ウェルシュ・テリアの基本データ
原産国 | イギリス |
---|---|
サイズ | 中型犬 |
犬種グループ | テリアループ |
飼いやすさ・しつけのしやすさ | テリア種に対しての知識が必要 |
運動量 | 中〜高レベル |
トリミング | 必要 |
ブラッシング | 毎日 |
お散歩 | 1日1時間程度の散歩を2〜3回、定期的に自由運動が必要 |
飼育費用 | 月4~5万程度(医療費別途) |
かかりやすい病気・怪我 | 一次水晶体脱臼(PLL)、咀嚼筋炎(MMM)、発作性ジスキネジア |
ウェルシュ・テリアの歴史
小型のエアデールテリアと思われることも多いウェルシュ・テリアですが、実は最も古い純血種のテリアの1種で、発見された当初からほとんど変わらない容姿がそのことを物語っています。小型の猟犬として作出されたウェルシュ・テリアは、19世紀にウエールズの高山や深い渓谷でキツネやアナグマ、カワウソを見つけ、しとめるオールラウンドに働く犬として育種された考えられています。
当初、イングリッシュケネルクラブには、イングリッシュ・ワイヤー・ヘアード・ブラックアンドタンテリアとして登録されていましたが、ワーキングテリアとしての能力を高めるため、さまざまなテリアと交配され、現在のウェルシュ・テリアが誕生したのです。
ウェルシュ・テリアの性格と特徴・飼いやすさ
その他のテリアと同じように「ストッパー」と称されるウェルシュ・テリアは、猟犬と共に追いつめた獲物を小さな穴や巣穴に追い込み、とどめをさす役割を担っています。嗅覚に優れ、小さいながら勇気のある性質は、ワーキングテリアとして多くの猟師から人気を博していました。
猟犬としての資質を十分に伸ばすために作出されたウェルシュ・テリアですが、テリア気質と呼ばれる陽気で明るく、好奇心旺盛かつ勇敢な性格を持ちながら、テリア種の中で最も穏やかな性格であることが特徴です。ただし、テリアならではの頑固さや猟欲を持っているため、一貫したしつけができることが最大の条件となり、テリア種を初めて飼う人にはおすすめできません。
ウェルシュ・テリアの被毛と種類
水の中でも作業を行うウェルシュ・テリアの被毛は、防水性の高い硬くしなやかでワイヤー状のオーバーコートと柔らかく短いアンダーコートのダブルコートで、毛量の多い犬種です。毎日のブラッシングの他に、他のテリア種と同様プラッキングと呼ばれる特殊なトリミングが必要です。プラッキングは、被毛全体の3割程度を定期的に取り除く、テリアならではのトリミング手法で、専用のナイフを使って不要な被毛を取り除きます。子犬の頃からプラッキングを行うことで、被毛の質が向上し、皮膚が強くなるメリットがあります。また、テリア本来の容姿を保つことができます。
ウェルシュ・テリアの被毛カラーは、ブラックアンドタンまたはブラック・グリズルアンドタンが好ましいとされています。また、つま先のペンシルマークと呼ばれる黒いマーキングや飛節より下にブラックが入っているものは好ましくないとされています。
ウェルシュ・テリアの大きさ・体高・体重
ウェルシュ・テリアは、主にアナグマやカワウソなどの小動物を巣穴に入って捉える仕事をするために作出された中型の犬種です。JKC及びイギリスのKCでは、オス・メスともに体高39cmを超えないこと、体重9〜9.5kgと規定しています。
ウェルシュ・テリアの体重 | ウェルシュ・テリアの体高 |
---|---|
9~9.5kg | ~39cm |
ウェルシュ・テリアの平均寿命と人間年齢
ウェルシュ・テリアの平均寿命は12歳以上と中型犬の中でも比較的長生きな犬種です。中には、15〜18歳と長寿な個体も珍しくないようです。命に関わるような遺伝疾患のないウェルシュ・テリアの年齢は、人間に換算すると何歳に値するのかは気になるところですね。
一般的に、中型犬の1歳は人間の17歳程度と考えられています。また、生活環境によって個体差はありますが7歳頃からがシニア期とされているため、ワンコの年齢を人間の年齢に換算して、その年齢に見合ったケアをしてあげることが大切です。ここでは、環境省が提示する「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」に記載されている年齢換算方式を用いて、ウェルシュ・テリアの年齢と人間の年齢を比べてみます。
人間に換算した場合の年齢は下記の表をご参照ください。
犬の年齢 | 人間に換算した年齢 | 成長ステージ |
---|---|---|
3か月 | 4歳 | 子犬 |
6か月 | 7歳半 | |
9か月 | 11歳 | |
1歳 | 15歳 | |
1歳半 | 19歳半 | |
2歳 | 23歳 | 成犬 |
3歳 | 28歳 | |
4歳 | 32歳 | |
5歳 | 36歳 | |
6歳 | 40歳 | シニア犬 |
7歳 | 44歳 | |
8歳 | 48歳 | |
9歳 | 52歳 | |
10歳 | 56歳 | |
11歳 | 60歳 | |
12歳 | 64歳 | |
13歳 | 68歳 | |
14歳 | 72歳 | 高齢犬 |
15歳 | 76歳 | |
16歳 | 80歳 | |
17歳 | 84歳 | |
18歳 | 88歳 | |
19歳 | 92歳 | |
20歳 | 96歳 |
こちらの表は、
- 小型犬・中型犬「24+(犬の年齢-2)×4=人間に相当する年齢」
- 大型犬「12+(大型犬の年齢-1)×7=人間に相当する年齢」
の方式に基づいて計算しています。詳しくは、下記の記事をご覧ください。
ウェルシュ・テリアのかかりやすい病気
長生きのウェルシュ・テリアですが、気をつけたい遺伝疾患があります。すべてのウェルシュ・テリアが発症するわけではありませんが、お迎えする際にはウェルシュ・テリアの犬種特性や健康について正しく理解し繁殖を行っているブリーダーを選ぶことが大切です。
ウェルシュ・テリアのかかりやすい病気 1 一次水晶体脱臼(PLL)
水晶体は、カメラのレンズのようにピントの調節を行う働きをする器官です。この水晶体を支えている組織が断裂することで、水晶体が正常な位置からずれてしまった状態が一次水晶体脱臼(PLL)です。テリア種に多く見られる遺伝疾患で、主に4〜8歳の間に発症することが報告されています。この病気を発症すると、失明に至ることもあるため、眼科で治療する必要があります。
ウェルシュ・テリアのかかりやすい病気 2 咀嚼筋炎(MMM)
大型犬に発症が多い自己免疫疾患である咀嚼筋炎ですが、ウェルシュ・テリアの場合は遺伝疾患として発症します。咀嚼筋炎を発症すると、あごが開かない、あごの筋肉の腫れ、萎縮、食べたり飲んだりするのが難しくなる、ボールで遊ばなくなる、目がくぼむまたは突き出るなどの症状が現れます。早期発見、早期治療によって回復が見込めます。
ウェルシュ・テリアのかかりやすい病気 3 発作性ジスキネジア
発作性ジスキネジアは、発作的に自分が意識していない体の動き(不随意運動)を繰り返す病気です。この発作が起きていると、歩くことや立つことができなくなってしまいます。てんかんと症状が似ていることから、てんかん発作と間違われやすいですが、意識がありながら長時間異常な状態が続く場合は、発作性ジスキネジアを疑いますが、詳しい診断は獣医師に任せることになります。この病気は、脳の構造的な機能不全から発症することが疑われていますが、詳しい原因は解明されていませんが、遺伝的要因が大きいと考えられています。
ウェルシュ・テリアの飼い方・飼う際の注意点
キツネ、カワウソ、アナグマを狩るために作出されたウェルシュ・テリア。テリア種の中では比較的おとなしい方ですが、それでもテリア独特の性質を持っているため、知っておきたい飼い方や飼う際にはいくつか注意したい点があります。
ウェルシュ・テリアの飼い方・飼う際の注意点 1 トレーニングは必須
陽気で知的なウェルシュ・テリアは、楽しいことが大好きな犬種です。元気で遊び好きなことも特徴の一つ。他のテリア種と比べて気は短くありませんが、テリア気質を色濃く残しているため、子犬期からしっかりとしたしつけのためのトレーニングが必須です。なお、中途半端なトレーニングや、家族が一貫していないしつけでは、ウェルシュ・テリアが混乱してしまうこともあるため注意が必要です。また、いつでもクレートで待機できるようにクレートトレーニングをしておくことも大切です。
ウェルシュ・テリアの飼い方・飼う際の注意点 2 独立心が強く初心者には難しい一面も
ウェルシュ・テリアに限らず、テリア種は独立心が強く飽きっぽいことで知られています。同じ狩猟犬でも、レトリバーのように忍耐強く飼い主の指示を待つタイプではなく、自分で判断し行動することができる犬種がテリア種の特徴です。そのため、犬種の特性をよく理解できていないと、しつけに失敗してしまうこともあります。途中で飽きられてしまう、思ったしつけができないと悩む場合は、しつけの方法を工夫したりプロのトレーナーに相談することもおすすめです。
ウェルシュ・テリアの飼い方・飼う際の注意点 3 子犬期からの社会化が必要
好奇心旺盛で、遊ぶことが大好きなウェルシュ・テリアですが、適切に社会化されていないと、噛みつきなどの問題行動を起こしてしまう可能性がある犬種です。そのため子犬期から、生活のさまざまな音や車などの騒音、宅配業者などの見知らぬ訪問者に慣れさせておく必要があります。また、小動物を飼っている場合には特に注意が必要です。
ウェルシュ・テリアの飼い方・飼う際の注意点 4 エネルギーを発散させてあげよう
中型犬のウェルシュ・テリアですが、大型犬並みのエネルギーを持っているため、散歩を含めた毎日の運動はもちろん、室内でもおもちゃを与えてエネルギーを発散できるように工夫してあげることが大切です。エネルギーが発散できずにいると、家の中での破壊行動だけではなく脱走してしまうことがあるため、最低でも週に一度はドッグランなどで思いっきりあそばせることが必要です。
ウェルシュ・テリアの飼い方・飼う際の注意点 5 誤飲に注意
ウェルシュ・テリアに限らず、テリア種は本能として口にくわえた獲物を振り回す行動をとります。本来は、捕まえた獲物をしとめるための行動ですが、家庭犬となったウェルシュ・テリアの場合はぬいぐるみなどのおもちゃやボールでこのような行動をとります。ウェルシュ・テリアは、噛む力が強いため、この行動によってターゲットとなったおもちゃやボールは一瞬で壊れてしまうことが多くあります。そのため、壊れたおもちゃの破片を飲み込んでしまい下痢や嘔吐などの体調不良を起こすことも。ウェルシュ・テリアをおもちゃで遊ばせるときは、そばを離れず、おもちゃが壊れた場合は速やかに回収するようにしましょう。
ウェルシュ・テリアをお迎えする方法
ブリーダーさんからお迎えする
ウェルシュ・テリア専門の優良ブリーダーをネットなどで検索してみましょう。ブリーダーから子犬をお迎えする場合は両親が明らかなので、毛色や体格、性格などがわかるメリットがあります。
また、お迎え後もブリーダーさんに困った時に相談ができたり、兄弟犬の輪が広がったりとサポートしてもらえる繋がりがもてるのも心強いポイントです。
保護犬のウェルシュ・テリアを探して里親になる
動物保護施設や動物愛護ボランティア団体などでは、繁殖犬を卒業して保護された子や、飼い主の事情で手放されて保護されているウェルシュ・テリアを見つけられるかもしれません。事前にサイトやSNSなどで探してみてくださいね。
ウェルシュ・テリアの値段・価格の相場
2021年度のJKC登録頭数が101頭と、ペットショップでは販売されることがほとんどないウェルシュ・テリア。一般に販売される値段は40〜50万円程度とされていますが、ブリーダーの数も少ないため正確な相場価格は不明です。ウェルシュ・テリアのお迎えを検討している場合は、遺伝疾患の発症を避けることはもちろん、性質についても詳しい専門のブリーダーを探すことが大切です。
まとめ
古くから優れた能力を持つ猟犬として、多くの飼い主から信頼されてきたウェルシュ・テリア。明るく友好的で家族と一緒に遊ぶことが大好きなウェルシュ・テリアは、欧米ではスポーツドッグとしても人気がある犬種です。日本ではあまり見かけないウェルシュ・テリアですが、原産国イギリスでは1886年に世界で最も古い犬種クラブであるウェルシュ・テリア・クラブが設立され、大切に犬種の保存が行われています。多くのテリアの基礎犬ともいえるウェルシュ・テリアは、ケネディ元大統領の愛犬としてホワイトハウスで暮らしたこともありまた、キャロライン・ケネディ元駐日米大使は赴任当時、愛犬のウェルシュ・テリアとともに来日しています。ケネディ家にも愛されたウェルシュ・テリアは、ワンコと一緒にスポーツを楽しみたいアクティブな飼い主に向いている犬種です。