東京農業大学教授の増田先生と一緒にお届けする、ワンコともっと良い関係を築くためのヒント。ワンコから見えるモノゴト、ワンコの考え方、感じ方など、ワンコたちに見えている世界を私たちにも見せてくれる増田先生シリーズ「ワンコno世界」。
今日はお出かけが楽しい季節。でもお出かけ先で愛犬の困った行動に出くわすことはありませんか?
今回は、車でのお出かけやお泊まりするお宿などでのよくある犬の問題行動について増田先生に相談してみました。これからのお出かけシーズンを楽しむために是非参考になれば嬉しいです!
Advisor
増田 宏司教授
東京農業大学 農学部 動物科学科 教授。東京大学大学院を修了後、同大学院で学術研究支援員を務め、2006年から東京農業大学で研究と学生への指導を行う。研究だけでなく、飼い主向けのカウンセリングやワンコのしつけに使えるグッズの開発など、ワンコと飼い主が幸せに暮らせる社会を築くため、幅広く取り組んでいる。
うちの愛犬は、車に乗せると大興奮。ドライブボックスの中で、遠吠えやグルグルを繰り返してまったく落ち着きません。
移動時に落ち着いてもらえる良い方法はありますか?
車で大興奮して落ち着きなく動き回る理由は、「(広い意味で)車が苦手」か、逆に「車が大好きor降車後に続くワクワクを想像して落ち着かない」に大別されるでしょう。
前者(苦手)の場合、嫌悪反応としての大興奮が起きない状況を確認しながら、徐々に車に馴らせていく方法(系統的脱感作:車を見せるだけ⇒車に乗せてエンジンをかけるだけ⇒車に乗せて家の周りを1周するだけ⇒車に乗せて近所へお出かけ、、、)がありますが、後者(好き/ワクワク)の場合、出かける前にいつもより多めに散歩などをして少し疲れた状態で車に乗せることも1つの対処法です。
つまり、犬にとっての車を、移動手段ではなく休憩場所として使うのです。もちろん、普段使っているマットなどで環境を整え、犬が安心してくつろげる工夫も忘れずに。
また、案外はしゃいでいるように見えて、実は不安で落ち着きを失っている、という場合もありますから、注意して見てください。
うちの愛犬は旅行に行っても旅先の宿・ホテルで全く寝ません。お泊まりでも眠って欲しいのですが、寝ない理由はなんでしょうか?また良い改善方法はありますか?
いくつか理由が考えられます。旅(おでかけ)で興奮している、初めての場所で不安で落ち着かない、道中、さんざん車や電車の中で寝たから、など、おおよそ「いつもと違う環境と生活パターンである」ことが、宿泊先で寝られない理由でしょう。
この状況に対して飼い主さんにできることは、いつも使っているマットやクレート等を持っていき、出来るだけ我が家と同じ環境を整えることですが、大事なのはむしろ、それらの普段の使い方です。
いつも使っているものを持っていくためには、当然、それらを「いつも使って」いなければいけません。
例えば普段から家庭内や外出先、散歩の休憩場所など、必要に応じて専用マットの上でくつろがせることで、「休む時はいつもマットがある」と犬が認識します。
こうやってマットと併せて「いつも」を作り、旅行の際には「いつも(=マットです)」を持参します。
この方法は、例えば災害時の避難生活にも役立つはずです。
旅行好きなのですが、犬は家以外でのお泊まりがストレスになると耳にしました。犬をいろいろなところ連れていくのはよくないのでしょうか?
答えはおそらく「犬によります」ですが、こんな時は「家以外でのお泊まり」を要素に分けて考えてみましょう。
家以外でのお泊まり=外出(遠出)+宿泊と考えることが出来ます。
まず外出ですが、お散歩(飼い主さんと一緒に外に行く)の延長と考えれば、必ずしも嫌いなものとは限らないでしょう。
また、確かに家以外の場所で寝るのは犬にとって落ち着かないかもしれませんが、例えば犬だけでお泊りをしているわけではないため、この場合も、宿泊が必ずストレスになる、とは言い切れないのではないかと思います。
おそらく、①家の外が苦手な犬が、②落ち着く要素のない状況下で宿泊をする、という2つの条件がそろって初めて、「家以外でのお泊まりがストレスになる」という図式が成り立つのではないでしょうか。
①も②も、両方の課題を解決できるのは、飼い主さん(=安心できる人間)です。
愛犬が安心して楽しめる旅行プランを、ぜひ考えてみてください。
うちの愛犬は、ドッグランなどに行くと大興奮して猛ダッシュ。怪我をしないか心配です。少しでも落ち着かせる良い方法はありますか?
一言でいうと、犬が「安心して全力で走れる」関係を、飼い主さんとの間に構築することが重要です。
すなわち犬の「走りたい」という欲求の中にも、飼い主さんの存在がしっかりと影響を及ぼしていることが必要です。
とにかく大興奮して猛烈に走り回っている愛犬を落ち着かせる、という対処のみを優先して実行してしまいがちですが、思いっきり走り始めるきっかけもまた、飼い主さんの犬への何らかの働きかけであれば、走ることも、止まることも犬にとっては楽しくなるのではないかと思います。
例えば私は「走れ」と「止まれ(マテ)」という、方向性が逆のものをセットで教えます。
犬を落ち着かせる一般的な方法は、マテやフセなどの、その場に立ち止まり、静止するコマンドを強化することですが、動き出して、走って、立ち止まるまでの動作は一連のプロセスですし、何より、これら「走れ」「止まれ」を同時に教えたほうが、犬との一体感が生まれるように思います。