盲導犬のアリエルちゃんと一緒に生活をしているトロンボーン奏者の鈴木加奈子さん。「盲導犬との出会いで、世界が広がった」と、話してくれました。
トロンボーン奏者
鈴木加奈子さん
昭和音楽大学を卒業後、プロのトロンボーンソリストとして各地で演奏活動を展開中。オリジナル曲を多数制作し、2枚のソロアルバムをリリース。生まれつき視覚にハンデがあり、現在は2頭目のパートナー盲導犬・アリエルとともに活動している。
アリエルがもたらしてくれた
“風を感じながら歩く”感覚
盲導犬を迎えようと思ったのは、どのようなきっかけからだったのですか?
私はもともと弱視だったんですが、徐々に見えなくなってきて、最初は白杖の訓練を受けました。でも、うまく歩けなくて、ほとんど外出しなくなってしまったんです。
その頃にインターネットで盲導犬を知りました。とある盲導犬ユーザーさんの記事に「目が見えていた時と同じような速度で、風を感じながら歩けるようになった」って書いてあって、これだと思ったんです。もともとワンコが好きだったし、これしかないなって。
盲導犬との共同訓練が1カ月間あったと思いますが、大変だったのでは?
大変でしたね(苦笑)。歩くことだけでなく、毎日の食事や排泄のお世話も全部やりますし、ワンコ自身と仲良くなる作業もありましたから。でも、念願の盲導犬だったので、楽しさや期待の方が大きかったです。
最初は、「さっきおしっこしたから、次は12時かな」とか、ワンコのリズムに合わせて生活してたけど、慣れてくるとワンコの生活が私の生活に溶け込んで、なんとかなるんです。きっとワンコの飼い主の皆さんも、一緒ですよね。
歩行に関しては失敗も多くて、道路を斜め横断しちゃったり(笑)。でも、先輩ユーザーさんが「1~2年もすると安定して歩けるよ」と言ってくださったので、その言葉を信じてチャレンジし続けました。
今はスムーズに歩いていますが、「風を感じながら歩けるようになった」と、実感していますか?
はい、すごく実感しています。慣れている道だと、頭の中にメロディが浮かんでくるくらい余裕が出てきました。身を委ねられるパートナーがいると、安心感がありますね。一昨年の外出自粛の時期も、アリエルがいたから家の周りをちょっとだけ散歩しようかなと思えたし、いい気分転換になりました。
いいパートナーなんですね。そんなアリエルちゃんはどんな子ですか?
甘えん坊で、いつもしっぽを振ってて、誰にでも笑顔を振りまくような子で、本当にかわいいんです。トロンボーンの演奏で舞台に上がる時は、私の足元でリラックスして寝てることが多いですね。何度も舞台を経験して、寝てていい場所なんだって学んだんだと思います。
自宅でトロンボーンの練習をする時も、楽器ケースを開けた時点で、アリエルは自分のベッドに乗って寝始めちゃうんですよ。この子からすると、トロンボーンの音がしたら寝る時間なんでしょうね(笑)。
想像するだけで愛らしいですね。最後に、盲導犬について、皆さんに知っていてほしいことなどはありますか?
盲導犬たちは愛にあふれていて、人と一緒に出かけることが大好きで、決してお仕事という認識はないと思うんです。アリエルの一番近くで、この子がハッピーな毎日を過ごしていることを感じているので、「お仕事して大変そう」と思わずに、あたたかい目で見てあげてほしいなって思います。
補助犬支援のチャリティコンサートを開催
2022年4月5日、神奈川県のかなっくホールで補助犬支援を目的としたチャリティコンサートが開催されました。鈴木加奈子さんをはじめとした出演者の方々の華やかな演奏が響くホール内には、10頭を超える盲導犬や介助犬の姿も。しかし、鳴き声が聞こえてくることはありません。大きな音がする場所でも、落ち着いていられる子たちだからです。
演奏の合間には、橋爪さん、鈴木さん、元介助犬のグミちゃんと暮らしている久保友子さんのトークショーもあり、補助犬についての情報もたくさん発信されました。
補助犬について知るきっかけになるチャリティコンサート。もし、お住いの地域で開催されることがあったら、遊びに行ってみてくださいね。