人懐こく優しい性格、そして聡明であるラブラドールレトリーバーは、盲導犬や警察犬、捜索救助犬、麻薬探知犬などとして大活躍していることは、ご存知の方も多いでしょう。原産地はイギリス(歴史的にはカナダのニューファンドランド島)で、欧米では中型犬に分類されますが、日本では大型犬とされています。
世界的に人気が高く、原産国のイギリスをはじめ、欧米では数十年間も飼育頭数がトップ5に入っているほどの人気犬種です。しかし、実は血統的には、日本犬に極めて近いアジア犬種であるということがわかっています。
今回は、そんなラブラドールレトリーバーの歴史や性格、かかりやすい病気、寿命、飼い方などを紹介します。
ラブラドールレトリーバーの基本データ
原産国 | イギリス |
---|---|
サイズ | 大型犬 |
犬種グループ | ポインター・セター以外の鳥猟犬 |
飼いやすさ・しつけのしやすさ | 初心者でもチャレンジしやすいが、体力面や飼育費用の考慮が必要 |
運動量 | 多い |
トリミング | 不要 |
ブラッシング | 2〜3日に1回必要 |
お散歩 | 1日2回×60〜90分程度 |
飼育費用 | 月1〜3万(医療費別途) |
かかりやすい病気・怪我 | 腫瘍・股関節形成不全・白内障・肺動脈弁狭窄 |
ラブラドールレトリーバーの歴史
ラブラドールレトリーバーの起源は、大西洋の北に位置するカナダのニューファンドランド島にあります。ラブラドールという名前の由来は、このニューファンドランド島の北西にあるラブラドール地方です。そして、ニューファンドランド島にはすでに『ニューファンドランド』という大型犬種が存在していました。
ニューファンドランド島では漁業が盛んで、使用犬であった『ニューファンドランド』は海に流された漁網を捜索したり、釣り針から外れた魚を潜って取ってきたり、落とした漁師の帽子さえも回収するほど賢く役に立っていました。
『ニューファンドランド』と別のウォータードッグ・タイプの犬とを交配させて作られた犬種(ニューファンドランドより少し小さめ)を『セント・ジョンズ・ウォーター・ドッグ』(ニューファンドランドの州都名がセント・ジョンズ)と呼んでいました。
1800年代初頭、忠実で賢く仕事ができる『セント・ジョンズ・ウォーター・ドッグ』の販売がカナダの船乗りの副業となり、イギリスへの人気輸出品となります。
商人たちはイギリスの港に停泊した後、集まった観衆の前で『セント・ジョンズ・ウォーター・ドッグ』に、水中に投げ込んだ物を回収させるパフォーマンスを見せていたようです。
この様子を見ていたマルムズベリー伯爵という人物が、このワンコが鴨猟にも適していると判断し買い上げ、『ニューファンドランド』と区別するために『ラブラドール・ドッグ』と呼ぶようになります。
その後、イギリスで繁殖改良が行われ、現在のラブラドールレトリーバーのような容姿と能力を持つ犬種が開発されました。獲物を回収 (Retrieve/レトリーブ) するという意味からレトリーバーが付けられ『ラブラドールレトリーバー』が誕生します。
そしてラブラドールレトリーバーは、その知能の高さと穏やかな気質、人間に忠実で良きパートナーとなることから、ウォーター・ドッグとしてだけではなく、家庭犬としてもイギリスで大人気の犬種となったのです。
1903年には、イギリス・ケネル・クラブに正式に登録されます。そして現在では、ラブラドールレトリーバーはイギリス原産となりました。
ラブラドールレトリーバーの性格と特徴・飼いやすさ
ラブラドールレトリーバーは知能が高く温厚、人と一緒に仕事をしたいという意欲があり、トレーニングがとても簡単であるなど、多くの魅力的な特徴を持つ「飼いやすい」犬種です。
攻撃性、反抗性が低く、温和で愛情に満ち溢れた犬種のため女性にも扱いやすく、ほかのワンコや子供たちともフレンドリーに接することができます。しかしそれ故に番犬には向いていません。
このほか、ラブラドールレトリーバーはいつも人と一緒にいた使役犬の歴史があるため、独りぼっちが苦手です。寂しがり屋さんが多いので、留守番の多いライフスタイルの家庭では寂しさからストレスを溜めやすく、分離不安症になることもあります。いつも誰かが家にいる家庭が理想です。
暑さにも弱いタイプの犬種なので、室内飼いができる、広めの飼育環境がある家に向いています。運動ができる広い庭などのスペースがあるとなお良いでしょう。
ラブラドールレトリーバー被毛の種類について
被毛はダブルコートの短毛で、触った感じは想像以上に硬くザラザラします。水中で仕事をしていたため油脂分が多く、防寒性・防水性・撥水性に優れた被毛です。
毛色はブラック、イエロー、チョコレートの3種類。祖先犬『セント・ジョンズ・ウォーター・ドッグ』の被毛は黒のみでしたが、その後、改良の過程でイエローとチョコレートが登場しました。
胸に小さなホワイトの斑が現れる子もいますが、これは通称「メダル」と呼ばれており、ドッグ・ショーでも認められています。
ラブラドールレトリーバーの大きさと体高・体重
ラブラドールレトリーバーの体は、「寸胴」と表現されることもあるように、胴体に凹凸がなくがっしりとしています。また「カワウソの尾」と呼ばれる、根元から太いシッポが特徴的です。このシッポは泳ぐための形状と言われています。
ラブラドールレトリーバーの理想体高は、男の子が56~57cm、女の子が54~56cmです。平均体重は、男の子が27~34kg、女の子が25~32kgとなっています。
性別 | ラブラドールレトリーバーの体重 | ラブラドールレトリーバーの体高 |
---|---|---|
オス | 27~34kg | 56~57cm |
メス | 25~32kg | 54~56cm程度 |
ラブラドールレトリーバーの平均寿命と人間年齢
ラブラドールレトリーバーの平均寿命は12〜15年で、大型犬として平均的な寿命ですが、なんと27歳まで長生きした子の記録もあります。
少しでも長生きさせるには、室温調整ができる室内で飼育し、精神的にも肉体的にもストレスのない環境を整え、獣医師による定期的な健康診断の受診など、しっかりとした健康管理を行うことが重要です。
犬の年齢 | 人間に換算した年齢 | 成長ステージ |
---|---|---|
3か月 | 4歳 | 子犬 |
6か月 | 7歳半 | |
9か月 | 11歳 | |
1歳 | 15歳 | |
1歳半 | 19歳半 | |
2歳 | 23歳 | 成犬 |
3歳 | 28歳 | |
4歳 | 33歳 | |
5歳 | 40歳 | |
6歳 | 47歳 | シニア犬 |
7歳 | 54歳 | |
8歳 | 61歳 | |
9歳 | 68歳 | |
10歳 | 75歳 | 高齢犬 |
11歳 | 82歳 | |
12歳 | 89歳 | |
13歳 | 96歳 | |
14歳 | 113歳 | 超高齢犬 |
こちらの表は、
- 小型犬・中型犬「24+(犬の年齢-2)×4=人間に相当する年齢」
- 大型犬「12+(大型犬の年齢-1)×7=人間に相当する年齢」
の方式に基づいて計算しています。詳しくは、下記の記事をご覧ください。
ラブラドールレトリーバーのかかりやすい病気
ラブラドールレトリーバーの気をつけるべき病気の一部を紹介します。
ラブラドールレトリーバーのかかりやすい病気 1 股関節形成不全・関節炎
股関節形成不全は股関節が正しく発育せず異常が見られる疾患で、階段の上り下りの困難、バニーホッピング歩行、足を引きずるなどの症状が出ます。また、年をとるにつれて関節炎になる傾向にあります。
ラブラドールレトリーバーのかかりやすい病気 2 眼疾患
とくに進行性網膜萎縮症に注意が必要です。白内障、角膜ジストロフィー、網膜形成異常なども発症することがあります。眼の曇りや行動の変化に気遣いましょう。
ラブラドールレトリーバーのかかりやすい病気 3 喉頭麻痺
内喉頭筋の動きに関係する神経の障害によって起こる病態です。クラクションのような鳴き声、呼吸障害、咳、運動意欲の欠如などの症状があります。
ラブラドールレトリーバーのかかりやすい病気 4 甲状腺機能低下症
この病気になるリスクが高く、発症すると体重増加、脱毛、無気力、寒冷不耐性などの症状が出ます。
ラブラドールレトリーバーの飼い方のコツ・注意点
ラブラドールレトリーバーの飼い方のコツ 1 体力があり活動的。ストレスにならないよう運動させる
ラブラドールレトリーバーには体力があるため、相当の運動量が必要で、運動が足りないとストレスが溜まり、噛み癖や吠え癖などの問題行動を起こすこともあります。1日に少なくとも1時間以上の散歩2回が必須です。
賢いため、散歩だけでは退屈するかもしれません。頭を使う遊びも好きなので、室内では知育玩具などで遊ばせましょう。また、レトリーブ(回収)能力があるので、物を取ってこさせる『フェッチプレイ(Fech play)』や水遊びも大好きです。遊ばせながら運動させると良いですね。
ラブラドールレトリーバーの飼い方のコツ 2 子犬の頃から早めにしつけると、性格が安定する
ジュニア期から好奇心旺盛でパワフルなので物を壊したりすることもありますが、罰を与えるしつけをしてはいけません。信頼関係を築くことができず、かえって大人になってから問題行動を起こすことにもつながります。教えたことができればおやつなどのご褒美を与えて褒めるポジティブ・トレーニングで、信頼関係を築きながら教えましょう。
ラブラドールレトリーバーの飼い方のコツ 3 夏の室温にはとくに気をつける
短毛ですが暑さに弱いため、夏場の温度調節に注意が必要です。散歩の時間も気温が高い時間はさけましょう。
ラブラドールレトリーバーの飼い方のコツ 4 換毛期は毎日ブラッシングする
春と秋の換毛期には抜け毛が多くなるので、できれば毎日ブラッシングしてあげることをおすすめします。
ラブラドールレトリーバーの飼い方のコツ 5 食事のコントロールをする
食いしん坊な子も多いです。食べ過ぎると肥満になり、股関節や脚部の形成不全を悪化させるだけでなく、糖尿病などの原因となることもあります。せがまれるままに与えないよう注意しましょう。
ラブラドールレトリーバーをお迎えする方法
ラブラドールレトリーバーを家族としてお迎えする際の2つの方法と、料金の相場を紹介します。
ブリーダーさんからお迎えする
ラブラドールレトリーバー専門の優良ブリーダーをネットなどで検索してみましょう。ブリーダーさんから子犬をお迎えする場合は両親が明らかなので、毛色や体格、性格などがわかるメリットがあります。
保護犬のラブラドールレトリーバーを探して里親になる
動物保護施設や動物愛護ボランティア団体などでは、繁殖犬を卒業して保護された子や、飼い主の事情で手放されて保護されているラブラドールレトリーバーを見つけられるかもしれません。サイトやSNSなどで探してみるのがおすすめです。
ラブラドールレトリーバーの値段・価格の相場
ラブラドールレトリーバーの子犬の価格相場は約25万円〜(2023年)です。保護施設などから里親として引き取る場合は、各施設によって定められた譲渡費用がかかります。事前に調べたり問い合わせてみたりすると良いですよ。
まとめ
日本では、盲導犬として一番多く活躍しているラブラドールレトリーバーは、母性本能も強く、聡明で、人の役に立つことを喜びとする犬種です。
狩猟犬として活躍していた歴史があるため飼い主に従順ですが、多くの運動量と、レトリーブする欲求を満たしてあげることが必要なので、散歩や一緒に遊んであげる時間に余裕のある人に向いています。
関節疾患や肥満などに注意しながら適切な生活環境で愛情いっぱいに育ててあげれば、かけがえのない良きパートナーとなってくれるでしょう。