本記事は獣医師が執筆・監修を行っております。
お鍋やおうどん、雑炊などに欠かすことのできない椎茸はとても栄養に優れており、私たち人間にとっては積極的に摂り入れたい食べ物の1つですね。また、うま味成分も多いため出汁として頻繁に使用されている方も多いでしょう。しいたけの原産地はアジアの熱帯高地と推測されており、日本では鎌倉時代には食べられていたようです。さらに室町時代にはしいたけを将軍に献上したという記録もあるといわれています。
そのような馴染み深い食べ物である椎茸は犬に与えても大丈夫なのでしょうか?
ANSWER 椎茸は犬に食べさせても大丈夫です。
種類が豊富なキノコ類ですが、その中でも椎茸は犬に食べさせても大丈夫だといわれています。
特に椎茸には、椎茸にしか含まれていない成分も存在することから愛犬の健康維持に役立つことが期待できます。
ただ、適切な与え方や与える量を守らなければ逆に悪影響を及ぼしてしまう可能性もあるため注意が必要となります。
椎茸の主な成分や栄養素
βグルカン
グルコースという小さな糖が連なった多糖体の1つであるβグルカンはキノコ類に多く含まれており、免疫の活性力を高めることでガンやアレルギーを予防するのに役立つ働きが期待されています。また、食後の急激な血糖値の上昇も抑えると考えられています。
エリタデニン
エリタデニンはほぼ椎茸のみにしか含まれていない固有の成分であり、リン脂質やリノール酸といった脂質の代謝に影響することで、血中コレステロールを低下させる作用があります。さらには血液をかたまりにくくする作用もあるため、動脈硬化のリスクを下げて血圧の上昇を抑える効果も期待できるといわれています。
エルゴステロール
椎茸にはビタミンDの元となるエルゴステロールという成分が含まれており、このエルゴステロールが紫外線に当たることでビタミンDに変化します。ビタミンDの主な働きは体内でカルシウムの利用効率を高めて骨や歯の発育を促すこととなり、犬は体内でビタミンDを作ることができないため、食べ物から取り入れる必要があります。
食物繊維
食物繊維には水に溶けない不溶性食物繊維と、水に溶けやすい水溶性食物繊維に分かれます。しいたけには不溶性食物繊維がとても豊富であることから水分を吸収し、便のカサを増やすことで腸を刺激して、便通を促す効果があります。
椎茸を犬が食べた際の犬への効果・影響
ガンやアレルギーを予防したり血中のコレステロールを低下させたりする働きがある椎茸を与えることは、愛犬の健康維持に役立つと考えられます。また、不溶性食物繊維がとても豊富なことから、便秘を解消する効果も期待できるでしょう。
犬に与えてよい椎茸の量は?
小型犬の場合 | 30gまで |
---|---|
中型犬の場合 | 50gまで |
大型犬の場合 | 90gまで |
子犬の場合 | 与えないほうが良い |
老犬の場合 | 与えないほうが良い |
犬に椎茸を与える際の注意点
椎茸のおすすめの与え方
必ず火を通してから与えましょう
愛犬に椎茸を与える時には必ず火を通してから与える必要があります。もし生のままの椎茸を食べてしまうと、消化不良によって下痢や嘔吐などの症状を起こす危険性が高いため注意が必要となります。なお、椎茸には油を吸収しやすいという性質があることから油はなるべく使わない方がおすすめです。
軸と石づきは取り除くようにしましょう
椎茸は部位によって「傘」「軸」「石づき」に分けることができます。「傘」は一番上に広がっている肉厚の部分であり椎茸の風味が一番強いといわれています。「軸」は、その「傘」の下に伸びている棒のような部分、「石づき」は原木と接していた黒く硬い部分となります。軸と石づきは硬いため、消化不良を予防するためにも取り除いたほうが安心です。
細かくカットしてから与えましょう
習性として、多くの犬はあまり噛まずに飲み込む傾向が強いため椎茸を丸ごとそのままやほとんど切らずに与えてしまうと、喉につまらせたり消化不良を起こしたりする危険性があります。よって火を通した後の椎茸であっても細かくカットして与えるようにしましょう。また、ペースト状にするのもおすすめの与え方となります。
特に初めて与えるときはアレルギーに注意
犬にアレルギーを引き起こしやすい食べ物として椎茸が挙がることはあまりありませんが、個体差によっては椎茸がアレルゲンとなってしまう場合もあります。よって椎茸を初めて与えるときは飼い主さんが愛犬の様子をよく観察することができて、かつ動物病院が診療している時間帯を選ぶことをおすすめします。
また、初めてでなくても椎茸を与えた後に下痢や嘔吐、目の充血や皮膚をかくといった症状が見られた場合は与えるのをやめてすぐに動物病院を受診するようにしましょう。
こんな時は犬に椎茸を食べさせないこと
椎茸にはカリウムも含まれており、腎臓病の犬に椎茸を与えてしまうと腎機能が低下していることにより、カリウムをうまく排出しきれずに血液中にカリウムが残ってしまう「高カリウム血症」を引き起こす危険性があります。「高カリウム血症」では主に嘔吐や四肢のしびれなどが見られ、重症の場合は不整脈を起こして生命を落としてしまうという危険性があります。
よって、腎臓病の犬に椎茸は与えないようにしましょう。なお、腎臓病以外にも何かしらの持病がある犬の場合は、与える前に必ず獣医師に相談してください。
まとめ
健康効果が高い椎茸は犬が食べても多くの場合は問題なく、がんの予防などの働きも期待できる嬉しい食べ物ということができます。
しかし与えすぎたりしてしまうと体調に悪影響を及ぼしてしまう場合もあるため、ぜひ今回紹介した与え方や注意点などを参考にしてくださいね。
Supervisor
松本 千聖 Chisato Matsumoto
岐阜大学応用生物科学部獣医学課程を卒業後、3年ほど獣医師として動物愛護団体付属動物病院やペットショップ付属動物病院にて主に一次診療業務、ペット保険会社では保険金査定業務などに従事しました。
現在は、製薬関係の業務に携わり、プライベートでは個人で保護猫活動並びに保護猫達の健康管理を行っています。