本記事は獣医師が執筆・監修を行っております。
私たちが普段飲んでいる牛乳は名前通り牛の母乳ですが、ヤギミルクはヤギの母乳となります。
日本では牛乳を飲むことが一般的になっているためスーパーなどで見かけることはほとんどありませんが、通販サイトでは様々な商品が販売されています。
ヤギミルクの生産量は牛乳の生産量と比較をしてみると、2.3%ととても少なく、その分希少なミルクとして知られていますが、最近では美容やダイエットのアイテムとして活用されつつあります。
ANSWER ヤギミルクは犬に食べさせても大丈夫です。
ヤギミルクには猫や犬の母乳に近い成分が含まれているといわれていることからも、基本的には犬に与えても大丈夫な飲み物となります。ただ、適切な与え方や与える量などを守らなければ逆に悪影響を及ぼしてしまう可能性もあるため注意が必要となります。
ヤギミルクの主な成分や栄養素
カゼイン
カゼインはタンパク質の一種であり、筋肉増強や満腹感、カルシウム吸収促進などの効果があり、α-カゼイン、β-カゼイン、K-カゼインの3種類に分類されます。その中でもβ-カゼインは人間の母乳とヤギミルクに多く含まれており牛乳に主に含まれるα-カゼインとは組成が異なり、アレルギー症状を起こしにくいといわれています。
カリウム
ヤギミルクにはミネラルのひとつであるカリウムが牛乳の約1.5倍程度、多く含まれています。カリウムには血圧を安定させたり、神経信号の伝達を助けることで神経機能のサポートを行ったりなどといった生命維持のための様々な役割が存在します。
タウリン
水溶性のアミノ酸様化合物の一種であり、主に肝臓の働きを活発にしたり、インスリン分泌を促進して糖尿病を予防したりする効果があるといわれています。なお、猫はこのタウリンを体内で合成することができないので、フードから摂取する必要があります。ヤギミルクには、牛乳の20倍のタウリンが含まれています。
中鎖脂肪酸
ヤギミルクには中鎖脂肪酸(MCT)が牛乳より多く含まれています。中鎖脂肪酸にはオレイン酸やラウリン酸などの脂肪酸が含まれており、体内でエネルギーに変換されやすく、健康に良いとされています。また、抗炎症作用や抗酸化作用があり、心臓の健康にも良い影響を与えるとも考えられています。
ヤギミルクを犬が食べた際の犬への効果・影響
ヤギミルクは犬への嗜好性がとても高いことから、偏食の犬や加齢、暑さなどによる食欲不振の犬に与えると効果的といわれています。また、子犬~老犬期までといった犬の年齢に関係なく与えることができるとともに、牛乳と同様に良質なタンパク質やカルシウム源となることに加えてヤギミルクの方が豊富に含んでいる成分も多く存在します。
犬に与えてよいヤギミルクの量は?
小型犬の場合 | 5gまで |
---|---|
中型犬の場合 | 11gまで |
大型犬の場合 | 23gまで |
子犬の場合 | ごく少量 |
老犬の場合 | ごく少量 |
犬にヤギミルクを与える際の注意点
ヤギミルクのおすすめの与え方
与えすぎないように注意しましょう
ヤギミルクの香りを好む犬はとても多いといわれており、ちょっとフードを食べないからとすぐにヤギミルクをトッピングしているとカロリーの摂りすぎにより肥満に繋がるといった危険性があります。基本的には総合栄養食のドックフードと水のみで犬の体に必要な栄養素は摂取することができることからも、ヤギミルクはあくまで特別な時のご褒美やおやつなどのみにするようにしましょう。
特に初めて与えるときはアレルギーに注意
ヤギミルクは牛乳など比べると低アレルゲンであるといわれていますが、個体差によってはヤギミルクでアレルギーを引き起こす危険性があります。よってヤギミルクを初めて与えるときは飼い主さんが愛犬の様子をよく観察することができて、かつ動物病院が診療している時間帯を選ぶことをおすすめします。
また、初めてでなくてもヤギミルクを与えた後に下痢や嘔吐、目の充血や皮膚をかくといった症状が見られた場合は与えるのをやめてすぐに動物病院を受診するようにしましょう。
乳糖不耐性の犬には与えない
ヤギミルクにも牛乳より少し少ない程度の乳糖が含まれていることから、牛乳を飲むと下痢をするけどヤギミルクなら大丈夫と言い切ることはできません。体質的に乳糖不耐症が軽度であればヤギミルクを飲んでも問題はない場合も多いですが、明らかに愛犬が乳糖不耐性と判明している場合は、ヤギミルクも与えない方が安心でしょう。
こんな時は犬にヤギミルクを食べさせないこと
ヤギミルクに含まれているカリウムは、腎臓病の犬にを与えてしまうと腎機能が低下していることにより、カリウムをうまく排出しきれずに血液中にカリウムが残ってしまう「高カリウム血症」を引き起こす危険性があります。「高カリウム血症」では主に嘔吐や四肢のしびれなどが見られ、重症の場合は不整脈を起こして生命を落としてしまうという危険性があります。よって、腎臓病の犬にヤギミルクは与えないようにしましょう。
また、ヤギミルクにはカルシウムも豊富に含まれていることから、シュウ酸カルシウム結石ができたことがある犬や犬種特異性としてできやすい犬には与えない方がいいでしょう。
なお、これら以外にも何かしらの持病がある犬の場合は、与える前に必ず獣医師に相談してください。
まとめ
ヤギミルクは犬にとって嗜好性が高く、栄養成分も豊富に含まれていることから上手に活用すれば愛犬の健康維持に役立てることができます。販売されているヤギミルクの種類はパウダータイプのものが多いことからも、まずは一番小さい容量のものを購入してみることをおすすめします。
Supervisor
松本 千聖 Chisato Matsumoto
岐阜大学応用生物科学部獣医学課程を卒業後、3年ほど獣医師として動物愛護団体付属動物病院やペットショップ付属動物病院にて主に一次診療業務、ペット保険会社では保険金査定業務などに従事しました。
現在は、製薬関係の業務に携わり、プライベートでは個人で保護猫活動並びに保護猫達の健康管理を行っています。