2024年1月2日に起きた「羽田空港地上衝突事故」は、まだ記憶に新しく、飼い主さんにとっては今後の愛犬との飛行機旅について改めて考えさせられた出来事だったのではないでしょうか?
そこで今回は、コロナも落ち着き旅行への意欲が増す中で、飼い主さんたちの注目も集まっている「愛犬の飛行機搭乗」についてまとめてみました。飼い主のとして知っておきたいこと、是非この機会に一緒に学んでいきましょう。
年間で飛行機に乗る犬の頭数はどのくらい?
みなさんは、年間どのくらいの犬たちが飛行機に乗っているのかご存知でしょうか。
年間で多くの犬が飛行機に乗っていますが、実は正確な航空会社の動物輸送数データというのは、アメリカの航空会社以外公開がされていません。
アメリカの航空会社の動物輸送数のデータによると、2019年に飛行機で輸送された動物は、ユナイテッド航空(UAL)は49,587頭、アラスカ航空(ASA)149,303頭、アメリカン航空(AAL)53,646頭、デルタ航空(DAL)41,965頭となっています。
しかし、あくまでも「動物」というくくりでのデータなので、乗っているのが犬なのか猫なのか、小動物なのかを知ることは難しいようです。
日本の航空会社での、動物輸送頭数のデータは現在公表はされていません。後述いたしますが、日本ではANAとJALが動物輸送の際の死亡件数を公表しています。
犬が飛行機に乗る方法は?
犬と飛行機に乗る方法は下記2つとなります。
01愛犬を手荷物として貨物室に乗せる
多くの航空会社の場合は、犬を手荷物として預けて、貨物室にて輸送することになります。
手荷物として犬を預ける手順は、下記の通りです。
01.事前に同意書を印刷し、記入をする
後述しますが、犬を飛行機に乗せる際には、必ずペット輸送に関する同意書に記入をする必要があります。それぞれの航空会社のHPに同意書をダウンロードできるページがあるので、事前にプリントアウトをして内容を確認してから記入しましょう。
02.チェックインカウンターにて同意書を提出する
当日、空港についたら、まず同意書をチェックインカウンターにて提出します。
通常の搭乗手続きにプラスして犬の輸送に関する手続きが必要になるので、チェックインに時間がかかります。
搭乗の1時間前には、カウンターに行けると時間に余裕をもって搭乗手続きが行えます。
03.愛犬をクレートに入れて手荷物カンターに預ける
チェックインが終わると、クレートに入れた愛犬を預けることになります。
使用できるクレートの大きさや形は、各航空会社によって異なりますが、多くの場合、輸送時にも壊れにくいしっかりとしたハードタイプのものとなります。
普段使っているクレートが使用できないと、犬が不安を感じてしまうかもしれません。事前に確認をして、万が一いつものクレートが使用できない場合には新しいクレートトレーニングをし、クレートに愛犬を慣れさせてからにしましょう。
下記の記事で、IATA(国際航空運送協会)基準をクリアしたクレートもご紹介していますので、ご参考にされてみてください。
飛行中の貨物室内は、照明が消えて真っ暗となりますので、暗い場所を怖がる子やストレスを感じやすい子は、飛行機に乗せるのが難しい場合があります。
愛犬の性格や様子によって、しっかりと飼い主さんが判断することが大切です。
また、国際線の場合は、狂犬病予防接種やマイクロチップ装着などの証明が必要となります。
国外に犬を連れだす際には、出国時にも入国時にも検疫を受ける必要があり、検疫には数日から数週間の時間を要します。
数日~数週間の海外旅行の時は、ペットホテルや家族に犬を預けた方が愛犬と離れている時間が少なくて済むことがあるので、注意しましょう。
すべての国内線でペットを預けられるわけではなく、ピーチやジェットスターといった一部のLCCの航空会社では、ペットを預けることができません。ペットと飛行機に乗りたい時には、ANAやJALなどを利用しましょう。
02愛犬を客室に同乗させる
基本的に、犬は客室同乗は出来ませんが、2024年1月15日からスターフライヤーで国内線の全路線・全便で機内に一緒に搭乗できるサービスが始まりました。
愛犬と搭乗の際には、原則、最後列の窓際の席にケージを固定し、機内ではケージから犬を出さないことが決められています。
また、目的地に到着した際には、他のお客様が降り終わった後、最後の降機となるので時間に余裕をもつ必要があります。
1頭50,000円と少々高めの料金設定ですが、愛犬と離れる心配もなく、安心して一緒に旅を楽しむことができます。
細かいルールが航空会社にて定められているので、事前にチェックしましょう。
その他、チャーター便としてJALが行っている、ワンちゃんと一緒に機内で過ごし、到着先のホテルにも一緒に泊まることのできるセットツアーもあります。
もちろん、盲導犬や介助犬、聴導犬などの身体障害者補助犬については、ほとんどの航空会社で客室に一緒に乗ることができます。
愛犬を飛行機に乗せる際の同意書について
犬を飛行機に乗せるのには、もちろんリスクも伴います。
ANAでは、「ペットの輸送にあたり、当該輸送中に発生したペットの死傷について、貴社に対して一切の責任を問わないことに同意いたします。」(※一部抜粋)といった同意書にサインをする必要があります。
その他、預ける条件、ペットの健康状態、輸送中の環境などについても、同意が必要となります。
同意書は、大切な愛犬の命に関わることです。注意事項をしっかりと読んで、飼い主として納得してから同意書にサインをするようにしましょう。
ペット輸送に関する同意書は、各航空会社の公式サイトからプリントアウトができるので、空港に向かう前に準備をしておきましょう。
犬の飛行機での死亡率は?年間の死亡件数は?
同意書の内容などを確認して、愛犬を飛行機に乗せることに不安になる飼い主さんもたくさんいらっしゃると思います。
愛犬を飛行機に乗せるかどうかは飼い主さんの判断次第です。しっかりと飼い主の責任として死亡や事故のリスクを把握し、理解しておくことが大切です。
では「犬を飛行機に乗せた際の死亡率」はどのくらいなのでしょうか?
犬を飛行機に乗せた時の死亡率は約0.02%以下と言われています。この確率を低いと捉えるか、リスクがあると捉えるかは飼い主さん次第になります。
飛行機での犬の死亡件数で見てみると、国内では、ANAが2015年〜2023年のペットの死亡事例を公表しており、ペット全体で15頭、犬のみの死亡件数は13頭となっています。
また、JALは、2019年~2023年のペットの死亡事例を公表しており、ペット全体で11頭、犬のみだと死亡事例は6頭となっています。
日本よりも犬の搭乗数が多い海外はどうでしょうか。2018年にユナイテッド航空では18頭の犬が死亡しています。
その他の航空会社では2頭前後の件数ですが、ユナイテッド航空では比較的事故が多いようです。
日本と比べ、海外の方が動物輸送自体多いのですが、それでも18頭という数字は多く感じられます。
もちろんアメリカの航空会社の中で、事故件数が0件の航空会社もあります。搭乗を考えている航空会社があれば実際に公式サイトなどで過去の事例を調べてみましょう。
飛行機に犬をのせた際の死亡率はあくまで0%というわけではないので、犬を飛行機に乗せる際のリスクや危険については十分に知っておくことが重要です。
犬の飛行機での死亡理由は?
犬が飛行機で死亡してしまう理由の多くは、「熱中症」です。
もともと犬は温度や湿度、環境によって体調が大きく左右されます。貨物室では、客室よりも外気の影響を受けやすく、夏場には室温が上がりやすく熱中症や脱水症状に、冬場になると寒さにより、凍傷や低体温症の危険があります。
2013年には飛行機に預けたチワワが熱中症で死亡したというニュースも話題となりました。搭乗予定の機体の不具合により、代替機への移動中、駐機場の炎天下の中、20分以上チワワが入ったキャリーが置かれていたそうです。
飛行機内だけではなく、空港から機内への移動も犬にとっては負担となるので、夏の日中は飛行機に乗せる際にはこのようなリスクがあることも覚えておきましょう。
また、上空を飛ぶ飛行機は、気圧の変化が大きくなります。
気圧に関しては、 2,000メートルの山頂と同じくらいの気圧である、0.8気圧までになります。
上昇と下降を繰り返す機内の気圧変化で、人間であっても耳の聞こえがおかしくなるなどの異常を感じたことがある方もいるかと思います。これは犬も同じです。
特に短頭種に関しては、他の犬と比べて温度や気圧の変化を受けやすいため、搭乗を規制している航空会社がほとんどです。
飛行機が事故にあった場合、死亡した場合の対応は?
もし、犬を乗せた飛行機が事故にあった場合、航空会社はどのような対応をしているのでしょうか?
ANA公式サイトでは、「当該運送中に発生したペットの死傷について、その原因が、ペット自身の健康状態や体質等(気圧・温度・湿度・騒音による影響を含む)、ペット自身の固有の性質にある場合、もしくは、梱包の不備等にある場合は免責とさせていただきます。」(※一部抜粋)
JAL公式サイトでも同様に「死傷・発病等、及びそれに伴う損失、損害もしくは費⽤等については運送⼈の免責事項とする。」(※一部抜粋)と同じような記載があります。
2024年1月にあった羽田空港での炎上事故では、一部の飼い主さんから「ペットも家族だから、犬も客室に乗せたい」などの声もあがりましたが、現状では残念ながら、犬は貨物扱いとなっています。
また、避難時にもペットを連れて逃げることができず、飼い主さんのみが避難対象となります。愛犬を飛行機に乗せる際には、万が一のことも想定し、乗せるかどうか判断することが大切です。
死亡した場合の航空会社の対応
ペットが死亡した場合、航空会社は同意書に沿った対応を行います。前述した通り、同意書には「輸送中に発生したペットの死傷について、貴社に対して一切の責任を問わないことに同意いたします。」(※一部抜粋)との記載があります。
この同意書に飼い主さんがサインをした時点で、あくまでもペットは貨物としての扱いとなるため、ペットが死亡した場合も貨物として対応となります。
下記、ANA、JALの公式サイトにお預けの際の注意点もありますので、検討されている方は必ず確認しておきましょう。
飛行機に搭乗できない犬種は?
飛行機に搭乗することのできない犬種は、主に短頭種を含めた下記の特定の犬種となります。
なお、航空会社により搭乗することができない犬種や、時期が異なるので、事前にそれぞれの搭乗予定の航空会社のホームページを確認しましょう。
- ブルドッグ
- フレンチ・ブルドッグ
- ボクサー
- シーズー
- ボストン・テリア
- ブル・テリア
- キングチャールズ・スパニエル
- チベタン・スパニエル
- ブリュッセル・グリフォン
- チャウチャウ
- パグ
- チン
- ペキニーズ
短頭種の犬は、マズルが短く鼻腔が小さくため、呼吸がしにくくなってしまう可能性があります。
また、生後4カ月未満、妊娠中の犬、心疾患や呼吸疾患がある子、ストレスを感じやすい子などは航空会社によっては、乗せることができません。
飛行機に乗せない方が良い犬はどんな犬?
01シニア犬や子犬
シニアや子犬は、体温調節が成犬よりも上手にできず、負担も大きいため、基本的に飛行機には乗せない方が良いでしょう。
特に、7月~9月であれば熱中症、12月~2月であれば凍傷や低体温症のリスクが高くなり、犬自身に大きな負担がかかってしまいます。
02持病のある、体調に不安がある犬
持病のある犬の場合、飛行中に発作が起きてしまう場合があります。
また、食欲がない時や排泄に異常があるときなど、愛犬の体調に不安がある際には、飛行機に乗せない方がよいでしょう。
健康状態に不安のある子は、ストレスや気温や気圧の変化に影響が受けやすく、病状が悪化してしまうこともあります。
03ストレスを感じやすい犬、怖がりな犬
飛行時間は少なくとも1時間はかかり、長い場合には十時間を超える場合も。
飼い主さんと離れることに不安がある子(分離不安)や、吠え癖のある子はストレスを強く感じてしまうかもしれません。
また、貨物室内はエンジン音や機械音が大きな音で響きます。
日常で大きな音にビックリしやすい犬は飛行機に乗せない、または音に慣れさせてから飛行機に乗せるようにしましょう。
まとめ
今回は、飛行機に犬を乗せた際の死亡率と死亡理由についてご紹介しました。
飛行機に犬をのせる際には、原則、貨物室での輸送となります。愛犬と飛行機旅をするかどうかは飼い主さん次第になりますので、飼い主として乗せるリスクや注意事項を理解した上で、旅の計画をたてるようにしましょう。
ただし、短頭種をはじめとした特定の犬種は飛行機に乗せることが出来ません。また、体調不良の犬や、シニア子犬、ストレスを感じやすい子についても飛行機での移動はおすすめできません。
犬は人間と違って、簡単に飛行機に乗って旅行ができるわけではないので、愛犬の体調や性格などをしっかりと把握した上で、飛行機に乗せるかどうかを決めましょう。
また、海外旅行の際には、出国と入国の際に検疫を受ける必要があります。検疫には数日から数週間かかるので、よほどの長期間海外に行く場合でない限り、日本のペットホテルに預けたり、家族に預けた方が犬にとっては良い場合があります。
国内で遠出をしたい場合であれば、フェリーに乗って一緒に旅をする、車で移動をするという選択もあります。
低い確率ではありますが、飛行機に愛犬をのせて事故により死亡してしまったケースはゼロではありません。飛行機に乗る際の愛犬の命は飼い主さんの判断にすべて委ねられます。
愛犬とこれから沢山の思い出を作るためにも、犬と飛行機にのるリスクや注意事項や輸送時の環境を知り、後悔のない判断をしましょう。