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「副作用が少ない治療法がある」ということを
もっと多くの飼い主さんに知ってほしい

向後先生とnowa

nowaチームの平端弘美さんが介護カウンセリングなどを行っている病院のひとつが、東京都多摩市のこうご動物病院。
平端さんが「そこの獣医師さんは治療に鍼や漢方も取り入れているんですよ」と、教えてくれました。その獣医師さんこそ、こうご動物病院院長の向後亜希先生。
さっそく連絡を取ってみると、快くnowaチームへの参加を引き受けてくれました。
実際にお会いした向後先生は、やわらかな雰囲気の中に強い芯を持った女性。あたたかな笑顔に安心感を覚えますが、飼い主さんたちが病院を訪れる理由はそれだけではありません。
平端さんが教えてくれたように、ワンちゃんに負担がかかりにくい東洋医学や自然療法を治療に取り入れているからです。
なぜ、現在のスタイルに至ったのか、向後先生にお聞きしました。

Interview

#01きっかけ

向後先生は、どのようなきっかけで獣医師を目指したのですか?

もともと心理カウンセラーになりたくて、大学で心理学を勉強していたんですが、その頃に父の友人から子猫を譲り受けたことがきっかけで、どうしても動物に携わる仕事がしたくなったんです。

それまでもペットは飼っていたのですか?

子どもの頃からワンちゃんもネコちゃんも好きだったんですが、親から「面倒見られないでしょ」って、言われていて。大学生で迎えた子猫が初めてのペットでした。引き取った時期がクリスマスに近かったので、キャロルって名前を付けました。
動物に関係する仕事をいろいろ調べて、両親に「大学を卒業したら専門学校に行って、動物看護士になりたい」と相談したら、猛反対されましたね。でも、その時に父がポロッと「獣医師になるなら、まだしも」って、呟いたんです。

そのひと言を、聞き逃さなかったんですね。

そうなんです(笑)。それから親に隠れて勉強して、大学4年次に北海道の酪農学園大学獣医学科の編入枠に運良く合格しました。事後報告という形で両親に伝えたら、「獣医師になるなら」と、許してくれたんです。

晴れて獣医師の道に進んでいったと。

大学に4年通った後に、酪農学園大学に編入して5年通ったので、通算9年間。長い長い大学生活でしたが、それもキャロルに出会ったから。私の運命を変えたネコです。
獣医学科に進んでからは、大変でした。もともと文系だったので、理系の分野はわからないことだらけだし、酪農学園大学で触れ合う動物はほとんどが牛や馬なので、カルチャーショックもありましたね。

それでも動物に携わる仕事をしたい一心で、無事に卒業されたんですね。

そうでしたね。いざ獣医師として現場に出ると、また違う気付きがあったんです。私ってものすごく不器用だなって(苦笑)。大学では頻繁に採血や手術の実習ができるわけではないので、動物病院で働き始めてから経験を積み重ねていくんですよ。その中で、私は同期の先生たちより手際が悪くて。
だから、何度獣医師をやめようと思ったかわかりません。一方で、確固たる理由がないとやめられないという思いもあって、当時は続けていましたね。そんな私でも数年続けると、ひと通りのことはできるようになって、今では開業するまでになりました。

#02大切にしていること

診察や治療でワンちゃんと接する際に、大切にしていることは?

ワンちゃんはしゃべれないですけど、人間の言葉や気持ちは理解していると思うので、マイナスな声かけはしないようにしています。例えば、注射を打つ時は「ごめんね」じゃなくて「頑張ろうね、えらいね」って、なるべくストレスをかけないように。
また、できるだけ通院で治療を進めるようにしています。飼い主さんと離れて過ごすこともワンちゃんにとってはストレスだと思うので、入院させるとしても日中だけで、夜はおうちに帰れるように心がけています。

ワンちゃんが不安だと、診察や治療をうまく進められないですもんね。

そうですね。もうひとつ大切にしているのは、飼い主さんのケア。大切な家族であるワンちゃんが病気になると、心配で精神的に弱くなってしまう飼い主さんも多いので、しっかりサポートしていきたいと考えています。
治療に関しては、なるべく飼い主さんの意向を汲むようにしています。治療法はいっぱいありますが、どれが正解ということはないので、費用や通院頻度なども説明して、飼い主さんが望む方向で進めていきます。その方が安心感もあると思うんです。負担を感じにくい病気の捉え方も伝えるようにしています。

負担を感じにくい病気の捉え方とは?

今はインターネットですぐに情報が手に入る時代で、その中から正確な情報が見つかることもありますが、それが愛犬にとって正しいかは別の話です。怖い情報を見て不安に感じると負担が増してしまうので、情報を探すよりも獣医師さんへの相談を優先してほしいです。
愛犬に不調があった時、信頼できる獣医師さんに相談することで、その子に合った治療やケアが見つかるはずです。飼い主さん自身の意向と合う動物病院を見つけてほしいですね。

#03病気と向き合う方法について

こうご動物病院では、薬や手術以外の治療法も行っているそうですね。

薬や手術で病気そのものを取り除く西洋医学に加えて、東洋医学や自然療法を取り入れた治療を行っています。

東洋医学や自然療法とは、どのような治療法でしょうか?

鍼灸治療や漢方、オゾン療法、ホモトキシコロジー、バッチフラワーなどのことです。鍼灸治療は、注射針よりも細い鍼やお灸を使う治療で、人間が行うものと同じイメージです。
オゾン療法は、オゾンガスを体内に取り入れることで、消炎鎮痛作用や細胞の代謝の活性化の効果を期待するもの。ホモトキシコロジーは自然由来の製剤を用いて解毒や自己治癒力の向上を目指すもので、バッチフラワーは花やハーブのエネルギーを使った癒しの治療です。副作用のない高濃度ビタミンC点滴でのガン治療なども行っています。

さまざまな治療法がありますが、どのようなきっかけで取り入れ始めたのですか?

私が獣医師を目指すきっかけとなったネコのキャロルが、13歳の時に好酸球性の胃腸炎になったんです。ステロイドを与えれば症状は落ち着くものの、ステロイドは副作用があるので使い続けられない。そのような状況で、西洋医学の限界を感じたんです。
その時に、ふと「東洋医学もあるじゃないか」と思い付き、自分で調べながら漢方や自然療法などを用いていくうちに、キャロルの症状が改善されたんです。東洋医学や自然療法の効果か、キャロルとは当初の想定より長く一緒にいることができました。

キャロルちゃんの病気がきっかけだったんですね。鍼も自分で勉強していって?

そうですね。その時に所属していた動物病院の院長が動物への鍼治療ができる方だったので、治療を見学させてもらいました。私の妹が鍼灸師なので、手技を教わったり。当時は動物向けの東洋医学を学べる学校はなかったので、ほとんど独学でした。
その中で、「手術をしなきゃダメ」と言われたワンちゃんが、鍼治療でよくなっていった症例も見ていきました。ひとつの例ですが、椎間板ヘルニアで歩けずに、自分で排泄もできなかったミニチュアダックスフンドが、鍼治療をしたら歩けるようになったことがあって、やっぱりこの治療法がいいのかなって。

歩けなかった子が!?すごい効果ですが、ワンちゃんは鍼を痛がったりしないのでしょうか?

鍼はきわめて細いので、ほとんどの子が嫌がらずに受けてくれますし、中には施術中に眠ってしまう子もいますよ。
あと、伝えておきたいのが、東洋医学や自然療法は副作用が非常に少ないということです。高齢になったワンちゃんが治療をする時、薬や手術の副作用は懸念材料になりますよね。その点、東洋医学や自然療法は副作用が非常に少ないですし、西洋医学と併用することで副作用を軽減させることもできるんです。ワンちゃんにとっても飼い主さんにとっても、負担を減らす選択肢のひとつになると思います。

副作用を抑えて症状を改善できるって、理想的な治療のあり方ですね。

#04これからのこと

こうご動物病院は和やかな雰囲気ですが、空間づくりで意識していることはありますか?

働くスタッフが幸せでないと、ワンちゃんや飼い主さんを幸せにできないと思うんですね。なので、スタッフが幸せになるために、個々の夢を叶えていくお手伝いができたらと考えています。
院内で流れている音楽は、音楽の専門学校に通っていた看護師が“動物を癒す音楽”としてつくったもので、受付でCDを販売しています。かつて働いてくれていた看護師は絵が得意で、病院に来るワンちゃんネコちゃんたちの似顔絵を描いていました。今はオーストラリアに渡って、トリマーをしながら絵を描いているんです。
スタッフとは定期的に面談して、「この先、していきたいことはある?」と、聞くようにしています。スタッフとともに病院は成長してきたので、これからもそうでありたいなと。

病院が、仕事とは別の夢も広げていく場になっているんですね。ちなみに、向後先生の夢は?

「こんな私でも開業できたよ」って話を、多くの方に伝えることでしょうか。女性で起業を考えている方に向けて経験を話すことは、これからもしていきたいと思っています。
そして、ワンちゃんやネコちゃんにも東洋医学や自然療法という選択肢があるということも、もっと世の中に広めたいですね。命を救う方法はいろいろあるんだよって。

動物病院でも、東洋医学などを扱っているところはまだまだ少ない印象ですよね。

そうですね。東洋医学や自然療法を取り入れている先生が共通しておっしゃることなんですが、これらの治療を行ったワンちゃんは命の炎が消えるように、苦しむことなく旅立っていくことがほとんどなんです。この事実を、飼い主さんに知ってほしい。
愛犬のつらい死を見てしまうと、「もう動物は飼えない」って、思ってしまいますよね。でも、苦しまずに旅立っていけば、その子に感謝をして、また次の子を迎えられるかもしれない。
ワンちゃんが幸せになると、飼い主さんも幸せになる。この2つの幸せを守っていくことが、私たちの仕事だと思っています。飼い主さんとワンちゃんの“輪”を大切にしていけるように、これからも皆さんと向き合っていきたいですね。

Profile

向後 亜希 院長

こうご動物病院院長、獣医師。聖心女子大学心理学科を卒業後、獣医師を目指し酪農学園大学獣医学科に編入学。卒業後は埼玉や東京の動物病院勤務を経て、2007年に東京多摩市のわんにゃんワールドどうぶつ病院院長に就任。2009年同動物病院の閉鎖に伴い、こうご動物病院を開業し、現在に至る。西洋医学をベースに、東洋医学や自然療法を取り入れている。著書に『かけがえのない家族を守る動物病院との最高の付き合い方』(ダイヤモンド社)。

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