ロットワイラーの基本データ
原産国 | ドイツ |
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サイズ | 中〜大型犬 |
犬種グループ | 使役犬 |
飼いやすさ・しつけのしやすさ | ベテラン向き |
運動量 | 中〜高レベル |
トリミング | 必要なし |
ブラッシング | 週に1回程度 |
お散歩 | 1日1時間程度の散歩を2回と定期的な自由運動が必要 |
飼育費用 | 月4~5万程度(医療費別途) |
かかりやすい病気・怪我 | 股関節形成不全、肘関節形成異常、大動脈狭窄症、骨肉腫、胃拡張・胃捻転、甲状腺機能低下症 |
ロットワイラーの歴史
欧米ではロッティの愛称で親しまれているロットワイラーは、最古の犬種であるモロッサスを祖先に持つ犬種で、ローマ帝国の時代に誕生したと考えられています。ローマ軍と行動を共にしていたロットワイラーの祖先犬は、最終的にドイツ南西部のバーデン=ヴュルテンベルク州ロットワイル地方に根付いたことから、ロットワイラーと名付けられたのです。畜産業が盛んなロットワイル地方で「肉屋の犬」とも呼ばれていたロットワイラーは、牛の群れを牧草地から市場へと移動させるだけではなく、牛の販売代金を泥棒から守る警備犬としての働きも担っていました。
何世紀にもわたって「肉屋の犬」として活躍していたロットワイラーですが、鉄道輸送が始まると同時にその役割を失い、一時は絶滅の危機に瀕したのです。そして、1882年のドッグショーに出陳された1頭のロットワイラーによって、その品種基準が策定され、繁殖プログラムが促進されました。20世紀に入ると、タフで優れた作業能力が認められ警察犬として採用されたことをきっかけに、現在では災害救助犬、盲導犬などの使役犬として世界中で活躍しています。
ロットワイラーの性格と特徴・飼いやすさ
日本では見かけることが少ないロットワイラーは、マスティフの血を引くちょっと強面なイメージのある犬種ですが、飼い主に忠実で賢いため欧米では、ゴールデンレトリバーにも匹敵するほどとても人気のある犬種です。そんなロットワイラーにはジャーマンタイプとアメリカンタイプの2タイプがあり、日本でみかけるロットワイラーはアメリカンタイプです。
ジャーマンタイプ、アメリカンタイプどちらも、飼い主に忠実で、穏やか、賢い性格が特徴です。ジャーマンタイプのロットワイラーは、ドイツのロットワイラークラブ(ADRK)によって厳しい繁殖基準が設けられています。また、容姿、性質ともにコンパニオンドッグとしてロットワイラークラブの認定を受けなくてはなりません。用心深く、勇気がありながら子供達への優しさを持ち合わせているロットワイラーは、その賢さから、他の犬種よりも早くコマンドを学習できるとされています。
一方、アメリカンタイプのロットワイラーは、ジャーマンタイプと同じように知性が高く、飼い主に忠実で、訓練性の高さを持っていますが、見知らぬ人や動物に対しては警戒心が強く、攻撃性を示すこともあります。また、ジャーマンタイプに比べ頑固な一面があることも特徴の一つです。その攻撃性から、一部の国では飼育が禁止されています。そのため、飼い主がしっかりとしたリーダーシップを示した上で、子犬期から一貫したしつけを行い、適切に社会化することが重要です。
ロットワイラーの被毛と種類
短いストレートで粗い被毛のロットワイラーはダブルコートの犬種です。オーバーコートは、耳、頭部、脚は短く、ボディは中程度の長さです。また、特徴的なのは、アンダーコートが主に首回りと太ももに生えている点です。
ドーベルマンとよく似た被毛カラーのロットワイラーは、ブラックがベースで、タンのマーキングが頬、マズル、喉、胸、足の他に、目の上、尾の付け根下で見られます。また、つま先にはペンシルマークと呼ばれる黒いマーキング入っている場合もあります。なお、AKCではタンの他に、マホガニーやラストのマーキングが許容されています。
ロットワイラーは、年に2回の換毛期に多くの被毛が抜け落ちますが、週に1回定期的にブラッシングをしておくことで、抜け毛の飛散を抑えることができます。
ロットワイラーの大きさ・体高・体重
パワフルかつエネルギッシュなロットワイラーは、使役犬として活躍している犬種です。JKCではオスの体高を61〜68cmとしメスの体高を56〜63cmがあるとしていますが、大きさにはばらつきがあるため、均整がとれていることが非常に重要です。また、体重は、オスが50kg、メスは約42kgとしています。なお、AKCではオスの体高は約61〜68.5cm、メスの体高は55〜63.5cm、体重はオスが約43〜61kg、メスは約36〜45kgが理想としています。
性別 | ロットワイラーの体重 | ロットワイラーの体高 |
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オス | 43〜61kg | 61〜68.5cm |
メス | 36〜45kg | 55〜63.5cm |
ロットワイラーの平均寿命と人間年齢
ロットワイラーの平均寿命は9〜10歳。これは大型犬の平均寿命である10〜12歳より少し短く感じますが、遺伝疾患を発症しなければ比較的健康な犬種です。大型犬は、小型犬、中型犬よりも早く年齢を重ねていきます。大型犬のロットワイラーの年齢が人間に換算すると何歳に値するのかは気になるところですね。
小型犬や中型犬と比べると数ヶ月早く成長するロットワイラーは、1歳で人間の12歳に換算できます。生活環境によって個体差はありますが、大型犬は人間の48歳に換算できる6歳頃からがシニア期とされているため、早い段階からケアをしてあげることが大切です。ここでは、環境省が提示する「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」に記載されている年齢換算方式を用いて、ロットワイラーの年齢と人間の年齢を比べてみます。
人間に換算した場合の年齢は下記の表をご参照ください。
犬の年齢 | 人間に換算した年齢 | 成長ステージ |
---|---|---|
1歳 | 10歳 | 子犬 |
1歳半 | 15歳半 | |
2歳 | 19歳 | |
3歳 | 29歳 | 成犬 |
4歳 | 39歳 | |
5歳 | 49歳 | シニア犬 |
6歳 | 59歳 | |
7歳 | 69歳 | |
8歳 | 79歳 | 高齢犬 |
9歳 | 89歳 | |
10歳 | 99歳 | |
11歳 | 109歳 | 超高齢犬 |
12歳 | 119歳 |
こちらの表は、
- 小型犬・中型犬「24+(犬の年齢-2)×4=人間に相当する年齢」
- 大型犬「12+(大型犬の年齢-1)×7=人間に相当する年齢」
の方式に基づいて計算しています。詳しくは、下記の記事をご覧ください。
ロットワイラーのかかりやすい病気
エネルギッシュなロットワイラーですが、気をつけたい遺伝疾患や大型犬ならではの疾患があります。すべてのロットワイラーが発症するわけではありませんが、お迎えする際にはロットワイラーの犬種特性や健康について正しく理解し繁殖を行っているブリーダーを選ぶことが大切です。
ロットワイラーのかかりやすい病気 1 股関節形成不全・肘関節形成異常
股関節形成不全
股関節形成不全は、レトリバーなど大型犬によく見られる遺伝疾患で、太ももの骨が股関節にはまらず痛みや歩行に支障が出る病気です。ロットワイラーにも発症が多く確認されている病気です。モンローウォークとも呼ばれるように腰を振りながら歩くことがこの病気の特徴で、重度になると歩行困難になる場合があります。痛み止めを処方する内科的治療のほかに、近年では、股関節全置換術といった手術を行うことによって機能回復が見込まれるようになりました。
肘関節形成異常
大型犬に発症することが多い肘関節形成異常は、ロットワイラーにも多く発症が見られている遺伝疾患です。これは、肘関節周辺の骨の成長が均等ではない場合に骨の異常が起こることから発症する病気で、進行すると関節表面の軟骨がすり減ることで変形性関節症を発症し、頭を上下に振りながら歩く、散歩を嫌がる、前足を引きずるなどの症状が現れます。
ロットワイラーのかかりやすい病気 2 甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンの分泌機能が低下した状態をいいます。皮膚が乾燥してふけが増える、被毛が薄くなる、脱毛が見られる、元気がなくなる、体重が増えると言った症状が見られます。先天的に甲状腺機能の低下が見られることから、遺伝的なものという見方もあります。予防法は無く、甲状腺ホルモン剤の投与を行います。
ロットワイラーのかかりやすい病気 3 心臓病:大動脈狭窄症、拡張型心筋症
ロットワイラーは心臓の病気を発症する可能性があります。夜、咳をするようになったら心臓病を疑います。
大動脈弁狭窄症
遺伝性の心臓疾患です。心臓から送り出される血液が通る弁が狭くなってしまうために起こる病気です。1~3歳の若い時に、検査で心臓に雑音が聞こえると診断された場合は、これを疑います。程度により症状は異なりますが、重度になると、お散歩中に息切れをする、途中で立ち止まるなど(運動不耐性)、呼吸困難、失神など心不全の症状が起こります。
心筋症
心筋症には、拡張型と肥大型があります。遺伝性疾患と言われていますが、どちらも原因がよく分かっていません。オスの方が拡張型心筋症にかかることが多く加齢伴い発症率が上がります。
拡張型心筋症
心臓の内部が拡張して、心臓が大きくなり心臓の収縮が低下する病気です。成犬になってから発症することが多いですが、重度の場合は1歳前後で発症することもあります。咳、疲れやすい、無気力、食欲の現象、体重減少、息切れ、不整脈、歯茎の色が灰色や青くなる、運動したあとに失神するなどの症状があります。とても難しい病気のため心臓専門医がいる病院で診察を受けましょう。
ロットワイラーのかかりやすい病気 4 骨肉腫
進行性の骨のガンが骨肉腫です。多くの場合、四肢の骨に発症するため、足を引きずりながら歩くなど歩行に支障が出たり、関節など足の一部分が腫れ上がってきた場合に骨肉腫を疑います。骨肉腫は遺伝性の疾患で、エックス線検査と骨の生検によって確定します。骨肉腫は、早期に肺転移することが多いため、早期発見がカギとなります。
ロットワイラーのかかりやすい病気 5 胃拡張・胃捻転
大型犬や胸が深い犬種が多く発症する病気が胃拡張・胃捻転です。これは、胃に大量にガスが溜まり、胃がねじれた状態になり、発見が遅れると胃が壊死し命に関わる病気 です。原因や発症のタイミングがハッキリ解明されていませんが、発症しやすい体型や遺伝的要因、生活環境などが発症の原因として考えられています。特に、加齢によって筋力が衰えてくるシニアが発症しやすいと言われますが、その年齢も確実ではありません。吐こうとしているのに吐けない、所在なげにウロウロする、お腹が膨れてくるなど様々な症状が出ます。これらの症状が見られたら、すぐに病院へ行くことが大切です。胃拡張の場合は、ガスを抜く処置を行いますが、胃捻転の場合は、胃を元に戻す手術が行われます。発症してから4時間以内に手術を行わないと、胃が壊死し死に至る可能性がある恐ろしい病気です。
ロットワイラーの飼い方・飼う際の注意点
警察犬や災害救助犬として活躍しているロットワイラーですが、原産国であるドイツやアメリカの一部の地域、さらに日本でも危険犬種や特定犬種に指定されている犬種です。屈強な見た目や縄張り意識の強さから、攻撃性ばかりが強調されてしまうロットワイラー。その反面、飼い主に忠実で子供達には優しく愛嬌のある一面を持ち合わせている犬種です。
ロットワイラーの飼い方・飼う際の注意点 1 トレーニングは必須
危険犬種としてみられることもあるロットワイラーは、子犬期からしっかりとしたしつけのためのトレーニングが必須です。ロットワイラーは、トレーニングが大好きでしつけが入りやすいと言われていますが、これは飼い主がリーダーシップを発揮できてのこと。中途半端なトレーニングや、家族が一貫していないしつけでは、混乱してしまうこともあるため注意が必要です。また、警備犬としての能力が評価されてきた犬種だけに、見知らぬ人への警戒心や縄張り意識が強く、場合によっては攻撃してしまう可能性もあることから、知識のある飼い主や訓練士によるトレーニングを行うことが重要です。
ロットワイラーの飼い方・飼う際の注意点 2 初心者にはしつけが難しい
家族思いで知能の高いロットワイラーですが、適切に社会化されていない、しつけがされていない場合は、攻撃性が表に出てしまう可能性がある犬種です。これは、ロットワイラーを作出する過程で、防御本能や縄張り意識を強く持たせる育種を行ったために、現代のロトワイラーへ引き継がれている本能です。そのため、日常では穏やかに見えるロットワイラーでも家族を守ろうとする本来の本能から、攻撃性が前面に出てしまうこともあるのです。どのような生活環境でそのように育てていくか、ロットワイラーに対して深い見識を持つことが飼い主には必要なのです。
ロットワイラーの飼い方・飼う際の注意点 3 ロットワイラーを飼う前に、自治体の条例を確認しよう
ロットワイラーは、ピットブルに次いで過去に咬傷事故を多数起こしている犬種もあるのです。日本では、札幌市が「人などに危害を加える恐れが高い犬」としてロットワイラーを特定犬に指定しています。特定犬に指定されている場合、頑丈な囲いの中で安易に人が近づけないようにすることが定められています。飼い主に忠実で家族思いの性質は、攻撃性と紙一重と言われているため、それなりの覚悟を持って飼育することが必要なのです。
ロットワイラーの飼い方・飼う際の注意点 4 適切な運動が必須
ロットワイラーは、パワフルで筋肉質な体を持つ犬種です。また、過酷な任務にも耐えられるスタミナも持ち合わせています。そのため、歩きの散歩以外の運動も必要です。運動不足と感じるとストレスから家の中を破壊してしまうこともあるため、定期的にドッグランなどで遊ばせることが大切です。なお、加齢とともに寝ている時間が増え、運動量は減ってきますが、あまり動きたがらない場合は体調不良の可能性があるため注意しましょう。
ロットワイラーの飼い方・飼う際の注意点 5 子供と遊ばせる時には注意が必要
愛情深く、忠実なロットワイラーは、飼い主家族の子供たちとも仲良く暮らすことができます。ただし、これはロットワイラーから信頼されるリーダーシップを発揮できる飼い主がいることが大前提です。また、遊びがエスカレートし、パワーのあるロットワイラーに体当たりされたり、飛びつかれることで子供が怪我をする可能性があります。ロットワイラーの中には、子供が走り回っていたり、はしゃぐ声に興奮し獲物とみなしてしまう可能性もあるため注意が必要です。
ロットワイラーをお迎えする方法
ブリーダーさんからお迎えする
ロットワイラー専門の優良ブリーダーをネットなどで検索してみましょう。ブリーダーから子犬をお迎えする場合は両親が明らかなので、毛色や体格、性格などがわかるメリットがあります。
また、お迎え後もブリーダーさんに困った時に相談ができたり、兄弟犬の輪が広がったりとサポートしてもらえる繋がりがもてるのも心強いポイントです。
保護犬のロットワイラーを探して里親になる
動物保護施設や動物愛護ボランティア団体などでは、繁殖犬を卒業して保護された子や、飼い主の事情で手放されて保護されているロットワイラーを見つけられるかもしれません。事前にサイトやSNSなどで探してみてくださいね。
ロットワイラーの値段・価格の相場
ロットワイラーは、2021年度のJKC登録頭数が220頭ですが、ペットショップでの販売がほとんどされていない犬種です。一般に販売される値段は20〜30万円程度とされていますが、ブリーダーの数も少ないため正確な相場価格は不明です。ロットワイラーのお迎えを検討している場合は、遺伝疾患の発症を避けることはもちろん、性質についても詳しい専門のブリーダーを探すことが大切です。
まとめ
古くから使役犬として多くの仕事をこなし、飼い主から信頼されてきたロットワイラー。強面で縄張り意識が強いことから危険犬種としてみなされることも多くありますが、知性が高く優しさも持ち合わせている犬種です。しっかりとしつけをされたロットワイラーは、穏やかで勇気がある最良のパートナーとなる性質ですが、そのためには飼い主がロットワイラーに対しての知識を十分に持ち、リーダーシップを発揮できることが最低条件となります。流行や一時の衝動でロットワイラーを迎えるのではなく、きちんとした知識を蓄えてから選ぶことが大切です。