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ワンコが好きなことはどんどん取り入れてほしい
「ウキウキ」が若返りのコツです♪

ペットケアサービスLet’s 代表 三浦 裕子さん

三浦さんとnowa

三浦さんとの出会いは、nowaライターの村田幸音さんが書いてくれた記事「老犬介護を学ぶ 老犬ホームではなく介護・リハビリケアをサポートする理由」。
その中で語られていた三浦さんの考えに、胸を打たれたのです。
その後、撮影のために会いに行くと、とても明るくエネルギッシュな太陽のような人柄で、さらに心をつかまれました。
考えるだけで暗くなってしまう老犬介護の現実を、この人ならポジティブに伝えてくれるのではないか。
そう考えてnowaチームへの参加を相談したところ、快く引き受けてくださったのです。
介護サービスを行うだけでなく、飼っていたペットを看取ってきた経験を持つ三浦さん。
だからこそ語れるリアルな部分を、一緒に届けていけたらと思っています。

Interview

#01きっかけ

三浦さんは、もともとペットに関する仕事をされていたのですか?

子どもの頃から、動物に関わる仕事に就きたかったんです。当時はトリマーか獣医師か動物園の飼育員かってイメージで、高校入学くらいまでは獣医師になろうと思っていました。ただ、血を見るのが苦手なことに気付いて、獣医師は諦めて、動物と関係ない会社に就職したんです。
社会人になってから、フェレットを飼ったんですよ。その子ががんで亡くなった時はペットロスに近い状態になって、クヨクヨしてたんですが、雲1つない秋晴れの空を見上げた瞬間に「何かやろう!」って思ったことを覚えてます。
飼っていたフェレットは、手術をしてから1年くらい生きてくれたんですが、その子の体調が悪い日は気になったんですよね。会社で働いている間も、「家に帰って様子を見たいな」「休んで、ついていてあげたいな」って。
その経験があったので、同じようにペットを看病している人も「誰かが様子を見に行ってくれたら、それだけで安心できるのに」って感じているだろうし、飼い主さんの代わりになれる仕事が「何か」になるんじゃないかと思ったんです。

ペットを看取った経験とひらめきが、ペットシッターの仕事につながったんですね。

さっそくペットに関する勉強をして、最初は会社員を続けながら、ペットシッターの仕事を始めました。そのうち、「ペットを預かってほしい」という要望が増えて、フェレットホテルを始めたんです。徐々にワンコの依頼も出てきて、トレーニングの勉強をしたり、犬の保育士さんに弟子入りさせてもらったり(笑)。

もともとはフェレットのシッターから始めたんですね。現在運営しているペットケアサービス施設「Let’s」のように、日中に預かる形になったのはいつ頃だったのでしょう?

ペットの仕事を始めてから数年経った頃に空き物件が見つかって、店舗を構えようかなと考えたんですよね。その頃、あるお客様から「週5日、1日につき3回様子を見に来てほしい」という要望をいただいていたんです。その方から「本当は昼間預かってもらえるとうれしいんだけどね」と言われて、その形のサービスもありじゃないかと。
人間でいうデイサービスのような仕組みをつくり、パピーから老犬まで、何歳でも来てもらいやすいように「犬のがっこう」と名付けて、15年が経ちました。
老犬のお預かりを経験し始めたことで、老犬の面倒を見られるペットシッターが少ないことにも気付いたんです。今後は老犬も増えて、人出が足りなくなる時代が来るだろうと思ったので、ペットケアスペシャリストの養成講座も早くからスタートしました。

いまのサービスの形は、初期段階で固まっていたんですね。

#02飼い主さんに伝えたいこと

デイサービスだとワンコが家にいる時間も確保できるので、飼い主さんとの時間も維持できていいですよね。

そうですね。たとえ介護が必要になったとしても、ワンコと飼い主さんは一緒にいてほしいので、預かっている間はきっちりケアしますし、一緒にいられるためのノウハウも飼い主さんにお伝えしています。

例えば、どのようなことを伝えているのでしょう?

ある程度の年齢になって夜鳴きや徘徊が始まると、認知症と思われがちですが、実はその内のかなり多くは認知症ではないと考えられます。「トイレに行きたい」「体が痛い」といった理由で飼い主さんを呼んだり、歩き回ったりしている場合があるのです。
飼い主さんが仕事で外に出る家庭だと、日中に寝ていたワンコが夜になると元気になり、ヒマになって飼い主さんを呼ぶ=夜泣きをする、というケースもあります。その行動や犬の心理状態の原因を解消すれば、夜鳴きや徘徊がなくなる可能性が高いといえます。

病気による症状ではなく、何かを訴えているかもしれないんですね。

私たちのようなケアサービスに預けてもらえたら、夜鳴きや徘徊の改善を目指すことができますし、飼い主さんの安心感や休息にもつながると思います。日中だけ預かる子だけでなく、数日~1週間預かる子もいますし、中には2週間預かって、1週間飼い主さんのおうちに戻るという老犬の子もいます。
飼い主さんも愛犬の世話や介護で疲れていると思うので、預かる際には「この期間はしっかり寝てね」「映画でも見に行ったら」「おいしいごはん食べに行っておいで」と、声をかけるようにしています。飼い主さんが無理をしないことが、ワンコ、特に老犬と一緒に暮らす上で重要だと感じますね。

#03愛犬の健康管理

愛犬を思う気持ちは大切にしたいものの、無理をして世話や介護が苦しくなってしまうのは、悲しいですよね。

そうならないためにも、介護しなくてもいいような努力もできるといいと思います。健康管理は、体調を崩した時から始めるのではなく、元気なうちから心がけたいもの。その第一歩は、愛犬の“好き”を見つけてあげることです。
病気を抱えていたとしても、好きなことだと体が動くし、塞ぎ込まずに活動できることが理想だと思います。飼い主さんと一緒に楽しく生きてほしいし、年齢を重ねても遊べるような状態であってほしいんですよね。以前うちにいたチワワは、12歳で旅行デビューしたんですよ。私の出張が増えた時期で、常に連れていってたら、旅行好きになりました。散歩が好きじゃない子だったんですけど、栃木県の那須に行くと1時間くらい歩いたりして。

那須の環境が合っていたんですかね。

そうだったんだと思います。高齢になってごはんをあまり食べなくなった時も、旅先ではよく食べたんです。だから、病院の検査で体調不良が疑われても、出張には連れていってました。そのほうが、この子は日々の生活を楽しめるんじゃないかなって。
10歳を超えるといろんな活動をやめていく飼い主さんが多いんですが、愛犬が楽しめそうなことは、どんどん取り入れてほしいです。近所のドッグカフェに行ったり、いつもより少し遠くまで散歩したり、河原でピクニックしたり、カートに乗せても良いし、身近なことでいいので。“ウキウキ”という感情が、ワンコの若返りのコツです。

高齢になると休ませた方がいいのかなって思ってしまいますが、外に出ていくことも大切なんですね。

いろんな経験をさせてあげることが大事だと思います。かつて私が飼っていたワンコで、病気で両目が見えなくなってしまった子がいたんですが、中年期の頃からアウトドアでたくさん遊んでいたからか、目が見えなくても泳げたんです。ワンコはすごい力を持っているので、可能性を広げてあげてほしいですね。

#04これからのこと

三浦さんが抱いている目標は?

一番の目標はワンコの介護ゼロですが、もう1つ手前の目標だと、飼い主さんの心の負担ゼロ。老犬介護は大変なことではありますが、せめて「ツラい…」と感じてしまう負担を取り除けたらって思います。
そのための手立ての1つとして、「Let’s」のような施設を増やしていきたいんですよね。養成講座の卒業生も300人近くになっているので、都道府県ごとに1件は必ずケア施設があるといいなと。

今はまだツラさを抱えている飼い主さんが多いですか?

たくさんいますね。一度「ツラい…」と思うと、ワンコの行動やケアのすべてがツラくなってしまうんですよね。だから、いい意味で能天気になってほしいんです。
昔、私の実家で飼っていたヨークシャーテリアは19歳まで生きたんですが、最後の1年間は認知症になってしまったんですね。体も弱って、器に入った飲み水で溺れたことがあったんです。その時に私の家族は、いろんな器で試したり、家の複数カ所に器を置いて「第一水飲み場」って名付けたり、実験のように捉えていました。
もちろん心配だし大変なことだけど、愛犬の行動を受け入れながら、笑って暮らせる方法を探していくと、介護も楽しくなるんですよね。家の中を徘徊する姿も、なんとなく楽しそうに見えたら、この子は幸せなんじゃないかなって思えたり。

三浦さん一家のように捉えられると、介護への心持ちも変わりそうですね。最後になりますが、三浦さんが広げていきたい「wa」は?

ワンコと飼い主さんの輪かな。もっともっとワンコと遊んで、コミュニケーションを取ってほしい。加齢に伴う認知症は、人やワンコとのコミュニケーションで改善されていくと考えられているんです。
単純な遊びでよくて、エサの匂いを嗅がせて、右手と左手のどっちに入っているか考えさせるだけでも、脳の活性化につながります。飼い主さんがソファやカーテンに隠れて、「探して」と呼び掛けて、ワンコに探してもらうかくれんぼもオススメ。
散歩に行く時も、坂や段差を上り下りしたり、芝生や土の上、砂浜を歩いたり、ちょっと運動強度を増すだけで、足腰の強化につながります。楽しみながらできるトレーニングを取り入れて、病気やケガのリスクが下がりますし、ワンコとの生活もより充実していきますよ。

Profile

三浦 裕子 さん

ペットケアサービスLet’s代表。飼っていたフェレットが亡くなったことをきっかけにペットシッターとして働き始め、2007年にLet’sを設立。ワンコのしつけ教室や介護、リハビリなどを行うかたわら、ペットケアスペシャリストの養成講座も開催している。

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