東京農業大学教授の増田先生と一緒にお届けする、ワンコともっと良い関係を築くためのヒント。
ワンコから見えるモノゴト、ワンコの考え方、感じ方など、ワンコたちに見えている世界を私たちにも見せてくれる増田先生シリーズ「ワンコno世界」。
今回は飼い主さんの「確認テスト」です!これまで、ワンコno世界ではワンコとのコミュニケーションのコツをお伝えしてきましたが、実際、どのくらいワンコno世界を理解できているか確認できるテストを増田先生に作っていただきました。この機会に是非、ワンコno世界理解度テストでどのくらい理解できているか挑戦してみてください!
Advisor
増田 宏司 教授
東京農業大学 農学部 動物科学科 教授。東京大学大学院を修了後、同大学院で学術研究支援員を務め、2006年から東京農業大学で研究と学生への指導を行う。研究だけでなく、飼い主向けのカウンセリングやワンコのしつけに使えるグッズの開発など、ワンコと飼い主が幸せに暮らせる社会を築くため、幅広く取り組んでいる。
10 questions that help you understand dogs
ワンコno世界
理解度テスト10問!
Q1.犬は猫よりも水を飲むのが下手!?
犬の水の飲み方には無駄が多く、周りに飛び散りやすい傾向にあります。
実は犬も猫も、同じ水の飲み方をします。舌を水に漬け、水面から舌を引き抜くことで、持ち上がった水を飲んでいます。猫はこの一連の動作が実に優雅ですが、犬の場合はこの動作に無駄が多いため、水がそこら中に飛び散って、多くが口からこぼれ落ちてしまいます。この効率の悪さから、犬が水を喉の奥に1回飲み込むまでに、舌の動きを3~4回繰り返さなければならないことが、2011年に行われた研究で明らかになっています。
Q2.犬は200語程度の人間の言葉を理解できる!?
2歳児程度の知能をもち、200語程度の言葉を理解していると考えられます。
これまでに世界中で行われてきた数々の研究によれば、どうやら犬には人間でいうところの、2歳児程度の知能があるようで、200語程度の言葉を理解していると考えられます。言葉を使うには、言葉を「理解する」能力と「使う」能力が必要ですが、ご存知の通り、犬には言葉を「使う」能力は備わっていません。その代わりに、表情やしぐさ、鳴き声などをフル稼働させて、大好きな飼い主さんに自分の気持ちを伝えているのです。ちなみに2010年に発表された研究論文によれば、1022個もの言葉を覚えた犬がいるそうです。
Q3.愛犬を見つめたら目をそらされた。嫌われている!?
視線をそらすことで、相手に対して敵意がないことを伝えようとしています。
せっかく見つめたのに、目をそらされた。嫌われているのかな?と思ってしまいがちですが、そうではありません。これは、カーミング・シグナルと呼ばれる犬独特の表現の一つで、視線をそらすことで、相手に対して敵意がないことを伝えようとしているのです。カーミング・シグナルには他にも、身震い、地面の匂いを嗅ぐなど多くの行動が知られており、自分や相手の気持ちを落ち着かせ、敵意がないことを示すことで、争いを避ける効果があります。
Q4.ソファーでくつろいでいたら、愛犬が体をくっつけてきた。甘えてる!?
犬が「ここは自分の居場所である」と主張している可能性も。
かわいらしいしぐさですが、「ここは私の場所です。どいてください。」と、犬が自分の居場所であることを主張していることがあります。愛犬と一緒にソファーでくつろぐ習慣がある場合は、一緒にリラックスしたいと思っているかもしれませんが、「ソファーでくつろいでいるから、どいてあげよう」などと、犬の好き勝手を許し続けていると、そのうちソファーを他人に使わせないように、近づく人を威嚇するようになる危険性もあります。そうならないように、「乗って」「降りて」をセットで楽しく教えることをおススメします。
Q5.帰宅したら、喜ぶ愛犬を少し無視するべき!?
出かける時と帰宅した時は、できるだけ淡々とふるまうように心がけましょう。
健気にお留守番をしてくれた愛犬に対して、撫でる、抱きしめる、声をかけるなど、ついつい感動の再会をしてしまいがちですが、犬に留守番をさせる場合、出かける時の慌ただしい準備、いってくるよ!などの声かけ、帰宅時の過剰な挨拶は、その後に続く留守番を予測させ、犬の不安を高めてしまったり、飼い主さんへの必要以上の依存心を生んでしまったりすることがあるため、注意が必要です。出かける時と帰宅した時は、できるだけ淡々とふるまうように心がけましょう。
Q6.クレートはお出かけの時にだけ使うもの!?
移動の時だけでなく、安心できる場所としても機能します。
クレートは基本、移動するときに使うものですが、安心できる場所として犬に覚えさせることで、例えば雷や花火の音が鳴って怖い時などに、いつでも逃げ込める場所として有効です。犬は体がぴったりと入り、静かでかつ明るすぎない場所で落ち着きます。クレートはこれらの要件を満たす理想的な素材ですが、普段からクレートに慣れさせておかないと、特に災害時に避難するときに、クレートの中で落ち着けない状況に陥ってしまうこともあります。
Q7.吠えている時には名前を呼んで注意すべき!?
逆効果です。基本的には無視しましょう。
吠えているときに愛犬の名前を呼んで、制止しようとする方をよく見ますが、逆効果です。犬にとって、この声かけは、「そうだ!もっと吠えろ」という応援にしか聞こえていないでしょう。これがエスカレートすると、「吠えたらご主人が構ってくれる」と勘違いし、ますます吠えやすい犬になってしまうかもしれません。吠えてしまったときは、基本は無視をし、吠えることを防ぐためには、出来るだけ、犬に吠える機会を与えない、あるいは吠える前に声をかけて注意をそらすことを心がけてください。
Q8.犬はうれしくない時にもしっぽを振る!?
しっぽを振るのはうれしい時だけとは限りません。起きた事象の違いにより、犬のしっぽの振り方は異なります。
犬がうれしい時にしっぽを振ることは、誰もがご存じの事実だと思いますが、実はしっぽを振るのはうれしい時だけではありません。またしっぽの振りかたも一様ではありません。目の前に現れた対象の違いによって、犬のしっぽの振り方が異なることが、2007年の研究によって明らかになっています。例えば、飼い主さんが目の前に現れた時、犬はしっぽを大きく右寄りに振り、逆に威圧的で知らない犬が現れると、しっぽを左寄りに振ることが判明しています。
Q9.犬は何歳になってもしつけが可能!?
覚えるのに時間がかかっても、飼い主さんからの合図に、何とかして応えようとしてくれるはず。
「うちの子、もう歳をとっちゃったから、しつけはあきらめてるんです」という言葉をよく耳にします。決して、そんなことはありません。確かに、学ぶ意欲は若い頃より衰えているし、覚えるのに時間はかかります。でも、あなたの愛犬はきっと、大好きな飼い主さんからの合図に、何とかして応えようと一生懸命なはずです。ゆっくりでもいいじゃないですか。時間がかかって困ることはありますか?長い間一緒に過ごしてくれたあなたの相棒と一緒に、このゆったりとした素晴らしい時間を、ぜひ楽しんでいただきたいと思います。
Q10.愛犬が亡くなった後は飼い主生活は終わり!?
ぜひ次のワンコを幸せにしてあげてください。
「犬を飼うことのゴールとは、最後まで愛犬の面倒を見ることだ」とよく聞きます。でも私はこう思います。犬を飼うことのゴールがある場所は、もう少し先の、「次の犬を飼いたいと思えるようになることだ」と。あなたの愛犬はあなたに、まさに生涯をかけて、犬を幸せにする方法を教えてくれているはずです。あなたの愛犬が亡くなって、つらい時期を乗り越えたならば、楽しみながら、悩みながらも愛犬と共に歩んだ日々とその経験を、どうか次の犬にお返ししていただきたいと思います。その時のあなたにはきっと、あなたの愛犬があなたに遺してくれた、犬を幸せにできる実力が備わっているのですから。
Check for understanding
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チェックしよう!
0〜1コ
ようこそ
ワンコの世界へ!
もう一歩踏み込めば、犬と分かり合えて、幸せを感じる素敵な世界が見えるようになるでしょう。あなたの愛犬は、大好きなあなたのことをいつも見つめてくれていることを忘れないようにしてください。
もう一歩踏み込めば、犬と分かり合えて、幸せを感じる素敵な世界が見えるようになるでしょう。あなたの愛犬は、大好きなあなたのことをいつも見つめてくれていることを忘れないようにしてください。
2〜4コ
ワンコの世界が
見え始めています!
ワンコの世界に興味を持ち始めたあなた。犬との関係には、飼い主さんとイヌのペアの数だけ答えがあるはずです。あなたの愛犬と一緒に、これからも幸せな関係を築いてください!
ワンコの世界に興味を持ち始めたあなた。犬との関係には、飼い主さんとイヌのペアの数だけ答えがあるはずです。あなたの愛犬と一緒に、これからも幸せな関係を築いてください!
5〜7コ
上級者!
ワンコの世界の住人!
ここまで犬の気持ちを理解できるあなたの愛犬はとても幸せだと思います。犬友達からいろんな相談を受けることも多いのではないでしょうか?これからも愛犬と一緒に幸せになってください!
ここまで犬の気持ちを理解できるあなたの愛犬はとても幸せだと思います。犬友達からいろんな相談を受けることも多いのではないでしょうか?これからも愛犬と一緒に幸せになってください!
8〜10コ
ワンコマスター!
さらに上を目指そう!
プロです。犬友とその愛犬へも、幸せになるためのヒントを伝える伝道師を目指していただきたいと願ってやみません。ぜひ周りの困っている飼い主さんの心のよりどころになってください!
プロです。犬友とその愛犬へも、幸せになるためのヒントを伝える伝道師を目指していただきたいと願ってやみません。ぜひ周りの困っている飼い主さんの心のよりどころになってください!
Message for dog owners 飼い主さんへのメッセージ
今回は犬の意外な生態、勘違いから生じる犬との生活にまつわるミス、犬とともに生活を送ることの意味など、日常でよく目にしながらも、あまり本当の意味を深く考えないトピックをクイズ形式で紹介してみました。当たり前だと思って誰もが深く考えないことも、よくよく見てみると、そうは思っていなかった意外な真実に出くわすことがあります。
私の専門である動物行動学には、こういった視点から犬のしつけや行動の意味を探るスタンスがありますが、このことは、かの有名な動物行動学者であるローレンツ博士(ノーベル賞受賞科学者)が生前に遺した「誰もが見ていながら誰も気づかなかったことに気づく。研究とはそういうものだ。」という言葉によってうまく表現されています。この考え方やスタンスは、犬との関係を築くときにとても役に立つため、私はつねづね「すべての飼い主は動物行動学者たれ(であれ)」と考えています。
「毎日見る愛犬のこの行動は、いままではこうだと考えていたけれど、本当にそうだろうか?今度友達に聞いてみよう。解釈が異なるかもしれないし、愛犬と生活を送るうえで参考になるかもしれない」といった考え方ができると、より一層、愛犬を理解することに役立つかもしれません。そして、あなたが愛犬を理解すればするほど、犬という動物が、平和の象徴・仲良しのお手本・愛の模範に見えてきて、私たちが犬と付き合っているのではなく、むしろ犬に私たちが付き合ってもらっているのではないか?と思えてくるかもしれません。このように、動物行動学的なものの考え方や視点を持つことは、たくさんの感動や驚きの発見につながります。ぜひ、お試しいただきたいと思います。