「Yorkie/ヨーキー」の愛称で呼ばれるヨークシャーテリアは、世界最小の超小型犬としてギネスブックに登録されたこともある、とにかく小さくて可愛らしい犬種です。くりくりの瞳にあどけない表情で愛らしさ満点ですが、美しく光り輝くシルキーヘアを持つため「動く宝石」とも称されるほど、気品漂う容姿をしています。
その反面、性格は明るくやんちゃで、飼い主には甘えん坊なところも大きな魅力でしょう。今回はそんなヨークシャーテリアについて、歴史や寿命、気をつけたい病気、性格、飼い方などを紹介します。
ヨークシャーテリアの基本データ
原産国 | イギリス |
---|---|
サイズ | 小型犬 |
犬種グループ | テリア(穴の中に住むキツネなど小型獣用の猟犬3G) |
飼いやすさ・しつけのしやすさ | 初級~中級(比較的初心者でも挑戦しやすい) |
運動量 | 中程度 |
トリミング | 必要(月1回程度) |
ブラッシング | 毎日 |
お散歩 | 1日2回×15分程度 |
飼育費用 | 月2〜4万(医療費別途) |
かかりやすい病気・怪我 | 尿石症、膝蓋骨脱臼、気管虚脱、尿石症、先天性門脈シャント |
ヨークシャーテリアの歴史
ヨークシャーテリアは、イギリス北部のヨークシャーが原産です。綿花工場や鉱山で、作物や人間の食べ物を荒らすネズミ取り(ラッター)として飼育されていました。
青みがかった灰色で長い被毛を持つ小型犬の「ウォーターサイド・テリア」と、1800年代半ばにスコットランドの職工が仕事を求めてイギリスに移住した際に持ち込んだ「スコティッシュ・テリア」が交配されたのが起源です。
体が小さく、優れたラッターとして評判となったこの犬種は、1861年に「ブロークン・ヘアード・スコッチ・テリア」と名付けられました。その後「スカイ・テリア」や「マンチェスター・テリア」「マルチーズ」などさまざまな犬種との交配が行われ、1874年に「ヨークシャーテリア」の原型が誕生します。
イギリスのケネルクラブが1886年にヨークシャーテリアを公認しましたが、当時は5kg以上ある個体も多かったようです。公認されると、「ヨークシャーテリアの容姿の美しさはまるで宝石のようである」と、上流社会の女性たちの間でファッション・アクセサリーとして人気を博します。そして、連れ歩くのに便利なようにもっと小さく繁殖され、現在のような小型のコンパニオン・ドッグとなったのです。
やがて、ヨークシャーテリアは1870年代にアメリカに持ち込まれ、アメリカ国内でのドッグ・ショーにも登場しました。1885年には、アメリカン・ケネル・クラブがこの犬種をトイ・グループの一員として認めます。
ファッショナブルなアクセサリーのように可愛がられたヨークシャーテリアでしたが、その性質は、実に勇敢なところもあります。第二次世界大戦中には、体重がたった1.8 kgの「スモーキー」というヨークシャーテリアの女の子が、軍用犬として大活躍したことは有名です。米軍兵士に拾われたスモーキーは、12回の戦闘任務に就き、輸送船から飛んでくる砲弾を知らせて近くにいた多くの兵士の命を救うなど、複数の星章を授与されました。このスモーキーの活躍から、ヨークシャーテリアという犬種に再び関心が持たれるようになり、世界的に人気の犬種となっていきます。
アメリカ合衆国第37代大統領リチャード・ニクソンも、ホワイトハウスに住んでいた頃、ヨークシャーテリアを飼っていました。日本に輸入された時期は定かではありませんが、戦前から飼育されていたようです。
ヨークシャーテリアの性格と特徴・飼いやすさ
ヨークシャーテリアの気質は、賢く非常に活発で遊び好きですが、愛情深く、飼い主には甘える傾向が強いです。
飼い主への愛着が強いためお留守番は苦手で、多くのヨークシャーテリアは、飼い主が部屋を出て行くだけでもついて回ります。留守番をさせることが多いと「分離不安症」になる可能性が高いので、長時間ひとりで留守番をさせなければならないライフスタイルの家庭にはおすすめできません。
また、テリア種らしい自己主張が強く頑固な面があるため、少しトレーニングが難しいかもしれません。しかし、大声で叱ったり叩いたりすると信頼を失うので、短い時間でおやつを使って褒めて伸ばすしつけ方法「ポジティブ・トレーニング」で、無理せず行いましょう。
ヨークシャーテリアの被毛と種類
ヨークシャーテリアの被毛は「シルキーコート」と呼ばれる、細くストレートで非常に艶があるシングルコートです。顔の被毛は長く伸びることが多いので、「トップ・ノット」といわれる、耳と耳の間の毛をリボンでくくるスタイルにすることもあります。これもチャーミングポイントのひとつです。
毛色は子犬のときは、ほとんどブラックか、ブラック&タン(黄味がかった茶色)です。成長ともに変化し1歳から2歳頃までにブラックの部分が美しいダーク・スチール・ブルー(青みの強い灰色)という色に、タンの部分がきれいなゴールドに変化していきます。JKC(ジャパンケネルクラブ)によって「ダークスチールブルー&タン」のみがスタンダードとして認められています。
もともと様々な種類のテリアをルーツにもつことから遺伝的要素や様々な要因により個体差があり、また成長途中だけでなく成犬になってからも数回毛色が変わることもあると言われ、色の濃淡で印象も違い様々なカラーで表現されることもあります。この変化を楽しむのもヨークシャーテリアの魅力のひとつでもあるでしょう。
ダークスチールブルー&タン
スタンダードとされる。
ブラック&タン
子犬の時はほとんどがこの毛色で、成長とともに毛色は変化します。まれにほとんど変わらない個体もいます。
ブラック&ゴールド
ブラックの毛色はあまり変わらずに、タンの部分が光沢のある美しいゴールドに変化した毛色です。
スチールブルー&タン
ブルーはわずかに青みがかったブラックで「ダークスチールブルー&タン」に一番近い色とされます。
スチールブルー&ゴールド
「スチールブルー&タン」のタンがゴールドに変化し、艶のある美しいブルーとゴールドの毛色です。
ヨークシャーテリアの大きさと体高・体重
ヨークシャーテリアは、チワワと並ぶ世界最小レベルの小型犬で、均整のとれた体つきをしています。体高は15~18cm、体重は2~3kg程度です。
ヨークシャーテリアの体重 | ヨークシャーテリアの体高 |
---|---|
2~3kg程度 | 15~18cm |
ヨークシャーテリアの平均寿命と人間年齢
ヨークシャーテリアの平均寿命は13~16歳ですが、イギリスで暮らしていた「ジャック」という子は25歳まで長生きしました。
人間に換算した場合の年齢は下記の表をご参照ください。
犬の年齢 | 人間に換算した年齢 | 成長ステージ |
---|---|---|
3か月 | 4歳 | 子犬 |
6か月 | 7歳半 | |
9か月 | 11歳 | |
1歳 | 15歳 | |
1歳半 | 19歳半 | |
2歳 | 23歳 | 成犬 |
3歳 | 28歳 | |
4歳 | 32歳 | |
5歳 | 36歳 | |
6歳 | 40歳 | シニア犬 |
7歳 | 44歳 | |
8歳 | 48歳 | |
9歳 | 52歳 | |
10歳 | 56歳 | |
11歳 | 60歳 | |
12歳 | 64歳 | |
13歳 | 68歳 | |
14歳 | 72歳 | 高齢犬 |
15歳 | 76歳 | |
16歳 | 80歳 | |
17歳 | 84歳 | |
18歳 | 88歳 | |
19歳 | 92歳 | |
20歳 | 96歳 |
ヨークシャーテリアがかかりやすい病気や怪我
身体が小さいので、麻酔に対する耐性が低いことが多い犬種です。そのため毎日の健康チェックはもちろん、定期的な健康診断を受け、病気は早期発見治療し、事故にも十分注意しましょう。
ヨークシャーテリアには脳疾患、骨関節疾患、消化器疾患が多いといわれています。注意しなければならない病気の一例を挙げるので、チェックしておきましょう。
ヨークシャーテリアがかかりやすい病気や怪我 1門脈体循環シャント
「シャント」と呼ばれる異常な血管が存在し、肝臓で分解されるべき毒素や老廃物が全身にまわってしまう病気です。
ヨークシャーテリアがかかりやすい病気や怪我 2水頭症
髄液が頭蓋骨内に溜まり脳が圧迫される病気で、ふらつきや旋回運動、てんかん様発作、斜視などの症状があります。
ヨークシャーテリアがかかりやすい病気や怪我 3膝蓋骨脱・肘関節形成不全
小型犬に多くみられる関節の病気です。
ヨークシャーテリアがかかりやすい病気や怪我 4気管虚脱
呼吸障害を引き起こす病気です。
ヨークシャーテリアがかかりやすい病気や怪我 5僧帽弁閉鎖不全症
小型犬に多い心臓の病気で、重症化すると、肺水腫に進行して命の危険性があります。
ヨークシャーテリアがかかりやすい病気や怪我 6糖尿病
インスリンを作る膵臓の細胞が機能しなくなり血液中の糖(血糖値)が増える病気で、インスリン治療が必要となります。
ヨークシャーテリアの飼い方のコツ・注意点
ヨークシャーテリアの飼い方のコツ 1 幼犬の頃からしっかりしつけする
ヨークシャーテリアは警戒心も強いので、吠え癖や噛み癖が問題になることがあります。パピーの頃から人やほかのワンコや音などに慣れさせるなどの社会化トレーニングが必要です。
また、飼い主への依存度が高く留守番が苦手なので、ひとりにされる気配を感じると敏感に反応し、いたずらする子もいます。パピーの頃から、中におやつを入れて長時間遊ばせる知育玩具などを与えて、ひとりの時間に慣れさせましょう。
しかし、長時間の留守番はワンコの健康を損なう可能性もあり、ヨーロッパのペット先進国では、ワンコだけで長時間お留守番させることを禁止している国もあります。「分離不安症」にさせないためにも、なるべく留守番させないようにする方が良いですね。
ヨークシャーテリアの飼い方のコツ 2 散歩は1日朝夕2回、運動不足にならないように
ヨークシャーテリアはたくさんの運動量を必要としませんが、運動の時間は毎日しっかりとり、15分ほどの散歩を1日2回くらい行いましょう。
ヨークシャーテリアの飼い方のコツ 3 毎日ブラッシングする
被毛は細く絡まりやすく、また、美しい輝きを保つためにも毎日のブラッシングが不可欠です。
ヨークシャーテリアの飼い方のコツ 4 月に1回トリミング
ヨークシャーテリアの被毛は伸び続けるので、月1回程度のトリミングが必要です。カットスタイルを5つ紹介します。
- フルコート:ヨークシャーテリアらしい長毛に整えるスタイル
- ミッキーカット:耳の毛を丸くカットしたミッキー・マウスのようなスタイル
- ベアカット:子熊のようなスタイル
- ライオンカット:顔まわりをライオンのたてがみのようにするスタイル
- デザインカット:耳の飾り毛を残したスタイル
ヨークシャーテリアの飼い方のコツ 5 滑りにくい床材・落ち着いた部屋で過ごさせる
フローリングなどの滑りやすい床の場合、骨折や脱臼の原因になることもあります。滑りにくい材質の床やカーペットにするなど、工夫しましょう。また、活発なので走りまわっても安全なように、室内の届く範囲に危険なものは置かないなどの配慮が必要です。
ヨークシャーテリアの値段・価格の相場
ヨークシャーテリアの子犬の平均価格は約30万円(2023年)ほどです。 ドッグショーで優秀な成績を収めた親犬の子は、価格が高くなる傾向にあります。
保護施設などから里親として引き取る場合は、各施設によって定められた譲渡費用がかかります。事前に調べたり問い合わせてみたりすると良いですよ。
ヨークシャーテリアをお迎えする方法
ヨークシャーテリアを家族としてお迎えする際の2つの方法を紹介します。
ブリーダーさんからお迎えする
ヨークシャーテリア専門の優良ブリーダーをネットなどで検索してみましょう。ブリーダーから子犬をお迎えする場合は両親が明らかなので、毛色や体格、性格などがわかるメリットがあります。
また、お迎え後もブリーダーさんに困った時に相談ができたり、兄弟犬の輪が広がったりとサポートしてもらえる繋がりがもてるのも心強いポイントです。
保護犬のヨークシャーテリアを探して里親になる
動物保護施設や動物愛護ボランティア団体などでは、繁殖犬を卒業して保護された子や、飼い主の事情で手放されて保護されているヨークシャーテリアを見つけることができるかもしれません。事前にサイトやSNSなどで探してみるのがおすすめです。
まとめ
ヨークシャーテリアは愛情深く忠実ですが、エネルギッシュで遊び好きで楽しいワンコです。テリア特有の頑固さや甲高い声での鳴き癖の心配などもありますが、賢いので、褒めて教えるトレーニング法で解決できるでしょう。
毎日のグルーミングや散歩など、手間をかける時間が必要です。また小さな身体で怪我をしやすいため、いつも見守ってあげられるような、時間に余裕のある家庭に向いています。
まるで玩具のように愛らしく小さなヨークシャーテリア。家族に笑顔と癒やしをもたらしてくれる、非常に大きな存在になるでしょう。