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【犬の白内障】症状や治療方法を獣医師が解説

【犬の白内障】症状や治療方法を獣医師が解説

本記事は獣医師が執筆・監修を行っております。

眼の病気が数多くある中で、白内障という名前を聞いたことのある飼い主さんは多いのではないでしょうか。

眼の病気は程度が悪化すると失明にもつながり、犬の健康だけでなく日常の変化ももたらすため、早期発見及び治療がとても大切です。

どんな病気なのか、どんな症状が起こるかということを正しく理解し、変化に気づいたらすぐに受診できるように心がけられると安心です。


犬の白内障ってどんな病気?

犬の白内障とは?

犬の白内障とは、眼球内に存在する水晶体という構造が一部または全部変性することにより起こる疾患です。

生理的な変化によって起こる加齢性の核硬化症と呼ばれる、同様に水晶体が加齢とともに白く濁る変化と同じととらえられがちですが、全く別のことになります。

眼科専用の器具で確認をすると核硬化症は水晶体ではなく、水晶体付近の構造物の白濁になるため違いを確認することができます。

白内障は病的なものであり、進行とともに視力が失われるケースが多く、一報で核硬化症は加齢性の生理的な変化であり病的なものではありません。
核硬化症は視力の著しい低下も起こらないことが特徴です。

白内障というと高齢になると起こるイメージを持っている飼い主さんも多いかもしれませんが、若齢の頃から起こる白内障も存在するため、どんな年齢でも起こり得る疾患です。

白内障になる原因は?

白内障になる原因は様々です。
遺伝性のものや後天性のものが考えられ、後天性のものは外傷性・代謝性・続発性・中毒性・加齢性などの原因に分かれます。

遺伝性のものは先天的に水晶体内の代謝機能が不充分で起こるため、若齢のうちから発症する傾向があります。
またどんな個体でもなり得ますが、特発犬種などなりやすい個体の傾向があることも特徴的です。

外傷性や代謝性、続発性などの原因の場合どんな年齢でもなり得ます。
代謝性の白内障を起こしやすい疾患としてよく知られているのが糖尿病です。
他にもクッシング症候群や甲状腺機能低下症などの疾患も該当します。中毒性の場合、薬剤への中毒などが挙げられます。

初期症状は?

初期症状として、受診するきっかけになることは水晶体内の濁りに気づくケースが多いです。

白内障は進行性の病変であるため、濁りが広がり、水晶体全体が濃く白く濁るようになります。
濁りの範囲や程度によってステージもわかれています。
また、変化が起こる水晶体はものを見る際のレンズの役割を担います。
そのため進行とともに視力の変化も起こることが特徴的です。

初期は白濁の範囲も狭く、水晶体のふちから水晶体内の一部に白い靄のような白濁が見られます。

視力の低下は著しくはありませんが、ややぼやけたり見えづらくなるなどの変化が初期の場合見られることが多いです。

初期の視力低下の程度では、愛犬の性格などにもよりますが、視力の変化に気づきづらい可能性が高いです。

症状が進行するとどうなる?

白内障の進行とともに水晶体の濁りは広がり、視力も徐々に失われます。
変性した水晶体は眼球内に流れ出し、ぶどう膜にもトラブルを生じさせます。

水晶体の変化だけでなく、ブドウ膜など近くの構造物にも炎症が起こるなどの問題が生じる場合があります。
ブドウ膜炎の程度が悪化すると眼圧が上がり、緑内障などを引き起こす危険もあるため注意が必要です。

白内障自体は進行とともに視力の低下が起こるのみで、痛みや違和感を起こす疾患ではありますが、併発するブドウ膜炎や緑内障は痛みや違和感を伴うトラブルです。
愛犬が日常生活の中で負担に感じてしまう可能性が高いでしょう。

ステージについて解説

白内障は進行する疾患です。
ステージは主に4段階とされています。
初期から順に以下のように呼びます。

  • 初発白内障
  • 未熟白内障
  • 成熟白内障
  • 過熟白内障

まず初発白内障は水晶体のごく一部が白濁をし始める状態で、この状態の時の視力の変化はあまりないとされています。
一般の生活で変化に気付くのは難しい可能性が高いです。

次に未熟白内障へと進行します。
水晶体内の白濁は15%以上の時を指すとされていて、視力の低下もあまり起こっていない状態です。

成熟白内障は水晶体全体が白濁した状態であり、そのため水晶体は光を通さず、視力の低下も起こります。
成熟白内障になると外見上の変化も明らかであるため日常生活で飼い主さんも変化に気づきやすい可能性が高いです。

さらに進行すると過熟白内障となり、水晶体が変性により融解した状態になります。
液状化しているため、一見白濁があまり目立たなくなり犬の視力も少し回復することもありますが、変性した水晶体が解け出てブドウ膜などに影響を及ぼす危険性があります。

白内障になりやすい犬種は?

白内障は全ての犬種に起こり得る疾患です。

しかし、白内障の原因は遺伝性、代謝性、中毒性、続発性、加齢性などが挙げられており、疾患によって好発犬種とされている犬種が存在します。
まず、遺伝性の白内障は名前の通り遺伝的な要素により起こり得ますが、コッカースパニエルやシーズー、トイプードル、キャバリアキングチャールズスパニエルなどは遺伝性の白内障の好発犬種とされています。

遺伝性の白内障の場合、若齢でも発症する可能性はありますが、発症のタイミングには個体差があります。

代謝性の白内障は糖尿病や甲状腺機能低下症などの代謝機能の異常によって起こることが多く、糖尿病や甲状腺機能低下症、クッシング症候群などの内分泌機能のトラブルが起こる疾患に併発して起こる場合が多いです。
この場合、ミニチュアシュナウザーは脂質代謝の異常が起こることが多く、好発犬種とされています。

このように好発犬種を挙げさせていただきましたが、この犬種だからと言って必ず発症するものではありません。
どんな個体であっても起こり得るため、定期的な眼のチェックが家庭でもできると安心です。

白内障の治療方法

治療方法は白内障の状態によって、内科的治療方法と外科的治療方法のどちらが適しているかが異なります。

初発白内障や未熟白内障の場合、進行の程度を都度経過観察をしていきながら、進行を遅延できるよう抗酸化と呼ばれる細胞の変性を遅らせられるような点眼などを行なう場合が一般的です。
ただし、この点眼薬はあくまでも進行を遅らせるものであって、白濁を改善するものではありません。

進行に伴う角膜やぶどう膜への影響が及んでいないこと、水晶体脱臼がないこと、眼圧の上昇がないことや眼科疾患以外の基礎疾患の状態などによって外科的な手術の可否を検討します。
手術では全身麻酔の上、変性した水晶体の除去を行ない人口レンズを埋め込みます。
人間では日帰りで行なわれる場合もありますが、犬の場合、合併症なども起こり得る手術であるため入院が必須です。

また術後の点眼や、患部のコントロールも必要となるため、眼科診療の知識を持った専門医のいる動物病院での処置およびケアが術前から術後まで一貫して必要となるケースが一般的です。
手術が適応されない場合も、付近の構造物への炎症の波及などを抑えるために、消炎剤の点眼薬などを使用する場合もあります。

白内障の予防法は?

白内障を完全に予防することは難しく、予防方法はほとんどないと言えるでしょう。
しかし、眼をより健康な状態で保つことや、白内障に関連する疾患を早期に解決することが対策にもつながります。

糖尿病や内分泌疾患などは、定期的な健康診断で早期に発見し、治療をおこなうことが可能です。

外傷性の白内障も、眼の外傷につながることを予防することで対策となり得るでしょう。
また、加齢性の白内障であればより若々しく眼の健康を維持するために、抗酸化作用のあるドッグフードやサプリメントを積極的に摂取するなどは有意義である可能性が高いです。

抗酸化作用とは細胞へのダメージを受けにくくし、より若々しい状態で細胞を維持する働きを意味します。

また、白内障にならないように予防することは難しいですが、より早期に発見することで、進行を遅らせるための点眼液をより早期から行うことが可能となり、進行をより遅らせることが可能となります。

眼科の器具をそろえているような眼科を得意とする動物病院で定期的に健康診断を行うことで、より早期に発見することが可能でしょう。

緑内障との違いは?

白内障と緑内障の名称は似ているため、同一のものと考えている飼い主さんも多いかもしれません。
しかし、白内障と緑内障は全く別の疾患であり、起こる症状も全く異なります。

まず白内障は水晶体の変性が起こり、進行して付近の構造物に炎症が起きるなどの変化が起こる疾患です。

白内障自体に痛みなどは生じませんが、進行とともに視力の低下は起こり、近くの構造物への炎症などが起こると違和感や痛みを感じる場合があります。

一方で緑内障は眼圧が上がることによって、視力の低下が起こる疾患です。
痛みを伴うことも特徴的です。

緑内障は中高齢の犬によく見られ、眼の痛みや流涙の増加、眼の痛みにより目周りを気にするような行動などで飼い主さんが気付くことが多いです。

まとめ

犬は人間ほど視覚に頼らずに生活していますが、より健康な状態で長生きしてほしいとどの飼い主さんも願っているのではないでしょうか。

痛みや違和感を感じる場合があるのであればその負担を少しでも感じずにいられるようにしたいと思うことも当然でしょう。

白内障は予防が難しい疾患ですが、どんな疾患なのかを把握して定期的に健康診断を受けることで早期に発見できる疾患です。

白内障だけでなく、様々なトラブルの早期発見ができるよう日常的な健康チェックを習慣化できると安心です。
また小さな変化に気づいた時に相談できる専門家が身近にいることで、早期処置が可能となります。

普段からかかりつけの先生と日常の様子などを相談しながら、信頼関係を築けると愛犬も飼い主さんもより安心をして充実した生活が送れるでしょう。

Supervisor

葛野 莉奈 かどの りな

麻布大学獣医学部獣医学科を卒業後、横浜市内動物病院や会員制電話相談動物病院、ペットショップ付属動物病院にて小動物臨床に携わらせていただいた後、自身の動物病院を開院させていただきました。
現在、院長として臨床の現場で従事する傍ら、わんちゃんや猫ちゃんに関するコラムを執筆させていただいています。
プライベートでも、病院で一緒に生活する猫たち3匹と家庭でも愛犬たち10頭とともに生活しています。

葛野 莉奈

Writers

ワンコnowa 編集部

愛犬飼育管理士/ペットセーバー/犬の管理栄養士の資格を有し、自らもワンコと暮らすワンコnowa編集部ライターチームが執筆を行なっています。
チワワのような小型犬からゴールデンレトリーバーのような大型犬まで、幅広い犬種と暮らす編集部スタッフたちが、それぞれの得意分野を生かし飼い主視点でわかりやすい記事を目指しています。

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