本記事は獣医師が執筆・監修を行っております。
ごはんが大好きで仕方ない子、おいしいものであればどんどん食べる子、食べることに興味がない子など様々です。
しかし、食欲は健康のバロメーターとも言われていて、普段の食欲と比較することで小さな変化にも気付けます。
ご飯を食べない場合、どのような可能性が考えられ、どのような対処をすべきなのでしょうか。
犬がごはんを食べない時の原因と対処方法は?

原因・特徴 1 ごはんが愛犬に合っていない
ごはんが愛犬に合っておらず、食欲不振につながっている場合があります。
例えば口内炎や歯があまりないなどの口腔内トラブルがあるのに硬いフードであったり、顎の小さい犬種なのに大きな粒のドッグフードであること、嚥下や噛む力が落ちているのに飲み込むには大きかったり硬いフードであることなどが原因として挙げられます。
愛犬の健康状態を把握したうえで適切なごはんを選んであげましょう。
自分で選択することが難しい場合、かかりつけの獣医さんやペットショップのスタッフさんなどに相談してみることをおすすめします。
原因・特徴 2 おやつなどでお腹がいっぱい
しつけのごほうびやお散歩仲間とのコミュニケーションの一環としておやつを与えている飼い主さんも多いのではないでしょうか。
人間と比較しても犬たちの消化器は小さく、機能も未熟です。
健康を維持するための栄養は総合栄養食であるドッグフードで摂るべきであり、代わりにおいしいからとおやつを食べ勧めていると食べるべきドッグフードがお腹に入らなくなってしまうことが多いです。
おやつを与えるのであれば少量にとどめ、主食はドッグフードの定められた量を完食できるように調整することをおすすめします。
原因・特徴 3 おいしいものを与えすぎている
犬たちも私たち人間と同じで空腹になります。
しかし、普段から人間と同じようなおいしいものを食べていたり、おやつなどのような嗜好性の高いものを食べているとドッグフードを食べたがらなくなる場合があります。
手作りご飯であればきちんと栄養バランスの取れたもの、総合栄養食であればドッグフードを主食として食べるように家庭でも徹底することが大切です。
おやつや人間のごはんのおすそ分けは主食にはなり得ません。
原因・特徴 4 食にあまり興味がない
若齢の頃から食に対してあまり興味を示さない個体もいます。
食への興味を持つよう、ごはんの時間の間隔をお腹が空くようなタイミングで与えたり、適切な運動量を確保したりや体力の発散をして食事の時間とのメリハリをつける習慣をつけると良いかもしれません。
ごはんに集中できるよう、ごはんを食べている時は遊びに誘ったりしない等の飼い主さんからの働きかけも大切です。
原因・特徴 5 ごはんを食べる環境が適していない
ごはんを食べるときに集中できなかったり、常に警戒していないといけない環境ではごはんを食べる余裕もなくなり、食欲が無くなる場合もあります。ですので安心できる環境作りが大切です。
特に多頭飼育の場合などは他の犬にごはんを取られたり、吠えられたりと落ち着いて食べられない場合も。食べる場所や時間を変えて、1頭ずつ安心して食べられる環境を作ってあげましょう。
病院に連れていくべき、病気が疑われる症状は?

症状 1 下痢や嘔吐 / 元気がない / 食欲不振
食欲不振に直結しやすいトラブルが胃腸炎など消化器による問題です。
軽度の炎症などであれば、治療などなくお腹を休めたりしっかり体を休めることで自然に治る場合もあります。
肝臓や膵臓も関連するようなトラブルや、重度の胃腸炎になると激しい下痢や嘔吐を伴い、ご飯を食べられない日が続く場合もあります。
食欲不振が続くことによって体力消耗も著しくなり、状態が悪化することもあるため早期の治療が望ましいです。
食欲不振に伴い嘔吐や下痢が見られる場合、悪化する前に受診をすることをおすすめします。
症状 2 元気がない / 呼吸の異常 / 寝ている時間が長い / 食欲不振
一見あまり関係ないようですが、心疾患でも食欲不振が見られるとされています。
心機能が低下することにより、体に充分に酸素や栄養が行き渡らないことや、循環不全によって肺や腹部に水が溜まることによって息苦しさや腹部の膨満感などによって食欲不振につながる場合があります。
中高齢になって心臓の機能が低下することもありますが、先天的に心臓に問題がある場合もあります。
ワクチン接種などの際に聴診を定期的に行う場合もありますが、心配であれば一年に一度など聴診や心電図などの検査が行えると異常に早期に気付ける可能性が高いです。
症状 3 よく水を飲む / 薄くて量の多い尿をする / 元気がない / 嘔吐 / 食欲不振
中高齢になると腎機能が低下し、腎不全に陥る場合があります。
また、若齢の子でも先天的に腎臓に問題を持っている場合もあります。
腎臓は代謝によって生じた老廃物を尿中に漉し出す働きを持っており、腎臓の機能が低下すると老廃物の血中濃度が高まるため、中毒症状が生じ、吐き気や食不振などにつながる可能性が高いです。
他にも、必要以上に尿として体内の水分を排出してしまうことや電解質のバランスの均衡がとれなくなるため、脱水や電解質異常などが起こる傾向があり、元気がないことや重度になると意識がもうろうとするなどの症状が見られることが多いです。
病気かどうかを見極めるポイントは?

犬によっては食に対して執着があまりない場合や、おいしいものを食べなれているためにえり好みをしている場合など病的でない食欲不振を示す場合もあります。
病的なものでなければ、しつけの一環としてきちんとドッグフードを与える必要があります。
ではどのように病気かどうかを見極めたらよいのでしょうか。
まず、大きなポイントとなるのが他の症状の有無です。
下痢や嘔吐はよく消化器トラブルに見られる症状ですが、元気がないことや呼吸がいつもと違うこと、排尿の様子がいつもと違うことも挙げられます。
その場合、体に何らかの病的な変化が起きているせいで食欲不振につながっている可能性が考えられます。
また食欲不振の程度の把握もとても大切です。
食欲不振というと全く食べないイメージがありますが、それだけではありません。
いつもより食べるスピードが遅いことや、おいしいものしか食べたくなりというのも軽度の食欲不振のサインの一つです。
軽度でも食欲不振が続いている場合は病気である可能性が高まり、全く食べないのであれば病気の可能性が高いため受診が必要となります。
食欲不振を予防する方法は?

食欲不振を予防するために一番有意義なことは、愛犬の消化機能を把握し適したドッグフードを与えてあげることです。
一般的に良いフードと言われていても、その子にとっての最適なドッグフードは様々です。
消化機能が不充分な子であれば消化しやすく消化器に負担をかけにくいドッグフードを、おなかがすきすぎて胃酸刺激による嘔吐をしてしまったり、過食になりがちな子には満腹感を得られるようなドッグフードを選択することをおすすめです。
他にも食欲不振にもつながるような持病を持っている場合、適した療法食をかかりつけの先生から処方される場合もあります。
一般のドッグフードの場合はペットショップのスタッフさんやかかりつけの先生、ブリーダーさんなどの専門家へ、持病などがあり療法食が必要な場合はかかりつけの先生などの専門家へ相談して愛犬に適したごはんを見つけましょう。
まとめ
食欲の有無は健康管理で欠かせないバロメーターとなります。
しかし、愛犬の性格や環境、ライフスタイルなどによって健康であっても食欲があまりわかなかったり、食べることに集中できないこともあります。
健康的な食生活を送れるよう、適切な環境を整え、適したご飯を用意してあげましょう。
また、全く食欲が廃絶してしまうだけでなく、食べるスピードが遅いことや普段えり好みをしないのにすることなども食欲の変化と言えます。
健康な体を維持するために適切な食生活を送り、健康面での変化に気付けるよう普段から一定のごはんへの興味や食欲を持たせてあげられると病気の早期発見などにつながり、健康的に長生きな生活を送れる可能性が高まります。
Supervisor
葛野 莉奈 かどの りな
麻布大学獣医学部獣医学科を卒業後、横浜市内動物病院や会員制電話相談動物病院、ペットショップ付属動物病院にて小動物臨床に携わらせていただいた後、自身の動物病院を開院させていただきました。
現在、院長として臨床の現場で従事する傍ら、わんちゃんや猫ちゃんに関するコラムを執筆させていただいています。
プライベートでも、病院で一緒に生活する猫たち3匹と家庭でも愛犬たち10頭とともに生活しています。

Writers
ワンコnowa 編集部
愛犬飼育管理士/ペットセーバー/犬の管理栄養士の資格を有し、自らもワンコと暮らすワンコnowa編集部ライターチームが執筆を行なっています。
チワワのような小型犬からゴールデンレトリーバーのような大型犬まで、幅広い犬種と暮らす編集部スタッフたちが、それぞれの得意分野を生かし飼い主視点でわかりやすい記事を目指しています。
