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パピー期からさまざまな経験をさせて
“自分の身を守る力”を育ててあげてほしい

松本さんとnowa

出会いのきっかけは、nowaスタッフの愛犬チワワ・ノワのケガ。
nowaチームの飛彈樹里さんに相談した際に、紹介していただいたのが訪問獣医師の松本さんでした。
チワワのノワは怖がりな子だと思っていたのですが、松本さんに診ていただくと、「本来は怖がりじゃない。本人が思っているより体が大きいだけ」という思いがけない言葉が。
「しっぽの先まで意識が届いていないから、触られるとびっくりしてしまうんです。日頃から全身を触ってあげることでノワくん自身が体の大きさを把握して、驚かなくなりますよ」というアドバイスをいただき、全身を触るようになって1カ月弱、別のスタッフに触られても怖がらずに堂々としていられるように変わっていったのです。
医療の面だけでなく、ワンコの行動や心にも寄り添って問題を見つけていく松本さんに感銘を受け、nowaチームへの参加を依頼しました。
松本さんが動物に携わる仕事を始めた経緯や今後の目標について、伺います。

Interview

#01きっかけ

松本さんは訪問獣医師として、どのような活動をされているのですか?

ワンちゃんやネコちゃんのおうちを訪問して、マッサージや鍼灸、介護・リハビリケアを行っています。
訪問する際は医療ケアは行わず、東洋医学を中心としたケアがメインです。

もともとは獣医師として働いていたと伺ったのですが。

そうなんです。もともと動物が好きで、実家でワンコを飼っていたこともあり、大学で獣医師の資格を取って動物病院で働いていました。ただ、就職してから3年ほど経った頃に、結婚・出産がきっかけで退職したんです。その後は15年くらい子育てしながら、放課後児童健全育成事業に携わり、小学生の心身の成長を見守ってきました。

そこから動物のお仕事に戻られたきっかけは?

当時、飼っていたネコちゃんが亡くなって、私にできることがもっとあったんじゃないかと思ったのがきっかけです。獣医師の資格を活かしながらペットにできることを模索して、マッサージや鍼灸を学び始めました。それが今から15年ほど前のことですね。

マッサージや鍼灸を学校で学ばれて、獣医中医師1級や獣医推拿整体師の資格も取られたんですよね。マッサージや鍼灸で、ワンちゃんはどのように変化するのでしょう?

ワンちゃんによっても差はありますが、多くの子は姿勢が良くなり、毛のツヤが変わっていきます。例えば、寝る時間が長くなっているシニアの子は、本人の意思に任せると一定の寝姿勢でじっとしたままで体がこわばってしまいます。その子にマッサージをしてあげると体が柔らかくなり、体を丸めてリラックスして眠れるようになります。

また、体が柔らかくなると、食欲が出てきたり消化が良くなったりするという変化も出てくるので、健康的な生活を送りやすくなります。ワンちゃんの顔つきも変わるんですよ。体が思うように動かないと気持ちが落ち込み、老け込んだ顔つきになるのですが、体を動かしやすくなると途端に表情が明るく豊かになって、自信にみなぎってくるんです。その変化を見ると、この仕事のやりがいを感じます。

松本先生の施術を体験した社員犬

社員犬チワワ・nowa・3歳
先生の施術と先生から教わったおうちトレーニングを始めて1ヶ月。
初回の時よりも、前肢の着地時の幅や後ろ足がお尻を支える形が改善。

#02大切にしていること

訪問した先の飼い主さんに、いつも伝えていることはありますか?

介護・リハビリケアで訪ねることが多いのですが、飼い主さんの多くは「愛犬が歩けなくなってしまった」「動けなくなってしまった」と“できなくなったこと探し”をしてしまうんですよね。ただ、ワンコは人間の4倍のスピードで年を重ねるので、シニア期に入ってできなくなることが出てくるのは仕方ないことといえます。

だからこそ、飼い主さんには「“できること探し”をしてください」と伝えています。飼い主さんが悲しい気持ちだとワンちゃんも一緒に落ち込んでしまいますが、明るくポジティブに「まだこんなこともできる!」と褒めてあげると、ワンちゃんも自信を持って毎日を過ごせます。

愛犬には気持ちが伝わるっていいますもんね。感情に敏感なワンコに対して、心がけていることはありますか?

ワンちゃんによって性格が異なるので、コミュニケーションを取りながらその子のペースに合わせることを意識しています。「触らないでほしい」という子は無理に触りませんし、触らせてくれる子でも「そのくらいで終わり」という雰囲気になったら終わりにします。

ワンコの発する雰囲気は、さまざまなワンコと触れ合ってきて感じ取れるようになったものですか?

たくさんの子に触れた経験もありますし、愛犬のテンコをパピー期からシニア期まで見届けられたことも大きいと思います。ワイアーフォックステリアのテンコは2023年12月に亡くなったんですが、18歳までしっかり生き抜いてくれました。

ワンコを迎えたいと思って探していたときに、産まれながらに左の前脚がなかったテンコと出会ったんです。とても穏やかでやさしい子で、マッサージや鍼灸の練習にもつき合ってくれましたね。テンコが私の師匠といえるくらいいろんな経験をさせてくれて、それが仕事にも活きていると感じています。彼女の看取りまで経験したからこそ、飼い主さんたちに伝えられることもあるのかなって。

#03ワンコの心と体の健康

ワンコの健康や生活において、何がもっとも大切だと感じていますか?

心のケアが大きいと思っています。人間もワンコも同じで、心と体は表裏一体なんですよね。体の健康のためには心が大切ですし、その逆も然りです。

また、一生を豊かに過ごしてもらうためには、心の成長の過程も重要だと感じています。幼い間に蓄えたいろいろな知識や経験は、大人になってからも役立つんです。だから、パピー期に自分で考えて試行錯誤し、快適な状態をつくるという経験をさせてあげてほしいです。ただ、ワンコは生後1年で人間に換算すると17歳くらいまで成長するので、大人になるまでの期間が短いんですよね。

つまり、生後1年間の心の成長が重要ということですか?

犬の社会化期は生後4か月くらいまでで、人間でいえば小学校の1年生くらいです。生きる技術を身に着けていく時期を大切にしてほしいと考えています。この時期にいろいろな経験をさせてあげてほしいですね。ごはんやベッドを完璧に用意するのではなく、ワンちゃん自身の力で獲得するような工夫を施すなど、考える力をつける時期だと捉えてほしいです。

なぜ考える力が必要かというと、必ずしも飼い主さんとずっと一緒にいられるわけではないからです。ワンちゃんが留守番している間に災害が起きたとき、ワンちゃん自身に自分の身を守る力がなければ、その子はパニックになってしまいますよね。自分自身を守るためにはどうしたらいいのか、考えられる子になるためにパピー期の経験が大切なのです。

ワンコの安全に配慮しつつ、さまざまな経験をさせてあげる時期なんですね。既に大人になっている子でも、身を守る力はつけられますか?

人間と同じで、ワンコも生きている間ずっと新しいことを学んでいます。だから、遅いということはありません。ただ、大人になると知らないことに対する恐怖心が強くなるので、新しい経験をさせてあげるときはコミュニケーションを取りながら、根気強く繰り返す必要があると思います。そういうところも人間と一緒なんですよね。

#04これからのこと

今後やりたいことや目標はありますか?

ペットマッサージや整体は科学的根拠をつけづらいものだったのですが、15年ほど経験を重ねたことで、施術の内容や効果の根拠をまとめられるところまで来ました。現在は週に数回、獣医師として動物病院の外来も担当しているので、医療との関連も見出せるようになってきています。

ここまで培ってきた知識や技術を生かして、ワンちゃんの正しい姿勢がいかに大切か、もっと広めていきたいですね。姿勢を整えると心地良く体を使えるようになり、ワンちゃんはワンちゃんらしく、飼い主さんも飼い主さんらしく、楽しいワンコライフを送れると感じています。

ワンコのマッサージや介護ケアの大切さは、以前と比べると耳にする機会も増えましたよね。

ここ15年くらいで、みるみる進歩した印象がありますね。介護用品も増えていますし、飼い主さんも試行錯誤している方がたくさんいます。一方で、サポートする側の動物病院や専門家が追いついていない実情もあります。

ペットのマッサージや鍼灸を行う専門家も増えていますが、医療との連携がうまくできていない部分もあるので、そこが離れずに広まっていくといいなと思いますね。

医療とマッサージ、介護ケアが連携することで、どのような効果が期待できるのでしょう?

医療だけでもマッサージや介護ケアだけでも足りない部分があるので、そこを補い合えると、ワンちゃんや飼い主さんの生活がより豊かになると考えています。

獣医師でありマッサージも行っている立場でもある私が何かできたらいいなと思い、2018年頃に仲間の獣医師と獣医保健ソーシャルワーク協会を立ち上げました。ペット関係のいろいろな職種の方々がつながっていくことで、ワンちゃんにとってもより良い環境が形成されていくのではないかという想いで活動しています。

飼い主さんにも愛犬を守れる力を身につけてほしいですし、近所の仲間と協力し合って地域の輪をつくってほしいので、ワンちゃんの生活や防災に関する情報提供も行っています。飼い主さん同士もコミュニケーションを取って、信頼できる関係を築いてほしいですね。

Profile

松本 晃子さん

訪問獣医師、獣医保健ソーシャルワーカー。日本獣医畜産大学(現日本獣医生命科学大学)卒業後、獣医師として動物病院に勤務。結婚・出産を機に現場を離れ、放課後児童健全育成事業に携わる。その後、ドッグマッサージや獣医中医学、老犬介護、ドッグリハビリなどを学び、犬猫の鍼灸・推拿整体師、介護士としての活動を開始。現在はペットホームケアえるそるで訪問ケアをメインで行いながら、動物病院でもシニアケアを担当している。

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