北海道犬の基本データ
原産国 | 日本 |
---|---|
サイズ | 中型犬 |
犬種グループ | 原始的な犬・スピッツグループ |
飼いやすさ・しつけのしやすさ | 中級 |
運動量 | たっぷりの運動が必要 |
トリミング | 必要なし |
ブラッシング | 毎日 |
お散歩 | 1日2回×1回1時間程度 |
飼育費用 | 月2〜3万円程度(医療費別途) |
かかりやすい病気・怪我 | コリーアイ(CEA)、変性性脊髄症(DM)、白内障、皮膚病、変形性関節炎 |
北海道犬の歴史
日本犬保存協会に登録され、天然記念物に指定されている日本犬6犬種のうちの1つが北海道犬です。北海道犬誕生の起源には諸説ありますが、その昔、アイヌの人々と暮らしていたアイヌ犬と呼ばれる狩猟犬が北海道犬の起源であるという説が有力です。
アイヌ民族に大切に飼育されていた北海道犬は、純粋な血統を守るために近親または近い血縁との繁殖が行われてきたため、地域ごとに特徴の異なる北海道犬が生息していました。しかし現在では、6系統あったうちのわずか1種類千歳系統のみが純粋な北海道犬として生存しています。
北海道犬の性格と特徴・飼いやすさ
テレビCMで一躍脚光を浴びた「お父さん犬」が北海道犬です。コマーシャルの中での「お父さん犬」とは異なり、北海道の厳しい寒さと自然の中でキツネ、ウサギなどの小動物からエゾジカやヒグマといった大型の動物までを相手にすることができる北海道犬は寒さに強く、勇敢で強靭な体力を持つことが特徴です。
有能な獣猟犬としてアイヌ民族の片腕として活躍していた北海道犬は、飼い主に忠実で家族を大切にする性格です。「二君に仕えず」と言われるほど忠誠心の高い北海道犬ですが、飼い主以外には警戒心が強いことも特徴としてあげられます。
そのため、子犬期からから家庭犬として必要なルールやマナーを教え、しっかりとしたしつけを行い社会化をはかることが大切です。忠実な性格から飼いやすいと言われることもある北海道犬ですが、根気強さとしっかりとしたリーダーシップを発揮できる意志の強さを持つことが重要です。
北海道犬の被毛と種類
寒さが厳しい北海道の自然と共に暮らしてきた北海道犬。かつては、氷点下の屋外や雪の中で夜を過ごすこともあったという北海道犬は、極寒にも耐えられる粗くストレートで中程度の長さのトップコートと保温性を保つために密集した厚いアンダーコートといったダブルコートが特徴です。
北海道犬の被毛は、トリミングが必要となる伸び続ける毛質ではないため、定期的なトリミングは必要ありませんが、抜け毛を放置しておくと皮膚病を発症する可能性があります。毎日のブラッシングはもちろん、換毛期には特に念入りにブラッシングをして抜け毛を取り除くことが必要です。また、換毛期にドッグカフェなどへお出かけをする際には、抜け毛の飛散を防止するためにTシャツなどを着せることもおすすめです。
お父さん犬のイメージから北海道犬は白い犬種だと思われがちですが、日本犬の中でも北海道犬の毛色はバリエーションが豊富なことも特徴です。現在登録されている北海道犬の被毛カラーは、白以外に胡麻、虎、赤、黒、黒褐色と6色あり、赤毛が最も多く次に人気のある毛色が白毛となっています。
- 胡麻
- 先端が黒いレッドフォーンの毛で日本犬特有の色表示で、色の出方は固体によって違う。海外ではブリンドルと呼びます。
- 虎
- フォーンまたは黄金色の地色に黒い虎のような縞模様が入ったもので固体によって異なります。
- 赤
- 日本犬特有の色で、赤みがかった褐色が特徴です。
- 黒
- 日本犬に使用される色表示で、やや褐色を含む黒い被毛が主体となっています。
- 黒褐色
- 黒い被毛が主体で頬や目の周り、胸、お腹などに白色や薄茶色が見られます。
- 白
- 体全体が白一色になっています。
北海道犬の大きさ・体高・体重
小さな立ち耳、広い胸を持ち筋肉質でがっしりとした体つきが特徴の北海道犬は、オスの体高が48.5〜51.5cm、メスは45.5〜48.5cmと日本犬保存会では中型犬に分類されている犬種です。
アメリカンケネルクラブ(AKC)では、北海道犬の標準体重は約20〜30kgとしていますが、ジャパンケネルクラブ(JKC)や北海道犬保存会などでは、北海道犬の標準体重についての規定が記載されていません。
日本犬の中で同じ中型犬に分類されている犬種には、甲斐犬や紀州犬、四国犬がいます。
性別 | 北海道犬の体重 | 北海道犬の体高 |
---|---|---|
オス | 約20〜30kg | 48.5〜51.5cm |
メス | 約20〜30kg | 45.5〜48.5cm |
北海道犬の平均寿命と人間年齢
北海道犬はそのルーツがはっきりとは解明されていない犬種ですが、北海道という本州から離れた地域でアイヌ人によって純粋な血統が保たれてきました。そんな北海道犬は、比較的健康で長生きができる犬種です。
厳しい自然の中で鹿や熊といった大型動物の狩猟犬として活躍していた北海道犬は、スタミナがあり粗食にも耐えられる丈夫な体が特徴で、平均寿命は13〜15歳で人間の年齢に換算すると70歳前後です。ちなみに、お父さん犬として北海道犬を一躍有名にしたカイくんは、16歳で老衰のため逝去しました。中型犬の平均寿命は13.69歳ですから、16歳といえば長寿ということになりますね。
北海道犬の年齢を人間に換算すると悲しいことに、どんなワンコでも人間より早く歳をとり、元気に20歳を迎えられることはほとんどありません。ワンコが人間より早く歳をとる理由については諸説あるためここでは割愛しますが、一緒に暮らしているワンコが人間に換算すると何歳に値するのかは気になるところですね。
人間の年齢に換算する場合、小型犬、中型犬、大型犬といったワンコのサイズ別や犬種別によって多少の差があります。北海道犬は中型犬に分類されているので、一般的な中型犬の換算方式で人間と比較してみましょう。
一般的に、中型犬の1歳は人間の17歳程度と考えられています。また、小型犬と同じ7歳頃からがシニア期とされていますが、生活環境によって個体差があります。どんな犬種にしろ、私たち人間と比べると猛スピードで一生を駆け抜けていってしまうワンコたち。ワンコの年齢を人間の年齢に換算して、その年齢に見合ったケアをしてあげることが大切です。ここでは、
環境省が提示する「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」に記載されている年齢換算方式を用いて、北海道犬の年齢と人間の年齢を比べてみます。
人間に換算した場合の年齢は下記の表をご参照ください。
犬の年齢 | 人間に換算した年齢 | 成長ステージ |
---|---|---|
3か月 | 4歳 | 子犬 |
6か月 | 7歳半 | |
9か月 | 11歳 | |
1歳 | 15歳 | |
1歳半 | 19歳半 | |
2歳 | 24歳 | 成犬 |
3歳 | 28歳 | |
4歳 | 32歳 | |
5歳 | 36歳 | |
6歳 | 40歳 | |
7歳 | 44歳 | シニア犬 |
8歳 | 48歳 | |
9歳 | 52歳 | |
10歳 | 56歳 | |
11歳 | 60歳 | |
12歳 | 64歳 | |
13歳 | 68歳 | |
14歳 | 72歳 | 高齢犬 |
15歳 | 76歳 | |
16歳 | 80歳 | |
17歳 | 84歳 | |
18歳 | 88歳 | |
19歳 | 92歳 | |
20歳 | 96歳 |
こちらの表は、
- 小型犬・中型犬「24+(犬の年齢-2)×4=人間に相当する年齢」
- 大型犬「12+(大型犬の年齢-1)×7=人間に相当する年齢」
の方式に基づいて計算しています。詳しくは、下記の記事をご覧ください。
北海道犬のかかりやすい病気
北海道犬は、比較的健康で長生きができる犬種ですが、犬種保存のために近親または近い血縁との交配が頻繁に行われていたことから、遺伝疾患を発症する可能性が高いとされています。命には直接関わりませんが、以下の遺伝疾患やかかりやすい病気があるため注意が必要です。
北海道犬のかかりやすい病気 1 皮膚病
北海道犬は、寒さの厳しい北海道の自然の中で暮らしていたため、密集した厚いダブルコートが特徴です。夏の換毛期には多くの抜け毛が出るため、こまめなケアが必要です。抜け毛がそのままになっていると、皮膚病を発症することがあります。
北海道犬のかかりやすい病気 2 変形性関節炎
シニアの大型犬に多く見られる変形性関節炎は、関節の軟骨とその周りの組織が損傷し、痛みや腫れなどの症状が現れる病気です。進行すると関節が変形してしまいます。
変形性関節炎を発症すると、散歩に行きたがらない、走らない、ジャンプしない、階段を嫌がる、歩きにくそうにする、足をかばうようにするなどの症状が現れます。はっきりとした原因は解明されていませんが、肥満、過度な運動などが関節に影響を与えると考えられています。
北海道犬のかかりやすい病気 3 白内障
水晶体が白く濁り視力が低下する白内障は、加齢によって発症する以外に遺伝によるもの、また糖尿病などの病気によっても発症します。人間と違い、犬の白内障は加齢によるものよりも遺伝性による発症が多く、この場合は6歳になる前に発症します。白内障を発症すると、黒目が白く見えるのは水晶体が白く濁るためで、進行すると目が見えにくくなります。
また、重症化すると緑内障やブドウ膜炎を併発することがあるため、早期発見治療が必要です。若年性の場合は、1週間程度で重症化することもあるため、若いうちから眼科検診を定期的に行うことがおすすめです。
北海道犬のかかりやすい病気 4 熱中症
元来、厳寒の屋外で生活してきた北海道犬は、寒さから身体を守るために保温性の高いアンダーコートに覆われていることが特徴です。そのため、暑さには非常に弱く、夏はもちろん暖房を使用する冬の室内でも熱中症になることがあるため注意が必要です。
熱中症は、発見が遅れると命に関わる重大な病気です。はぁはぁとパンティングしている、よだれが多い、舌や口の中が真っ赤になっている、体を触ると熱い、動きたがらないなどの症状が出た場合はすぐにかかりつけ動物病院に相談しましょう。
北海道犬のかかりやすい病気 5 コリーアイ(CEA)
ラフコリー、ボーダーコリなどコリーと名がつく犬種に多く発症する目の遺伝疾患ですが北海道犬にも多く見られます。コリーアイは、眼底を包む脈絡膜に異常が起こり、網膜に酸素や栄養が補給できなくなる病気です。
軽度の場合は、特に症状がありませんが、眼底出血や網膜剥離を起こすと重度の視力障害を発症することもある病気です。
北海道犬のかかりやすい病気 6 変性性脊髄症(DM)
ジャーマンシェパード、ウエルシュコーギーペンブロークなどに多く発症することで知られている遺伝子変異の遺伝疾患が変性性脊髄症です。遺伝疾患のため、近親で繁殖が行われていた北海道犬にも発症する可能性があります。
変性性脊髄症は、8歳〜11歳で発症するとされ、後ろ足から前足へ麻痺が進行し、最終的に呼吸ができなくなり死に至る病気です。後ろ足を擦って歩いたりもつれる、腰がふらつくなどの症状が出た場合は、この病気を疑います。
北海道犬の飼い方・飼う際の注意点
北海道犬は、北海道という隔絶された地で他の犬種と交わることなく、アイヌの人々と共に暮らしてきた犬種です。
そのため、北海道の気候風土にあう体質、大型の動物を相手にする獣猟犬として屈強な体と勇猛果敢な性質が現在まで受け継がれています。
北海道犬の飼い方・飼う際の注意点 1 飼い主と一緒に遊ぶことが大好き
狩猟犬として活躍してきた北海道犬は、飼い主から仕事を与えられることに喜びを感じる犬種です。
また、アウトドアで体を動かすことが好きな犬種のため、キャンプやハイキング、登山をはじめ、ボールキャッチ、アジリティなどアクティブに遊んであげることがおすすめです。
このほかに、飼い主に忠実な北海道犬は競技会にも向いています。北海道犬の持つ運動能力が存分に発揮できる環境を整えてあげることで、北海道犬ならではの能力を発揮してくれます。
北海道犬の飼い方・飼う際の注意点 2 運動不足は最大のストレス
北海道の広い大地で獲物を追う生活を送ってきた北海道犬は、運動欲求の高い犬種です。リードでの散歩は、最低でも1日2回1時間以上必要です。
また、ドッグランに連れて行くなど通常の散歩以外に思いっきり走れる環境を整え、彼らの運動欲求を満たす必要があります。運動不足は北海道犬にとって大きなストレスとなり、問題行動を起こす恐れがあるため注意が必要です。
北海道犬の飼い方・飼う際の注意点 3 子犬期からしっかりとしたしつけが必要
飼い主に忠実で家族思いながら勇敢かつ忍耐強い北海道犬ですが、警戒心が強く、危険を察知した際には闘争心をむき出しにする野生としての本能を色濃く残している面も持ち合わせています。
番犬としては有能ですが、飼い主とその家族以外に対してはなつきにくいため、子犬期からしっかりとしたしつけをして社会化することが大切です。
北海道犬の飼い方・飼う際の注意点 4 気温管理に要注意
北海道犬は、屋外で暮らしてきた犬種のため、高温多湿の環境が苦手です。特に、室内飼いをする際や温暖な地域で飼う場合は、気温とともに湿度に気をつけましょう。
熱中症は、わずかな時間でも発症してしまう恐ろしい病気です。人間にとって涼しいと感じる程度の気温でも湿度が高いと北海道犬は熱中症を発症してしまいます。
そのため北海道犬を飼う場所は、人間にとって寒いと感じる程度の気温と湿度をキープし、散歩に出かける時は涼しい時間帯を選ぶようにしてあげましょう。
北海道犬の飼い方・飼う際の注意点 5 規則正しい生活で健康寿命を延ばしてあげよう
北海道犬は、飼い主とともに山へ入り過酷な環境下で狩猟の手助けをおこなってきた犬種です。北海道犬の特徴は、どんな場所でも寝ることができまた粗食にも耐えられる我慢強さや頑丈な体質を持っていること。また、飼い主に対して忠実な性質から、好き嫌いなく与えられたものは何でも食べてくれます。
そのため、与えすぎや運動不足によって肥満となる傾向があります。肥満は北海道犬にとって万病の元。北海道犬は筋肉質で均整のとれた体型が特徴のため、太りすぎや運動不足は健康を損ねてしまう可能性があります。北海道犬の健康維持のためには、適正な食事とたっぷりの運動量を確保してあげましょう。
北海道犬をお迎えする方法
血統を守るために大切に繁殖されている北海道犬は、一般的な人気犬種と異なりペットショップなどで見かけることはほとんどありません。北海道犬をお迎えする場合は、天然記念物北海道犬協会や一般社団法人北海道犬保存会といった北海道犬の保存・育成を行っている団体を通じてブリーダーを紹介してもらうことがおすすめです。
ブリーダーさんからお迎えする
北海道犬専門の優良ブリーダーをネットなどで検索してみましょう。ブリーダーから子犬をお迎えする場合は両親が明らかなので、毛色や体格、性格などがわかるメリットがあります。
また、お迎え後もブリーダーさんに困った時に相談ができたり、兄弟犬の輪が広がったりとサポートしてもらえる繋がりがもてるのも心強いポイントです。
保護犬の北海道犬を探して里親になる
動物保護施設や動物愛護ボランティア団体などでは、繁殖犬を卒業して保護された子や、飼い主の事情で手放されて保護されている北海道犬を見つけられるかもしれません。事前にサイトやSNSなどで探してみてくださいね。
北海道犬の値段・価格の相場
北海道犬は少数のブリーダーによって大切に繁殖されている犬種です。一般に販売される値段は20〜30万円程度とされていますが、正確な相場価格は不明です。また、毛色や男の子、女の子によっても値段は変わるため、北海道犬をお迎えしたいと考えた時には、ブリーダーと直接連絡を取り値段を確認しましょう。
まとめ
粗食にも耐えられ、健康で比較的長生きできる北海道犬ですが、毎日の健康管理はとても大切です。特に、勇敢で運動能力に優れた北海道犬は、リードのお散歩では満足できない性質の犬種です。彼らにとって運動不足は、大きなストレスとなりまた肥満のリスクもあります。どんなに健康な体質でも、ストレスの多い生活では長生きすることができません。北海道犬が健康でいられるためにも、性質や体質に見合った生活環境を整えてあげることが大切です。