本記事は獣医師が執筆・監修を行っております。
大豆は植物性のタンパク質が豊富で、犬の健康に役立つ栄養成分が沢山含まれている食材です。
しかし、食物繊維が多いため、生の大豆は消化しにくく、「トリプシン・インヒビター」という、犬にとって毒性の高い物質が含まれています。そのため、与える際にはいくつかのポイントを押さえ、適切な与え方や分量を守るようにしましょう。
愛犬に大豆を与える際には、ぜひ今回紹介した与え方や注意点を参考にしてくださいね。
ANSWER 大豆は犬に食べさせても大丈夫です。
前述した通り、生の大豆には「トリプシン・インヒビター」という毒性の高い物質が含まれています。トリプシン・インヒビターは、膵臓から分泌される「トリプシン」と呼ばれるタンパク質を分解する酵素の働きを阻害する物質です。
しかし、このトリプシン・インヒビターは熱に弱いため、大豆は加熱すれば、犬にとって安全かつ消化に良い食材となります。特に、大豆は植物性のタンパク質が豊富で、低脂肪・高繊維なため、アレルギーがなければ、ダイエットが必要な犬や消化器の健康を維持したい犬に向いている食材です。
大豆の主な成分や栄養素
タンパク質
大豆は肉や魚と同じくらい豊富なたんぱく質が含まれているため、「畑の肉」とも呼ばれています。
タンパク質は筋肉や血液、皮膚、被毛などの主成分であり、体を形成するのに欠かせない栄養素です。
また、大豆に含まれる植物性たんぱく質は、肉などに含まれる動物性たんぱく質に比べて脂質が低いのが特徴です。
大豆イソフラボン
大豆イソフラボンは抗酸化物質で、細胞にダメージを与える活性酸素の働きを抑え、アンチエイジンや被毛のを美しく保つ効果が期待できます。
また、犬の自律神経系の健康維持にも役立つといわれており、ストレスが気になる時などにも取り入れたい栄養素の一つです。
ただ、大豆イソフラボンは女性ホルモンに近い働きをすることが知られており、大量に摂取するとホルモンバランスに影響を与える可能性があるため注意しましょう。
サポニン
サポニンは、抗酸化作用の優れた成分で、老化や免疫力低下を防ぐ働きがあります。
また、コレステロールを下げる働きや、体脂肪を減らして動脈硬化を予防することが期待されている成分です。
カリウムやマグネシウム、リン
カリウムは過剰な塩分を排出し、血圧を安定させる効果があります。
また、マグネシウムは骨を作ったり、心臓を動かすために欠かせないミネラルです。マグネシウムを摂取することで、骨粗鬆症や不整脈などの心疾患の予防につながります。
リンは骨や歯の形成、エネルギー代謝に重要な役割をもつ成分です。
大豆を犬が食べた際の犬への効果・影響
大豆は、犬の体に必要なタンパク質や食物繊維、ミネラル、そして抗酸化物質を豊富に含んでいます。そのため、適切な量で与えることで、消化器の健康、皮膚・被毛の改善、免疫力向上、アンチエイジングなど、多くの健康効果が期待できる食材です。
犬に与えてよい大豆の量は?
小型犬の場合 | 5~10g(調理済みの大豆) |
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中型犬の場合 | 10~20g |
大型犬の場合 | 20~40g |
子犬の場合 |
体重1kgあたり約1g (成長期には動物性タンパク質が必要なため、それを大豆の植物性タンパク質で補うことは難しいです。そのため、栄養補助として少量与えるのみにしましょう。) |
老犬の場合 |
体重1kgあたり約0.5~1g (大豆は高繊維のため、消化が弱くなる高齢犬では、少量を様子を見ながら与えます。) |
犬に大豆を与える際の注意点
大豆のおすすめの与え方
生の大豆は加熱をして与える
前述した、生の大豆に含まれる「トリプシン・インヒビター」は、加熱・発酵・熟成のいずれかの処理で有害性を無くすことができます。
家庭では、普通の鍋なら弱火で1~2時間、圧力鍋なら10分程度を目安に茹でて加熱する方法がおすすめです。
また、大豆は通常乾燥した状態で売られているため、水に浸して戻してから茹でることで、ふっくらとした仕上がりになります。ただ、加熱といっても、煎り大豆は硬く消化も良くないため、大量に食べると食道に詰まらせたり、腸閉塞につながったりする場合があるため、大豆はしっかり煮るようにしましょう。
様子を見ながら、少量ずつ与える
大豆に対するアレルギーを持っている犬もなかにはいます。
ですので、初めて大豆を与えるときは、アレルギー反応がないか確認しながら、少しずつ与えましょう。万が一、下痢や嘔吐、皮膚のかゆみなどのアレルギー症状が出た場合は、すぐに動物病院を受診してください。
ペースト状にして消化しやすくする
犬に大豆を与える際には、喉に詰まらせる危険性も考慮しなければいけません。
生の大豆を加熱したうえで、ミキサーなどで細かく砕くかすりつぶしてペースト状にし、丸飲みしても問題のない状態で与えることが大切です。
特に、消化器官が未発達な子犬や消化機能の衰えた高齢犬、消化器官が弱い犬には消化しやすいペースト状で与えるようにしましょう。
人用の大豆加工食品を与える場合は、塩分など味付けがされていないものを選ぶ
人用の大豆加工食品は基本的に安全ですが、塩分や調味料が含まれている場合は避けましょう。
例えば、醤油や味噌、味付き豆腐は塩分が多く含まれている食品です。
一方、豆腐や納豆、おから、きな粉、豆乳は塩分が含まれていないため、適量であれば与えてもよいでしょう。
こんな時は犬に大豆を食べさせないこと
大豆はカリウムやリン、マグネシウムを多く含むため、心臓病や腎臓病、尿酸結石のリスクがある犬に与えるには注意が必要です。
また、加熱しても食物繊維を多く含むため、胃腸の弱い犬に大豆を与えるのは避けましょう。
さらに、健康な犬でも、シュウ酸、フィチン酸、イソフラボンなどの一部の成分は摂取しすぎると身体に悪い影響を及ぼすことがあるため、与え過ぎには注意が必要です。
まとめ
大豆は植物性のタンパク質が豊富で、犬の健康に役立つ栄養成分が沢山含まれている食材です。
しかし、大豆は生のまま与えず、柔らかくなるまで煮るなど与え方に注意しましょう。
おからや納豆、豆腐などの塩分が含まれておらず、加工されていて消化に良いものを与えるのも一つの手です。
正しい知識を持って、毎日の愛犬の食生活に大豆を是非取り入れてみてくださいね。
Supervisor
西岡 優子 にしおか ゆうこ
獣医師。北里大学獣医学科卒業後、香川県の動物病院に就職。結婚を機に、都内の獣医師専門書籍出版社にて勤務。現在は、パート獣医として働く傍ら、犬・猫・小動物系のライターとして活動。ペット栄養管理士としても活躍中。