東京農業大学教授の増田先生と一緒にお届けする、ワンコともっと良い関係を築くためのヒント。ワンコから見えるモノゴト、ワンコの考え方、感じ方など、ワンコたちに見えている世界を私たちにも見せてくれる増田先生シリーズ「ワンコno世界」。
今回は、ワンコたちが大好きな「おもちゃ」についてです。お気に入りのおもちゃだけで遊ぶのはどうして?音の鳴るおもちゃ、どうしてワンコたちはあの音に反応するの?愛犬とより楽しく遊ぶコツなど、増田先生に伺ってみました。
Advisor
増田 宏司教授
東京農業大学 農学部 動物科学科 教授。東京大学大学院を修了後、同大学院で学術研究支援員を務め、2006年から東京農業大学で研究と学生への指導を行う。研究だけでなく、飼い主向けのカウンセリングやワンコのしつけに使えるグッズの開発など、ワンコと飼い主が幸せに暮らせる社会を築くため、幅広く取り組んでいる。
ピーピーと音の鳴るおもちゃがたくさん販売されていますがどうしてあの音に反応するのでしょうか?あの音はワンコにとって遊びたくなる音なのでしょうか?
これには犬の聴力が関係していると思われます。犬の聴力は人間よりもはるかに鋭敏です。
特に高い音には敏感で、人間は2万ヘルツ程度まで聞こえるのに対し、犬の聞こえる範囲は5万ヘルツとも6万ヘルツとも言われており、かなり高い音まで聞くことができるうえに、人間よりも広い範囲から音を感知できるようです。
おもちゃから出る音は高い音であることが多いので、聴力の発達した犬が興味を抱き、興奮するには十分な状況を作れるはずですし、例えば音の高さは子犬の鳴き声にも似ているため、楽しかったきょうだいとの遊びを思い出して興奮しているのかもしれません。
また、ネズミなど小動物の鳴き声などに聞こえていて、獲物を目前にして血が騒いでいる状況になっている犬もいるかもしれません。
いずれにせよ、その状況に対する飼い主さんの嬉しそうな反応もまた、犬がおもちゃに夢中になることに貢献しているはずです。
たくさんおもちゃがあるのに、特定のおもちゃでばかり遊びたがります。どうしてですか?
これはまるで、たくさんあるにもかかわらず、お気に入りのズボン2本だけで毎週を乗り切ろうとする私の生活とある意味同じ状況です笑。
犬が特定のおもちゃを気に入る理由は、そのおもちゃの噛み心地や触り心地などの特徴だけでなく、そのおもちゃで飼い主さんと遊んで楽しかった、そのおもちゃは飼い主さんに構ってもらえるきっかけになったなど、おもちゃにまつわる楽しいエピソードがきっかけとなって、ますます気に入る、などが考えられます。
散歩に持っていって外で遊ぶなどの経験があれば、それもプラスに働いたかもしれません。
つまり、結果的におもちゃが飼い主さんの気を引くことや、やり取り、楽しい状況への架け橋になることが、そのおもちゃを特に気に入る十分な理由になるのでしょう。
今のところ私のズボン2本には、そのようなエピソードはありませんが笑。
おもちゃは音がなるものを選んだほうが喜びますか?同じおもちゃでも色の違いで反応が変わることもあるのでしょうか?
オモチャの種類は本当にたくさんあって、大きさ、色、噛むもの、引っ張るもの、追いかけるものなど、何を選べばいいのか、どんなタイプのものを選んだ方がいいのか、本当に悩みますよね。
こればっかりは、どんなものに対して興味を示し、気に入ってくれるかは、犬によって違うと言って良いでしょう。
大きめの音が鳴るおもちゃを気に入って、いま家の中のどこにいるかがわかるくらいに、いつまでも音を鳴らしながら遊んでいる犬もいれば、その音を少し怖がる子もいるでしょう。
色については、犬が認識しやすい色(黄~青)が関係してくるかもしれませんので、青や黄色のおもちゃをお試しになってもいいかもしれません。
ただやはり、犬はおもちゃで「飼い主さんや仲間と」遊ぶ、あるいは「飼い主さんに見守られながら遊ぶ」ことを好むはずです。
そのおもちゃで「どう遊ぶか」を考えながら、工夫していただきたいと思います。
老犬でおもちゃに反応しなくなってしまいました。もうおもちゃで遊ぶことはないのでしょうか?遊びに誘うことはストレスになってしまいますか?
犬は一生遊ぶ生き物、年老いても遊ぶ生き物だとよく言います。
ただ、これを注意深く読んで、考えてみてください。
決して「遊びかたが一生変わらない生き物」と表現されているわけではありません。
確かに遊び方の「分類(種類)」は、噛む、引っ張るなど、若いころと同じかもしれませんが、その「程度」が、激しく、かつ疲れ知らずの子犬の時のままであるとは限りません
(というより、大なり小なり、遊ぶ「程度」が加齢によって落ち着いてくる犬の方が圧倒的に多いでしょう)。
つまり、反応の仕方が成長に伴い、変化してきているだけです。
大丈夫、あなたが感じていらっしゃる以上に、歳をとった今も昔と同じように、おもちゃを用意してくれるあなたに、あなたの愛犬は喜んでくれているはずです。
ストレスなんて、とんでもない。いくつになってもあなたの愛犬は、変わらないあなたを愛してくれているはずですよ。