イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの基本データ
原産国 | イギリス |
---|---|
サイズ | 中型犬 |
犬種グループ | 鳥猟犬(ガンドッグ) |
飼いやすさ・しつけのしやすさ | しつけは入りやすいが運動欲求が高い |
運動量 | 高レベル |
トリミング | 必要(月一回程度) |
ブラッシング | 毎日 |
お散歩 | 1日1時間程度の散歩を2回、定期的に自由運動が必要 |
飼育費用 | 月2~3万程度(医療費別途) |
かかりやすい病気・怪我 | 進行性網膜萎縮症(PRA)、股関節・肘関節形成異常、ホスホフルクトキナーゼ(PFK)欠損症、皮膚疾患、耳の感染症、眼瞼内反症、網膜異形成、レイジ・シンドローム |
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの歴史
スペイン原産の垂れ耳で長い被毛の追いかける犬という意味を持つスパニエル種。鳥猟犬として優れた能力を発揮するイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルは、バネ(スプリング)のように飛び跳ねることからこの名前が付けられています。実は、スペインからイギリスに渡った当初は、イングリッシュ・コッカー・スパニエルとフィールド・スパニエルは、同じ犬種として考えられていました。17世紀になり、狩猟に銃が使用されるようになると、同じスパニエルの中でも、小さい個体をコッカー、大きな個体をスプリンガーと呼んでいました。
スプリンガーの役割は、背の高い草むらの中にいる鳥を見つけ、飛び立たせる(フラッッシング)こと。狩猟が盛んなイギリスでは、鳥を見つけるポインター(ポイントドッグ)、飛び立たせるスプリンガー(フラッシングドッグ)、回収するレトリバーと3タイプの犬を使い分けていたのです。20世紀に入り、カナダに輸入されたイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルは、その優れた運動能力からスポーツドッグとして人気犬種となったのです。現在アメリカでは、フィールドタイプ、ショータイプとタイプの異なるイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルが繁殖され、どちらのタイプも人気犬種となっています。
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの性格と特徴・飼いやすさ
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルは、スタミナ、エネルギー、敏しょう性と言った鳥猟犬として最良の運動能力を備える犬種として作出されました。賢く、人を喜ばせることが大好きで、飼い主には忠実な狩猟犬らしい性格に加え、陽気で愛情深いイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルですが、常に飼い主と一緒に過ごしていたい寂しがり屋の一面もあるため、長時間のお留守番や孤独が苦手なことも特徴です。
また、運動欲求の高さは狩猟犬の中でも抜きん出ているため、運動不足は最大のストレスとなります。そのため、犬と一緒にアクティブに遊びたい飼い主には最良のパートナーとなりますが、室内でゆっくり過ごしたい、のんびりお散歩を楽しみたい飼い主には不向きな犬種と言えます。
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの被毛と種類
艶のあるウエーブがかった被毛とダブルコートが特徴のイングリッシュ・スプリンガー・スパニエル。オーバーコートは中程度の長さで防水性に優れています。柔らかく短い毛が密集しているアンダーコートは、草むらの棘などによる怪我から皮膚を守りまた体温低下を防ぐ役割があります。
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの特徴はバイカラーの被毛です。ジャパンケネルクラブでは、レバーアンドホワイト、ブラックアンドホワイトの2タイプにタンのマーキングあるなしが登録されています。なお、アメリカンケネルクラブには、この他に、レモンアンドホワイト、ブラックホワイトアンドタン、レバーホワイトアンドタンなどのカラーも登録されています。
細く絡みやすい被毛のイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルは、毎日のブラッシングと定期的なトリミングが必要な犬種です。抜け毛や被毛の光沢を保つためにも、こまめにケアしてあげましょう。
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの大きさ・体高・体重
俊敏さ、優れた嗅覚、持久力など高い作業能力を持つ鳥猟犬として作出されたイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルは、中型犬に分類されている犬種です。海外には、フィールドタイプ、ショータイプの2タイプがあり、ショータイプに比べ体重の軽いタイプがフィールドタイプとして登録されています。JKCでは体高51cmのみを規定していますが、AKCでは体重20〜25kgが理想としています。
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの体重 | イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの体高 |
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20〜25kg(AKC) | 51cm(JKC) |
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの平均寿命と人間年齢
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの平均寿命は10〜15歳で遺伝疾患を発症しなければ比較的長生きな犬種です。残念ながら遺伝疾患が多いイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルですが、人間に換算すると何歳に値するのかは気になるところですね。
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルは中型犬に分類されているので、一般的な中型犬の換算方式で人間と比較してみましょう。生活環境によって個体差はありますが7歳頃からがシニア期とされているため、ワンコの年齢を人間の年齢に換算して、その年齢に見合ったケアをしてあげることが大切です。ここでは、環境省が提示する「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」に記載されている年齢換算方式を用いて、イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの年齢と人間の年齢を比べてみます。
人間に換算した場合の年齢は下記の表をご参照ください。
犬の年齢 | 人間に換算した年齢 | 成長ステージ |
---|---|---|
3か月 | 4歳 | 子犬 |
6か月 | 7歳半 | |
9か月 | 11歳 | |
1歳 | 15歳 | |
1歳半 | 19歳半 | |
2歳 | 23歳 | 成犬 |
3歳 | 28歳 | |
4歳 | 32歳 | |
5歳 | 36歳 | |
6歳 | 40歳 | シニア犬 |
7歳 | 44歳 | |
8歳 | 48歳 | |
9歳 | 52歳 | |
10歳 | 56歳 | |
11歳 | 60歳 | |
12歳 | 64歳 | |
13歳 | 68歳 | |
14歳 | 72歳 | 高齢犬 |
15歳 | 76歳 | |
16歳 | 80歳 | |
17歳 | 84歳 | |
18歳 | 88歳 | |
19歳 | 92歳 | |
20歳 | 96歳 |
こちらの表は、
- 小型犬・中型犬「24+(犬の年齢-2)×4=人間に相当する年齢」
- 大型犬「12+(大型犬の年齢-1)×7=人間に相当する年齢」
の方式に基づいて計算しています。詳しくは、下記の記事をご覧ください。
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルのかかりやすい病気
狩猟犬として人間が求める能力を引き出すために作出されたイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルには、幾つかの遺伝疾患を発症する可能性がある犬種です。そのため、お迎えする際にはイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの犬種特性や健康について正しく理解し繁殖を行っているブリーダーから迎えることが大切です。
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルのかかりやすい病気 1 目の病気:進行性網膜萎縮症(PRA)、眼瞼内反症
進行性網膜萎縮症(PRA)
原因不明の遺伝疾患で網膜が変性し萎縮していく進行性の病気で、網膜の機能が徐々に低下し最終的に失明してしまう病気です。1歳前に発症する早期発症型と1歳以降に発症する遅発型の2タイプがありますが、どちらも暗い場所や夜の散歩を嫌がる、地面の匂いを嗅ぎながら歩く、ボールが見えなくなるなど夜盲の症状が現れます。この病気は残念ながら、一度発症すると有効な治療法はなく、最終的に失明してしまいます。
眼瞼内反症
下まぶたが内側に巻き込まれ、まぶたのふちやまつげが眼球に接している状態を指します。まぶたやまつげが眼球に刺激を与えることで、角膜や結膜が炎症を起こし目やにや涙が出ます。この状態が長時間続くと、角膜炎や結膜炎を発症します。まぶたを外科的手術によって強制することで、改善することがあります。
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルのかかりやすい病気 2 股関節形成不全・肘関節形成異常
股関節形成不全
股関節形成不全は、レトリバーなど大型犬によく見られる遺伝疾患で、太ももの骨が股関節にはまらず痛みや歩行に支障が出る病気です。モンローウォークとも呼ばれるように腰を振りながら歩くことがこの病気の特徴で、重度になると歩行困難になる場合があります。痛み止めを処方する内科的治療のほかに、近年では、股関節全置換術といった手術を行うことによって機能回復が見込まれるようになりました。
肘関節形成異常
大型犬に発症することが多い肘関節形成異常ですが、イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルにも多く発症が見られている遺伝疾患です。これは、肘関節周辺の骨の成長が均等ではない場合に骨の異常が起こることから発症する病気で、進行すると関節表面の軟骨がすり減ることで変形性関節症を発症し、頭を上下に振りながら歩く、散歩を嫌がる、前足を引きずるなどの症状が現れます。
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルのかかりやすい病気 3 ホスホフルクトキナーゼ(PFK)欠損症
遺伝性の血液の病気がホスホフルクトキナーゼ欠損症(PFK)です。これは、体がエネルギーとして糖を使用するために必要なホスホフルクトキナーゼと呼ばれる酵素が欠乏する病気です。5ヶ月齢の頃より血尿や軽い溶血性貧血や過呼吸、発熱などの症状が見られます。特に、激しい運動をした後や高温下では、赤血球の破壊が進み、極度の貧血を起こすことがあります。定期的な血液検査が必要な病気で、残念ながら有効な治療法がないため、激しい運動は避け夏の暑い日などは温度管理に十分気をつける必要があります。
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルのかかりやすい病気 4 皮膚疾患
ダブルコートの犬種が発症しやすい皮膚疾患は、膿皮症、皮膚のベタつきやカユミなどが起こるアレルギー性のものなどさまざまです。アンダーコートが密に生えているイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルもこれらの皮膚疾患を発症しやすいため、こまめなケアが必要です。
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルのかかりやすい病気 5 耳の感染症
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルなど垂れ耳の犬種は、耳の中が蒸れやすいため外耳炎をはじめとした耳の感染症を起こしやすい犬種です。耳は常に乾燥した清潔な状態に保つことで、発症を防ぐことができます。
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルのかかりやすい病気 6 レイジ・シンドローム(突発性激怒症候群)
さっきまで落ち着いていた犬が突然狂ったように暴れ出す、かみつくなどの攻撃性が発現する病気がレイジ・シンドロームです。この病気は1頭のイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルが発症したことによって発見されたため、スプリンガー・レイジ・シンドロームと呼ばれることもあります。現在のところ、発症のメカニズムは解明されていませんが、遺伝性の脳機能障害であると考えられ、感情をつかさどる大脳辺縁系が部分発作を起こすのではないかと言われています。残念ながら、有効な治療法はなく、抗てんかん薬などで症状を抑えることもあります。
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの飼い方・飼う際の注意点
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルはイギリスで鳥猟犬として育種された中型犬です。エネルギッシュでずば抜けた運動能力を持ち訓練性の高さが特徴のイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルですが、その性質から飼い方や飼う際に知っておきたい注意点があります。
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの飼い方・飼う際の注意点 1 元気いっぱいとにかく運動好き
スプリングのように飛び跳ねることからその名がついたイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルは、多くの運動を必要とする犬種です。可愛らしく美しい容姿からは想像もつかない持久力、敏捷性、エネルギーとあらゆる運動能力に優れているアスリートのため、海外ではスポーツドッグとして人気があります。そのため、運動不足と感じるとストレスから脱走してしまったりまた、運動不足によるストレスから家の中を破壊することもあるため注意が必要です。
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの飼い方・飼う際の注意点 2 孤独は最大のストレス
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの特徴の一つに挙げられているのが分離不安です。これは、ハンターと常に行動を共にしていた猟犬ならではの性質とも言えます。飼い主の指示を聞き、飼い主を喜ばせることが大好きな性格から、長時間のお留守番など孤独にされることで、分離不安症を発症することがあります。分離不安症は、犬にとって大きなストレスとなるため、子犬期からお留守番ができるようにトレーニングし、人がいない環境に慣れさせておくことが大切です。
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの飼い方・飼う際の注意点 3 子犬期からしっかりとしたしつけが必要
フレンドリーで飼い主や家族を喜ばせたい性格のイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルですが、臆病な一面があります。過度に臆病な性質は攻撃性に変わることがあるため、子犬期からさまざまな音や場面、たくさんの人々などあらゆる環境に適応できるよう社会化をしておくことが必要です。
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの飼い方・飼う際の注意点 4 トレーニング大好き
アクティブで好奇心旺盛のイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルは、狩猟犬としての性質を色濃く残す犬種です。ハンターの指示に従って鳥を探し出し、その鳥をハンターの望むように飛び立たせるフラッシングを忠実にこなすことがイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの特徴です。イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルは、賢くまた好奇心が旺盛なため、成犬になっても継続してトレーニングを行うことが必要です。飼い主の喜ぶ姿が大好きなイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルは、飼い主と共に行うトレーニングが大好きです。しっかりとトレーニングすることでベストパートナーとなってくれます。
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの飼い方・飼う際の注意点 5 脱走に要注意
鳥猟犬として有能なイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルですが、愛情深く小さな子供たちとも仲良くできる犬種です。また、小動物や他犬種にも優しく接することができるフレンドリーな性質が特徴です。しかし、鳥を飛び立たせることを仕事としていたため、鳥を見つけると追いかける習性があるためアウトドアでは注意が必要です。囲いのない場所ではしっかりとリードを持つ事や、自宅の庭から脱走しないように注意が必要です。
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルをお迎えする方法
ブリーダーさんからお迎えする
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル専門の優良ブリーダーをネットなどで検索してみましょう。ブリーダーから子犬をお迎えする場合は両親が明らかなので、毛色や体格、性格などがわかるメリットがあります。
また、お迎え後もブリーダーさんに困った時に相談ができたり、兄弟犬の輪が広がったりとサポートしてもらえる繋がりがもてるのも心強いポイントです。
保護犬のイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルを探して里親になる
動物保護施設や動物愛護ボランティア団体などでは、繁殖犬を卒業して保護された子や、飼い主の事情で手放されて保護されているイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルを見つけられるかもしれません。事前にサイトやSNSなどで探してみてくださいね。
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの値段・価格の相場
2021年度のJKC登録頭数が79頭と、飼育頭数の少ないイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルは、ペットショップで見かけることはほとんどありません。一般に販売される値段は40〜50万円程度とされていますが、ブリーダーの数も少ないため正確な相場価格は不明です。お迎えしたいと考えた場合は、遺伝疾患の発症を避けるためにも、専門のブリーダーを探すことが大切です。
まとめ
ふわふわの飾り毛が美しく愛らしい見た目ながら運動能力抜群のイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルは、狩猟犬の本能を持つエネルギッシュで運動欲求の高さが特徴の犬種です。飼い主には忠実で愛情深い気質ですが、イタズラ好きな面もあるため、しっかりとしたトレーニングをすることが大切です。また、走ることだけではなく水泳も大好きなため、ワンコと一緒にさまざまなドッグスポーツなどアクティブに楽しみたいと考えている人に向いています。