犬を取り巻く現状を知ろうシリーズ5|
犬を守るための「数値規制」が始まりました

犬を守るための「数値規制」が始まりました

2019年に動物愛護管理法が法改正され、以下の2項目が第21条に追加されました。

  1. 犬猫の管理方法における基準を環境省令で定める
  2. 第一種動物取扱業者(※1)はそれを遵守しなければならない

    ※1 第一種動物取扱業者とは、業として、動物の販売、保管、貸出し、訓練、展示、競りあっせん、譲受飼養を営利目的で行う企業や個人のこと。

それに伴い環境省は「動物の適正な飼養管理方法等に関する検討会」で議論を行い、
その基準「数値規制」が、2021年6月1日からこの環境省令が施行されています。
具体的に何が変わったのでしょうか。

New standard 環境省令によって決まった基準

01 ケージや運動スペースの大きさ

寝床や休息場所となるケージは、タテ(体長の2倍以上)×ヨコ(体長の1.5倍以上)×高さ(体高の2倍以上)の大きさが必要になりました。またケージに閉じ込めることを防ぐ目的で、ケージサイズの床面積の6倍以上×高さ体高の2倍以上の運動スペースを確保し、1日3時間以上運動させることも義務付けられました。

またケージの構造基準も具体化され、金網を床材として使用することの禁止する(肉球が傷まないよう金網の上に布やトレーを置く場合を除く)、またケージや訓練場にサビ、割れ、破れ等の破損がないことも義務付けられています。

POINT

  • 新規事業者は2021年6月から適用されます。
  • 既存事業者はケージの更新等に準備期間が必要なため、2022年6月からの適用となります。それまでにこの基準を満たすケージや運動スペースを用意しなければなりません。

02 従業員の数

動物の飼養に従事する従業員についても決まり、1人当たり繁殖犬は15頭、販売犬等は20頭が上限となりました。ペットショップなどの場合、接客のみに従事している販売員はこの従業員に含めない、親と同居している子犬はこの頭数に含めないなども決まりました。

POINT

  • 新規事業者は2021年6月に完全施行
  • 既存事業者は、新たに従業者を雇用する、譲渡など飼養頭数を削減するための期間が必要となるため、段階的に5頭ずつ減らすなどし、第一種動物取扱業については2024年6月から、第二種動物取扱業は2025年6月から完全施行となります。
    (第二種動物取扱業では、ブリーダーなど第一種動物取扱業からの譲渡が増加する可能性があることから、完全施行時期を1年遅らせることに)

10頭以上の犬を保管する施設を持つ動物保護団体は、第二種動物取扱業者「譲渡し」業として、2025年6月からは「従業員の数」が準用され、これに違反すると罰金が処されることになります。そうならないために保護している犬の頭数を減らすための努力(より一層譲渡に注力する、または一般の預かり家庭を増やすなど)を行うとともに、施設へ通い保護動物の世話を行うスタッフ、動物ボランティアの確保が必須となります。

03 環境の管理

POINT

  • 飼養施設に温度計及び湿度計を備え付け、低温・高温により動物の健康に支障が生じるおそれがないように飼養環境を管理すること。 (温度、湿度は季節や地域により差が大きいため、一律の数値ではなく、そのような状態にすることを禁止)
  • 臭気により飼養環境又はその周辺の生活環境を損なわないよう、清潔を保つこと。
  • 自然採光又は照明により、昼夜の長さの季節変化に応じて光環境を管理すること。

04 獣医師による健康診断

1年以上継続して飼養又は保管を行う犬又は猫については、年1回以上の獣医師による健康診断を受けさせ、診断書を5年間保存すること。
ブリーダーにいる繁殖犬については、雌雄ともに繁殖の適否に関する診断(帝王切開の状況、今後繁殖に供することができる状態かどうかの判断等)を受けることも義務付けられています。なお、改正法により獣医師の虐待通報が義務付けられたことから、虐待が疑われる状態の犬を健康診断の際に発見、通報することも期待されています。

05 展示・輸送の方法

長時間連続して展示を行う場合には休息ができる設備へ自由に移動することが可能となる状態を確保することが義務付けられました、もし確保できない場合は、6時間おきに休憩(展示を行わない時間)を設けるとなっています。
輸送については、輸送後2日間以上その状態(下痢、おう吐、四肢の麻痺など)を目視によって観察することも義務付けられました。

06 繁殖回数と帝王切開

メスの生涯出産回数は6回まで、交配時の年齢は6歳以下。ただし7歳に達した時点で生涯出産回数が6回未満であることを証明できる場合は、交配時の年齢は7歳以下とする、となりました。ただし、年齢や出産回数にかかわらず、繁殖に適さない犬の繁殖はさせないことが定められています。
2021年6月から繁殖台帳に生涯出産回数の記入が義務化され、遵守状況を確認できる体制を整えた上で、2022年6月から適用されます。

帝王切開を行う場合は獣医師が行い、実施した獣医師による出生証明書と母体の状態に関する診断書(次回の繁殖に対する指導・助言)の交付を受け、5年間保存することが2021年6月から義務付けられています。

07 適正な飼養

個々の動物が、被毛に糞尿等が固着した状態、毛玉で覆われた状態、爪が異常に伸びている状態などは虐待につながるため禁止されました。つまり上記1〜6の基準が満たされていたとしても、不適切な状態の動物がいる場合は、動物愛護管理法に違反することになります。
また、清潔な給水の確保や、散歩や遊具を用いた活動など人とのふれあいを実施し、1日3時間以上、運動スペース等に出し運動させることを義務付けることも定められています。

What we can to make our dog happy ワンコの幸せのために出来ることを

数値規制の中でも特に注目を集めた3項目、「ケージの大きさ」「繁殖回数」については既存事業者の場合は来年(2022年)6月から、「従業員の数」については基準が適用されるのは2024年6月からとなりました。動物愛護活動に熱心な方の中には、この段階的な適用を問題視する意見も多く見られました。ただこの期間は猶予ではなく、この期間内に定められた基準に合わせなければならないため、適用されれば即刻、業の取り消しも可能になるとも言われています。環境省では自治体職員向けにチェックリストを含むガイドラインを作成、公表しました。

この「数値規制」に実効性を持たせられるのは、全国各地にいる動物のプロフェッショナルであるブリーダーさんを含む動物取扱業者の皆さんです。自治体からのチェックを待たず、基準を上回る環境をスピーディーかつ確実に実施いただくことが、動物取扱業への信頼を高め、動物たちを不適切な飼養やネグレクト(虐待)から守ることに繋がります。

愛するワンコたちの親兄弟、その仲間たちがどこにいても幸せな毎日を送れるよう、この数値基準を絵に描いた餅にしないことが大切です。不適切な環境にいる動物を見かけたら、地方自治体へ相談することもワンコを愛する私たちに出来ることです。

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