キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルは、日本では一般的に「キャバリア」と略して呼ばれているイギリス産の小型犬です。
犬種名に「キング・チャールズ」とつくのは、イングランド王のチャールズ1世とチャールズ2世が寵愛したことからです。「キャバリア」とは騎士という意味で、騎士のように力強く勇ましい感じがすることから命名されています。
絹のような美しい被毛のゴージャスな長い垂れ耳、クリンとした大きな目、そして優雅な身のこなしのこのキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルは、長きにわたってイギリス王室で愛されてきました。
今回は、そんなキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの歴史や性格、飼い方などを紹介します。
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの基本データ
原産国 | イギリス |
---|---|
サイズ | 小型犬 |
犬種グループ | 愛玩犬グループ(家庭犬、伴侶や愛玩目的の犬G) |
飼いやすさ・しつけのしやすさ | 初級~中級 |
運動量 | 多い |
トリミング | 不要 |
ブラッシング | 2〜3日に1回程度 |
お散歩 | 1日2回×15分〜30分程度 |
飼育費用 | 月1.5〜2万(医療費別途) |
かかりやすい病気・怪我 | 僧帽弁閉鎖不全症(心臓病)、外耳炎、短頭種気道症候群、脊髄空洞症 |
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの歴史
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルは、16〜18世紀の絵画にも多く描かれている、小さなイングリッシュ・トイ・スパニエルの直系の子孫です。これらの絵画には、平らな頭、高い位置にある耳、アーモンドのような形の目、そしてやや尖った鼻を持つ小さなスパニエルが描かれています。
イングリッシュ・トイ・スパニエルはチューダー王朝時代には、宮廷の女性たちが風通しの悪いお城や寒い馬車の中で膝を温めるために飼われていましたが、スチュアート朝時代にチャールズ2世が溺愛したことから「キング・チャールズ・スパニエル」という王家の称号が与えられました。
歴史によると、チャールズ2世は常に2、3匹のキング・チャールズ・スパニエルと共にいて、連れていないところを見ることはほとんどなかったという記録があります。
またチャールズ2世は、キング・チャールズ・スパニエルは公共の場、それも通常は動物が入れない国会議事堂でも受け入れられるべきという勅令を出すほど溺愛していました。この勅令の古文書は、今でもイギリスに残っているそうです。
チャールズ2世が1685年に亡くなったあと、キング・チャールズ・スパニエルのようなトイ・スパニエルは流行らなくなり、パグに人気が移りました。
19世紀半ばになると、イギリスではさまざまなワンコの繁殖とドッグショーが本格的に行われるようになり、多くの犬種が開発された結果、キング・チャールズ・スパニエルはパグや狆などのマズルの短い犬種との交配が行われて鼻ぺちゃとなり、初期のトイ・スパニエルの容姿を持った犬種は絶滅してしまいました。
その後、チャールズ王時代の肖像画を見たアメリカの愛犬家が、当時のタイプのようにマズルを長く戻した犬種を復活させ「キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル」と名付けました。この「キャバリア(中世の騎士)」の意味は、凛々しい風貌のイメージに加えて、中世時代の姿を取り戻したということにも由来するのではないかともいわれています。
一方、鼻ぺちゃのままとして残った「キング・チャールズ・スパニエル」は色合いや名前が似ていますが、別の犬種とされます。
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの性格と特徴・飼いやすさ
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルは古くから愛玩犬としての歴史があり、無駄吠えやかみ癖も少なく、攻撃性もないため人と暮らすことが得意です。
魅惑的なほど愛情深く、知的で穏やか、そして飼い主さんに献身的です。社交的で、子どもやほかのワンコともフレンドリーにできるので、良い友達となれるでしょう。
セレブのお嬢様のような雰囲気もあり、マイペースで、眠ければ眠り、遊びたければ遊びます。しかし、家族が大好きでいつも一緒にいてほしい犬種なので、飼い主さんがトイレに行く際についてくることもあるでしょう。
留守番は苦手で、ひとりにする時間が多いと分離不安症になる危険性があるので、いつも誰かが家にいるような家庭に向いている犬種です。
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの被毛と種類
キャバリアの被毛は、シルキーでフワッとしていて、ウェーブがかかっています。
ダブルコートの長毛で、絹のように滑らかで光沢があり、巻き毛の場合もあります。2〜3歳の頃から足・耳・胸などに飾り毛が見られるようになります。
毛色は、4種で、一般的なカラーは「ブレンハイム」と呼ばれる、白と茶色の2色のものです。ブラック地にタン(黄褐色)の模様が両頬、耳の裏側、胸、足などに入っています。特に目の上に眉毛のように入っている模様が特徴です。
ブレンハイム
ブレンハイムはキャバリアの毛色の中でも定番の色です。ホワイト地にチェスナット(栗色)の模様が入ります。
ブラック&タン
黒と赤褐色
ルビー(レッド)
赤褐色
トライカラー
ホワイト地にブラックとタンの3色
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの大きさと体高・体重
体高は30~34cm、体重は5〜8kgほどが標準的です。体長は体高よりも長めで、大きな目に大きな垂れ耳、平坦な頭頂部に尖った鼻を持ちます。
キャバリア・キング・チャールズ・ スパニエルの体重 |
キャバリア・キング・チャールズ・ スパニエルの体高 |
---|---|
5〜8kg | 30~34cm |
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの平均寿命と人間年齢
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの平均寿命は9〜14歳といわれています。しかし、正式な記録ではありませんが19歳まで生きた子もいたようです。
少しでも長く一緒にいられるように、日頃からストレスをためにくい飼育環境を整え、毎日を健康に過ごせるよう気を配ると良いでしょう。
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの人間に換算した場合の年齢は下記の表をご参照ください。
犬の年齢 | 人間に換算した年齢 | 成長ステージ |
---|---|---|
3か月 | 4歳 | 子犬 |
6か月 | 7歳半 | |
9か月 | 11歳 | |
1歳 | 15歳 | |
1歳半 | 19歳半 | |
2歳 | 24歳 | 成犬 |
3歳 | 29歳 | |
4歳 | 33歳 | |
5歳 | 38歳 | |
6歳 | 43歳 | シニア犬 |
7歳 | 47歳 | |
8歳 | 52歳 | |
9歳 | 56歳 | |
10歳 | 61歳 | |
11歳 | 66歳 | |
12歳 | 70歳 | |
13歳 | 75歳 | |
14歳 | 80歳 | 高齢犬 |
15歳 | 84歳 | |
16歳 | 89歳 | |
17歳 | 94歳 | |
18歳 | 98歳 | |
19歳 | 103歳 | 超高齢犬 |
20歳 | 107歳 |
こちらの表は、
- 小型犬・中型犬「24+(犬の年齢-2)×4=人間に相当する年齢」
- 大型犬「12+(大型犬の年齢-1)×7=人間に相当する年齢」
の方式に基づいて計算しています。詳しくは、下記の記事をご覧ください。
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルのかかりやすい病気
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルには遺伝的疾患や発症率が高いとされる病気があるので、定期的な健康診断が必要です。
気をつけるべき病気をチェックしておきましょう。
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルのかかりやすい病気 1 僧帽弁閉鎖不全症
心臓の弁の異常により血液が逆流する病気です。遺伝子疾患であるため、早い場合はジュニア期頃から起こり、6歳以上になると60%以上がかかるといわれています。
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルのかかりやすい病気 2 脊髄空洞症
脊髄空洞症とは脊髄の中に水が溜まり、脊髄内に空洞が形成され、脊髄とそれを取り巻く組織の炎症、小脳症状、下位脳神経症状、上下肢の筋力低下、温痛覚障害、自律神経障害、側弯症など多彩な神経症状、全身症状が現れる病気です。
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルのかかりやすい病気 3 水頭症
頭蓋骨が小さいために脳室に髄液が過剰にたまり、さまざまな症状を引き起こしてしまう疾患です。
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルのかかりやすい病気 4 耳疾患
垂れ耳のため耳の中が蒸れやすく、外耳炎などに注意が必要です。
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの飼い方のコツ・注意点
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの飼い方のコツ 1 キャバリアに、肥満は大敵
キャバリアは、穏やかでやさしい性格で、また、子犬の頃から比較的おとなしく、あまり吠えることもありません。初心者でも育てやすく、人や犬にも優しく接することができるため、小さな子供やお年寄りがいる家庭にも向いています。ただし、おとなしいからとあまり外に出さずに運動不足になったり、食べ物をたくさん与えすぎてしまうと肥満になりやすくなってしまいます。この肥満は、キャバリアにとっては特に大敵になりますので、日頃から運動と食事の管理をしっかり行うことを心がけることがとても大切になります。
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの飼い方のコツ 2 天真爛漫でさみしがり屋
キャバリアの魅力はなんといってもその素直でやさしい性格です。協調性もあり、コミュニケーション上手なので、トレーニングにもあまり苦労することはないかもしれませんが、子犬の頃から、メリハリをもって接し、甘やかし過ぎることのないよう注意しましょう。人と一緒にいるのが大好きなので、お留守番は得意な方ではありません。できるだけ一緒にいる時間を作ってあげるようにすることが大切です。お留守番トレーニングは、短時間から行い、褒めて伸ばしながら徐々に練習していきましょう。キャバリアは活動的で、運動が大好きです。毎日の散歩の他にも、おもちゃで遊ぶのも大好きです。また、時々他の犬や人と遊ばせることで、キャバリアの特性が引き出されてさらに魅力的な姿を見ることができるでしょう。
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの飼い方のコツ 3 暑さ対策はしっかりと
キャバリアは、暑さに弱い傾向があります。一年を通して過ごしやすい温度と湿度の管理をし、快適で過ごしやすい環境を心がけ、特に、夏場は熱中症にならないように充分注意し、お散歩の時間帯も配慮するなど工夫しましょう。熱中症になると、心臓や呼吸器系にも負担がかかりやすくなってしまいます。
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの飼い方のコツ 4 耳のお手入れやブラッシングはこまめに
キャバリアは、トリミングは必要ありませんが、被毛は、長毛のダブルコートで、換毛期には特に抜け毛は多い傾向にあります。被毛の美しさを保つためにも定期的にブラッシングしましょう。また、耳が垂れていて蒸れやすく、大きな目はホコリも入りやすいため、こまめに耳と、目ヤニや目の周りの被毛のお手入れを行い、清潔に保つようにしましょう。
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの飼い方のコツ 5 定期的な健康チェックで病気を予防しましょう
キャバリアは、肥満になると心臓に負担がかかり、遺伝性疾患と言われている、心臓疾患を発症するリスクが高くなってしまします。また、関節に負担がかかり、気道が狭くなって呼吸困難を引きおこしやすくなったりします。食欲旺盛な傾向があるので、食べ過ぎや、栄養の偏り、おやつなどのあげすぎ、お留守番時の盗み食いなどには充分に注意し、適切な運動と体重管理が必要になります。 定期的に獣医で健康診断を受ける等、日頃から病気の予防に努めましょう。
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルをお迎えする方法
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルを家族としてお迎えする際の2つの方法を紹介します。
ブリーダーさんからお迎えする
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル専門の優良ブリーダーをネットなどで検索してみましょう。ブリーダーさんから子犬をお迎えする場合は両親が明らかなので、毛色や体格、性格などがわかるメリットがあります。
保護犬のキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルを探して里親になる
動物保護施設や動物愛護ボランティア団体などでは、繁殖犬を卒業して保護された子や、飼い主の事情で手放されて保護されているキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルを見つけることができるかもしれません。事前にサイトやSNSなどで探してみるのがおすすめです。
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの値段・価格の相場
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの子犬の価格相場は約30〜46万円(2023年)です。ドッグショーで優秀な成績を収めた親犬の子は、価格が高くなる傾向にあります。
保護施設などから里親として引き取る場合は、各施設によって定められた譲渡費用がかかります。事前に調べたり問い合わせてみたりするのがおすすめです。
まとめ
フワフワでシルクのような豪華な被毛に、大きな丸い目、品のある優雅な容姿のキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルは、原産国のイギリスではいまだに人気No.1の犬種です。
トリミングは不要ですが、ブラッシングなどのお手入れは大切です。健康チェックとコミュニケーションを兼ねて、毎日やさしくブラッシングしましょう。
性格も良く、飼い主さんが大好きで喜ばせることに熱心なところも可愛いのですが、家族と離れることが苦手な正確です。なるべく一緒にいてあげる環境での飼育をおすすめします。