東京農業大学教授の増田先生と一緒にお届けする、ワンコともっと良い関係を築くためのヒント。ワンコから見えるモノゴト、ワンコの考え方、感じ方など、ワンコたちに見えている世界を私たちにも見せてくれる増田先生シリーズ「ワンコno世界」。
今回は犬を迎えた場合に必ず直面する「シニア犬」について。どう変わってきたら老犬なの?老化サインを知っておきたい、受け入れる方法を知っておきたい。そんな飼い主さんのお悩みを増田先生に伺ってみました。
Advisor
増田 宏司教授
東京農業大学 農学部 動物科学科 教授。東京大学大学院を修了後、同大学院で学術研究支援員を務め、2006年から東京農業大学で研究と学生への指導を行う。研究だけでなく、飼い主向けのカウンセリングやワンコのしつけに使えるグッズの開発など、ワンコと飼い主が幸せに暮らせる社会を築くため、幅広く取り組んでいる。

愛犬が7歳になりました。一般的には7歳からシニアの仲間入りと言われますが、まだまだ元気です。そもそも犬の老化とはどういった症状を指しますか?

加齢に伴い、身体機能が衰えることを老化と言いますが、犬の場合、視覚、聴覚などの感覚の衰え、白髪が見え始める、動きが鈍くなる、運動量が減るなどの症状が見られるようになります。これに伴い、行動(態度)や心の変化として、学ぶことや運動への意欲が減り、落ち着いた性格になっていきます。さらに老化が進むと、トイレの失敗やケガをしやすくなる、一日の大半を寝て過ごすようになり、場合によっては認知症の症状をみせるようになります。ただ、7歳ですか。シニア期には入っているかもしれませんが、顕著な老化が確認できる時期にはまだ少し早いと言えるかもしれません。獣医療の発展、栄養面の充実、室内飼いの普及により体調変化の早期発見が可能になり、迅速に対処ができるようになったおかげで、ここ十数年、犬たちが元気で長生きになっていると実感しています。感じていらっしゃる通り、まだまだ元気でしょう。この時期を楽しんでほしいと思います。

愛犬が老後、快適に過ごすために行っておいた方がいいトレーニングを教えてください!

個人的に重要だと思うことは、本格的に老犬期に入る前までに、しつけのし直しを行っておく、しつけのし直しの際に、ついでに体中をまんべんなく触る、というスキンシップをしておく、犬用の布を増やしておく、の3点です。しつけのし直しは、いざ老犬期になった時に飼い主さんと愛犬の意思疎通を可能にするため、体をまんべんなく触るのは、体調の異変やケガに速やかに気づけるようになるため、病院などで抱っこなどを嫌がらないようにするためです。犬用の布を増やしておく理由は、老犬期は寝床やクッションの取り換えが頻繁になるからですが、これまでの、布がくたびれたら捨てて、新しい布を買う、といった流れを、布がくたびれる前に回収し、きれいに洗って取っておく、という回転にして増やしておくことをお勧めします。この流れで取っておいた布は、老犬期には「かつてのお気に入りの布」として活躍してくれることが期待できます。
10歳になる愛犬は旅行が大好きです。お出かけの準備中はとてもはしゃいでいますが、旅先ではずっと寝ています。連れ回すのをやめたほうがいいですか?

旅行は引き続き楽しんでいただければよろしいかと思いますが、これからは、愛犬の様子を見ながらのゆったり旅行に変更しても良いかもしれません。シニア犬との旅行で気を付けて準備しておきたいことは、旅行前に体調を整えておくこと、赴く場所やスケジュールを詰め込み過ぎないこと、行く先々で体調不良などのトラブルがあった際に、すぐに駆け込める現地の動物病院を事前に調べておくこと、宿泊先で愛犬がゆっくり休める状況を作れること、くらいでしょうか。おそらくその子は、どこに行くにしても愛するご主人と一緒にいられることこそが大好きなのだと思います。これからは無理のない範囲で、ゆったりとした、安全で準備万端な旅を楽しんでいただきたいと思います。
愛犬が認知症になり、なかなか受け入れることができません。どうしたらいいでしょうか?

私の意見でよろしければ、参考にしてください。私は愛犬の認知症に対して、こう考えることにしています。これからは、私がこの子に恩返しする気持ちを乗せて、認知症になったこの子から学ぼう。この子は認知症になって、言い換えれば絶賛成長中なのだから、どうやったらこの子が嬉しくて、楽しくて、幸せになるのか、この子から日々、新しいことを学んでいこう。私がこの子の様子に慌て、悩んだところで、きっとこの子は慌てても悩んでもいないはずだから、今のこの子が喜ぶものを一緒に喜ぼう。この子が今喜ぶものは、きっと私が初めて知る、この子の幸せでもあるから、それを教えてくれるこの子に感謝し、それに気づけた自分のことも同時に褒めよう。そして、私たちの歴史を、新たに築いていこう。
参考になるかどうかは分かりませんが、あなた自身のことも受け入れることが出来るよう、願っています。
















