犬は卵を食べても大丈夫です。犬に卵を与える場合の注意点や与える量、そして犬の卵アレルギーなどについて解説します。また、卵焼きや白身、卵白は与えて良いのかについても解説します。
今ではどの家庭の冷蔵庫にも常備されている卵ですが、当たり前のように食卓に上がるようになったのは意外にも昭和30年以降のこと。庶民が卵を食べるようになったのは江戸時代あたりですが、当時は非常に高価で病気などの際だけに食べる滋養強壮的な存在でした。現在は安定した供給が行われるようになりました。今ではヨードやビタミンを強化した特殊卵や鶏の飼育方法で差別化したブランド卵など、さまざまな付加価値が加わった卵が生まれ、今ではその種類は1000種類以上と言われています。
卵とは、にわとりから産み落とされた卵を指し、卵殻と卵白と卵黄で構成させています。卵1個のコレステロール値は210mgととても高いため食べ過ぎはNGと言わたりもしますが、卵黄に含まれるレシチンには悪玉コレステロールを減らして、善玉コレステロールを増やす働きがあり余分んコレステロールが血管に付着するのを防いでくれます。ですので、食べすぎず1日1個など適度な量であれば健康を害することはありません。
ただし、鮮度が落ちやすい特徴を持つことから、卵かけご飯や納豆に入れるなど、生卵として食べる場合はなるべく早く消費する必要があります。
消費期限が切れた卵やサルモネラ菌に汚染された卵を食べると食中毒になる危険性が高いですが、はたして新鮮な卵であれば犬に与えても大丈夫なのでしょうか。卵の栄養素や成分、愛犬に与える際の注意点や与える場合の量について、犬の管理栄養士マスターが解説しますので一緒に勉強していきましょう。
ANSWER
卵は犬に食べさせても大丈夫です。
卵焼きなど加熱しな卵料理、生でも卵黄であれば与えて大丈夫です。
卵は完全栄養食といわれるほど、犬にとって必要な栄養素が豊富に含まれているので、犬にあげても大丈夫な食材です。
しかし、卵と一括りにいっても調理法はさまざまで、目玉焼きやゆで卵、生卵があります。
人間と同じように新鮮な卵を選んで食べさせることはもちろんのこと、与え方や与える量に注意しなければいけません。
卵白に含まれるアビジンというタンパク質は、ビタミンB群の1つであるビオチンの吸収を妨げてしまうので、生卵の場合は卵黄のみ与えるようにしましょう。また、卵白だけでなく殻も入らないように気をつける必要があります。
目玉焼きや卵焼き、炒り卵など火を通して加熱した卵であれば犬に与えても大丈夫です。
この記事では、人間の卵の食べ方とはどのように区別して犬に与えるべきか、卵の栄養素や成分も交えながら紹介します。
タンパク質
卵1個につき卵白4.4g、卵黄2.9g含まれているタンパク質は皮膚や筋肉を作り、エネルギー源になることから、犬にとって必要不可欠な栄養素です。
タンパク質の栄養価を科学的に示す指標としてアミノ酸スコアがあります。必須アミノ酸が必要とされる量を満たしている状態が100であり、卵はこのアミノ酸スコアが100なのです。
脂質
卵白には脂質が含まれておらず、卵黄には約5.5gの脂質が含まれています。
脂質はタンパク質や炭水化物の2倍以上のエネルギー源を供給でき、その他にも内臓保護や体温調整を行い、脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の吸収を促進します。
ビタミンA
脂溶性ビタミンであるビタミンAは、皮膚や粘膜、目、骨の健康を維持するのに役立ちます。
欠乏すると食欲不振や成長不良を引き起こしますが、体内に吸収された余剰なビタミンAは肝臓に蓄積されるため、欠乏よりも過剰に注意が必要です。
ビタミンB2
ビタミンB2はエネルギー代謝において補酵素として働きかけてスムーズな代謝を行います。
欠乏するとエネルギー産生量が低下し、体の調整に不具合が生じるため、健康的な体の維持に欠かせない栄養素です。その他にも脂質代謝や皮膚や角膜の保護に役立ちます。
卵を犬が食べた際の犬への効果・影響
犬にとって必要な栄養素が豊富に含まれていることから完全栄養食といわれており、少量摂取するだけでエネルギー補給ができます。
特に、食欲が落ちた老犬に質の良いタンパク質源として与えるには効果的でしょう。
犬に与えてよい卵の量は?
小型犬の場合 | 約41g(約0.8個分) |
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中型犬の場合 | 約80g(約1.6個分) |
大型犬の場合 | 約80g(約1.6個分) |
子犬の場合 | 消化管の機能や構造が未熟な場合は、特に生卵を与えるのは控える。 与える場合は少量ずつ。 |
老犬の場合 | 腎臓病や消化管が弱っている犬の場合は与えない。 与える場合は少量ずつ。 |
犬に卵を与える際の注意点
卵のおすすめの与え方
犬に生卵を与える際は卵白は取り除き、卵黄だけ与えましょう。
卵白に含まれるアビジンというタンパク質は、ビタミンB群の1つであるビオチンの吸収を妨げます。
ビオチンは皮膚や被毛の健康に必要不可欠なビタミンなので、大量にアビジンを摂取するとビオチン欠乏症になり、皮膚炎や湿疹などの症状が出る可能性があります。
アビジンは加熱をすれば活性が失われるので、ゆで卵や目玉焼きなど白身を加熱してから与えたり、生卵を食べさせる際はなるべく卵黄だけを与えたりするなど工夫しましょう。
卵の加工品を犬に与える際はカロリーオーバーに注意
そもそも卵は脂質が豊富に含まれているため、加工品だとさらに脂質や糖質が増え、1日に必要なカロリーをオーバーする可能性があります。
卵豆腐やプリンなどの商品は、砂糖以外にも酒やみりんなどの調味料が含まれているので、与えるのは控えましょう。
犬用のお菓子であれば、カロリー計算されているためそれほど神経質になる必要はありませんが、肥満気味や持病がある愛犬には注意し、不安であれば獣医師に相談することをおすすめします。
犬の卵アレルギーに注意し、まずは少量ずつ与えましょう!
大量に与えるとアレルギー反応を起こす危険性があるため、初めて卵を食べさせる場合は少量ずつ与えてください。
タンパク質や脂質が豊富に含まれているため、大量に食べると肥満につながる可能性があります。
栄養価が高いからといってご飯のメインとして与えるのは避け、あくまでもおやつやドックフードのトッピングとして食べさせましょう。
健康な犬であれば、毎日のドッグフードで栄養は足りているため、無理に食べさせる必要はありません。
また、卵の殻にもカルシウムといった栄養素が含まれていますが、口の中やのどを傷つける危険性があるため、なるべく与えない方がいいでしょう。
卵を犬に与える際には、油や調味料は使わず調理方法には気をつけましょう!
愛犬が卵を気に入ったのであれば、1日の適切な摂取量を守れば問題ありません。
しかし、人間が卵を食べる時と同じように、油の他、塩や油などの調味料を使用してはいけません。
余分な味付けが加わることによって、ドッグフードで足りていた栄養バランスが崩れる可能性があります。
茹でたり焼いたり、愛犬の好みに合わせて調理するといいでしょう。
ただし、まるごと与えるとのどに詰まらせる危険性があるため、細かく刻んで冷ましてから与えてください。
アレルギー持ちの犬には卵は食べさせないようにしましょう。
アレルギー持ちの愛犬は、卵に対してもアレルギー反応を示す可能性が高いため、与えるのは控えましょう。
もしも体を痒がったり下痢や嘔吐をしたりした場合は、直ちに与えるのをやめて、それでも症状が続くようであれば獣医師の診断を受けてください。
また、食事からリンの摂取が多いと腎臓に負荷がかかります。
リンはタンパク質を多く含む食品、つまり卵に多く含まれているため、腎臓病の愛犬には与えてはいけません。人間が卵を食べて食中毒を引き起こすように、犬にとっても鮮度の落ちた卵は危険です。
加熱すれば大丈夫と過信せずに、摂取量を守ってまずは少しずつ与えてみてください。
まとめ
卵は総合栄養食といわれるほど栄養価の高い食べ物なので、犬に与えても大丈夫です。
卵は薬膳食材として見ても、とくに卵黄には不足している体液や血液を補い、体を潤す効果があります。病気の方や虚弱体質の方に元気を与えてくれる食材です。また、発熱後の精神不安、不眠、咳、のどの乾き、声がれなどにも有効と言われています。
しかし、卵白に含まれる成分がビタミンBの吸収を妨ぐため、生の場合は卵黄だけ食べさせ、なるべく加熱して与えたほうがいいでしょう。
アレルギー反応を示す可能性もあるため、1日の摂取量に気を付けて与えてみてください。
卵の与える部位や調理方法、与える量に注意しながら是非、愛犬のおやつやトッピングに活用してみましょう。
犬に食材を与える際の注意点
その食材が犬に与えて良いものかどうかを調べましょう。
食材には以下の4つのパターンがあります。食材を与える際にはそれがどれにあたるかを把握する必要があります。
01.中毒・アレルギーを起こす絶対に与えてはいけない食べ物。
犬に与えると「テオブロミン」という成分が、嘔吐や下痢などの中毒症状を引き起こすチョコレート、「アリルプロピルジスルフィド」という成分が、貧血症状や下痢、嘔吐を引き起こすねぎや玉ねぎ。それ以外にもぶどう・レーズンや、アボカド、マカダミアナッツ・クルミ、キシリトールなど、食材の中には犬に与えると重篤な症状を引き起こすものがあります。
犬に手作りご飯や食材トッピングなどをする際は必ずこの犬に与えてはいけない食材を把握しておくようにしましょう。下記の記事でも詳しく解説しておりますので、参考にしてみてください。
02.与える際に注意が必要な食べ物
食材の中には基本的には与えても大丈夫ですが、与え方によっては注意が必要なものがあります。例えばじゃがいも。じゃがいもは犬に与えても大丈夫ですが、じゃがいもの芽や皮には「ソラニン」「チャコニン」という毒素が含まれていますので、与える際には芽や皮をしっかり取り除く必要があります。また、豚肉や刺身なども犬に与えて良い食材ですが、生の豚肉を食べると細菌やウイルスに感染してしまうリスクがありますし、人間用として処理された刺身は犬に与えても大丈夫ですが、食中毒などの危険性があるため、なるべく加熱してから与える方が良いでしょう。
それ以外にも、魚を与える際は骨をとる、野菜・果物を与える際は種やヘタを取り除くなど、食べられる食材の中にも与え方によって注意が必要な食べ物もあります。
03.人用に加工された食べ物
たとえば、その食材自体は食べさせられるものであったとしても、ジュースや缶詰、ドライフルーツ、ジャーキーなど人用に加工されたものは、油や調味料、糖分などが多く含まれており、犬に与えない方が良いものがほとんどです。食材は与えて大丈夫なものでも、与える前には人用に加工されたものではないか確かめるようにしましょう。
04.健康な成犬に与えても大丈夫な食べ物
犬に与えても大丈夫な食べ物もあります。ただし、子犬や老犬に与える際には小さく刻んだり、茹でて柔らかくして与えてあげましょう。また持病のある犬については特に注意が必要です。新しい食材を与える前にはかかりつけの獣医師さんに相談してから与えるようにしましょう。また、元気な成犬でも与える量については注意が必要です。どんな食べ物も食べ過ぎには注意しましょう。適度な量を愛犬に合わせて少しずつ与えてあげるようにしましょう。
フードに食材をトッピングする際の注意点
いつものフードに食材をトッピングしている飼い主さんも多いのではないでしょうか?トッピングがうまく活用することで足りない栄養素を補えたり、愛犬のフードの食いつきを高めることができます。ただし、与える際には下記のことに注意が必要です。注意すべき食材や栄養バランス、摂取量に十分注意しながら、上手にバランスの良い食事を心がけましょう!
処理やサイズなど与え方に注意を。
特にトッピングする際には、愛犬が喉に詰まらせないよう食べやすい大きさにカットして与えるようにしましょう。固い野菜などは茹でて柔らかくしてかけてあげたり、すりおろしてあげるのもおすすめです。また果物や野菜をトッピングする際には、皮や芯、種やヘタをしっかり取り除いてからあげましょう。特に種や芯には、犬が中毒を引き起こす成分が含まれる場合があるのでしっかりした下処理が大切です。
フードと合わせたカロリーバランスを考える。
フードに混ぜて、トッピングする場合のトッピングの適正量は多くても1日の摂取カロリーの10%までといわれています。
愛犬に与えているフードのカロリーや栄養素を調べ、愛犬の体重と年齢などに合わせ1日の栄養・カロリーがトッピングと合わせてバランスよくなるように調整することが大切です。心配な場合は与えている量とトッピングの内容をかかりつけ動物病院の先生に相談してみましょう。
初めて与える食材は少しずつ
どんな食材でも犬によってはアレルギーを起こす可能性があります。初めて与える食材の場合は少量を与え体調の変化がないかを見るようにしましょう。特に持病のある犬については特に注意が必要です。新しい食材を与える前にはかかりつけの獣医師さんに与えて大丈夫か相談してから与えるようにしましょう。
Adviser
ペットフーディスト 佐々木なるみ
愛犬の偏食をきっかけに資格を取得。これまでに4匹のわんちゃんと暮らしてきた。動物愛護に関心を寄せ、犬を含む多くの動物が幸せに暮らせる日本を目指している。