みがきなどで、愛犬の健康を守るようにしてあげましょう。

クイズ2 子犬(パピー)のうちからカリカリのドライフードを食べた方が良い?
答えはノーです。
少なからず、乳歯が生えきるころまではドライフードはふやかして与えるようにしましょう。また、永久歯に生え変わったとしても、すぐにカリカリのままのフードを与えるのはおすすめしません。
というのも、子犬のうちは、胃腸も骨格も発達途中の段階です。消化が完全に安定している状況ではありません。
永久歯に生え変わった、イコール、骨格も丈夫になって噛む力が十分ついたというわけではありませんし、硬いフードを消化できるという意味ではないのです。
硬くて上手に食べられなかったり、うまく消化できずにお腹が不安定になったりすることもあります。
そのため、ドライフードに移行していく時は
- 8割はふやかして、2割はドライフードを混ぜる
- 6割はふやかして4割はドライフードを混ぜる
という具合に、ゆっくりドライフードの割合を増やして、様子を見ながら切り替えていきしましょう。

クイズ3 老犬期(シニア期)になっても、元気であればこれまでのごはんのままでOK?
答えはノーです。いくら元気でも、年齢とともに代謝は落ち、少しずつ変化してきているので、少しずつ給餌の仕方・量は替えていくほうが好ましいです。
年齢とともに食欲も落ちてしまう子もいれば、食欲がまったく落ちない子もいて、個体差はあるとはいえ、代謝や筋肉量、運動量は成犬期と変わらないということはありません。そのため、今まで通りに食べていると勝手に太ってしまいますし、必要となる栄養成分も変わってきます。
年齢や健康状態、運動量などに合わせて、適宜、フードは見直していけると良いですね!

クイズ4 お腹のケアのために、草を食べることは良いこと?
答えはノーです。食べたからって焦る必要もないとはいえ、なにか不具合があるサインだと思ってください。
そもそも、健康な犬は草を食べません。犬が草を食べる理由は、ストレスや空腹、消化不良などあり、大半がなにか不具合がある時です。
たしかに、草を食べることで、
- 不快の原因になっているものを吐きやすくなる
- 繊維やビタミンが多い草を食べてお通じを促して、不調の原因になっているものを出し切れる
などの効果があり、不調改善という意味では理にかなってはいます。
しかし、草を食べなくてもいられるように健康管理しておけるのが一番理想的です。
食べても害がない草もあるとはいえ、除草剤をまいてある草かもしれませんし、草と一緒に石や実などほかの異物を食べてしまうかもしれません。食べてはいけない毒性のある植物もありますし、草むらに顔を突っ込むことでノミダニなどの寄生も心配です。
単純に草を食べるのが好きな子もいますが、できれば食べさせないようにしておく方がよいでしょう。

クイズ5 オールステージ(全年齢対応)のフードを与えていれば、年齢でフードを替える必要はない?
ライフステージによって、必要な栄養分・食べ方・食べる量なども違ってきますので、当然ながら、「オールステージフード(全年齢対象フード)」という表示があったら、見直さなくていいということにはなりません。
オールライフステージフードというのは、あくまで「どんな年齢層のワンコでも、必要な栄養量は取れます」という意味なだけです。
多頭飼いなどで色んな年齢のワンコを飼っている方の場合だと、それぞれに合わせたフードを、いくつも用意するのも大変なことでしょうから、オールステージフードひとつで済めば助かるとは思います。
でも、パピーや若年層の成犬はこれからどんどん筋量を増やしてアクティブな生活をしていく世代ですし、逆にシニア期には運動量も減ってきて、筋量も減っていく状態です。このように、段階が違うのですから、同じでいいはずはありません。
年代や生活スタイルに合わせてフードの見直しをして、そのうえでたまたまそれがオールステージフードだったなら構いませんが、オールステージだから何歳でも合うという考え方はしない方が賢明です。

クイズ6 老犬には、筋力維持のためにたんぱく質30%以上の高たんぱくフードを与えた方が良い?
あまり好ましくありません。
たしかに、老犬期には運動量も減り代謝も落ちてきて、筋肉も落ちてくるので、ある程度のたんぱく質は摂取して、関節も衰えないように筋量を維持する必要はあります。
また、成犬期よりも老犬期には意識的に少し多めにたんぱく質を摂取させた方がいいとはいわれており、その上で「シニアには高たんぱくなフードが良い」とは言われているのですが、これは、高たんぱくなフードにしていたらなんでもいいという話ではありません。
実際はたんぱく質量25%前後のものを与えていれば、十分摂取できます。(25%前後は一般的なフードの平均値です。)
つまり、シニア期は運動量が減るからと、フードの栄養価を下げるのではなく、適度にたんぱく質を含むものを摂取させておきましょうという意味で高たんぱくといっているだけの話で、わざわざ「たんぱく質含有量30%以上」というような高たんぱくを売りにしているものを選ぶ必要はありません。
たんぱく質は3大栄養素のひとつでもあり、筋肉を発達させ維持する作用がありますが、シニアの場合、高たんぱく過ぎると筋肉への負担が強くなりすぎて、臓器に負担をかけてしまうこともあります。
心配な方は、信頼のおける獣医師にフードの相談をしてみても良いですね。

クイズ7 子犬(パピー)はまだ赤ちゃんなので、牛乳を与えた方が良い?
答えはノーです。牛乳に含まれる乳糖(ラクトース)を消化する酵素を、犬はほぼ持ち合わせていないため、お腹を壊してしまう危険があります。
「少量ペロっとなめるくらいなら大丈夫」「薄めて少量与えるのは大丈夫」といわれることもありますが、率先して与える必要はありませんし、与えない方が賢明です。
また、加熱してほかの食材と一緒に摂取するとお腹を下しにくくなりますが、それでも牛乳はそもそもアレルギーリスクが低いわけではありません。もちろん、問題なく加熱した牛乳(乳製品)を食べられる子もいますが、だからといって、たくさん・継続的に与え過ぎないようにはしておきましょう。

クイズ8 「療法食」は、獣医の指示がなくても与えて良いもの?
原則、獣医の指示ありきで食べるものなので、個人判断で与えるのはおすすめしません。
療法食は不調(病気)を改善する目的で、一般的な健康なワンコが食べるフードとは栄養価を買えて、調整してあるフードです。そのため、扱いが難しく、元気で不調がなワンコが食べると、かえって健康を害する危険があります。
療法食は、しっかり検査を受けて愛犬の体調を確認しながら与えるものなので、だからこそ、獣医の管理・指示が必要です。
昨今、インターネットショッピングで療法食が購入できる状況ですが、与えるのであれば、獣医と相談してから与えるようにしましょう。

クイズ9 腎臓や心臓に心配があるワンコは、たんぱく質の摂取量を制限した方が良い?
答えはイエスです。
たんぱく質は3大栄養素のひとつでもあり、生きていく上で欠かせない成分ですが、腎臓や心臓に疾患がある場合には摂取量を制限しなければなりません。
たんぱく質の摂取量によって、さらにその臓器を働かせることになり、負担をかけてしまうことになるからです。
獣医に症状緩和のための療法食を指定されている場合は、たんぱく質の含有量を調整してあるフードを与えているということなので、独自判断でフードをブレンドしたり、トッピングやおやつを与えるのは危険ですので、必ず獣医の指示に従いましょう。
意外とおやつやトッピングなどで、思いのほかオーバーしているケースもあるので注意してくださいね。

クイズ10 パピーやシニア、手術後などにフード食べようとしない時は、飼い主さんの手から与えると良い?
3割は正解ですが、7割は不正解です。
曖昧な回答で申し訳ないのですが、手で与えると、犬は大好きな飼い主さんから与えられる安心感から、食べる傾向があります。そのため、どうしても食べない時に、サポートとして手で食べさせてみるのはありです。
ただし、それはあくまでも最初の食べるまでの誘導・サポートとしてだけで、最初から最後まで手で与えるのはよくありません。手から食べてくれるのはかわいいのですが、かわいいからと常態化しないように。
最初の食べ始めだけ手伝って、あとは自発的に食べるように仕向ける必要があり、
- フードをふやかす
- 食べやすいサイズに砕く
- フードボウルの高さを食べやすい高さにする
など、できることは他にもたくさんあります。
手で食べてくれるならそれでもいいと、ずっと手で食べさせていると、手からじゃないと食べなくなってしまう危険もあるのです。
いつもずーっと飼い主の手から与えられるわけではありませんよね?
愛犬が入院した時、どうしても用事があってペットホテルなどに預ける時、飼い主さん自身が入院した時…そんな時に、食べない子にしてしまうかもしれません。
不調時や食べられない時は手や、シリンジ(スポイト)などで食べさせることはあっても、食べないからという理由で手から与えるのは注意しましょう。

最後に
不調がある時や、まだまだ小さな成犬になっていないヨチヨチのパピー期、体力が落ちてきた老犬期のサポート。
愛犬のためを思ってやっているつもりのことでも、正しい知識で対応しないと、かえって愛犬を苦しめるだけなんてこともあるものです。
ワンコの食べ物に対する知識と、接し方だけでも改善できることもあります。今後も正しい知識をつけて、愛犬に健やかな食生活をさせてあげてくださいね!