小型犬種のシーズーは、マズルがとても短く、愛嬌のある独特の表情をしています。被毛は絹のようにしなやかでツヤがあり、顔周りの毛はフサフサ、丸みを帯びた小さな頭には菊の花が開いたような飾り毛、また「プリュームテイル」と呼ばれる羽根状に垂れ下がった尻尾など、気品に富んだ容姿が魅力です。
胴も脚も短く、眼は大きくクリッとしていてとても愛らしいのですが、どこか高貴なイメージを感じさせます。それは、中国の宮廷犬としても寵愛されていた歴史があるからかもしれません。今回は、そんなシーズーの誕生の歴史や性格、飼い方、お迎えの仕方などを紹介します。
シーズーの基本データ
原産国 | チベット(中国) |
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サイズ | 小型犬 |
犬種グループ | 愛玩犬グループ(家庭犬、伴侶や愛玩目的の犬G) |
飼いやすさ・しつけのしやすさ | 初めての方でもチャレンジしやすい |
運動量 | 少なめ |
トリミング | 必要 |
ブラッシング | 毎日必要 |
お散歩 | 1日30分程度 |
飼育費用 | 月1〜2万(医療費別途) |
かかりやすい病気・怪我 | 膝蓋骨脱臼、角膜炎・緑内障、皮膚疾患、心臓病 |
シーズーの歴史
シーズーはチベット原産で、19世紀にラサ・アプソとペキニーズ(両種現存)を交配して作られた犬種とされています。古くからチベットの寺院で飼育され、中国皇帝に貢ぎ物として贈られました。
1860年代、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマは、清の咸豊帝(かんぽうてい)の側妃で時の権力者であった西太后に、この犬種の繁殖ペアを献上したため、紫禁城で飼われることとなります。
伝説によると、お釈迦様は獅子に乗って地上に降り立ち、どこへ行くにも小さな獅子のような顔立ちをした神聖な動物を連れていたということから、獅子のような顔立ちのこのワンコは中国語で「獅子狗(シーズー・ゴウ)」と呼ばれ、邪気を払い、縁起を担ぐという意味でも宮廷で尊ばれました。
小さな獅子狗は、皇帝や皇后の足元に置かれ、寒い宮中で衣の中やベッドの中に入れて暖をとるベッド・ウォーマーとして重宝されていました。
王宮の専属品とされていた獅子狗は門外不出であり、王宮の外で飼っている人が見つかると、死刑になることもあったようです。
西太后が亡くなったあと、宮廷で飼育されていたほとんどの獅子狗たちは外国人や高官に分け与えられ、一般家庭でも飼育されるようになります。
19世紀にイギリスに渡った獅子狗は、ブリーディングが進められ、「シーズー(Shih Tzu)」と呼ばれることが一般的になりました。1940年には世界最古の犬愛護団体、イギリスのザ・ケネル・クラブで犬種の標準が定められます。
その後シーズーはヨーロッパ中に広まりますが、第二次世界大戦後、米軍の帰還兵がヨーロッパやアジアから持ち帰ったことをきっかけにアメリカでも人気が高まります。そして、1969年にアメリカン・ケネル・クラブのトイ・グループに認定されました。
日本にも1960年代に入ってきたとされており、1964年にはすでにジャパン・ケネル・クラブに犬種として登録されていました。
シーズーの性格と特徴・飼いやすさ
シーズーは遊び好きで活発な面もありますが、基本的には穏やかで落ち着いています。散歩や運動は必要ですが比較的簡単に満足するため、シニア層にもおすすめの犬種です。
人懐っこく、家族には忠実で愛情深い性格です。子どもやほかのワンコに対しても攻撃性が低く、また無駄吠えなどの問題行動も少ないため飼いやすいでしょう。
反面、プライドが高くやや頑固な一面もあるため、自分の思い通りにならないときには、しつこく主張することがあります。
しかし、基本的には飼い主に従順で賢いため、根気よく適切なトレーニングを行えば問題なく飼育することができるでしょう。
シーズーの被毛とシーズーカットの種類
シーズーの被毛はあらゆる毛色が許容されています。ゴールド&ホワイト、ブリンドル&ホワイト、ブラック&ホワイト、ブルー&ホワイト、ブラウン、レッド、グレー、ブラックなどのバリエーションがあります。
絹のような細くて美しい毛が特徴的なシーズー。毛が抜けやすいダブルコートの犬種の中でも、シーズーは長毛種で毛周期が長いため、比較的抜け毛が少ない犬種です。トリミングは月1回ほどで大丈夫ですが、ブラッシングは毎日必要です。
シーズーカットは「フルコート」の他に、お顔を丸くカットする「テディベアカット」や、夏の「サマーカット」などが楽しめます!
シーズーの大きさと体高・体重
シーズーの平均体重は5〜7kg、体高は25〜27cmです。
シーズーは体高より体長がわずかに長く、見た目に反して決して華奢ではないがっしりとした体型の犬種です。気高い雰囲気がある被毛の豊富さや、「菊の花のような」と言われるお顔も特徴です。
シーズーの体重 | シーズーの体高 |
---|---|
5kg~7kg | 25〜27cm程度 |
シーズーの平均寿命と人間年齢
シーズーの平均寿命は13〜15歳ですが、国内最高記録はなんと23歳です。
精神的にも肉体的にもストレスのない環境を整え、獣医師による定期的な健康診断の受診など、しっかりとした健康管理を行うことが長生きの秘訣です。
シーズー人間に換算した場合の年齢は下記の表をご参照ください。
犬の年齢 | 人間に換算した年齢 | 成長ステージ |
---|---|---|
3か月 | 4歳 | 子犬 |
6か月 | 7歳半 | |
9か月 | 11歳 | |
1歳 | 15歳 | |
1歳半 | 19歳半 | |
2歳 | 23歳 | 成犬 |
3歳 | 28歳 | |
4歳 | 32歳 | |
5歳 | 36歳 | |
6歳 | 40歳 | シニア犬 |
7歳 | 44歳 | |
8歳 | 48歳 | |
9歳 | 52歳 | |
10歳 | 56歳 | |
11歳 | 60歳 | |
12歳 | 64歳 | |
13歳 | 68歳 | |
14歳 | 72歳 | 高齢犬 |
15歳 | 76歳 | |
16歳 | 80歳 | |
17歳 | 84歳 | |
18歳 | 88歳 | |
19歳 | 92歳 | |
20歳 | 96歳 |
こちらの表は、
- 小型犬・中型犬「24+(犬の年齢-2)×4=人間に相当する年齢」
- 大型犬「12+(大型犬の年齢-1)×7=人間に相当する年齢」
の方式に基づいて計算しています。詳しくは、下記の記事をご覧ください。
シーズーのかかりやすい病気
シーズーのかかりやすい病気 1 皮膚疾患
シーズーはダブルコートであり、日本の高温多湿の環境ではマラセチアなどの菌が繁殖しやすいため、脂漏性皮膚炎などの皮膚疾患に注意が必要です。
シーズーのかかりやすい病気 2 眼疾患
シーズーの眼の形状からドライアイや角膜症の発症率が高いです。
シーズーのかかりやすい病気 3 耳の疾患
耳が長い毛に覆われているため蒸れやすく、外耳炎などになりやすいため、耳の中は常に清潔にケアする必要があります。
シーズーのかかりやすい病気 4 呼吸器疾患
短頭種なので、ガーガー音や咳、呼吸困難などの症状が見られる「気管虚脱」や「短頭種気道症候群」になりやすいです。
シーズーの飼い方のコツ・注意点
シーズーの飼い方のコツ 1 シーズーは抜け毛は少ないけど、お掃除にはコツが必要!
ダブルコートの犬種の中では毛が抜けにくいと言われるシーズーですが、抜けにくいといえども、その長くて細い毛は掃除機では取りにくく、ガムテープやコロコロ粘着クリーナーでこまめにお掃除をする必要があります。
シーズーの飼い方のコツ 2 美しい被毛をキープするため毎日ブラッシングを!
シーズーの長くて細い被毛は密度もあり絡まりやすいため、毎日のブラッシングは欠かせません。特に夏は熱がこもってしまわないように、毛のもつれをとき、被毛の通気性を保ってあげるようにしましょう。また目周りの被毛が目に入りやすいのでカットやケアで工夫してあげましょう。
シーズーの飼い方のコツ 3 夏は特に熱中症対策を!
短頭種で体温調節が苦手なシーズーは冬でも熱中症になることも。ハアハアと呼吸が激しくなり、ヨダレを大量に流す場合は熱中症の可能性があります。特に夏場は注意が必要です。エアコンでの温度管理や散歩時間を早朝や日暮れ後にしたり、外出時もアスファルトを避けるなど十分な対策が必要です。
シーズーの飼い方のコツ 4 運動量は少なくても、お散歩やコミュニケーションは十分に!
シーズーは比較的運動量は少ないですが、パピー時はとてもエネルギッシュなので、しっかりと運動や遊びをしてあげましょう。また、室内だけでなく1日に1回はお外にも連れ出してストレス解消や社会化をしてあげましょう。
シーズーの飼い方のコツ 5 甘えん坊にながされず、しっかりトレーニングを
フレンドリーで明るく、比較的しつけのしやすいシーズーですが、甘やかし過ぎるとわがままになったり、頑固な一面ももっているので、子犬期にはしっかりと社会化やトレーニングに取り組みましょう。
シーズーの飼い方のコツ 6 膝蓋骨脱臼に注意!滑りにくい環境を整えてあげよう!
小型犬全般に発症しやすい、膝蓋骨脱臼。シーズーでも、子犬期から発症するケースもあります。遺伝的な要因もあると言われていますので、予防はなかなか難しいですが、フローリングを走り回っているときに大きな負担がかかり、痛めてしまう場合も。滑りにくい床材やカーペットなどを敷くなど足腰に配慮した環境を整えてあげましょう。同時に、大きな段差をなくす、高いところから飛び降りをさせないなどの注意も必要です。
シーズーをお迎えする方法
シーズーを家族としてお迎えする際の2つの方法と、料金の相場を紹介します。
ブリーダーさんからお迎えする
シーズー専門の優良ブリーダーをネットなどで検索してみましょう。ブリーダーさんから子犬をお迎えする場合は両親が明らかなので、毛色や体格、性格などがわかるメリットがあります。
保護犬のシーズーを探して里親になる
動物保護施設や動物愛護ボランティア団体などでは、繁殖犬を卒業して保護された子や、飼い主の事情で手放されて保護されているシーズーを見つけられるかもしれません。サイトやSNSなどで探してみるのがおすすめです。
シーズーの値段・価格の相場
シーズーの子犬の価格相場は約24万円〜(2023年)です。保護施設などから里親として引き取る場合は、各施設によって定められた譲渡費用がかかります。事前に調べたり問い合わせてみたりすると良いですよ。
まとめ
シーズーはお釈迦様の祝福を受けた神聖な動物であると考えられ、古くから中国の王宮で大切に飼われてきたワンコです。鼻を中心に広がる被毛が菊のように見えることから、「クリサンセマム・ドッグ(菊の犬)」とも呼ばれています。
適度に活発で、人懐こく優しい性格なので、シニア層や小さい子どもがいる家庭、多頭飼育でも比較的飼いやすいでしょう。毛が長く伸びるため、毎日のグルーミングケアが必要になりますが、頭の毛を集めてリボンをつけたり、カットやアレンジを楽しめたりできるのもシーズーの魅力のひとつですね。