athlete
朝日山部屋×ちびちゃん
千葉県鎌ケ谷市にある相撲部屋・朝日山部屋には、1匹のワンコがいます。その名は、ちび。『天才!志村どうぶつ園』で、志村けんさんとともに全国を旅した元捨て犬のちびちゃんです。もともとちびちゃんが預けられていたドッグスクールと朝日山部屋の女将さんが知り合いだったことがきっかけで、2017年に朝日山部屋がちびちゃんを引き取り、現在も部屋の皆さんで面倒を見ています。ワンコがいる相撲部屋での日常を、現役力士の安芸錦さん、錦丸さんに伺ってきました。
安芸錦自分が入門して4年半、錦丸が3年半なので、入門した時には既にちびがいました。だから、自分たちからすると兄弟子…いや、メスなんで姉弟子みたいな感じですね。
錦丸入門した時からちびがいるのが当たり前で、毎日のごはんや散歩も日常のサイクルに組み込まれています。
安芸錦夕食をつくるちゃんこ番を班で回してるんですけど、ちゃんこ番が休みの人が夜の散歩を担当してるんです。朝稽古をしている時は、呼出(※)の子が散歩に行ってくれます。
取組時の力士名の呼び上げや土俵の整備、太鼓叩きなど、競技の進行を行う人のこと。
安芸錦実家ではウサギを飼ってたんですけど、ワンコを飼ったことはなかったですね。
錦丸自分もなかったです。だから、朝日山部屋に入ってからワンコの習性や世話を学びました。
安芸錦入門した頃からちびはおとなしいんで、大変だと思ったことはないですね。吠えてるところは見たことがないし、お風呂に入れる時も暴れたりはしないので。
錦丸車の音には敏感で、隣を通るとビビったりするんですけど、人には慣れているし、怒ってくることとかもないですね。稽古の音も大丈夫みたいです。
安芸錦自分が「入門したいです」って部屋に連絡した時は、ちびが引き取られる前だったんですよ。その時に親方から「『志村どうぶつ園』に出るんで見てください」って言われて、なんでだろうと思って見たら、ちびが朝日山部屋に入るって内容でびっくりしました。有名なワンコだったので、入門がさらに楽しみになりましたね。
錦丸自分もテレビで何度か見たことがありました。でも、朝日山部屋にいることは知らなかったので、入門した時に「見たことある子だな」と思って、親方に聞いたらちびだったという。
安芸錦たまに一緒に寝る時に、ちびが自分のひざとかに頭を乗っけて寝るんですよ。その姿を見ると、かわいいな、幸せだなって思いますね。
錦丸寝る時は、安芸錦さんか自分のどっちかのところに来るんですよね。ちびが布団の下の方から入ってきて、自分の顔の横に顔を出して寝たりするんですけど、とってもかわいいですね。
安芸錦寝る時に寄ってきてくれるのは、うれしいですね。気を許してくれてるのかなって。ちびも年齢を重ねて、最近はケージで静かに寝ることも多くなったんですけどね。
錦丸前は、軽快に土俵に上がって、その中でトイレしちゃうこともありました(笑)。ちびがトイレしちゃったら土を削って、埋めて、上から叩いて修繕して。その間、土俵が使えないんで困りましたけど、そんなところもかわいいなって(笑)。
安芸錦直接相撲とつながるわけではないですが、ペットと暮らした経験がなかったので、ちびと暮らすようになって、ワンコも命がある家族なんだって感じるようになりました。ちゃんとお世話してあげなきゃな、長生きしてほしいなって感覚になるんだって、ちびから大切なことを教えてもらっていると思います。
錦丸自分もちびに勉強させてもらってますね。あと、この辺では有名なワンコなので、散歩しているといろんな方に話しかけていただいて、交流が生まれるという影響もあります。
安芸錦散歩中の会話がきっかけで、「朝日山部屋ってこの辺にあるの?」って知ってもらえるパターンもありますね。ちびのおかげで部屋を応援してもらえている部分もあるので、ちびに助けてもらってるなって思います。
安芸錦そうですね。だから、ちびがいないと寂しいなって。地方場所で千葉を離れる時はちびを連れていけないので、部屋のみんながちょっと寂しそうなんですよね。何気なくちびをなでようとして、いないんだよなって気付くみたいな。
錦丸千葉に帰ってきてちびに会うと、ほっこりしますよね。ちびが部屋のみんなの癒しになっていることは間違いないです。
錦丸部屋では5匹飼ってて、敷地内に地域猫が1匹います。もともとは女将さんが保護した子たちなんです。
安芸錦部屋で保護して、病院で診てもらったり手術してもらったりして、そのまま引き取って。女将さんが保護猫の勉強もされて、みんなで世話をしてる感じですね。
錦丸そうだと思います。女将さんを中心に本気で取り組んでいて、既に数十匹は里親にも出しています。赤ちゃんが生まれたら病院で検査してもらって、里親に出してって。
安芸錦保護猫の情報はTwitterでも発信しているので、よかったら見てみてほしいです。
錦丸赤ちゃんのうちから世話していた子を里親さんに譲渡するのは、正直寂しいです。地方場所に行ってる間に引き取られたこともあって、帰ったらいなかったのは悲しかったですね。でも、ちっちゃいうちの方が里親さんも見つかりやすいですし、部屋でもこれ以上は面倒見られないので、やさしい里親さんに迎えてほしいなと思います。
安芸錦ただ、自分たちは部屋に入ってから猫アレルギーが発覚して、大変なんですよ(笑)。かゆくなったり、くしゃみが出たり。
錦丸検査したら猫アレルギーってわかって。でも、そんなに強い症状は出ないし、ネコちゃんたちがかわいいので、大丈夫です。
安芸錦互いに興味はあるみたいなんですけど、一定の距離を保ってつかず離れずという印象です。警戒し合ってるのかわからないですけど、嫌がってるわけではなさそうなので、そのままにしてますね。
安芸錦そこまで動物に興味がなかった子でも、一緒に暮らしてるとかわいく感じるものですよね。地域猫も最初は人にビビってたけど、だんだん慣れてきて、そうすると人側もどんどん距離が縮まっていって、気付いたら動物好きになってるといいますか。
錦丸ちびも、自分たちがネコちゃんに構ってると気になるのか、すり寄ってきて甘えたりするんですよ。そうなると、どっちもかわいいですよね。
安芸錦この子にケアしてもらってるところが大きいと思います。癒しであり、頑張ろうと思わせてくれる存在でもあり、ちびがいるから部屋のみんなの士気が高まっているのかなって。
錦丸一緒にいる時間が長いので、家族の一員といえる存在ですし、ちびがいない日は寂しいですね。
安芸錦ちびももう推定で10歳を超えて、白内障になって目がほとんど見えなかったりするんですけど、できるだけ健康なまま、今と同じ生活が続いていけばいいなって思います。可能な限り長生きして、自分たちが部屋を出るまではいてほしいなって。
錦丸ちびがちっちゃい頃から面倒を見てくれているドッグスクールの方に聞く限り、ちびはまだまだ元気らしいので、これからも一緒に散歩して、たまに一緒に寝て、思い出をたくさんつくっていきたいですね。
朝日山部屋に到着すると、駆け寄ってきて歓迎してくれたちびちゃん。
錦丸さんに抱っこされ、安心しきったように身を委ねる姿がかわいらしかったです。
さまざまな人からの愛情をたくさん受け取り、のびのびと長生きしてくれることを願って。
千葉県鎌ケ谷市にある相撲部屋。元関脇の朝日山親方(琴錦)が2016年に開いた部屋で、2022年10月現在は力士8人と呼出1人が所属。ちびちゃんを引き取って面倒を見るだけでなく、保護猫活動も精力的に行っている。部屋には、女将さんと娘さんが営む「あさひベーカリー」も併設。