音響機器メーカー「Victor(ビクター)」の、小型犬が蓄音器に耳を傾けている愛らしいロゴマークを一度は見たことがあるのではないでしょうか。このロゴのモデルとなったのは、実在した世界的に有名な「ニッパー」という名のジャック・ラッセル・テリア(イギリス放送局BBCによる)です。
ジャック・ラッセル・テリアは、200年ほど前にイギリスでキツネ狩りのために開発された犬種で、活発で独立心が強く、賢い小型犬です。飼い主さんにはとても愛情深く魅力的なのですが、実はしつけや管理が大変で、経験豊富な愛犬家さん限定とまでいわれるほど飼育が難しいとされています。
しかし、元気で可愛らしいジャック・ラッセル・テリアを、一度は飼ってみたいと思う方も多いのではないでしょうか。今回は、ジャック・ラッセル・テリアはどんな犬種なのか、性格や飼い方などを詳しく紹介します。お迎えしてみたいと思う方は参考にしてみてくださいね。
ジャック・ラッセル・テリアの基本データ
原産国 | イギリス(改良国:オーストラリア) |
---|---|
サイズ | 小型犬 |
犬種グループ | テリア(穴の中に住むキツネなど小型獣用の猟犬グループ) |
飼いやすさ・しつけのしやすさ | 中〜上級 |
運動量 | 多い |
トリミング | 不要 |
ブラッシング | 必要(2〜3日に1回程度) |
お散歩 | 1日2回×60分程度 |
飼育費用 | 月1〜2万(医療費別途) |
かかりやすい病気・怪我 | 膝蓋骨脱臼・レッグペルテス・白内障 |
ジャック・ラッセル・テリアの歴史
ジャック・ラッセル・テリアの祖先は、19世紀初頭に南イングランドで生まれました。
狩猟好きだったジョン・ジャック・ラッセル牧師が、効率的な狩猟犬を求めて、イギリス原産のフォックス・テリア( 古くから、貴族のキツネ狩りで活躍していた犬種)の白い雌犬「トランプ」に、ブラック&タンのテリアやビーグルなどを交配させます。
そして、更に気の荒さを持たせるため、狩猟犬としてのブルテリアなども交配されたことで、見かけの可愛らしさに反する気性の荒い面を持つようになりました。このようにして「パーソン・ラッセル・テリア」を誕生させます。※現存の犬種
パーソン・ラッセル・テリアは、現在のジャック・ラッセル・テリアよりは少し体高が高かったようです。大胆で運動能力が高く、馬にもついていけるほどの脚力があり、その素早さ、知性、決断力、そして狩猟への強い欲求を持つことから、有能な狩りのパートナーとして狩猟家たちの心を掴み、人気を博します。
ジョン・ジャック・ラッセル牧師の死後、2人の男性がパーソン・ラッセル・テリアのスタンダードを継承しましたが、第二次世界大戦後、狩猟犬の必要性は低下したため、パーソン・ラッセル・テリアの頭数は減少してしまいます。
その後、オーストラリアに渡ったパーソン・ラッセル・テリアは、愛好家たちが育成に力を注ぎ、コンパニオンドッグとして家庭でも飼いやすいよう、体高を下げるためにウェルシュ・コーギーと交配した結果、現在の「ジャック・ラッセル・テリア」が誕生します。
そして、オーストラリアのケネル・クラブの犬種に「ジャック・ラッセル・テリア」というスタンダードが設定され、オーストラリア国立犬舎評議会(ANKC)のショーに出品することが許可されました。
小柄で可愛いのに筋肉質でパワフル、賢く俊敏、そんなジャック・ラッセル・テリアは旋風を巻き起こし、グループ賞やベスト・イン・ショーを受賞するようになるまでに、そう時間はかかりませんでした。
2001年、FCI(国際畜犬連盟)はジャック・ラッセル・テリアを犬種として認め、オーストラリアン・スタンダードを制定しました。それ以来、ジャック・ラッセル・テリアはヨーロッパ中のテリア・グループのなかで最も人気のある犬種の1つとなっています。
原産地はイギリスですが、スタンダードをつくり、ケネル・クラブの犬種にしたオーストラリアは改良原産国とされています。
ジャック・ラッセル・テリアの性格と特徴・飼いやすさ
イギリスで昔からとても人気のあるジャック・ラッセル・テリアは、もともとキツネ狩りのために作り出された犬種で、今でもその狩猟犬としての本能を持ち合わせており、体のコンパクトさとは対照的に、力強く、好奇心旺盛で、行動的なワーキング・テリアです。
とても活動的なため運動をしっかりとさせてあげないと、ストレスなどからさまざまな問題に出る子もいますので、毎日のお散歩と運動を欠かさず行う必要があります。一緒にアウトドアやスポーツを楽しむなどアクティブに過ごしたい飼い主さんにぴったりの犬種です。
そんなジャック・ラッセル・テリアは、知的で陽気、無邪気で明るい性格が魅力的です。賢さと素直さを合わせ持っていますが、頑固で負けず嫌いな面や、狩猟犬の習性から吠えやすい性質も持ち合わせています。
なかなか初めての方には難しい犬種ですが、パピー期からしっかりと社会化やトレーニングを行い、日々のボール遊びやドッグスポーツなどで満たしてあげることで、一緒にいるだけで元気をくれるパートナーになってくれます。
ジャック・ラッセル・テリアの被毛と種類
ジャックラッセルテリアの被毛の色は「ホワイト」がベースで顔や耳、背中など体の一部に、ブラック、タン、レモンなどの大きな斑があり、「ホワイト&タン」「ホワイト&ブラック」「ホワイト&タン&ブラック(トライカラー)「ホワイト」の4種類に分けられます。
また、短毛のスムースコート、ウェーブのかかったワイヤーコートのラフ(長毛)、その中間のブロークンコートの3種類で、すべてダブルコートです。
スムースコート
毛の長さが数ミリ~1センチと短く、滑らかですべすべとした触り心地のタイプ。
ラフコート
柔らかくくねくねしたウェーブがかかった長毛タイプ。
ブロークコート
他の2種より毛量が多く、長い毛と短い毛、柔らかい毛と固い毛が混ざり合ったタイプ。
ジャック・ラッセル・テリアの大きさと体高・体重
ジャック・ラッセル・テリアの体高は25〜30cmで、体重は4kg~6kgくらいが平均です。
ほどよい体の大きさと筋肉、柔軟なボディがジャック・ラッセル・テリアの大きな特徴です。体高よりも体長が長く、体は引き締まり、たくましい四肢をもっています。サイズ的には小型犬に分類されます。
ジャック・ラッセル・テリアの体重 | ジャック・ラッセル・テリアの体高 |
---|---|
4kg~6kg | 25〜30cm程度 |
ジャック・ラッセル・テリアの平均寿命と人間年齢
ジャック・ラッセル・テリアの平均寿命は13〜16歳で、非公式ですが最高齢は21歳だといわれています。適切な生活環境と栄養、運動を与え、健康に注意することが長生きの秘訣です。
ジャック・ラッセル・テリアに換算した場合の年齢は下記の表をご参照ください。
犬の年齢 | 人間に換算した年齢 | 成長ステージ |
---|---|---|
3か月 | 4歳 | 子犬 |
6か月 | 7歳半 | |
9か月 | 11歳 | |
1歳 | 15歳 | |
1歳半 | 19歳半 | |
2歳 | 24歳 | 成犬 |
3歳 | 28歳 | |
4歳 | 31歳 | |
5歳 | 35歳 | |
6歳 | 38歳 | シニア犬 |
7歳 | 42歳 | |
8歳 | 45歳 | |
9歳 | 49歳 | |
10歳 | 52歳 | |
11歳 | 56歳 | |
12歳 | 59歳 | |
13歳 | 63歳 | |
14歳 | 66歳 | 高齢犬 |
15歳 | 70歳 | |
16歳 | 73歳 | |
17歳 | 77歳 | |
18歳 | 80歳 | |
19歳 | 84歳 | |
20歳 | 87歳 |
こちらの表は、
- 小型犬・中型犬「24+(犬の年齢-2)×4=人間に相当する年齢」
- 大型犬「12+(大型犬の年齢-1)×7=人間に相当する年齢」
の方式に基づいて計算しています。詳しくは、下記の記事をご覧ください。
ジャック・ラッセル・テリアのかかりやすい病気
ジャック・ラッセル・テリアは一般的に健康な犬種ですが、気をつけたい病気もあります。
ジャック・ラッセル・テリアのかかりやすい病気 1 関節疾患
股関節および肘の異形成、膝蓋骨脱臼などの関節疾患は、ジャック ラッセル テリアはとくに気をつけなければなりません。痛み、跛行、そして最終的には関節炎につながる可能性があります。
ジャック・ラッセル・テリアのかかりやすい病気 2 クッシング症候群
体内でコルチゾールというホルモンが過剰に分泌されたときに発生します。これは、のどの渇きや排尿の増加、体重増加、脱毛など、さまざまな症状を引き起こす可能性があります。
ジャック・ラッセル・テリアのかかりやすい病気 3 眼疾患
白内障、緑内障、水晶体脱臼、進行性網膜萎縮など、いくつかの眼の問題を起こしやすいとされています。これらは失明につながる危険性があります。
ジャック・ラッセル・テリアのかかりやすい病気 4 レッグ・カルベ・ペルテス病(大腿骨頭無菌性壊死病)
大腿骨頭または大腿骨への血液供給の減少によって大腿骨の骨頭が壊死してしまう病気です。
このほかにも注意しなければならない病気があります。毎日の健康チェックを怠らず、異常があればすぐに獣医師の診察を受け、また定期的な健康診断を受けることが重要です。
ジャック・ラッセル・テリアの飼い方のコツ・注意点
ジャック・ラッセル・テリアの飼い方のコツ 1 とにかく体を動かしてストレスをしっかり発散させよう!
猟犬だったジャック・ラッセル・テリアは、小型犬ですがとてもエネルギーがありタフな犬種です。運動不足はストレスになるため、朝晩必ず30分以上はお散歩をしてあげましょう。また週末はドッグランなど思いっきり走れる場所に連れて行ってあげるとよいでしょう。また宝探しゲームや隠れんぼなど頭を使うゲームも好きなので、取り入れてあげましょう。
ジャック・ラッセル・テリアの飼い方のコツ 2 吠える本能をコントロールしよう!
ジャック・ラッセル・テリアは猟犬だった気質から、他者などへの警戒から吠えやすい犬種です。パピー期から、この吠えをコントロールするようなトレーニングが必要です。
ジャック・ラッセル・テリアの飼い方のコツ 3 噛み癖対策を!
ジャック・ラッセル・テリアは猟犬だった気質から、物を噛んでしまったりというトラブルが多い犬種です。お留守番の際は噛むおもちゃなどを準備し、噛まれてはいけないものは届く範囲に置かないようにしましょう。特に電気のコード類など間違って噛むと危険なものは必ず隠すようにしましょう。
ジャック・ラッセル・テリアの飼い方のコツ 4 ジャックラッセルテリアは抜け毛が意外に多い犬種!ブラッシングはこまめに!
ジャック・ラッセル・テリアの被毛はダブルコートといって、上毛と下毛の2重構造になっています。ダブルコートの犬種はみな抜け毛が多く、ジャック・ラッセル・テリアも例外ではありません。
特に春と秋にやってくる換毛期には、より大量の抜け毛が発生し、空中に毛が舞っていることも珍しくありません。スムース、ブロークン、ラフのどの被毛タイプでも、毎日のブラッシングケアと合わせて掃除をこまめにしてあげましょう。
ジャック・ラッセル・テリアの飼い方のコツ 5 膝蓋骨脱臼に注意!滑りにくい環境を整えてあげよう!
ジャック・ラッセル・テリアがとくに気をつけたい病気の一つに、膝蓋⾻脱⾅などの関節トラブルがあります。フローリングを走り回っているときに大きな負担がかかり、痛めてしまう場合も。滑りにくい床材やカーペットなどを敷くなど足腰に配慮した環境を整えてあげましょう。同時に、大きな段差をなくす、高いところから飛び降りをさせないなどの注意も必要です。
ジャック・ラッセル・テリアをお迎えする方法
ジャック・ラッセル・テリアを家族としてお迎えする際の2つの方法と、料金の相場を紹介します。
ブリーダーさんからお迎えする
ジャック・ラッセル・テリア専門の優良ブリーダーをネットなどで検索してみましょう。ブリーダーさんから子犬をお迎えする場合は両親が明らかなので、毛色や体格、性格などがわかるメリットがあります。
保護犬のジャック・ラッセル・テリアを探して里親になる
動物保護施設や動物愛護ボランティア団体などでは、繁殖犬を卒業して保護された子や、飼い主の事情で手放されて保護されているジャック・ラッセル・テリアを見つけられるかもしれません。サイトやSNSなどで探してみるのがおすすめです。
ジャック・ラッセル・テリアの値段・価格の相場
ジャック・ラッセル・テリアの子犬の価格相場は約30万円〜(2023年)です。保護施設などから里親として引き取る場合は、各施設によって定められた譲渡費用がかかります。事前に調べたり問い合わせてみたりすると良いですよ。
まとめ
ジャック・ラッセル・テリアは知力に優れ、非常に活発でエネルギッシュな犬種です。そのため十分な運動を必要とするので、一緒に運動できる、時間に余裕のある家族がいる家庭に向いています。
狩猟犬であったためしつけはしやすいのですが、誤った管理や訓練をした場合、逆に問題行動を引き起こすことがあるので注意が必要です。
また、知的好奇心や狩猟本能を満たすために、宝探しや知育玩具で遊ばせてあげると良いですよ。たくさんの愛情をもって正しい飼育方法を行えば、明るく元気で楽しい家族となってくれるでしょう。