犬の祖先は?
人間にとって最も古い家畜であり、長きに渡り人間の最良の友である犬の先祖は何かご存知でしょうか?犬の祖先はオオカミ(狼)です。
実は最近まで、犬の先祖の候補としてオオカミ、コヨーテ、ジャッカルがあげられていたのですが、1997年にミトコンドリアDNAの解析により、犬の祖先はオオカミ(狼)であることが判明しました。
さらに、2010年には、DNAを解析した結果、遺伝子的に犬に最も近いと判明した中東に「ハイイロオオカミ」が犬の起源である可能性が高いことがわかったのです。
人間と犬の祖先であるオオカミがどのようにして近づいていったのかはまだ定かではありませんが、オオカミの中でも、攻撃的ではないオオカミが、人間の食事の残りを食料とするために人間の近くで暮らすようになり、人間もまたオオカミを番犬や狩りのパートナーとしてオオカミの能力が活かせることを知り、オオカミを飼い慣らすようになったのではないかと考えられています。
人とオオカミの関係を示す遺跡は世界中にあり、ドイツの洞窟からは14,000年前の人の骨とともに、犬の下顎骨が発見されており、これが最も古い人間と犬の遺跡と言われています。
また、イスラエルでは、約12,000年前のアインマハラ遺跡から、人間と一緒に埋葬された子犬の骨が見つかっており、この遺跡では、人の手が子犬の胸の上に置かれており、現在のような犬と人間の関係性がうかがえる興味深いものとなっています。
この記事では犬の先祖だった狼と犬の違いやオオカミのような犬、狼犬についてご紹介していきたいと思います。
イヌ科とネコ科、実は祖先は同じ?
実はイヌ科とネコ科の祖先は同じだということはご存知の方は少ないのではないでしょうか?
系統的に違う祖先と思われがちですが、ともに「ミアキス」という小型の肉食獣です。
ミアキスは、森の中で生活していましたが、約3,500万年前に森を出て草原で暮らすグループが出現しました。それがイヌ科の動物に進化していったと考えられています。
一方、森に残り木の上などでの生活を続けたのがネコ科の動物になります。森に残ったネコ科のグループはその後も単独での狩りを続けましたが、草原に出たイヌ科のグループは単独での狩りは難しかったため「群れ」をつくり共同で獲物をとらえるようになっていったのです。
オオカミ(狼)と犬の違いとは?
オオカミ(狼)と犬の違い 1外見・見た目の違い
自分たちで獲物を捕らえるオオカミと自分で獲物を捕らえる必要のない犬では、その進化の過程で見た目に違いが現れました。
自分で獲物を捕らえる必要のない犬はオオカミと比べるとマズル部分が短くなり、歯牙も小さくなっています。また野生では白い毛は目立ちやすく攻撃されやすいためデメリットになりますが、飼育下では問題にならないため、好んで交配が行われ白い毛の犬も多くなっています。
反対に野生に暮らすオオカミは、歯牙も犬に比べて大きく丈夫です。あごの筋肉も大きく発達しており、犬と違い釣り上がった目元も特徴的です。
オオカミ(狼)と犬の違い 2成熟するまでの期間の違い
野生で暮らすオオカミは犬に比べ成熟のスピードが遅く、大人になるまでに約1年かかります。そして、成熟し発情期を迎えるのは2歳になってからです。犬の場合は、成熟し初めて発情期を迎えるのは生後半年~遅くとも大型犬でも1年前後です。
オオカミ(狼)と犬の違い 3気質や習性の違い
野生下で自分たちで獲物を捕らえる必要があるオオカミと、飼育下で獲物を捕らえる必要のない犬には、外見・見た目以外にも、性格や習性にも違いがあります。
野生のオオカミでは警戒心が強く、攻撃力がや顔ものが生き残るため、オオカミは攻撃的で気が荒い気質になります。それに対して飼育下にある犬たちは攻撃的な気質や気の荒さはデメリットになるため、そのような部分はおのずとなくなり、人間によくなつき、指示によく従う従順なタイプの犬が生き残り、現在の犬の気質に繋がっています。
自厳しい環境を生き抜くオオカミは、犬よりも自立心が高く、独占欲も強めです。そして、群れを中心として生きるため、オスとメスのペアをつくり子育てにも積極的であると言われています。
長きに渡り人間とともに過ごしてきた犬は、周りに友好的で人に対しては忠実です。ただ、オスとメスのペアや、子育てという意識がオオカミにくらべ薄くなっています。
オオカミ(狼)にはない犬のコミュニケーション能力
犬は人の最良のパートナーと言われるほど、人間の暮らしに溶け込むまでになったのは、犬が人間との暮らしの中で「社会的な認知能力」を獲得し人とのコミュニケーションを可能にし、人とともに共進化したからだと考えられています。
犬は人の言葉そのものの意味を理解することはできませんが、人の仕草や表情、声のトーンや音などからさまざまな情報をキャッチし、コミュニケーションに役立てています。
犬の社会的な認知能力の高さを示すこんな実験もあります。
容器を2つ並べて片方におやつを隠し、おやつを入れた方を人が指さした場合、犬はかなりの高い確率で指さした方の容器おやつが入っているとわかりました。犬は人の「指差し」サインを理解しているのです。同様の実験をチンパンジーなど、他の動物で行ったところ、50%の確率でしかわからなかったのです。この他にも目配せだけでおやつの場所を教える「共同注意」の実験でも犬は50%以上の高い確率で当てることができました。
さらに、自分で取ることができないおやつがあった場合に、犬は飼い主に協力を求める視線を送る仕草をして「とってもらおう」とするのは、犬に特化したオオカミ(狼)にはないの能力です。
これらの犬のコミュニケーション能力は、人間と長い間一緒に過ごしたことで、似たようなコミュニケーション能力が生まれたのではないかと考えられています。
オオカミ(狼)みたいな犬がいるって本当?
「オオカミみたいな犬」「狼犬(おおかみいぬ)」と呼ばれ、オオカミに一番近い犬種として知られるのがウルフドッグです。
ウルフドッグ(狼犬、おおかみいぬ、ろうけんとも呼ばれる)は大型犬種のひとつで、シベリアン・ハスキーやジャーマン・シェパードなどの犬種と家畜化されたオオカミとを交配し混雑種です。
さらにこの中でもオオカミの血が75 %以上のものを「ハイパーセント」と呼び、外見がオオカミにより近いために海外ではコアなファンがおり、好まれる傾向にあります。
JKC(ジャパンケネルクラブ)に現在正式に犬種登録されているのは、「サールロース・ウルフドッグ」「チェコスロバキアン・ウルフドッグ」の2犬種です。
掛け合わせられた犬種特徴にもよりますが、体高65cmから86cm、体重は45Kgから70Kgくらいの大型犬で、外見はハスキーに似ていますが、少し痩せ型でよりオオカミのような鋭さがあります。
被毛は密集度が高く寒さに強いものがほとんどです。また体力や持久力が高くエネルギーの高い犬種となっています。
サールロース・ウルフドッグ
ジャーマン・シェパード・ドッグの愛犬家であったLeendert Saarloos 氏が、犬が人間性を帯び過ぎてきたと感じ、より良いワーキング・ドッグを作出するために犬本来の自然な素質を取り戻すために作出した犬種です。
活発でタフで、自主性を持っており自身の意思に従う性格であることで有名です。主人に対しては非常に愛情深く忠実ですが、他人に対してはほとんどは接触を求めません。警戒心が強いオオカミの気質を受け継いでいるといえます。
チェコスロバキアン・ウルフドッグ
1955年に旧チェコスロバキアで、ジャーマン・シェパード・ドッグとカルパチアン・ウルフを交配させる生物学的実験が行われ、そこから生まれたのがチェコスロバキアン・ウルフドッグです。
反応が素早く非常に機敏で、持久力があり、従順な犬種です。勇敢ですが、用心深さも持ち合わせています。
ウルフドッグ(狼犬)の飼育は一般家庭では難しい
ここまで読んでウルフドッグに興味を持つ方もいるかもしれません。ウルフドッグの性格は個体差が大きいとも言われますが、飼い主がリーダーとしてしっかりとしつけを行い信頼関係を築くことができれば、人を襲うことはありません。
しかし、ウルフドッグ(狼犬)は、オオカミの群れで行動する習性が強く残っているため、単頭飼育には向いていません。最低でも2頭飼うなど、多頭飼いを考えたほうが良いでしょう。
また、相当の運動量が必要な他、一頭での留守番や狭い場所での生活が苦手で、ストレスが溜まると破壊的な行動をとるようになるため注意が必要です。元々知能も独立心も強行くパワーもあるため、なかなか普通の家庭での飼育は難しく、ブリーダーやドッグトレーナーなど犬のしつけの上級者でないと難しいと言われています。
ウルフドッグを家族に迎えたいと考えられている方は、飼育環境、飼育の避ける時間・コスト、そしてご自身のしつけの熟練度をよく踏まえながら検討することをおすすめします。
まとめ
いかがでしたか?犬の祖先であるオオカミについて知ることで、より犬のことを深く理解するきっかけになったのではないでしょうか?
長い歴史の中で、私たち人間とうまく暮らしていくために犬たちが身につけてくれたので、今のコミュニケーション能力や気質だと思うとより愛おしく感じられますね。