この記事はワンコnowa編集部が監修・執筆を行っています。
名犬ラッシーで一躍人気者となったコリー。このラッシーの正式名称は、ラフコリーです。また、近年では賢く運動能力の高いボーダーコリーも人気犬種となっています。そんなコリーは、ラフコリー、スムースコリー、ボーダーコリー、ベアテッドコリーの4犬種がJKCに登録されています。また、コリーと名がつかないながらスコッチコリーの血を引くシェットランドシープドッグもコリーグループの犬種です。コリーの名称は、古い英語で黒いという意味がある「コール」または、役に立つという意味のケルト語に由来していると考えられていますが、残念ながらどのコリーも詳しい誕生の経緯はわかっていません。この記事では、シェットランドシープドッグを含め、イギリスで牧羊犬として活躍していた5種類のコリー種の歴史や特性、毛色の種類、しつけの方法などについてご紹介します。
コリーの歴史と特性について
歴史
羊毛産業が盛んだったスコットランドでは、その土地の気候風土に見合った牧羊犬が多数飼育されていました。その数は数千とも言われています。
その一つ、スコットランドのハイランド地方で牧羊犬として働いていた犬がスコッチコリーです。スコッチコリーの詳しいルーツは未解明ですが、牧羊犬としての有能さだけではなく、人間に対する忠実さ、協調性、愛情深い性格を持ち、羊飼いから高い信頼を得ていた犬だとされています。残念ながら、一時は絶滅の危機に瀕したこともある犬種ですが、現在はスコッチコリーの保存会が設立され、愛好者によって本来のスコッチコリーの保存を行う活動が行われています。数奇な運命を辿ったスコッチコリーですが、この犬種がいなければ、現在のスムースコリーやラフコリーは誕生していなかったと言っても過言ではありません。
一方、険しい岩場であるイングランドとスコットランドの国境地帯で働くワーキングコリーは、羊飼いにとって貴重な存在でした。足場の悪い岩山や崖などの遠くにいる羊を探し、一か所にまとめられる俊敏さと体力が求められ誕生した犬種がボーダーコリーです。
また、丘陵地帯で山腹に迷い込んだ羊を見つけ、集めるために開発された犬種がビアテッドコリーで、当時はマウンテン・スコッチ・コリー、ハイランドコリーなどとと呼ばれていました。
そしてどのコリーも、その魅力にとりつかれたヴィクトリア女王によって、犬種の育成と発展が行われ、現在に至っているのです。
特性
牧羊犬として有能であったコリーは、どの犬種も運動能力の高さと忠誠心そして優しい性格が特徴です。また、自分で考えて行動できる独立心が強いこともコリーの特性と言えます。

コリーの種類コリーの種類は5種類
コリー種の分類には、原産国であるイギリスでもさまざまな考え方があり、現在でも研究の対象となっています。この記事では、さまざまな文献を調査した結果、日本コリークラブの分類を踏襲してコリーの原型となったスコットランドの牧羊犬に分類されるラフコリー、スムースコリー、ボーダーコリー、シェットランドシープドッグの4犬種に加え、ビアテッドコリーをコリー種としてご紹介します。
コリー種を一躍人気者にしたラフコリー
ファームコリーとして有能かつ人間との協調性を持ち合わせているスコッチコリーから誕生した犬種がラフコリーです。小説「ラッシーカムホーム」で世界中の人気者となったラフコリーは、スコッチコリーの愛好者であったヴィクイトリア女王によって、ヨーロッパ各地のみならず世界中へ紹介されました。
初期のドッグショーでは、その美しくエレガントな外観とノーブルな顔立ち、優しい性格、賢さからショードッグとして注目を浴びたのです。しかし、ワーキングドッグとして有能だったスコッチコリーは、ショードッグ向けに改良が重ねられ、ショーコリーとして活躍。やがて、スコッチコリーとは別の犬種である純血種ラフコリーとして登録されました。
特徴は美しい容姿と優しい性格
現在、ショードッグ、家庭犬として人気のラフコリーは、ショーコリーとして、外観の美しさを中心に改良が重ねられてきたため、かつてのワーキングコリーとしてのたくましさはありません。温厚で優しく、子供とも仲良くできる性格と優雅さな外観が大きな特徴です。

希少犬種のスムースコリー
イングランド北部の農場で牧畜犬として働いていたスムースコリー。スムースコリーは、ラフコリーと同じ基礎犬から誕生した犬種です。まだコリーと名が付いていない19世紀、シープドッグとして農場で飼育されていた犬からスムースの犬とラフの犬が生まれたと考えられています。スムースのシープドッグは、ラフコリーより足が短く、太い被毛だったため、より優雅で洗練された容姿にするため、グレイハウンドが育種に加わり、現在のスムースコリーが誕生しました。
ヴィクトリア女王のお気に入りでもあったスムースコリーは、1979年に独立した犬種として認定され人気となりましたが、低地の農場では働く犬に俊敏さが求められ、スムースコリーよりも能力の高いボーダーコリーが注目を集めたため、人気のある犬種ではありませんでした。また、ドッグショーでは美しい容姿のラフコリーが圧倒的に優位だったため、ショードッグとして繁殖されることも少なく、現在では希少犬種となっているのです。
ラフコリーに比べアクティブな性格が特徴
本来、牛追いなどの牧畜犬であったスムースコリーは、現在のスムースコリーに比べ体高が低くずんぐりした体型だったとされています。しかし、ラフコリーがドッグショーで人気だったことから、エレガントなスムースコリーを作出しようと、多くのブリーダーがラフコリーとの交配を繰り返したことで、現在のスムースコリーが誕生したと考えられています。性格は、陽気で訓練性が高く、現在は救助犬、セラピードッグとして活躍しています。
知能の高さ、運動能力の高さがピカイチのボーダーコリー
現在ではすっかりスポーティングドッグとしての活躍やオーストラリアの牧羊犬として有名となったボーダーコリーですが、そのルーツはその他のコリーと同じように、はっきりとはわかっていません。もっとも有力な説として認められているのは、スコットランドとウェールズの国境地域ノーザンバーランドで働いていた牧羊犬を基礎犬として作出されたという説です。
ボーダー(国境)地帯で働く牧羊犬であることからボーダーコリーと名付けられましたが、アメリカンケンネルクラブ(AKC)で最初の登録名は「スコッチシープドッグ」でした。
国境地帯の広大で岩の多い丘陵地帯にある農場で働く牧羊犬に求められたのは、小回りのきく中型サイズ、そして俊敏さとスタミナでした。特有のハーディング(動物の群れを集め、移動させる)ポーズと目で動物を見つめ、対象動物を怖がらせることなく視線で威嚇できる特殊な才能を持っていることが特徴です。
牧羊犬としてさまざまな選択繁殖が行われたことで、サイズや毛量、性質の異なる4タイプのボーダーコリーが誕生しています。そのため、日本でもサイズの異なるボーダーコリーを見ることができます。
全犬種中トップクラスの知能と運動欲求の高さが特徴
知性が高くかつ運動能力に優れた犬種がボーダーコリーです。1998年に公開された映画「ベイブ・都会へ行く」でその賢さが脚光を浴び、人気犬種となりました。ボーダーコリーの特筆すべき特徴は「仕事を必要としている」こと。非常に賢く高い運動能力を持ち、働くことに生きがいを感じている性質なのです。広大な農場で羊を一か所に集める能力の高さは抜群で、この作業で右に出る犬はいません。知能が高いことから、飼い主のリーダーシップが発揮できない場合は、コントロール不能な犬となる可能性もあることでも知られています。

イギリス最古の犬種のひとつビアテッドコリー
原産国のイギリスでは、ビアディーの愛称で親しまれているビアテッドコリーは、1600年〜1700年代には牧畜犬として飼育されていたとされています。他のコリー種と同じように、はっきりとした祖先犬は不明ですが、スコットランドの地元の牧羊犬とポーランド・ローランド・シープドッグまたは、ポルトガルシープドッグ、エジプトの牧羊犬など他国の犬との交配によって誕生したと考えられています。
多くのコリー種が、羊の群れを追う牧羊犬として作出されましたが、ビアテッドコリーは、山腹に迷い込んだ羊を見つけるための作業能力を重視した繁殖が行われ誕生した犬種です。現在のビアテッドコリーには、粗い被毛でスレート色のボーダー系統と短いウエーブタイプの被毛のハイランド系統があります。
明るく活発な性質が特徴
もふもふの見た目とは異なり、どんな悪天候でも作業できる作業意欲の強い牧畜犬です。飼い主とはもちろん、犬と遊ぶなどアウトドアで走ったり遊ぶことが大好きなビアテッドコリー。羊の群れを管理するために作出された犬種のため、飼い主には忠実ですが、独立心が強いため頑固な一面もあり、トレーニングには忍耐が必要です。

イギリスを代表する牧羊犬シェットランドシープドッグ
小型のラフコリーと間違われることも多いシェットランドシープドッグは、北極に近い寒冷地シェットランド諸島で誕生したシェルティーの愛称で親しまれている犬種です。コリーとそっくりな容姿ですが、一説によるとスピッツ系の牧羊犬を基礎犬として、スコットランドコリー、キャバリアキングチャールズスパニエル、ポメラニアン、グリーンランドヤッホなど国境を超えた多くの品種との交配が行われたとされています。
最終的に、小さなラフコリーとの交配により、現在のシェットランドシープドッグが誕生したのです。そのため、当初は「シェットランドコリー」として犬種名が登録されましたが、コリークラブからの反対を受け、シェットランドシープドッグと変更されたのです。
賢くアクティブな性質が特徴
知能とプライドが高く、活発なシェットランドシープドッグは、羊の周りをぐるぐる回り吠えながら追い込んでいく牧羊犬です。そのため、車、バイク、電車などの動くものを吠えながら追いかける習性があります。トレーニング性が高いことも特徴ですが、勘が鋭く神経質な面も持ち合わせているため、忍耐強く毅然とした態度で接することができることが飼い主の条件とも言えます。

コリーの毛色の種類
コリー種は、犬種ごとに許容されている毛色が異なります。ここでは、JKCが認定している毛色を犬種ごとにご紹介します。

01ラフコリー
被毛カラーはセーブル&ホワイト、トライカラー、ブルーマールの3色が認められています。どのカラーも全体ないし一部の首まわり、前胸、四肢、尾の先端にホワイトマーキングがあること、ブレーズ(額の中央から鼻筋の中央を通る白い線)はマズルあるいはスカルおよびその両方にあっても良いとされます。
- セーブル
- 明るいゴールドから濃いマホガニー、あるいはシェーデッド・セーブルまでのさまざまな色合い。ライト・ストローもしくはクリームは好ましくありません。
- トライカラー
- 主色はブラックで、脚および頭部に濃いタンの班を持つ。上もうに錆色がかったものは非常に好ましくありません。
- ブルーマール
- ブラックが散って混じっているはっきりとしたシルバー・ブルーが主なもので、濃いタンのマーキングは好ましいですが、なくてもペナルティーは課せられません。大きなブラックの班、上毛および下毛がスレート色および錆色がかったものは極めて好ましくないとされます。
02スムースコリー
被毛カラーはセーブル&ホワイト、トライカラー、ブルーマールの3色が認められています。どのカラーも全体ないし一部の首まわり、前胸、四肢、尾の先端にホワイトマーキングがあること、ブレーズ(額の中央から鼻筋の中央を通る白い線)はマズルあるいはスカルおよびその両方にあっても良いとされます。
- セーブル
- 明るいゴールドから濃いマホガニー、あるいはシェーデッド・セーブルまでのさまざまな色合い。ライト・ストローもしくはクリームは好ましくありません。
- トライカラー
- 主色はブラックで、脚および頭部に濃いタンの班を持つ。上もうに錆色がかったものは非常に好ましくありません。
- ブルーマール
- ブラックが散って混じっているはっきりとしたシルバー・ブルーが主なもので、濃いタンのマーキングは好ましいですが、なくてもペナルティーは課せられません。大きなブラックの班、上毛および下毛がスレート色および錆色がかったものは極めて好ましくないとされます。
03ボーダーコリー
さまざまな毛色が認められていますが、ホワイトが優勢であるのは好ましくないとされます。
04ビアテッドコリー
スレート・グレー。赤みがかったフォーン、ブラック、ブルー、さまざまな色合いのグレー、ブラウン、サンディが許容されます。ホワイトの班はあってもなくてもよいが、後脚の外側のホックより上にあってはいけない、首のカラーは肩の後方まで伸びていてはいけないとされています。
05シェットランドシープドッグ
被毛カラーはセーブル&ホワイト、トリコロール、ブルーマール、ブラック&ホワイト、ブラック&タンで、ブラック&タンを除きブレーズ、首輪まり、胸、フリル、脚、尾先にホワイト・マーキングが見られることが望ましいとされています。また、いかなる毛色においても、ボディの白い班は極めて望ましくありません。
- セーブル
- クリアなものか、あるいはシェードのあるもので、薄いゴールドから濃いマホガニーまでで、色調は鮮やかであること。ウルフセーブルやグレーは好ましくありません。もしくはクリームは好ましくありません。
- トライカラー
- ボディはブラックで、濃いタンマーキングが好ましいとされます。
- ブルーマール
- 綺麗なシルバー・ブルーで、大理石のようにブラックが散って混じっている。濃いタンのマーキングは好ましいですが、なくてもペナルティーは課せられません。上毛および下毛に大きなブラックの班や褪せた色が見られるものは極めて好ましくないとされます。
- ブラックアンドホワイト/ブラックアンドタン
- これらも認められた毛色です。
コリー飼育のポイント! コリーの上手なしつけの方法
家庭犬として人気の高いコリー種ですが、本来は広大な農場を1日中羊を追って走り回っていた犬種です。そのため運動欲求の高さは、全犬種の中でもトップクラス。映画やCMなどで、その可愛さや美しさが強調され人気となっている犬種ですが、愛玩犬と同じような生活スタイルではストレスが溜まります。特に、運動欲求に加え知能の高さが全犬種中トップクラスであるボーダーコリーは初めて犬を飼う人には難しい犬種です。
そんなコリー種のしつけには、牧羊犬の性質を理解すること、運動欲求を満たせる生活環境が作れることが大切で、さらにしっかりとリーダーシップを発揮した訓練姿勢がポイントです。

コリーはこんな家族と相性が良いです!
有能な牧羊犬として羊の群れをまとめ、守る仕事に長けていたコリー種は、仲間を大切にする上攻撃性の少ない犬種です。
飼い主には忠実で、小さな子供とも仲良くできる性質ですが、走りまわることを使役としていたため、犬と一緒にアウトドアでアクティブに過ごしたい家族に向いています。また、運動能力が高いためアジリティやフライボールなどの競技にチャレンジしてみることもおすすめです。
ただし、ボーダーコリーの場合は、エネルギッシュに加え非常に賢いため、知識や経験が豊富な飼い主が求められます。

Writers
ワンコnowa 編集部
愛犬飼育管理士/ペットセーバー/犬の管理栄養士の資格を有し、自らもワンコと暮らすワンコnowa編集部ライターチームが執筆を行なっています。
チワワのような小型犬からゴールデンレトリーバーのような大型犬まで、幅広い犬種と暮らす編集部スタッフたちが、それぞれの得意分野を生かし飼い主視点でわかりやすい記事を目指しています。
