犬を取り巻く現状を知ろうシリーズ2|
動物愛護管理法について

知ることが、守るための第一歩。

9月20日から始まった動物愛護週間。
例年は各地で「動物愛護」をテーマにしたイベントやシンポジウムなどが開催されますが、
今年は新型コロナウィルス感染症拡大防止の観点から中止が相次いでいます。
ですので、2020年の動物愛護週間は、
おうちでワンコと一緒に「動物愛護管理法」について学び、
ワンコのために出来ることを考えてみませんか。

History of Laws for animals 動物のための法律が
できるまでの歴史

1973 動物保護管理法(動物の保護及び管理に関する法律)の制定

最初は、動物を守るための法ではありませんでした。

国際社会から捕鯨に対する批判が高まり、国内でも飼い犬が人を噛んでしまう事故が問題視されるようになったことを受けて「動物の虐待防止」「動物の適正な取扱い」などを目的に成立されました。

1999 法改正:動物愛護管理法(動物の愛護及び管理に関する法律)に名称変更

法改正で動物は「物」ではないことが明確に。

動物虐待がエスカレートすると人間の殺傷に繋がるという世論に後押しされ、虐待に対する罰則が強化。基本原則に「動物は命あるものである」と書かれたことで、「動物は物(動産)」ではないことが法律上も明確になりました。

2005 動物取扱業者に対する規制の増加

小型犬を室内で飼うことが一般的になり
「犬は家族の一員」と考える人が増えると共に、
新たな問題も生まれる。

一部で、生後間もない子犬が展示販売されることや、繁殖業者の飼育環境、犬の殺処分が問題視されるようになり、動物取扱業者(動物の繁殖、販売、展示などを行う。
現在では第一種動物取扱業者と言われる)に対する規制が増えました。

規制内容の一例

  • 虐待・殺傷への
    罰則強化

  • 繁殖業者の
    飼育環境の規制

  • 生後間もない子犬の
    展示・販売の規制

2012 法改正:法律の目的として「人と動物の共生する社会の実現」が追加される

ついに、動物を守るための法律に!

この法律は「動物を正しく管理することで人の生命・身体・財産を守ること」「騒音・悪臭などによって生活環境が侵害されないこと」が主な目的であり「動物を守るための法律ではない」と言う人もいましたが、この法改正によって「動物を守るための法律」としての色合いが強まりました。

How have laws changed? 令和元年の法改正では、
何がどう変わったの?

直近では昨年、動物愛護管理法は改正されました。主な改正点は以下の4点です。
飼い主さん直接的な関わりがないものもありますが、ワンコを飼育する立場として知っておくことが大切です。

出生後56日を経過しない犬又は猫の販売等に制限

子犬が早い時期に親兄弟から引き離されてしまうと、十分な社会化が行われないため、成犬になってから「噛み」や「吠え」などの問題行動を起こす可能性が高まるとされているため、出生後56日は、親犬などと共に過ごすことが定められました。

※ 天然記念物に指定された日本犬(柴犬、紀州犬、四国犬、北海道犬、甲斐犬、秋田犬)は、出生後49日で良いという特例が設けられています。ただし、ペットショップなどで販売される場合は、日本犬でも56日が適用されます。

マイクロチップ装着が義務付けに

ペットショップなどで販売される犬猫にはマイクロチップの装着が義務付けられました。一般の飼い主さんには努力義務ではありますが、装着することが求められています。

また、マイクロチップを装着しても、飼い主さんの氏名や住所などの情報が登録されなければ活用することができないため、情報を登録すること、また引っ越しをした、飼い主が変わったなどの場合は変更登録も義務付けられています。

罰則の引上げ

愛護動物の殺傷

Before2年以下の懲役又は200万円以下の罰金

After5年以下の懲役又は500万円以下の罰金

愛護動物の虐待及び遺棄

Before100万円以下の罰金

After1年以下の懲役又は100万円以下の罰金

第一種動物取扱業者に係る遵守基準の具体化

動物のプロである第一種動物取扱業者には犬猫の飼養施設の構造、規模、従業員数、環境管理の状況や繁殖の回数などについて、数値を定めることとなりました。

環境省では「動物の適正な飼養管理方法等に関する検討会」を設置、議論を行ってきました。2020年8月31日時点での数値基準案「適正な飼養管理の基準の具体化について」はこちらの通りです。

To protect the animals 更に強い力で
動物を守るために

改正を行う度に規制や罰則が強化され、動物愛護管理法は徐々に「動物を守るための法律」へと変わっていますが、それでも尚、不幸な状態に置かれた動物を守るためには不十分であると考える人もたくさんいます。規制、罰則を更に強化するには何が必要なのでしょうか?

例えば虐待している飼い主から犬を引き離すためには、その飼い主の「所有権」よりも動物が虐待されない状態を国家が保証する力が強い状態を容認することが前提条件になります。

また、劣悪な繁殖業者を廃業に追い込むためには、「経済活動の自由(国民が自由に職業を選び、様々な仕事をすることを保障し、個人の財産を国家に奪われない権利)」よりも、繁殖に用いられている動物の心身の幸せが優先される社会を認めることになります。

ワンコが好きな人は「人権を制限してでもワンコを守りたい!」と思うかもしれません。ただ、そう考える人が少数派である以上、更に「動物を守るため」の法律にすることは難しいのが現実です。「ワンコが好き」な人を増やし国民の「動物愛護」に対する意識を向上させるためには、「犬は怖い」「犬連れがいると迷惑」だと周りの人々に感じさせないことが最初の一歩になります。

では、具体的にはどのような点に気を付ければ良いのでしょうか。
実は動物愛護管理法にも飼い主さんの責任が書かれています。

Owner’s Responsibility ワンコの飼い主さんの責任

動物愛護管理法には、飼い主さんの責任が定められていることをご存知ですか?
第七条(動物の所有者又は占有者の責務等)に書かれていますのでご紹介します。

適正飼養

1. 命あるものである動物の所有者として動物の愛護及び管理に関する責任を十分に自覚する

2. その動物をその種類、習性等に応じて適正に飼養する

3. 動物の健康及び安全を保持するように努める

4. 動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加え、生活環境の保全上の支障を生じさせ、又は人に迷惑を及ぼすことのないように努めなければならない

感染症対策

動物に起因する感染性の疾病について正しい知識を持ち、その予防のために必要な注意を払うように努めなければならない。

逸走防止

所有する動物の逸走を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

終生飼養

できる限り、動物がその命を終えるまで適切に飼養することに努めなければならない。

繁殖制限

動物がみだりに繁殖して適正に飼養することが困難とならないよう、繁殖に関する適切な措置を講ずるよう努めなければならない。

所有者明示

所有する動物が自己の所有に係るものであることを明らかにするための措置として環境大臣が定めるものを講ずるように努めなければならない。

Conclusion おわりに

いかがでしたでしょうか?
飼い主としての責任を果たせる人が増えることが、国民の「動物愛護」に対する意識を向上させ、不幸な犬を守ることに繋がります。
是非、ワンコと暮らしている皆さんは、改めてご自身がワンコとどのように暮らすべきなのかを考えていただければと思います。

次回は、飼い主さんの責任の最初にも書かれている適正飼養の基本にもなっている「動物福祉」についてご紹介します。

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