本記事は獣医師が執筆・監修を行っております。
私たち人間の普段の生活に欠かすことのできない砂糖ですが、古代から利用されており、その起源は紀元前8000年頃のメソポタミアにまでさかのぼります。最初は甘みとして主に蜂蜜や果物の自然由来な甘みを利用していましたが、後にサトウキビの栽培が始まり、その後、砂糖の生産が進みました。また、紀元前500年頃にインドでサトウキビの栽培が始まることで、アラビア商人によって砂糖が広まり、中世ヨーロッパにも伝わったといわれています。
このように歴史が長い砂糖ですが、犬に与えても良いのでしょうか?
ANSWER 砂糖は犬にとって与える必要がない食べものです。
砂糖は主に「スクロース」という糖質で構成されていますが、糖質は犬にとっても必要な三大栄養素のひとつであり、タンパク質や脂質よりも速やかにエネルギー源として使用され、特に脳のエネルギーになると言われています。
しかし、糖質は砂糖だけでなく穀物やイモ類などにも多く含まれているため、総合栄養食のドックフードをしっかり食べていれば必要な量は摂取できており、わざわざ砂糖を食べる必要はないということになります。

砂糖を犬が食べた際の犬への影響
落ちていた砂糖を犬が少しなめてしまったり、砂糖がはいっているお菓子の欠片を食べてしまったりなどといった、ごく少量の砂糖を食べることですぐに健康に影響がでることは少ないですが、糖分の過剰摂取が長期的に続くことで引き起こされる病気があるため、砂糖は犬に与えないようにしましょう。

下痢や嘔吐
人間の味覚と犬の味覚は異なりますが、犬は、甘い・酸っぱい・苦い・しょっぱい、といった味覚を感じることができ、特に甘い味を好む傾向が強いといわれています。よって、床に大量にこぼしてしまった砂糖や砂糖をふんだんに使用した人間用のお菓子などは喜んで食べてしまう危険性があります。このような場合、下痢や嘔吐を引き起こしてしまう危険性があるため注意が必要となります。
肥満
糖は生存に重要なエネルギー源となりますが、過剰摂取によって使いきれなかった糖は筋肉内にグリコーゲンとして備蓄されます。しかしその備蓄分を上回ってまだ糖が余ってしまうと、中性脂肪となって肝臓などに脂肪細胞として体内に蓄えられてしまい、肥満の原因となります。
人間と同様に犬にとっても肥満は万病のもととなり、高血圧や心臓病、関節疾患などの様々な疾患の発症リスクが高くなることが知られています。
砂糖を⽝に食べさせない方法
砂糖を保管している砂糖ツボなどを犬の手がとどかない場所に置く、もしこぼしてしまったとしても犬が舐めることができないようにキッチンスペースに仕切りを設けるなどの対策を挙げることができます。また、人間用のお菓子を犬には与えないということもとても大切です。

まとめ
ごく少量の砂糖を愛犬が食べてしまっても、すぐに健康被害が起きる可能性は少ないですが一度砂糖の甘さを覚えてしまうと、その甘みを要求し続けてしまうといったケースも考えられます。愛犬が大切な家族の一員であることはもちろんですが、元気に長生きしてもらうためには、いくら欲しがっても砂糖は与えないようにしましょう。
Supervisor
松本 千聖 Chisato Matsumoto
岐阜大学応用生物科学部獣医学課程を卒業後、3年ほど獣医師として動物愛護団体付属動物病院やペットショップ付属動物病院にて主に一次診療業務、ペット保険会社では保険金査定業務などに従事しました。
現在は、製薬関係の業務に携わり、プライベートでは個人で保護猫活動並びに保護猫達の健康管理を行っています。
