
前回は動物愛護管理法についてご紹介しましたが、
皆さんはその法律の目的である「動物愛護」や、
近年になって耳にする機会が増えた「動物福祉」という言葉の意味、
その違いをご存知でしょうか?
正しく「動物愛護」「動物福祉」を理解し、
実践することがワンコと私たちの幸せな未来には欠かせません。
ワンコと暮らしている方や、これからワンコを家族に迎え入れようと考えている方は、
是非ともお読みください!
Feelings of love
動物愛護とは、
犬を愛する「気持ち」

犬を取り巻く環境を考える際に、日本で最も親しみのある言葉が「動物愛護」ではないでしょうか。法律にも使われていますし、環境省の中には動物愛護管理室という部署もあります。
それに、飼い主のいない犬に関わる活動をしている団体を動物愛護団体と呼ぶこともありますよね。
動物を愛して護るという気持ちのこと。

辞書(大辞林 第三版)によると、動物愛護は「動物を人間と同一視しようとする理念に基づき、動物を大切にし、愛そうとする精神」と定義されています。
「不幸な犬を見て心を痛め、何とか救ってあげたい!」という気持ちの源も動物愛護精神と言えるでしょう。
ちなみに「愛護」という言葉は英語にはない概念だそうです。
では「動物愛護管理法」を英訳するとどうなるのでしょうか?
その答えは・・・?
Difference in meaning
動物愛護と動物福祉は
同じ意味?
動物福祉には【Animal Welfare】という対比語があります。
ちなみに、先ほどの答えになりますが、海外に日本の動物愛護管理法を紹介する際は、【Act on Welfare and Management of Animals】と訳されています。
そうすると愛護と福祉は同じ意味のようにも思えますが、実は大きな違いがあります。
福祉(Welfare)の意味ですが「幸福。特に、社会の構成員に等しくもたらされるべき幸福。」(大辞林 第三版)とあり、動物福祉は、動物の幸福を意味します。
つまり、その違いは、以下の通りです。
動物愛護と動物福祉の違い
動物愛護
主体は人間。
動物を大切にし、
愛する精神動物福祉
主体は動物。
動物がより良く
生きる、幸福な状態
そうなると、動物愛護管理法を【Act on Welfare and Management of Animals】と訳すのは間違いのようにも思えますが、実は動物愛護管理法の第二条「基本原則」の中には、世界的に認められている動物福祉の基本原則が反映されており、違和感がないと考えられています。
Science of dog happiness
動物福祉は犬の幸せを
「科学」すること
動物福祉の基本として有名なのが「5つの自由 Five Freedoms」です。
5つの自由
飢えと渇き
からの自由不快からの自由
痛み・傷害・病気
からの自由恐怖や抑圧
からの自由正常な行動を
表現する自由
5つの自由は、1960年代、イギリスで劣悪だった家畜の飼育環境を改善させるための基本としてこの「5つの自由」が定められました。現在では家畜だけではなく、人間の管理下にある全ての動物の福祉の指標として国際的に認知されています。
この5つの自由の順番には意味があるそうです。
1つ目の「飢えと渇きからの自由」は新鮮なフードと水を適切に与えることで満たされますが、5つ目の「正常な行動を表現する自由」というのはかなり難しく感じるのではないでしょうか?
つまり、数字が大きくなればなるほど、管理者である人間がその自由を提供することが難しいものです。
ワンコにとって吠える、噛む、掘るは正常な行動ですが、マンションなどで暮らしていると、それをいつでも、どこでも自由にさせることは出来ません。
ですので、その分彼らの欲求をどのような形で満たしてあげるのかが、飼い主さんの腕の見せ所になるかもしれません。
Animal welfare principles
動物福祉の大原則は
苦痛を与えないこと

愛護の気持ちを持って愛犬をサポートしよう。

皆さんも聞いたことがあるかもしれませんが、日本にしか犬の介護グッズは無いと言われています。
その理由は、自らの足で立ち上がり、自ら食べることが出来なくなった状態の犬を介護するという文化があるのは日本だけだからと言われています。
欧米の多くの国では介護が必要な状態で生かし続けることは、本来の犬らしい行動を表現することが出来ないため苦痛だと判断します。つまり、介護が必要になる前に動物病院で安楽死処置を行うのが一般的だそうです。
この考え方は日本ではなかなか馴染まないものですから、私たちは愛護の気持ちを持って、ワンコの幸せをワンコ目線で考え、環境を整備することを心掛けたいものです。
Animal base measure アニマル・ベース・メジャー

動物福祉については、元々が家畜(畜産動物)を対象に始まったこともあり、諸外国での学術研究も畜産の世界の方が進んでいます。
その中で注目されているのがアニマル・ベース・メジャーだそうです。
その時々の状態を見て、正しく評価するべきだ
という考え方のこと。

例えば、犬の動物福祉を考えるといっても活発な犬もいれば大人しい犬もいる。ボールで遊びたい時もあれば、寝そべっていたい時もある。
つまり、動物の状態を評価し、改善が必要なら対処するという考え方です。
ワンコと暮らしている方にとっては、ワンコをよく観察すること、いつもと違う点があればそれにいち早く気付き、より幸せに生きられるように対応してあげることが大切だと言えます。
当たり前のようですが、それを行うことは簡単では無いからこそ、掛け替えのないワンコの幸せために、楽しみながら向き合いたいものですね。