本記事は獣医師が執筆・監修を行っております。
ささみは鶏胸肉の一部であり、犬にとって優れた栄養源で、低脂肪・高たんぱくであるのが特徴の食材です。しかし、与える際にはいくつかのポイントを押さえ、適切な与え方や分量を守ることで、安心して与えることができます。
愛犬にささみを与える際には、ぜひ今回紹介した与え方や注意点を参考にしてくださいね。
ANSWER ささみは犬に食べさせても大丈夫です。
ささみには犬に危険な成分は含まれていないため、与え方や分量を守ることで安心して与えることができます。
特に、ささみは低脂肪・高タンパクで、他の肉類と比較して低カロリーに加え、脂質や糖質の代謝を促してくれるナイアシンが多く含まれているため、肥満気味で体重が気になる子におすすめの食材です。
また、他の肉類に比べ、ささみは消化が良いことから、胃腸が弱い犬や高齢犬にも適しています。
さらに、嗜好性も高いので、食欲がない時の補助食としても使いやすく、ささみは犬にとって魅力的で健康的な食材です。
ささみの主な成分や栄養素
タンパク質
ささみには、良質なタンパク質が豊富に含まれています。
犬にとってタンパク質は、筋肉や骨、臓器、爪、皮膚、被毛などの構成成分です。また、酵素やホルモンなどとして、犬の体内の機能を調節する働きもしています。
このようにタンパク質は、筋肉量の維持、被毛を綺麗に保つなど犬の体を作り、筋力や体力、免疫力といった体の調子を整えるために重要な栄養素なのです。
ナイアシン(ビタミンB3)
ナイアシンとはビタミンB3のことで、犬は体内でナイアシンを合成できますが、その量は1日の必要量に満たない程度のため、食餌からもナイアシンを摂る必要があります。
ナイアシンの働きは、他のビタミンと合わせセラミドの合成を助け、皮膚のバリア機能のサポートすることです。
また、皮膚以外にも、消化器や精神の健康維持、糖質や脂質、タンパク質の代謝にも役立っています。
ビタミンB6
ビタミンB6はささみだけでなく、バナナや赤ピーマン、牛レバー、カツオ、マグロなどに多く含まれる成分です。
ビタミンB6には、タンパク質の代謝を助け、免疫や神経系の機能維持、皮膚を健康に保つ作用があります。
そのため、ビタミンB6が不足すると食欲不振や体重減少、痙攣、皮膚や粘膜のトラブルを引き引き起こすことがあるのです。
セレン
セレンはミネラルで、かつおやイワシなど魚介類、わかめ、こんぶなどの海藻類に豊富に含まれ、ささみは鶏肉の他の部位よりもセレンを多く含んでいます。
セレンの作用は、ビタミンEなどと協力して体を酸化から守る抗酸化作用のほか、免疫力を向上する作用です。
ささみを犬が食べた際の犬への効果・影響
ささみは高タンパクな食材のため、筋肉維持や回復、筋力アップ効果があると考えられています。
また、エネルギー代謝を高めるビタミンB群が豊富含まれているため、疲労回復効果も期待できるのです。
さらに、抗酸化作用と免疫力向上効果のあるセレンを含んでおり、犬の体の健康を維持してくれます。
犬に与えてよいささみの量は?
小型犬の場合 | 15~30g(小さなささみ1/4~1/2本) |
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中型犬の場合 | 30~70g(ささみ1/2~1本) |
大型犬の場合 | 70~150g(ささみ1~2本程度) |
子犬の場合 | 5~15g/体重1kg、必要に応じて調整 |
老犬の場合 | 10~15g/体重1kg、必要に応じて調整 |
犬にささみを与える際の注意点
ささみのおすすめの与え方
しっかり加熱をして、味付けせずに与える
生のささみには、サルモネラ菌やカンピロバクターなどの細菌がが含まれる可能性があります。そのため、犬にささみを生のまま与えてしまうと食中毒を起こし、下痢や嘔吐、腹痛などの症状を引き起こすリスクがあるのです。
65°Cで数分間加熱することによりカンピロバクターはほぼ死滅しますので、肉の中心が白くなるまでしっかりと加熱してから与えるようにしてください。
また、塩分や調味料は使用せず、シンプルに茹でるか蒸して与えるようにしましょう。
塩を加えてしまうと塩分過多となり、腎臓や肝臓に負担をかけ、病気のリスクを高めてしまいます。犬は人間とは違い、味付けがなくても問題はありません。
ただ、茹でた後のささみは保存が効かないため、調理後は冷蔵で2~3日以内に使い切るか、冷凍保存しましょう。
様子を見ながら、少量ずつ与える
鶏肉に対するアレルギーを持っている犬もなかにはいます。ですので、初めてささみを与えるときは、アレルギー反応がないか確認しながら、少しずつ与えましょう。
万が一、下痢や嘔吐、皮膚のかゆみなどのアレルギー症状が出た場合は、すぐに動物病院を受診してください。
主食ではなく、トッピングやおやつとして与える
ささみは高たんぱくで脂肪が少ないため、ヘルシーですが、長期間そればかりを与えるとビタミンDやカルシウム、必須脂肪酸などが不足し、栄養バランスが崩れてしまいます。
また、ささみには骨を作るのに欠かせない栄養素であるリンが豊富に含まれており、たんぱく質やリンを摂りすぎると腎臓に負担がかかってしまうのです。ですので、ささみは主食ではなく、おやつやトッピングとして少量を与えるのが適切です。
細かく裂くか、食べやすいサイズに切って与える
ささみを短期間で大量に与えると、消化不良や嘔吐、下痢の原因となることがあります。そのため、適量の茹でたささみを、裂いたり、細かく切ったりしてから与えるのがおすすめです。
こんな時は犬にささみを食べさせないこと
ささみにはタンパク質が多く含まれるため、過剰に摂取すると、タンパク質を体外に排出する役割のある腎臓や肝臓に負担をかけてしまいます。そのため、腎臓病や肝臓の悪い犬には出来るだけ与えないようにしましょう。
また、ささみに豊富に含まれているリンも、腎臓病や尿路結石の一種であるリン酸アンモニウムマグネシウム(ストルバイト)結石ができる原因となります。
まとめ
ささみは低脂肪・高タンパクで、低カロリーなため、トッピングやおやつとしても最適な食材です。
しかし、愛犬にささみを過剰に与えていると栄養バランスが崩れるため、適量を与えるようにしましょう。
また、生のまま与えると、カンピロバクター属菌による食中毒を引き起こすことがあるため、中までしっかり火を通すなど、与え方にも注意が必要です。
正しい知識を持って、毎日の愛犬の食生活にささみを是非取り入れてみてくださいね。
Supervisor
西岡 優子 にしおか ゆうこ
獣医師。北里大学獣医学科卒業後、香川県の動物病院に就職。結婚を機に、都内の獣医師専門書籍出版社にて勤務。現在は、パート獣医として働く傍ら、犬・猫・小動物系のライターとして活動。ペット栄養管理士としても活躍中。